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(C) BROCCOLI/ GungHo Online Entertainment,Inc./ HEADLOCK Inc.

注文の多い料理店でジンとカナトがアルバイトする話
出演:ザークシーズさん、マーキッシュさん、フォレンさん、セオさん

ロケ地:信託の風穴

あらすじ
酒場依頼をうけて、やってきた異国の料理店。
メニューにつかうゼンマイが足りないことから、二人は信託の風穴に採取手伝いをしに行くことになった。
しかし、店があまりに忙しく手伝う事になり……。


 「腹へったぁ……」
「貴様の所為で時間ギリギリだ、もう少し余裕を持って準備しろ」
「うっせぇよ。お前もねてたじゃねぇか! 自分棚上げにすんな!」

午後のアクロポリス。
私服で歩く2人うちの片方が大声で、叫び、アクロポリスの人々の視線を集めた。
街の繁華街には、様々な食料品店が立ち並び、2人もよくここへ買い物にくる。
しかし、今日は別の用事があった。

「この辺にあんの? その料理店」
「あぁ、よく見かけてはいたが、入ったことはない」

人通りが多く賑やかな街の繁華街を歩いていると、2人はある店の前で立ち止まった。
赤く目立つ看板に、黒蜥蜴と書かれた店は、異国の雰囲気を醸し出している。
店からは甘い匂いも漂ってきてジンの空腹に拍車をかけた。

「なぁ、折角だし食ってこうぜ」
「打ち合わせが終わったらな」
「へいへい」

溜息をついて、2人が店の中へ入って行く。
外に並んでいる行列をすり抜け、中へ入った2人は、テキパキと動くウエイターに視線を持ってかれた。
チャイナドレスをまとい、緑の瞳を輝かせているのは少女だろうか。
笑顔で振り向いた相手は「いらっしゃいませー」と笑う。

「お客さんー。ごめんなさい。並んでもらえますかー? 順番大事ですよ」
「いえ、本日13時より、酒場依頼の紹介として参上いたしました。アークタイタニア・ジョーカーのカナトです」
「あ、店長が頼んだ件ですね。ごめんなさい。今案内します。まーくん!!」

「あん? なんだよ。フォレン」
「店長奥にいるでしょ、お客さん来たって伝えて、酒場から」
「こっち手いっぱいなんだ。お前なんとかしろよ!」
「こっちだってオーダー忙しいんだから……ってお会計ですか。ありがとうございましたー!」

くる時間を間違えたかと思ったが、確認をしてみても間違いない。
フォレンと呼ばれたウエイターは、客の会計を終えて、呼ばれてはすぐオーダーに入る。
ジンとカナトは仕方なく、壁際に呆然と立ち尽くしていた。
だが、フォレンが運ぶ料理の香りにジンの腹が更に空腹を訴える。

「腹減った……」
「我慢しろ」

「フォレンちゃん。お客さん放置したらだめじゃない」

新しい声に、ジンとカナトが顔を上げた。
店の奥から現れたのは、同じくチャイナ服を纏う青年。
銀縁のメガネをかけて頭にヘアピンをつけている。

「店長。お客さんだよ。酒場の」
「酒場の……あぁ、貴方方が紹介の」
「アークタイタニア・ジョーカーのカナトです。失礼ですがザークシーズさんで間違いないでしょうか?」
「えぇ、待っていました。エミル・ダークストーカーのザークシーズです。奥へどうぞ」

そうして案内しようとすると、ザークシーズはカナトの後ろにいるジンと目が合う。
まじまじとこちらを見た相手は、何者かとカナトへ視線を戻した。

「そちらは?」
「俺は、エミル・ガンナーのジンっす。よろしくお願いします……」
「相方です。お気になさらず」
「なるほど……では奥へ、今回の依頼についてお話します」

サークシーズに案内されて二人は、店の奥の事務室へと連れてこられた。
店長の彼は、売り上げを計算していたらしく、事務処理用の端末が付けっぱなしで放置されている。
また事務室には、発注書類などの山がダンボールに箱詰めされていて、まるで倉庫のようになっていた。
二人は、そんな部屋の隅にある高級そうなソファーへと着席を促され、インスタントのコーヒーを出される。

