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(C) BROCCOLI/ GungHo Online Entertainment,Inc./ HEADLOCK Inc.

セオさんのイリスカードの話(後編)
出演:セオさん、ヴィネーラさん、ホライゾンさん

ロケ地:東アクロニア海岸

あらすじ
ジンの食事の誘いを受けたセオ。その日もいつも通りに業務を行っていたが、東アクロニア海岸にてモンスターが暴れているという報告を受ける。
すぐさま、ランカーのリカルドを呼び出し戦闘にはいるが……。

前回:セオさんのイリスカードの話(前編)


 
次の日。元宮を訪れたジンは、迷わずセオの居る資料室へと向かう。
昨日は手間取ったが、今日は迷わず認証しセオの元へきた。

「おや、ジンさん。おはようございます」
「ど、どうも。おはようございます……」
「なにか御用ですか? ガイダンスは昨日で終わりですが」
「えっと……、昨日使ってもらったカードが、高価なもんって分かったんで……」
「……あれですか、いちいち調べるとは貴方も意外と律儀ですね。気にされないでください」
「もしかして、私物だったんじゃ?」
「私物といえば私物ですね。始めての褒章で購入したチョーカーより、抽出したものです」
「な、なんかすいません……」
「走らせたのは私ですよ?」
「そうっすけど、なんつーか。申し訳ないというか……」
「ほう、ならどうしようと?」
「あの、よかったらうちに飯くいにでもどうっすか? 相方もあってみたいって言うんで……」
「それは、嬉しいお誘いですね。カナトさんの入れ知恵ですか?」

ばれていた。

「いいでしょう。いつですか?」
「今夜か明日の夜ぐらいでも」
「なら、今夜伺いましょう」
「何時ぐらいになります?」
「終わるのは18時ですが、19時ぐらいにしていただけると嬉しいです」
「了解っす! じゃあ19時に元宮前に」
「はい。楽しみにしています」

嬉しそうに笑うセオを、ジンは初めて見た。
資料室をでて、すぐに自宅へもどり、カナトへ報告する。

「よかったじゃないか」
「なんか、すっげぇ嬉しそうにしてたぜ大尉。さんきゅ、カナト」
「俺は助言をしただけだ。月光花さんは?」
「後で、メールしとくさ。埋め合わせはする」
「ならいい……」
「でも、どうすっかなぁ……何作りゃいいだろう……」
「貴様が作るのか?」
「え"」

カナトが作る気満々だったらしい。ジンより上手いのは確かなので、安心感はあるが自分の上司なのに任せていいものかと思う。
急遽決まった来客に、二人は準備をする為、買い物へ向う事にした。

一方、セオは、いつも通り治安維持部隊の新規加入者のリストに目を通していたが、その中の色の違う書類を抜き取る。
小さなメモ書きも挟まっており、セオはそれをみて吐息。ホークアイの職服を纏う写真へ目を通していた。
すると、脇に置いていた"ナビゲーションデバイス"が振動し、セオは迷わず通信にでる。

「はい、治安維持部隊アストラリスト、大尉セオです」
「"セオぉ~、助けてぇ~"」

気の抜けた声に、ため息がでた。
馴染みの相手は、治安維持部隊最高管理者、総隊長、キリヤナギ。

「なにか御用ですか? 総隊長、ペット探しなら――」
「"すももはここに居るよ!? ――ってそんな場合じゃないんだ。ウテナ海岸で冒険者がモンスタービックリ箱で遊んでたみたいで……"」
「……!」
「”エンシェントメタルデーモン”が、海岸で暴れて大変な事になってるみたいなんだ。今すぐ向かえない?"」
「私より、最近加入された新しい騎士殿に頼めばいいのでは?」
「"ぇえ!? セオのいじわる! グランジはまだ入ったばっかりで、言う事きいてくれないんだよ……"」
「言う事を聞かないような人間を加入させる隊長がどこに居ますか……」
「"ご、ごめんなさい……"」
「全く……上位のイリスカードの使用許可と、聖堂からの応援を頂けますか?」
「"いいよっ、僕が直接電話しとく!"」
「それは聖堂ですか? カードラボですか?」
「"りょ、両方だよ!! 当たり前じゃないか!!"」

