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(C) BROCCOLI/ GungHo Online Entertainment,Inc./ HEADLOCK Inc.

ジンが特訓する話
出演:カルネオルさん。セオさん

ロケ地:ウテナ湖

前回:ジンの誕生日の話

あらすじ
町がハロウィンの雰囲気で盛り上がる中、銃剣:バレットセイバーを部隊総隊長から譲渡されたジン。
特殊な形状を持つその武器は、ジンの手に余るものでもあり使い方がわからなかった。
数日間奮闘し、使い方を探しても見つからず、あきらめて外出したところ、ランキング10thのカルネオルと出会う。


 

誰もが目を覚ます、朝八時。
普通の冒険者の持つ庭よりやや大きめの飛空庭。ここの庭で、一人武器を構える青年がいる。
治安維持部隊。ランキング5thのエミル・ガンナーのジンだ。
アクロポリスに本部を構える冒険者への抑止組織、治安維持部隊。
ギルド評議会の傘下へと属し、その立場は、全世界に散らばる冒険者たちの身を守るとともに、行動の制限を行うものだ。
元々は、アクロポリスを拠点とする小さなリングが、騎士団の目の届かない陰湿な事件の解決に乗り出したのが始まりで、部隊と言う小規模な名称もそこからきているのだが、
人数がふえ戦力としての拡大を恐れた他国が、ギルド評議会の傘下へ引き込む事で、
彼らの行動の全てに制限を与え、自らの戦力にしようとした。

現在ではギルド元宮にて本部を構え、連盟へ加入する冒険者の抑止組織として従事している。
立場としてはあくまで、ギルド評議会の傘下であり、加害者の捕縛は、騎士団の仕事となるが、
調査段階から大胆な行動も取れる上、騎士団が捕縛する事で、騎士団の手柄となるため、人を使いたくない時に使われる。
所謂使いっ走りのような立ち位置だ。
しかし、何年か続ける上で手慣れてきたのか、最近では加害者の身柄を証拠と共に引き渡す事が、定例となっている。

そうした集まりとあるだけに、加入する彼らもやはり自由だ。
日々の訓練は任意だし、ノルマさえ達成すれば、何をしてもいい。
実力主義ではあるが、総隊長があんまりな人物なので、堅苦しさを感じる人間の方が珍しかった。

ジンを除いては……。

そんな組織に所属するジンは、黒い三角形のフォルムを持つ、一丁の銃を握りしめていた。
銃と言えるものでもあり、剣とも言える。いわゆる銃剣。
バレットセイバー。部隊隊長より譲渡されたため、数日かけて、使い勝手を試しているのだが、
言われた突きによる接射をためしても、どこかピンと来ない。
それも刀身がグリップからまっすぐではなく、90度の角度のついた位置あることから、突くと手首へ負担がかかる。
ガンナーにとって、手首は重要だ。
射撃による爆発の反動を受けなければいけない為、怪我をすると握ることもできなくなってしまう。
安易な考えで負担をかける使い方は出来ない。

そんな事を考え、ジンは目の前の八つ当たりカカシへ、バレットセイバーを突き刺した。
何かが違う。そもそもブレード部分が薄くできており、突き刺す形状でもない。
ジンは目の前の八つ当たりカカシとバレットセイバーの刀身を交互に見直し、一つの考えへ辿りついた。

切ってみるか……?
下手をすれば、ブレード部分が刃こぼれをするのでやりたくはない。
でもそれでも、それ以外のことは大方試した。
うってもみたし、突いてもみたし、殴るのは壊したくないのでやっていない。
斬ることも、眼中になかった。

すっと息を整え、ジンが数歩下がる。
”コンセントレート”を唱え、目の前のカカシを睨むと、芝生を蹴ってブレードを振り下ろした。
止まると思っていたが、間違いだった。
ブレードは八つ当たりカカシの肩部分から斜め左下に滑り、左棒を切断。
その勢いがあまり、ジンは芝生へ引っくり返った。

言葉が出ない。
振り返れば左腕の棒が切断されたカカシと、手元には輝きを失わないバレットセイバーがある。

「マジかよ……」

思わず声に出る。銃剣で斬るなど、聞いたことがない。
でもそれを安易にやらせた武器が、手元にある。
ジンは立ち上がり筒へ弾丸を装填すると、残った下部の案山子を打ち、倒した。