「ともかく失礼いたしました。この時間はいつも混み合っていて……」
「お気遣いなく、早速ですが今回の依頼というのは?」
「その件ですが……実はこの店。黒蜥蜴の人気メニューでもある。ゼンマイの煮付けの材料のゼンマイが底をつきかけて居まして……」
「ゼンマイですか?」
「えぇ、本来なら業者から買い取るのですが、ゼンマイの生産もとのマイマイ島で、モンスターが凶暴化しており、全く収穫できない事態になっているようなのです」
「なるほど……つまりそのモンスターの討伐を?」
「それもありますが、ゼンマイの採取も一緒に行いたいので、私たちの護衛も、報酬は完了後に酒場から受け取る形でお願いしたいのですが……」

「ゼンマイって果物かなにかっすか?」
「馬鹿が、……野草だ」
「ははは、たしかにメニューとして出しているのは、うちの店ぐらいです。知らないのも仕方が無い。採取という簡単な事ではありますが、相手がモンスターで危険が伴う、それで酒場へ……」
「なるほど、わかりました。何処までお力になれるかはわかりませんが、協力しましょう」
「ありがとうございます。カナトさん。では明日のーー」

ザークシーズが何かを述べようとした直後。
先ほどのウェイター、フォレンが突然事務所へ駆け込んできた。
顔に疲れの色が伺え、ひどく切羽詰まっているように見える。



「店長、ごめん。捌き切れない手伝ってぇー!」
「あぁ、わかった。ではお二方待ち合わせはメールで……」

サークシーズが事務所から出て行こうとした直後。
カナトが立ち上がり、ザークシーズを引き止めた。
ジンは嫌な予感がしたが、気がついた時には厨房に立っていて、エプロン付けて皿洗いをしている。

「な、なにやってんだ俺……」
「わりぃな……たすかってっぜ!! 俺はイクスドミニオン・グラディエイターのマーキッシュ! よろしく!」
「エミル・ガンナーのジン。シェフっすか?」
「おう!」

そう言ったマーキッシュは、話しながらどんどん料理を作り次々とテーブルへ並べて行く。
そこにやってきたフォレンが、料理をトレイに載せて客のテーブルへ運んで行った。

「ジン……ジンってどっかできいたなぁ……なんだっけ?」
「俺のことしってんすか?」
「おもいだせねぇ、でもま、明日採取だろ? よろしくたのむぜ」

話は合いそうだ。
そんなことよりも、後ろで作られて行く料理の香りが酷く空腹を煽る。
ふと店の方をみると、女性客に距離を取ってオーダーをするカナトと、チャイナドレスで客に笑顔を振りまくフォレンがいて思わず見入ってしまった。

「かわいいだろ?」
「え……は?」
「俺が狙ってんだ。間入ったらゆるさねぇ……」
「なんすか。気になるならさっさと告白すればいいじゃないっすか」
「うっせぇ、できたら苦労しねぇよ!」
「恥ずかしくて言えないんすか? 意外とシャイなんすね」
「黙れ新入り、てめえの付けいる隙はねぇんだよ!」
「ずっと一緒に働いてるのにモタモタしてるからっすよ!」

「まーくん。これ三番テーブルさん。メニュー取り消しだって」
「お、おう! 了解したぜ。フォレン」

「フォレンちゃん、よかったらたら後でアドレス教えてくんない?」
「アドレスですか? カナトさんのを教えてくれるならいいよ!」
「まじで、やったね」

「てめぇ、ジン!!」

マーキッシュが殺す目つきでこちらを睨んでいるが、気にもしない。
小さな事だこれをきっかけに出来ればいいと思う。

「うわぁぁぁあああ」
「きゃー、カナトさん! 大丈夫!?」

触られでもしたか。
がしゃんと酷い音も聞こえたが、それでもかわいいだのかっこいいだのと黄色い悲鳴が聞こえて来るので、折角のいい気分が台無しだ。

「ばっかやろう!! 皿わるんじゃねぇえ!!」
「まーくん、カナトさんは女性苦手みたいだから、勘弁してあげて」

料理を取りにきたザークシーズが、まぁまぁとマーキッシュを宥める。
すると彼は脇でもくもくと皿洗いをするジンへと再び視線を向けた。

「ジン君、ありがとうね。変わろうか」
「大丈夫っすよ。一応普段からやってるんで、でもカナト……あいつ表で大丈夫っすか?」
「男性客に絞って頑張ってるよ。時々女の子に声かけられては、叫んでるけど……」