説得力がなさすぎる。

「"報告によると、エンシェントメタルデーモンは闇属性みたいなんだ。呼んでくれたら僕も――"」
「貴方の手を煩わせる事も有りません。力があるといえど、貴方が闇を相手にするのは危険が伴う……大人しくしておいてください」
「"……悪いね。セオ、頼んだ"」
「仰せのままに、王キリヤナギ」

通信を切り嘆息する。
バラバラになっていた書類を再びまとめ直した彼は、足元の宝杖・レッドルナ持ち、資料室を出る。
途中エレベーターからカードを持ったカインロストと遭遇し、セオはその束を受け取った。

「おもに魔力強化と、シールド系のカードを集めました。存分に使ってください」
「出来れば使用したくありませんが……感謝します。カイト」
「お気をつけて」

ふっと笑みをこぼし、セオがエレベーターへと乗る。
デバイスの時刻は17時。19時までには片付けて戻りたいと思う。
その後セオは、フレンドリストからリカルドの番号を呼び出し、彼へ呼び出しの連絡をいれた。

「リカルドさん、今どこに?」
「”討伐が終わった帰りで、アクロポリスに戻った。……どうした?”」
「東アクロニア海岸で、エンシェントメタルデーモンが暴れています。緊急で隊もだせず、人がいないので、来て頂けませんか?」
「”わかった。……どこへ向かえばいい?”」
「ありがとうございます。白の聖堂へ、そこでカーディナルさんと落ち合いましょう」

そういって通信を切った。
セオはそのまま聖堂へと向かい、入口付近で待っていたリカルドと合流する。

聖堂の受け付けから、カーディナルを呼び出してもらうと、奥から白いドミニオンの翼をもつ女性が現れ
三枚羽の彼女は、長い横髪をリボンでまとめ、赤い修道服のようなワンピースをまとっている。
髪をさらりと掬い、スカートの裾をつまんで御辞儀をした。

「始めまして、イクスドミニオン・カーディナルのヴィネーラです」
「始めまして、治安維持部隊、大尉。エミル・アストラリストのセオです。こちらは急遽同伴して頂く、イクスドミニオン・ガーディアンのリカルド」
「本日は、総隊長より仰せつかりました。よろしくお願いします」
「指名ですか?」
「いえ、なんでも癒し系カーディナルと仰ったらしく、私が」
「癒し系……ですか?」
「はい。治癒はお任せください」

花の様な笑顔をみせる彼女は、右手に杖を持ち、腰に小さな楽器も携えている。
両道とは確かに貴重な人材だ。

「ならヴィネーラさん。急いでパーティ登録を、現場へ急ぎます」

セオの掛け声で、三人は急いでウテナ海岸へと向かった。
高い段差があるこの場所は、初心者向けのダンジョン、大陸の洞窟があり、経験の浅い冒険者の練習場となっている。
が、今日のこの場所は、物々しい雰囲気が立ち込めて居た。
周辺の林にはエンシェントメタルデーモンにやられたのか、一般の冒険者達が数名倒れており、ヴィネーラが急いで治癒に向かう。
野次馬も徐々に増えてはいるが、安易に突っ込んでも勝てる相手ではない。
セオは野次馬に手を出さないよう呼びかけると、腰の伸縮機能をもった杖、宝杖・レッドルナを取り出した。