「うるさい……」

上から聞こえた声。
見上げると窓からこちらを見下ろす茶髪のタイタニア。
アークタイタニア・ジョーカーのカナトだ。
あれっと思い、ふと時計をみるとまだ朝の八時過ぎ、
いつも昼頃まで眠っているのに、珍しい事もあるなと思ったが、
音が止んだことで落ち着き、部屋に戻るカナトへ叫ぶ。

「おい! 寝んな馬鹿!」

武器を投げ出し、大急ぎで自宅へと飛び込んだ。
二度寝されてしまえば、せっかく起きたのに意味がない。体質を治すチャンスだ。
部屋へ飛び込むと、枕とは逆方向へ体を倒しているカナトがいる。
無理やり部屋から引っ張り出して、ジンはリビングの椅子へ座らせた。

「起きられたじゃねーか!」

酷く眠そうだが、意識はあるらしい。うつろな目でコーヒーを受け取る。
ちびちびと口を付けだし、ジンはその間に庭へ投げ出した武器の回収に向かった。
烈神銃・サラマンドラ二丁と、光砲・エンジェルハイロゥ、アクセサリーの装着可能なオートマチック。
最後が青く黒光りする、バレットセイバーだ。
すべて持ち運ぶことはできない為、サラマンドラ二丁とオートマチックは今まで通り携帯し、
バレットセイバーと光砲・エンジェルハイロゥとの切り替えになるだろう。
バレットセイバーの方は、カナトがいる限り使うことはなさそうにも思えるが、
遠距離をメインとするジンへ、総隊長が、態々これを渡した理由が分からない。
ランク5thのジンでも、すでに六丁も武器を渡されているのだ。
それなのに、総隊長がさらにもう一丁を安易な考えで渡すとは考えづらい。
何か理由があるのか……。

そんな不安を覚え、ジンが全ての銃をホルスターへと戻し自宅へと戻る。
そろそろカナトも目を覚ましているだろうと思ったが、
頬杖をついたまま動かない後ろ姿にぎょっとする。
恐る恐る前に回ると、コーヒーを飲み干せず座ったまま寝ているカナトが居た。
やっぱりこの時間はまだ無理か……。
半ば諦めの境地でジンは、カナトをソファーへ寝かせて毛布をかけて置く。
ベッドより寝心地が悪いし、これで早めに起きてくれればいいと思う。

カナトが起きないので、ジンは一人でダウンタウンへ実包を買いに行くことにした。
何でも屋の親父へと炸裂弾の発注を頼み、散々ぼったくられた後、ガッカリした気分で帰路に入る。
久しぶりにナンパでもして帰るかとも思ったが、南可動橋を渡り、平原へと向かう小さな少年にふと顔をあげた。
黒髪に、ちいさな王冠を載せる少年。
一瞬ランキング10thの彼かとおもったが、すれ違うように、
黒いマントとかぼちゃマスクを被った少女がアクロポリスへと入って行き、意識をそっちに持って行かれた。
そう言えばハロウィンが近い、公式イベントそのものは当日がくる前に終わってしまうが、ギルド評議会が主催しているとも聞いた。
はっきり言って、お化けなんてものを信じてはいないし興味もないが、
ハロウィン衣装をまとう女性なら見て見たい気もする。
カナトが起きるまで時間もあるし、イベントに乗じて声をかけて見るのもありか……。

「あれ、ジンさんじゃないですか!」
「うわぁあ!!」

考え事をしていて、思わず声をあげた。
黒いマントを着てかぼちゃマスクをしている白羽のタイタニア、一瞬モンスターかと思い、銃を抜きかけた。

「トリック オア トリート!!」
「え、ちょ、だれ!?」

思わず尻餅をつく。ズラされたマスクから出てきたのは黒髪の少年。
ギルドランク10thアークタイタニア・グラディエイターのカルネオル。
最年少でランカー入りした天才少年だ。

「お菓子くれないとイタズラしちゃいますよ!」
「えっとぉ……カルネ君?」
「あ、お菓子ないんですねっ、いいんですね!?」
「へ!?」

ふっとカルネオルの姿が消えた。
何が始まるかと思ったが、突如、ジンの周りに火花が散り、強制的にマリオネットへ姿が変わる。

「ちょ!? インスマウス……」
「へへ、まだいきますよー!」

カルネオルはどうやらジンのジャケットへ憑依したらしい、途端発動したのは、流星キラキラ。
この時点で周りの視線はインスマウスに釘付けだ。

「トドメで、でかでかカード!!」
「うわぁぁぁ!!」

通常サイズの四倍までその体が膨れ上がる。
視界が広がったのはいいが、ただでさえ人通りの多い場所でやられ、
全ての冒険者の視線がこちらへと注がれた。
ジンはインスマウスのまま、大急ぎで平原まで駆け出し、脇の募集広場まできて止まる。
インスマウス状態は三分程で解除されたが、でかでかの効果は消えず、人気のない平原のすみで、ジンは座り込んでしまう。
それを見てカルネオルは憑依を解除し、うずくまるジンを見上げた。
憑依され、不思議なマッチを連発された挙句、超でかでかカードとは……。嫌がらせの極みだ。