カナトとしては、厨房に立ちたかったらしいが、ジンよりチャイナ服が似合うからとごり押しされ今に至る。
たしかに、似合わないことは100も承知だが、ここまで差を見せつけられると、イラつきを通り越して凹みそうなレベルだ。

「なんかつぶやきツールで、拡散されたみたいでね。もうしばらく忙しいかも」
「それどういう意味っすか!?」

それだけ言い残し、ザークシーズは料理を持って出ていった。
それから数時間たって、延々と出てくる洗い物をようやく処理し終えたかなと思ったとき、二人は閉店処理も手伝って事務所へと戻った。

「今日は、とても助かりました。ありがとうございます」
「い、いえ、お力になれたなら幸いです」
「手伝って頂いたお礼に、是非うちの料理を食べて行ってください」

「まじっすか……実は俺ら昼飯食って無くて……」
「そうだったのですか!? それは申し訳ないことを、好きなだけたべてください」
「よっしゃ!!」

マーキッシュが酷い目つきでこちらを見ている。

「それにしても、カナトさんも流石ですね」
「? ……何がですか?」
「この様な美人な方にオーダーをしてもらえれば、うちの店は今後安泰でしょう」
「美人……私は男ですが……」
「えぇ、お客さんもとても嬉しそうでした」
「……ザークシーズ殿、褒めて頂いていることはとても光栄ですが、私は男であることに二言はありません」

「は? カナト?」
「失礼ですが、本日は撤退いたします」
「ちょっと待てよ! 食ってかえるんじゃねぇの!?」
「帰るぞ! ジン!!」
「は!?」

まるで引き摺られる様に、ジンはカナトに引っ張られ店を後にした。
後ろからみた光景は、また明日ね!と手を降るフォレンと、ざまぁみろと舌をだすマーキッシュがいて、
結局その日の夕食は、露天で買ったキャビアまんだけになってしまった。

そして次の日。
マイマイ島への定期便がある、トンカ島で待ち合わせをした2人は、きっちり昼食もたべて、三人と落ち合う。
背中にはいつも通り、光砲・エンジェルハイロゥを背負い、カナトも戦闘用のハルシネイションコートだ。
しかし、黒蜥蜴の彼らはマーキッシュしか鎧を纏っておらず、フォレンとザークシーズはチャイナ服のままでザークシーズのみが、背中に薙刀を携えていた。

「本日はよろしくお願いします」
「カナトさん、よろしくね!」
「フォレンちゃんは、こう見えてマーチャントなので荷物持ちをお願いします」

「フォレンちゃん。重かったら無理しないでね。俺持つから!」
「あは、ジンさん優しいんですね!」
「ぐぉら! 俺だって持つわ!」

仲がいいなと思いつつ、五人は定期便に乗ってマイマイ島へとやってきた。
ジンとカナトにとってはお馴染みの場所でもあるが、三人にとっては珍しく、大自然の森を見渡すように眺める。
途中にいるバルルやトロピカルギーコに見つからないよう、奥へとやって来ると久々の大自然の空気に、2人も懐かしさを覚えた。

たどり着いた神託の風穴は、以前訪れたときと同じく、巨大な大自然の迷路となっており、五人は慎重に歩を進めていく。
向かってくるマタンキクルを、剣の空振りや威嚇射撃で脅し二人が先導をきって、奥へと進んでいった。
五分ほど歩いたところで、ザークシーズが岩陰に生える小さな草へと駆け寄っていく。先がネジを巻いたように渦巻いている植物。ゼンマイだ。

「これですね」
「へぇー、結構生えてるんすね」
「ここでしか採れませんが、ここではありふれたものです」

「奥に行けばもっと生えてるんじゃないかな?」
「そうだね。進みましょう」
「あんま調子のんなよー。ダンジョンだぜここ」

「俺が守るし平気っすよ!」

マーキッシュの眉間に皺がよる。
カナトは一人、黙ってため息をついていた。

道中を進む間も、ザークシーズはゼンマイを収穫し、高い場所へ生えているものはカナトが丁寧に採取をする。
長さはまちまちだが、どれも立派で、食べられると分かると美味しそうにも見えてきた。
風呂敷に溜まってきたゼンマイをまとめ、フォレンがリュックにしまっていると、それを見ていたジンが首を傾げる。