獲物を失ったエンシェントメタルデーモンは、まるで偵察するように海岸を歩いている。
治癒を終えたヴィネーラがセオの後ろへ並び、リカルドも横で武器を取り出した。

「ヴィネーラさん。支援を」
「ヴィネで構いません。セオさん」
「分かりました。ヴィネさん。……長期戦は覚悟してください。……行きましょう」

セオが言い切り、リカルドが地面を蹴った。
風のように突っ切り、その片手間で魔法を唱える。
青い光から三人へ付与されたのは、"ディフェンス・コミュニオン"。分厚い魔法のシールドが纏われ、更に後ろから金のヴェール"マジックディフェンス・コミュニオン"が展開された。
また、二人の武器にも"ホーリーウェポン"も唱えられ、リカルドが”スパイラルスピア”に敵を巻き込む。
セオはそれを見て、スペシャルアビリティ"アストラリスト"から、魔法を唱えた。

「"エレメントメモリー!!"」

追尾性能を持った球体が、弧を描いて敵へと向かっていく。
数回の爆発音とともに、光の粒が霧散した。

ヴィネーラはそれをみて、リカルドとセオに”ラウズボディ”と”ラウズメンタル”を付与。
リカルドもまた、光属性の宿った武器を振るい”スパイラルスピア”から”スピアサイクロン”へとつなげる。
その中で、”エレメントメモリー”の火力に不十分さを感じたセオは、懐から一枚のカードを取り出し、それを弾いて砕いた。

「イリス・インビシブルフォース!!!」

パキンッ、とカードが粉砕。
淡い光がセオの心へと宿り、さらに魔力が強化される。
その直後から、海岸全体にひんやりとした空気が流れだし、野次馬は思わず身をすくめた。

セオが一歩前へ出た直後、ビシビシと周りの空気が凍っていく。
駆動部分に氷が張りつき、エンシェントメタルデーモンの動きが鈍くなった。

「”フロスティゲイル”」

鈍い音が響き。敵の各部から氷が生えた。
結晶化するように凍てつき、徐々に敵を覆い尽くしていく。
停止しかける敵へ、リカルドがさらに攻撃。”スピアサイクロン”を敵の翼へ突き立てた。
凍りついた翼に大穴があき、機械独特の破砕音と、いまだ駆動しようと軋む音が聞こえる。

そのまま動きが止まるかに見えたが、敵の後ろから立ち上がる蒸気に、セオが苦い表情を浮かべた。
発熱で内部から氷が解かされている。
ならばと、セオがさらに杖を振り回し、今度は風の魔法を唱えた。

周りに集まる風の動きに、リカルドがとっさに後退。
セオはそのタイミングを見計らって、叫ぶ。

「“チェインライトニング!!”」

摩擦により発生した雷が糸のように、走る。
一瞬でまとわりついたかと思うと、解かされた水に通電。
まるで痙攣するように、エンシェントメタルデーモンが感電した。
ボシュンと、駆動部から煙が上がる。

「”エレメントメモリー!!”」

敵の関節、そしてリカルドにより開けられた穴へ、追撃を加えるよう放つ。
闇属性をもつエンシェントメタルデーモンだが、闇を持つ以前に機械だ。ならその基盤部分に狙いを定めればいい。

リカルドは一度後退した後すぐさま跳躍し、今度は反対側の翼付け根部分へと槍を突き立てた。
強度から切断までには至らなかったが、中の導線が垣間見え、リカルドがそれを切断。敵の右翼を稼働不能にした。
再び周りの空気が冷える。
エンシェントメタルデーモンの発熱と冷たい空気で、周りはひどい湿気に包まれていた。
だが、発熱が仇になることを敵は知らない。
セオの顔に笑みが浮かび、リカルドはそれを見て敵の表面に付着する白いものにはっとした。
塩だ。
ここは海岸。
海水が再び溶かされて蒸発したなら、残るのは塩分だ。塩は金属の著しく腐食させる。
また基盤に張り付いた塩の結晶も、信号の伝達速度を低下させ、敵はズシンと砂浜へと倒れこんだ。
突然の出来事にヴィネーラとリカルドは思わず唖然とする。

