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エイプリルフールな話(その2)
出演:ヴィネーラさん

ロケ地:アップタウン

聖堂で平和な日々を過ごす月光花。
いつも通り入院患者のためにお花見イベントのしおりを制作していた彼女だが、次の日が嘘の許される日エイプリルフールだとヴィネーラに教えられる。


 朝。
エミル・バードの月光花は、朝食を焼いたパンの実とジャム、紅茶ですまし聖堂へと向かう。
ここは聖堂管理協議会。
ウァテス系の人々が集い、冒険者達の援助を行いつつお互いを高め合う場所だ。
勤務はシフト制で成り立っており、時給に応じて給与がでるが、治安維持部隊の任務へ参加すると賞与がでる仕組みになっている。
その為、指名において優遇されるウァテス系の彼らは、それぞれに派閥を持っており、組織内における暗黙の了解が存在していた。
中にはそんな息苦しさについて行けず、一ヶ月経たずやめてしまうウァテスもいたが、月光花は声をかけてくれた先輩に恵まれ、半ば平穏に日々を送っていた。

月光花はその日も、入院して居る患者の為に、先輩カーディナルのヴィネーラとお花見イベントの企画書をまとめる。

「そういえば、明日はエイプリルフールね。ゲッカちゃん」
「え、あ、そういえばそうですね」
「なにか嘘は考えてる?」
「いえ、そんなには……ヴィネ先輩は考えてるんですか?」
「それが、全然。去年は思い切って、『ココッコーが大量に降ってきますよー』と叫んだのですけど、誰も信じてくれなくて……」
「……」

無いだろ。

「今年こそは、信じてもらいたいなぁって……」

嘘か。確かに面白いイベントだと思う。
この日だけは、どんな嘘でも許されるのだから……。

書類をまとめ終わり、帰宅した月光花はぼーっとジンの目の前に座り、カナトの夕食を食べていた。
お箸を丁寧に使い、鰤の身を口に運ぶジンは、意外とまつ毛も長くて目も大きい。
女性なら羨ましいが、男性で中途半端に男らしいジンがそれでも、あまり自慢もできない。
ぼーっと考えながら、おはしで切った大根を頬へ溜め込むジンを見ていると、彼はふと此方の視線に気づいて顔を上げた。
しっかり噛んで、飲み込んで、お茶をのんでから口に出す。

「どした?」

カナトに食べながら話すなと、散々怒られていたし、大分成長したのかなぁと思う。
だが、口にいれた物を頬に溜める癖は治っていない。

「なんにもない」

実家が道場だったジンは、昔から父親に、体力をつけるためにたくさん食べろと言われつづけてきた。
その為ジンは、一度頬に食べ物をため込むことでやり過ごし、ゆっくりと噛んで飲み込む癖がついた。
当時から持久力が足らず、マラソンなどは苦手、しかしそれでも、運動している分スタミナはあるので、一時的にはかなりの強さを発揮する。
喧嘩は強いのにかけっこではような感じだ。

目の前のジンは、首を傾げて再び頬へごはんを詰め込む。
子供じゃないのだからと思うが、時々みせるそんな食べ方が、懐かしさとジンが彼である証明な気がして、月光花はあまり口に出せずに居た。

汁物をずずずと啜り、カナトにうるさいと怒られるのも日常で、月光花はそんな二人を笑いながら今日も夕食を頂く。

次の日、エイプリルフールのその日に月光花はいつも通り聖堂へ向う。
ヴィネーラと患者さんのシーツや寝巻きを洗濯していた所。休憩をしているウァテス系の彼らが、小さな声で話す色恋沙汰が耳に入り、二人は思わず聞き入ってしまう。彼女たちの話題は、エイプリルフールを利用して好きな男性の気持ちを探ると言うものだったのだ。

「うーん。私はあまり感心しないわ」

苦笑するヴィネーラだが、反応を見てみたい気もする。
月光花はその日、早めに帰宅して足早にカナトの自宅へと向かった。
面白そうではあるし、ためしに言ってみようか。

「ただいまぁ」
「お、ゲッカ。お疲れさん」
「あ、ありがとう」
「なんだよ。元気ねぇな。生理でもきたか?」

無意識にポケットの濃縮マジスタポーションを投げつけた。
ジンの額にクリティカルヒットして、後ろで料理して居たカナトがキャッチする。

「いってぇえええ!!」
「あんた、そう言う事は乙女に聞くなって言ったでしょうが!!」

どうしてこうもデレカシーがないのか。
カナトがキャッチした濃縮マジスタポーションをテーブルにおき、もくもくと料理を続ける。
ジンは疼くまって額を抑えているが、月光花は自分の両手を絡ませ、口を開いた。