「これ、どうやって食うの?」
「綿毛を取り除いてから、洗って茹でこぼしをし、水にさらして一晩。そのあと、乾燥させて調理します」
「へぇー、このままじゃだめなんすか?」
「毒はありませんが、苦味が強くたべれませんよ」

「食ってみろよ!」
「食わねーっすよ!!」

「ジンさん食べないの?」
「え、その……フォレンちゃん、生は流石に……」
「あは、なら帰ったら作ってあげますね」
「マジで! やったね!」
「カナトさん食べてくれるかなぁ……」

「もちろん、私で宜しければ」
「やったー、帰ったら頑張るよー!」

フォレンの喜ぶ姿を見て、マーキッシュが真っ白になっている。
ジンはそれに必死で笑いこらえたが、ザークシーズはマーキッシュを慰め、辛うじて歩ける程度には持ち直させた。

順調にゼンマイの収穫を続け、奥へと進み、徐々にフォレンの鞄も膨らんでいく。
周辺はさらに緑が深まり、空気も変わってきていた。

「フォレンちゃん気をつけてね。この辺、落とし穴があるから」
「そうなんですか? こわい……」

床をよく見て見ると、落ち場が山になって重ねられている部分が目立つ。
ジンが懐のサラマンドラを抜いて、床を撃つと組まれていた枝が壊れて大穴が出現した。

「本当だ! ジンさんすごい!」
「へへ、足元気をつけてね」

上から探索するカナトが、ジト目でこちらを見ている。
後ろからも殺気を感じるが、誰かは分かるのであえて何も見なかった。

「ゼンマイは地下にも生えているので、ここから降りてもいいかもしれませんね」
「そうなんすか?」

「でもザクス。奥にもあるんだろ?そっちみてからのがよくないか?」
「まぁその通りではあるけど……」

そんな会話をしていると、突然洞窟の奥から生暖かい嫌な風がふんわりと吹いてきた。
背筋もザワザワと騒ぎ、嫌な予感がする。天井付近にいたカナトも、何かを察して床へ戻ってきた。

「なんだ……?」
「嫌な予感がする。ジン」
「おう!」

2人が一歩前にでて、身構える。
後ろの2人はマーキッシュを任せて、武器を構えると、洞窟の奥から、ぶぶぶと低い音が響いてくる。
まさかと思った直後。
突風と共に、洞窟の奥から大量のホプニキキリが溢れ出して、こちらへと突っ込んできた。

「うわぁぁぁあぁああ!!」

敵が多すぎて狙いきれない。悲鳴を上げて五人は一目散に逃げ出した。

「ザーク君そっち出口じゃない!!」
「ごめん!! 虫は無理!!」

「無理とかそういう問題じゃねぇっすよ!?」

「ともかく! 岩陰か何処へーー」
「っだぁぁあ!! しやぁねぇなぁあ!!」

突然足でブレーキをかけたマーキッシュ。
彼は背中の斧を取り出し、虫の群れに突っ込んで行く。
大きく振りかぶり、斧の質量をそのまま、床へ叩きつけた。

「”グラヴィティ!!”」

圧力が爆散する。床も揺れて起こされた風圧は、ホプニキキリ達を吹っ飛ばした。
しかし、揺れた事で興奮したのか、さらに奥から無数の虫の群れが押し寄せ、マーキッシュも更に悲鳴を上げて後退。
逃げ出した。

「ばっかやろぉおお!! 多すぎだろちくしょぉおお!!」
「叫ばれず! 虫が興奮します!!」

「何処まで逃げろってんだよぉおお!!」

ジンがそう叫んだ直後。五人の足元が、突然抜けた。
組まれていた枝木が折れ、吸い込まれる様に落下する。
カナトはそれに紛れ込むように、ザークシーズとフォレンを捕まえて、落下の衝撃を軽減。
マーキッシュとジンに遅れて、落下した。