「これで暫くは動けないでしょう。回収のために応援を――」

そういって、"ナビゲーションデバイス"を取り出した直後。
倒れこんだエンシェントメタルデーモンの額が淡く光る。
闇の魔力が溢れ出し、破損した部分が再び動き出した。
リカルドがとっさにセオの前に出る。
闇の魔力を纏い再び動き出した敵は、くちばしの形状をした砲塔を構え、エネルギーを集約。
放った。
リカルドは反射的に天槍・リンドブルムで防御姿勢をしつつ、ガーディアンの力で魔法壁を築く。
数秒間拡散されたが、爆発。二人は後方へと吹っ飛ばされた。

「リカルドさん! セオさん!!」

ヴィネーラが咄嗟に後退しようとしたが、途端向かって来た敵に思わず足がとまる。
目の前へ現れたエンシェントメタルデーモンへ、ヴィネーラは杖を掲げたが、遅い。
後部から開かれた砲塔より、数多のミサイルが発射。防御する暇もなくヴィネーラの足元へ直撃。
砂を巻き上げ、爆発がおこった。

思わず言葉を失う。
爆風に吹っ飛ばされた彼女は、砂浜へ叩きつけられ、気を失ってしまったようだ。
唖然としているセオを、リカルドが肩を持って後退させる。
またヴィネーラも担ぎ、リカルドは海岸の林へと二人を運んだ。
全員が射程外へでた為、エンシェントメタルデーモンはターゲットを失い、まるで暴走する様にミサイルやレーザーを放ちつづける。
三人は一度林へと後退し、気絶してしまったヴィネーラを安全な場所へ寝かせた。

「大丈夫です。怪我はありません。爆発に驚いたのでしょう……」
「セオは?」
「……私も平気です」
「……左腕、血が出てる」

指摘されて、思わず傷を隠した。
砂浜に打ち上げられていたガラスか、浅く切ってしまったらしい。
セオは気にする様子もなく、イリスカードをヴィネーラに持たせ弾いた。

「真心の絆です、これで暫くすれば目を覚ますでしょう……」
「セオの分は?」
「一枚しかありませんでした。彼女が回復すれば、怪我もなおしてくれます。それまでは……」

二人で食い止めるしかない。
このまま放置しておけば、更なる二次被害の可能性も否めないばかりか、自分達が居なくなれば野次馬が手を出す可能性もある。離れる訳にはいかない。
セオは、砂に汚れたナビゲーションデバイスを取り出し、本部へ応答要請を行うと、ポケットのハンカチを使ってリカルドに止血してもらった。

「味方が来るまで抑えましょう。野次馬に手を出されても困ります」
「……俺一人で―――」
「すこし切っただけ……平気です」

幸い砂浜は柔らかく、左腕を除けば軽い打撲程度だ。暫くすれば痛みも引くだろう。

敵は先ほどとは変わり、まるで何かに操られるように浮遊している。
それも切断した筈の駆動部分が宙ぶらりんとなり破壊されたことすらまるで気付いてはいないようだ。
もし中にモンスターがいるなら、魔法は通りづらいだろう。

セオは予備で持ってきた光のコロンを、ウェストポーチから取り出し、シールドを発生させるカードも含めてリカルドへと投げる。

「これで繋いでください」

受け取ったリカルドは、それを何も言わずセオへと投げ返す。

「いらない。そんなものに頼らなくとも倒せる」

似たような言葉を先日聞いた気がする。
走馬灯のように走った彼は今いない。が、リカルドもランカーだ、彼がそうしたいなら、セオも反論はできない。
それに彼ほどのガーディアンなら、実力も信頼ができる。
投げ返されたカードを懐へ戻し、杖をもって立ち上がった。