「あのさ……ジン」
「てぇぇ……なんだよ……」
「実はさ。彼氏、出来ちゃった」

がしゃんと、台所からオタマを落とす音が聞こえた。が、ジンは、その音に反応すらせず真顔で固まっている。
誰もが無言、何もしゃべらない。
カナトはオタマを拾おうともしない、月光花はあまりの反応に思わず何も言えず、沈黙を破ろうとしたが

「あ、ご、ごめん。実は今日ーー」
「い、いいんじゃねえの!? お前みたいな女、貰ってもらえるなら、それに越した事ねえし、俺もお前の飯で死にかける事もなくなって精々すーー」
「ジンの馬鹿ぁあああ!!」

右ストレートが決まる。
頬にそれを食らったジンは、床に倒され、月光花は泣きながら家を出て行ってしまった。
ポカンとして、開かれた扉を見据えていると、見兼ねたカナトが、横からジンのわき腹へ蹴りを入れた。三連続で殴られ、流石のジンも倒れこむ。

「馬鹿が」
「なにすんだよ!!」
「エイプリルフールだ。本気にしやがって……」
「は?」
「さっさと追いかけろ。……この時間のアクロポリスは危険だ」

気が付けば日も殆ど落ちて着ている。嫌なゴロツキが動き出す時間だ。
ジンは、自室から銃ホルスターを持ち出し、腫れた頬のまま自宅を飛び出した。

一方、月光花は一人泣きながらアップタウンを走り、気が付けば稼働橋付近まで来てしまった。
明かりがポツポツ現れ、稼働橋にもそれが現れる。
街よりもそちらの方が明るくて、月光花は一人、アップタウンをでて稼働橋へとでた。
昼間より人が増え、取引や博打で遊ぶ冒険者もいる。
明るいが柄が悪い。
しかし行く場所も無く、月光花はさらに階段を降りてダウンタウンへ降りた。
ここからシアターでレイトショーでも楽しもうかと思った時。

突然後ろに、人の気配を感じて振り返った。
すると、明らかに柄の悪い三人組の冒険者が目前に立っており、月光花は思わず悲鳴をあげる。

「可愛いね。なにしてんの? アップタウンの子?」
「えっと……」
「ダウンタウン初めて? 俺らと今夜遊ぼうよ、弾むからさ」

なんの話だろう。
嫌な予感がしてたじろぎ、逃げようとしたが、突然腕を掴まれた。

「冷たいなぁ、その為にきたんじゃないのかよ」
「違います。放して!」
「大丈夫だって痛くしなーー」

突然、言葉が止まった。
何が起こったと思うと、月光花から見て左側にいた男が、床に蹴り倒されて転がった。

「!?」

現れたのは、カーキ色のトレードマーク、ファージャケット待とうエミル。
ジンだ。

ジンは倒した男を起き上がれないように踏みつけ、月光花の腕をつかむ男のわき腹を蹴りつける。
ごふっと腕の力が抜けた相手から月光花を攫うと、わき腹の銃を抜いて、発砲。

ズドンと、いう爆発音に、月光花が思わず耳を覆った。

「失せろ」

腫れた頬は、先ほど殴ってしまったものだ。
だが、それ以前に目が笑っておらず、三人組のゴロツキは腰を抜かしたまま逃げて行く。

「ジン……?」
「帰るぜ……」
「……うん」

ゆっくりと二人は歩を進め、稼働橋は危ないからと手を繋ぎ人ごみを抜けた。
アップタウンに入ってからは、手を放して、二人で並んで歩く。
月光花は離される手が何処か名残り惜しくて、思わず繋いでいた手を自分で握った。

「あの」
「なぁ」

同時に口に出して、思わず目を逸らした。ジンは顔を背けたまま、ボソッと口に出す。

「お先にどーそ……」
「あ、えっと……彼氏は嘘なんだ、反応……みたくて」
「そーかよ……」
「ご、ごめん……」

目を合わさない。やっぱり、まだ怒っているのだろうか。

「悪かったよ……」
「!?」
「ちょっと……悔しくなっただけだ……」

月光花の顔がおどけた。
よく見ると後ろから見える耳が真っ赤で……思わず顔が綻んでしまう。

「ジン」
「なんだよ」
「こっち向いて」
「やだ」

イラっとして、耳を引っ張る。
無理やり此方を向かせて、月光花は腫れているジンの顔を両手で引き寄せた。

「“ヒーリング”」

ぱぁっと、白い光が溢れジンの頬の腫れが引いていく。
そういえば、月光花はバードだった。

「ジン。ありがとう……」
「お、おぅ。……もう、いいだろ」
「うん。ごめんね」

そうして二人は、寄り添いながら帰宅した。


END
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本編 | 【2013-04-01(Mon) 12:00:00】 | Trackback(-) | Comments:(0)
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