落ち葉の中へ沈んだ2人は、変にもつれている。

「てめぇ!! さっさとどきやがれ! 」
「好きでこうなってる訳じゃねぇっすよ!そっちこそさっさとはな……」

カナトに蹴られて、ようやく離れた。
やかましかったらしい。

「大声を出すと敵がくる。静かにしろ」
「す、すんません」

横腹はないだろ。痛い。

「カナトさん。ありがとうございました」
「ザークシーズ殿。怪我が無くてなによりです」
「落とし穴には落ちましたが、なんとかやり過ごせましたね。業者が仕事をできない理由が分かりました」
「その事で申し訳ないのですが、あの数の討伐は、私達二人では流石に厳しいかと……」
「はい。無理されないでください。私達の目的はあくまで採取。護衛だけしてもらえれば、充分です」

「カナ、本部に連絡しとくか? 無理だろ、アレ……」
「任せる。私は関与したくない」

そっぽ向かれた。
ジンはむっとして内ポケットのデバイスを取り出し、メールを打ち出す。

「本部って?」
「治安維持部隊。めんどくさい事やってくれる便利屋さんっすよ」
「えぇ、なんでジンさん、連絡とれるの!?」
「……えっとぉ」

フォレンに言われて思わず渋った。
あまり堂々と言いたくは無くて、背中をむける。しかし、それに笑みをみせたザークシーズは、まるで当然のように口に出した。

「治安維持部隊、ギルドランク5th。エミル・ホークアイのジン君ですよね」
「へ……あの……俺」

「ぁぁあ、そーだよ。てめぇ、やっと思い出した!!」

マーキッシュの叫びにはっとした。そう言えばきいた事があると……。

「なんか変わった銃使ってると思ったんだよなぁ……5thかよ、どおりで……」
「文句あるんすか?」

「ランカーは、君だけじゃないよ。ジン君」
「は?」

「元ギルドランク8th。イクスドミニオン・グラディエイターのマーキッシュだ!! 覚えとけ、ガンナー!!」
「は!? マジで!」

床に突き立てられたのは、両手斧、冥獄斧・デストロイヤー。
斧を持つ剣士は珍しく、気にも留めていなかったが、まさかランカーだったとは……。
しかし確かに、変わった形状をしている。

「最初から、全てわかっていたという事ですか。ザークシーズ殿」
「えぇ、一目見た時から……しかし、ランカーさんは部隊任務をこなすと聞いていたので、まさかこんな仕事でお目にかかれるとは」

「……俺、ランカーの中じゃ一番影薄いっすけど」
「ははは、確かに。しかし裏では、最も関わりたくないランカーとして名前が上がっていますよ。情報がほとんど無く、容姿もわからない、烈神銃・サラマンドラを持ち、名前だけがサイトにあるランカー。一度関わると五体満足ではいられないと……」
「詳しいっすね……」
「ランカーの情報は、治安維持部隊の公式サイトに全て乗っていますからね。基本情報ですよ。それに、こういう仕事をやっていれば、自ずと冒険者たちの噂話も耳に入ってきます」

ふとマーキッシュを見ると、斧を持って不敵に笑っている。
カナトはそっぽを向き、フォレンはやっぱり可愛い。

「だけど、思ったより面白い方で安心しました」
「はっ!?」
「もっと冷酷な人かと……しかし、ジョーカーさんと一緒にいる時点でそんな訳ありませんね」
「面白くなんかないっすよ。せめてかっこいいってーー」
「なら、見せてください。私達に」

よっしゃ、と意気込むがカナトがため息をつく。
また丸め込まれたのか……?
小さな個室に落ちた五人は、戻ることもできないため、仕方なく落とし穴を探し、そこから地下へと降りることになった。
落とし穴の見つけ方を覚えたジンは、すぐにその場所を見つけ出しカナトが一人ずつ下ろして行く。
最後のフォレンを下ろし終わり、五人は目の前に数多いる人型の巨大モンスターに呆気に取られた。
“ナビゲーションデバイス”でみると、図鑑に登録されていてポロヌプリと言うらしい。
五人は、そんな巨大な敵に気付かれないようこっそりと間をすり抜けて先へと進んだ。
途中のゼンマイも忘れずに収穫し、フォレンの鞄はいよいよ一杯になる。