「わかりました。行きましょう」

二人が立ち上がり、再びエンシェントメタルデーモンへと向かっていく。
リカルドも再び”コミュニオン”を唱え、暴走する敵へ突っ込んだ。
しかし、飛んでくるミサイルが追尾性能を持ち、交わして床に着弾。砂を巻き上げ視界が遮られる。
セオはそんな状況から、”アースオーラ”を唱え、砂が巻き上がった場所へと”アクアストーム”と詠唱。
視界はクリアされたが、再びエネルギーをチャージしており、すぐさま横へ飛んで交わす。
放たれた光線は、砂浜を一直線に凪いで、真っ黒な焼け跡を作った。
それにひるまず、セオは大声で叫ぶ。

「結集せよ、根源たる元素!降り注げ、断罪の流星雨!" エレメンタルレイン!!"」

空が割れた。
巨大な属性の球体が天空より構築され、質量をもって敵へと襲い掛かる。
直撃するかに見えたが、降り注いだエネルギーは、エンシェントメタルデーモンに吸収され、まるで利いた気配がない。
セオは仕方なく、光のコロンを武器に吹きかけ、その力を魔法へと転化させた。

「”エレメントメモリー!!”」

闇の力を持つためか、着弾と同時に破裂する。
手ごたえはあるが、やはり威力が足りない。
再びミサイルが発射されて、今度はセオへと向かって行く。
彼は即座に、”ファイアーボール”を唱え、それを10個出現させると、向かってくるミサイルに向けて撃ちだし、相殺。
空中で破裂したが、爆風にまかれて再び視界がなくなる。
その隙間をかいくぐり、狙いきれなかったミサイルの一つが、そのままセオへと向かっていった。
とっさにポケットのイリスカードを取り出し弾く。

「イリス・スティグマータ!!」

イリスカードを中心に防御壁が展開。
ミサイルを受け止めたが、爆発。セオが再び砂浜へと倒された。

悔しい。
魔法の連続使用へ疲弊するなかで、立ち上がる気力すらも徐々に削がれてきていた。
それでも、勝たなければ行けない。
ここで負けたらもっと傷ついてしまう人がいる。そう考えた時点で、セオは諦めることをやめた。
しかし、起き上がろうと体を起こした時、敵のくちばしが此方へと向いていることに気付く。

「……!」

ゆっくりと集約されていくエネルギー。
射程は目視で7m。十分此方まで届く距離だ。
その砲塔が倒れこむセオの方へと向き、じっと狙いを定めている。

「セオ!!」

リカルドの声が聞こえる。だが、動けない。
魔法が通らず、何もできないことの無力さに支配され、セオは一人強くなる光をじっと見ていた。
何が起こるのだろうかと、冷静に思ったその時。

突然。敵の砲塔が粉砕。
行き場を失ったエネルギーが、エンシェントメタルデーモンの内部で爆発した。

何が起こったのか理解できず、呆然としていると、上から落ちる影にはっとする。
4枚の黒羽。赤い剣を片手に、空中で一回転したアークタイタニア。
彼ら降下の勢いを利用して、光属性をもつ剣を敵へと叩きつける。

「ジョーカー!!」

黒い光が敵を飲み込み。ガコンと砂浜へ叩きつけられた。
アークタイタニアが再び空中へと戻り。影が来た方向へ視線を向けると、そこには光砲・エンジェルハイロゥのスコープを除く一人のエミルがいる。
お馴染みの彼は、イリスカードを取り出すと、それを指先で砕いた。

「イリス・ロングレンジバースト!!」

距離は300m以上あるが、いける。

「”クロスクレスト!!”」

連続的に発射されたのは銀弾。
十字を形作ったそれは、全弾命中し敵の図体を海側へと押しやった。
彼は、それをみてガッツポーズを見せると、更に後ろから、何十名ものホークアイの職服をまとう人間が現れ、一斉にライフルを構えた。
リカルドはそれに反応し、上のアークタイタニアをみたあと、座り込んだセオを引っ張って後退させる。

「ジンくん。ありがとう、下がっていいよ」
「ホライゾン大佐。了解っす! ”カナトー、撤退”」

カナトと呼ばれたアークタイタニアも大きく旋回してこちらに戻ってくる。
後ろへと下がったセオとリカルドは、ホークアイの小隊の後ろへと下がり、待機していたウァテス系の彼らから応急手当を受けた。

「終わらせよう……総員、一斉射撃用意!!」

ホライゾンと呼ばれた彼が、右手を挙げた直後。
数十名のホークアイが同時にライフル、ラスト・キッスを構える。
標的を失ったエンシェントメタルデーモンは、周りへとミサイルをまき散らし、土埃を上げていた。
アークタイタニア・ガーディアンのホライゾンは、土埃が晴れるタイミングを見計らい、振り上げた手を振り下ろす。

「斉射!!」

ドドドド、とライフルの発射音が響く。
一斉に発射され、全弾が敵へと命中。敵の胴体をえぐりこんだ。
めり込んだ銀弾は、内部基盤にまで到達したが、それでも動きは止まらず、ゆっくりと体を起こし始める。
そんな状況に、ホライゾンは苦い顔を浮かべたが、戻ってきたセオを見て朗らかな笑みを見せた。

「ホライゾン大佐! 何故!」
「や、セオ君。よく頑張ったね」
「どうして、あなたが……」
「ちょっと、どうしても出てこないといけない事があってさ……」
「ど、どうしても……?」

セオが首をかしげた時、後ろを通り過ぎる気配にハッと顔を上げた。
白い職服をまとい、センチネルシールドを左手に持つ、長身のエミル。
目立つイヤリングをつける彼は、ホークアイの小隊を、歩いて通り過ぎると、一人で敵へと歩いていく。
人払いがされて誰もいない海岸を、ゆっくり堂々と歩く彼は、その場にいる野次馬達の注目の的になっていた。

いまだ動きの止まらないエンシェントメタルデーモン。
敵はある程度近づいてきたエミルに、破損した砲塔を向けて、発射。
向かってきたエネルギーを、エミル・ガーディアンのキリヤナギは、血剣・ダインスレイブを抜き、ぶった切った。
途端。方向を見失った光線が二分され、丘に直撃。
爆発を起こす。

そんな状況に振り向きもせず、キリヤナギは敵の数歩手前でようやく止まり、巨大な敵を見上げる。

「ミサイルは、使い果たしたのか……」

再びエネルギーを集めようと大きくばたつく、キリヤナギはその砲塔へ向けて血剣・ダインスレイブを突き立てた。
途端、闇の魔法陣が彼の足元へと展開する。

「モンスターと合一化された機械……かな? 基盤を壊されても動き続ける兵器……僕と同じだね」

ぼやかれた言葉は、”ナビゲーションデバイス”を通じて、すべての隊員へ聞こえていた。
誰もしゃべらず、ただキリヤナギの声だけが通信に響く。

「すこし、力を貸してくれ、……”ティー”」

その言葉と同時にキリヤナギが首のチョーカーを外れた。
途端、キリヤナギの体から邪悪な魔力が溢れ、彼の全身を包み込む。
そして、まるで背負うように、青黒いサラマンダーが現れた。

「『どうするの……?』」
「取り込む、できる?」
「『できる』」
「ありがとう」

直後。エンシェントメタルデーモンを覆っていた闇の力が、どんどんおさまり、血剣・ダインスレイブを通じてキリヤナギへと移っていく。
また、まるで悲鳴のような叫び声も響き、周りの野次馬達の血の気が一斉に引いた。

しかしその叫び声も数秒で収まり、エンシェントメタルデーモンが停止。
ガシャンと粉砕して、機械の残骸がその場へと残った。
またキリヤナギも、闇の魔力が収まり、支えを失ったように膝をついてしまう。