「フォレンちゃん。まだ持てる?」
「うーん。そろそろいっぱいかなぁ」

「フォレンちゃん、俺もつよ!」
「俺がもつってんだろうが!! さっさとよこせって!」

やっぱり仲がいい。
一個づつ鞄を持たせてもらっているのをみると、フォレンが一回り大人に見えてしまう。
そんなやり取りを繰り広げ、五人は信託の風穴の最深部へとたどり着いた。
自然の迷路を抜けた先は天井が大きく開け、巨大な大木が根を這わせている。
ここから風が入り込み、洞窟の中へ抜けているのか。

「うーん。まだゼンマイが生えてるなぁ」
「でも鞄もう一杯だよ」
「まぁ、仕方ないね。それだけあれば一週間は持ちそうだし、今日は帰ろうか」

フォレンの笑顔はやっぱり可愛い。
話が纏り、帰路へつくかに見えたが、突然、あたりを飛び回っていたカナトが動きを止めた。
敵が出てくる時の行動パターンだ。位置を割り出すために気配を探っている。
ジンはそれを見て、荷物を下ろし背中の光砲・エンジェルハイロゥを下ろして構えた。

「ジンさん?」
「なんかいるっぽいんで、気をつけて」

「どこだよ。5th」
「しらないっすよ」

カナトが前に戻ってくる。
すると突然突風が吹いて、カナトを後ろへと吹っ飛ばした。
吹っ飛ばされたカナトは、背中からジンに激突して、ジンはそのままひっくり返る。

突風と共に現れたのは、前一瞬だけ姿を見せたレラカムイ。
以前とは違い、こちらを睨みつけて消える気配がない。

現れたレラカムイは雄叫びをあげ、赤いモンスター、ポロフレハラムを召喚。
此方へと向かってくる。
カナトはそれに反応し、即座に魔法を唱えると群れの敵へ、"ジョーカー"を叩き込んだ。
するとポロフレハラム達は、一瞬で暗黒に吸い込まれ、カナトはその勢いのままレラカムイに剣を振り下ろす。が、まるで空気を斬るようにすり抜け、一回転して壁に足を付いた。

「物理きかねぇんすか? アレ」
「レラカムイは風の守護神です。属性が要る」
「属性!?」

ザークシーズは一歩後ろから、背中の薙刀を振りかざすと、ジン、マーキッシュ、カナトへ"ダークウェポン"を唱えた。
自分にも闇属性を付与し、降り投げるように唱える。

「"ダークワールウィンド!!"」

ごっ、っと闇の風圧がレラカムイを押しやった。
闇の付与を貰ったカナトは、それに追い打ちをいれるため、レラカムイの額へ一撃。ようやく手応えを得た。
更にマーキッシュが、“神速斬り”から“ジリオンブレイド”に繋げ、“居合い”とそれを繰り返す。
ジンは出遅れたが、光砲・エンジェルハイロゥのスコープを覗き、照準をあわせた。
しかし、レラカムイは2人から受けたダメージを蓄え、それを一気に吐き出す。

ダメージチャージだ。
低い爆音に二人が吹っ飛ばされ、床へとたたきつけられる。
二人が、敵から離れた直後、ジンが引き金を引いた。

「“ミラージュ!!”」

爆音。
弾丸が分散し、全てが着弾。そして、

「フレア!!」

爆散。
直後レラカムイは、まるで霧散するように風に解け、消滅した。



「いやはや、本日はありがとうございました」
「此方こそ、ご迷惑をおかけしました」

客のいない黒蜥蜴のテーブルに座り、2人は並べられた料理を頂いていた。
店長のザークシーズも一緒に座り、狩の後の座談会ともいえるだろう。
ジンの横には、頭に包帯と頬に四角の絆創膏を貼るカナトがおり、“ダメージチャージ”の被弾を物語っている。
直撃を食らったカナトとマーキッシュではあったが、ジンが呼び出した治安維持部隊の大尉セオにより、簡単な応急処置と怪我の対処だけしてもらった。
マーキッシュは魔法の治癒も受けたが、“リザレクション”で目を覚ましたカナトは、頑なに魔法を拒み、仕方なく手当てだけをしてもらって黒蜥蜴まで戻ってきた。
大量発生していたホブニキキリも、道中でセオが全て殲滅したらしく、五人は安全にダンジョンを抜けて出てきた。