「いけない、総隊長!」

ホライゾンが大急ぎでキリヤナギの元へ。
膝をついてしまった彼は、ホライゾンに呼びかけられ、ゆっくりと目を開けた。

「大丈夫ですか」
「……ホライゾン」
「……とにかく、一度本部へ戻りましょう」
「ごめん。……ありがとう」

ホライゾンに支えられ、立ち上がったキリヤナギ。
砂浜に落ちたチョーカーも付け直され彼は自分の足であるく。
また、エンシェントメタルデーモンの残骸を処理するために隊員たちは続々とキリヤナギの元へと集まってきた。

「総隊長!!」

ぎくっと、キリヤナギの体が震える。
恐る恐る振り返ると、泥だらけになっているアストラリストの彼がこちらを睨んでいて、彼は冷や汗を流しながら笑った。

「あはは、きちゃった……」
「貴方という人は……」
「ごめん。でも、ありがとう……セオ」

その後セオは、ジンに肩を支えてもらいながらアクロポリスへともどる。
気を失ったヴィネーラは、応援に来たウァテス系に”リザレクション”をもらい、担架で運ばれる形で聖堂にも戻る。
リカルドは、コケトリスの卵を取って帰ると言い残し、再び海岸へ走って行ってしまった。
撤退までの様子を、一部始終見ていた影は、丘の上の人目につかないところへ座り、帰還する彼らを眺める。
その眼帯をつけたハイエミルは、銀の銃を腰にしまい、姿を消した。

聖堂で手当てをしてもらっている間にセオが話を聞くと、待ち合わせの1時間前から元宮前で待っていたジンが、応援要請を受けて出動するホライゾンと顔合わせし、カナトもつれて一緒に海岸へとやってきたらしい。

キリヤナギが居たのは、元々闇属性を相手にしにいったセオを心配しており、ホライゾンの胸に憑依してみにきた所、敵の状態が普通ではないとわかり、急遽憑依を解除。討伐へ参加したと言う事だった。

初めて目の当たりにしたキリヤナギの力に、ホライゾンとセオを除く一同は、何が起こったのか理解できなかったが、響いた悲鳴の恐怖に、隊員たちは事実確認をもすることができず、ただいつも通りの業務を終えて、一日を終えた。
そうして一連の処理を終えた後、セオはカナトの自宅へと案内されたのだが、夕食が始まった段階で、彼らは何も話さない。
セオの顔を始めてみたカナトは、自己紹介と簡単な挨拶を述べただけで、何もしゃべろうとはせず、またジンも、無言の二人へ何も言えず、気まずい空気を感じながら、夕食を頂いていた。
なにか喋らなければいけないとおもうが、普段が普段なだけに何を話せばいいのか検討もつかない。
食事中を邪魔していいものか、むしろ食べ終わってからでもいいのではないか。

「ジン」
「へ、へい!?」
「すこしは落ち着いたらどうだ」

ばれていた。どういう状況なのだろうと思う。
ふと前をみると、セオの青い目がこちらを見ており、思わず身が強張った。

「あ、あの、大尉。今日は来てくれて、どうも……」
「こちらこそ、お誘いをありがとうございます」
「そ、その、何というか……」
「ふふ、すみませんね。とても美味しかったもので……」
「え……」

カナトが一礼する。
あまりにもおどけた言葉に、思わず意表をつかれた。

「ブリ大根ですか? つゆが染みていて美味しい……」
「光栄です。セオ殿も料理をされるのですか?」
「えぇ、趣味ですが自炊をしています」

あれ……? と、ジンが首をかしげた。
仲が悪いわけではないのだろうか。気がつけばジンをそっちのけにして会話が進んでいる。

「ジンさんも、料理は――」
「するっすよ!! 昼飯は大体俺が――」
「大体チャーハンだがな」

言い返せない。

「得意ではないのですか?」
「えっと、なんて言うかその……始めたの最近で……」

カナトに睨まれたので言い訳はやめた。
黙り込んでしまったジンをみて、セオがふっと笑みをこぼす。

「料理は、食べてもらうだけで嬉しいものです。だからこそ続けることができる……また今度、私の家にも遊びにきてください。歓迎しますよ」
「まじっすか!」
「カナトさんも、是非」
「私は……」

カナトの表情が曇り、セオが嘆息した。好意を受け取れない気持ちも、分からないわけではない。

「あなたの立場をとやかく言うほど、私も愚者ではありません。自由な世界ですから……」
「……」
「ただ、それに伴う危険へ対処する心構えを忘れなければ、それでいいと思います」
「!」
「わがままを通したいなら、わがままが通る人と一緒にいればいいことですしね」

きょとんとした。
視線を向けられたジンはどうしていいかわからず、カナトを見る。
よく分からないがそう言うことらしい。

「貴様の上司は、話が分かるお方のようだ」
「そう言っていただけて、光栄です」
「ど、どう言ういみっすか!?」

雲の上の会話のような気がする。
何から何まで理解ができず、思わず頭を抱えた。
しかしそれでも、いつもと違うやさしい態度に思わずほっとする。

「でも俺だって、わがまま言いたい時だってあるっすよ」
「ほう? どんな時ですか」
「えっと、その……パフェ、くってみてぇ……とか?」

……。

「パフェ? フルーツパフェとかのあれですか?」
「そうそう、なんて言うかやっぱ喫茶店とか頼みづらいじゃないっすか? 女の子の食べ物というか」
「つまりカナトさんに作って欲しいと?」
「ま、まぁ……」
「馬鹿が」

カナトの言葉にセオが思わず噴き出す。声をあげて笑いだすので、ジンは訳がわからない。
ずっと恥ずかしくて言えなかったのに酷い仕打ちだとおもった。

「本当に、仲が宜しいことで」

「まさか……」「そんなこと――」

更にツボに入ったらしい。
余計なところだけ息が合うのでうんざりする。

「そうですね。敬語も堅苦しいし、呼び捨てでもいいですよ」
「へ?」
「その変わり僕も、呼び捨てにさせてもらうけどね。ジン」
「お、おぅ、セオ……さん」

「ぎこちないな……」
「お前がいうなよ。カナ!!」

その後、散々笑われセオは夕食後に帰路へ付いた。
入れ違いで月光花が家に帰ってきて、彼女は、ジンの上司ならあって見たいと言い出したが、あの場に月光花が居たらもっと大変なことになってそうなので、ジンはあえて何も言わずに流した。

帰路へとついたセオは、一度本部へと戻り、先ほどカインロストに渡されたイリスカードをもう一度確認した。
任務において、用意されるカードの束には、必ず回復系のカードを三枚以上いれるよう指示が出るはずだ。
しかし今回は、一枚しか入っておらず、ひどく苦戦をしいられた。
どう言うことなのかわからない。カインロストも混入し損ねるとは思えない。
そう考え、セオは渡されたイリスカード一覧を確認すると、リストに間違いはなく、思わず首をかしげる。
唯カードの入れ間違えただけか?

「まさか……ね」

そう思いながら、セオは一人アクロポリスの自宅へともどった。





*GEST
jk_vine.jpg

イクスドミニオン・カーディナルのヴィネーラ

年齢:18歳
身長 160cm
誕生日 9月7日

性格・生い立ち
ドミニオンという種族を忘れさせてしまうレベルの、ふわふわ癒やし系ヒーラーさん。
元々は人探しという目的を持ってアクロニアへやって来たが、今は(そんな事も忘れて)奉仕活動に励んでいる。

Chara:セロさん ……むしゅめまじ天使

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本編 | 【2013-03-28(Thu) 12:30:00】 | Trackback(-) | Comments:(0)
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