「一瞬ヒヤリとはしましたが、とどめをさせてよかった」
「俺だって、やればできるでしょ!」
「えぇ、かっこよかったですよ。ジン君」
「へへ、フォレンちゃん。おかわり!」
「はーい。カナトさんは?」

「私はもうかまいません。とても美味しい……ありがとうございます」
「えへへ、カナトさんに言われると嬉しいなぁ」

「俺も俺も! フォレンちゃんの食べたい!」
「なら、カナトさんのための分持ってきますね」

奥へと向うフォレンの後ろ姿もかわいい。
目の前のごはんものを、食べていると、向かいに座るザークシーズが、またこちらをじっと見ている事に気づいた。

「なんすか?」
「いえ、人は見かけに寄らないと思っただけです」
「なにが……?」

「ゼンマイの煮付け持ってきたよ!」
「おっ、これフォレンちゃん作ったやつ?」
「そうそう。結構うまくできたんだ」
「へぇー、うちの幼馴染とは大違い、というか、料理できる女の子っていいなぁ……」

ジンがそう言った直後。
目の前のザークシーズが目を見開いているのがわかった。
またフォレンも、こちらをみてキョトンとしている?

「ジン君、君気づいてないの?」
「へ? なにがっすか?」

「やだなぁ、私、男ですよ!」

今フォレンは、何を言ったのか。

「フォレン“ちゃん”とは言ってますが、彼は正真正銘の男性です」
「は? え……」

恐る恐るカナトをみると、彼はジト目で、此方をみていて言葉もない。

「私も、最初は気づかなかったが、触れても平気だったのでまさかとは……」

言われれば確かに、落とし穴を降りる時に触れていた。
あまりにもさりげなくてまともにみていなかったが、

「カナトさんなら、一緒にお風呂はいっていいかなぁ……」
「……遠慮致します」
「残念」

「それよりジン君。大丈夫? さっきからだまってるけど……」
「放置してください。そのうち喚きます」

「そんなんねぇよぉお!!」

傷心したジンがっかりした様子で机につっぷしてしまい、ザークシーズはそっとジンの頭を撫でた。
よく見れば目に涙がにじんでいる、あれだけ一生懸命だったなら仕方ないか。
その後、夕食を黒蜥蜴で済ませた二人は、星が輝く夜空の元で帰宅する。


END



*GEST
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エミル・ダークストーカーのザークシーズ

年齢:17歳
身長:168cm

生い立ち・性格
極度の近視。メガネがなければ前が見えないほどに視力が悪い。
ひょんなことから、マーキッシュと運命的な出会いをして、現在の料理店“黒蜥蜴”の店長をしている。
アルバイトのフォレンを雇ってからは店が一層賑やかになり、フォレンに恋をするマーキッシュを見守ってる。
かなりの虫嫌いで、軟体物もだめ。




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イクスドミニオン・グラディエイターのマーキッシュ

年齢:22前後
身長:170程度
誕生日:7月20日

生い立ち
ネコマタと共にソロ人生を過ごしてきた元剣士。
強さを求めて生きてきたが、ザークシーズに孤独な本質を見抜かれ店のシェフにされる。
その時にフォレンと出会い一目ぼれをした。




jk_foren_130405


エミル・マーチャントのフォレン

年齢:15歳
身長:150cm

生い立ち
”黒蜥蜴”のアルバイト、ウェイター。
ザークシーズが求人募集していたところに現れた。
非戦闘員だが、それなりの力もあるマーチャント。体力もあるらしい
身なりはどう見ても女性だが、実は正真正銘の男性。
web拍手 by FC2
本編 | 【2013-04-11(Thu) 12:30:00】 | Trackback(-) | Comments:(2)
コメント

ジン君ざまぁwwwwwww
2013-04-12 金 15:59:10 | URL | 結城 #- [ 編集]
ご褒美です/// ありがとうございます!!!
2013-04-12 金 16:03:15 | URL | 詠羅 #- [ 編集]
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