「イタズラ完了です!」
「カルネ君って……意外と容赦ないっすね」

こんな状態で南可動橋に戻りたくはない……。
カルネオルは背中の翼を使い、ジンを観察するように周りを飛んだ。
普段小さなカルネオルがもっと小さく見える。

「お菓子持ってないからですよ!」
「あ、はい。すいません……」
「ふふ、何をされてたんですか?」
「ダウンタウンに実包を買いにいってたんだ。その帰り」
「本部のほうが安く売ってたと思いますけど、そっちでは買われないのですか?」
「え"、本部はまぁ……個人的な事情で……」

首を傾げるカルネオル。この場合の言い訳は苦しい。
目の前にした少年は、首をかしげつつも、視界へ入ったプルルへ”神速切り”を入れる。
追求されないうちに別の話題に移そう。

「そういえば、カルネ君って短剣の使い方分かる?」
「短剣ですか? ソードマン時代に使っていましたよ」
「カタナとか、斬撃するタイプの短剣は?」
「? ……カタナと言うと、両手剣でしか聞いた事ないですが……」
「やっぱそうだよな……。前にもらったバレットセイバーの使い方が、どうしても分からなくて……、
カルネ君良かったら一緒に考えてくれないか? 俺、銃ぐらいしかわかんなくて、剣はさっぱり……」
「そう言うことならお任せください! 僕でよろしければいくらでも力になりますよ!」
「サンキュ。じゃあ一度家に……と言うか、でかでかが解除されるまで待っていい……か?」
「ジンさんって、意外とシャイなんですね!」

このサイズではアクロポリスの門もくぐれない。
効果時間の30分。ジンは平原の隅でたまたま遭遇した冒険者に驚かれたり、鼻で笑われたりと散々な気分だったが、
ようやく通常サイズに戻ったあと、カナトの居る自宅へと戻った。

帰宅すると、何時ぞやと同じく、寝ぼけ眼のカナトが居り、ジンはコーヒーと朝食と出した後、カルネオルの待つ庭へと出た。
バレットセイバーをみたカルネオルは、再び目を輝かせ、まじまじとそれを見つめる。

「前にも見ましたけど、やっぱり綺麗ですね」
「やっぱ、カルネ君もそう思う?」
「はいっ、刀身が宝石みたいです!」

ジンが手に取り、太陽へ翳すと陶磁器のような高貴な白が太陽の光を透過していた。
いい武器だと思うが、一体どうやって使うのか。

「あの、触ってみていいですか?」
「おぅ、カカシ出すし、試してくれ」

そうしてジンは、バレットセイバーをカルネオルに渡すと、八つ当たりカカシ10本セットを取り出し、五本召喚した。
現役時代、大量に持ち出した訓練用サンドバッグ。
本部に行けばいくらでも貰えるが、極力顔を出したくないので、持てるだけ持ち出した。
八つ当たりカカシ10本セットが100個入りの箱を10個。
正直使い切れる自信がないが、カカシ自体は使い捨てなので、あって困る数でもない。
呼びだされたカカシに対し、カルネオルがバレットセイバーを振り回す。
やはりピンとこない様だ。

「カルネ君。居合いは?」
「居合いは、基本的に刀で行うものですし、少し違いませんか?」
「試しに」

ジンに言われ、腰を落す。
目の前のカカシへ集中し、振り抜いた。
途端、カカシが真っ二つになり、上部が滑り落ちる。
これにはカルネオルも言葉を失い、呆然となった。

「なんですかこれ」
「カタナ……じゃないよな……」

カルネオルは、再びカカシをみると”居合い”を放つ、するとカカシの中央部分で刃が止まり、刃が食い込んだだけだった。

「あれ? さっきは切れたのに」
「なんとなくわかって来ました。ジンさん、これはやっぱり銃剣です」
「そりゃ、そうだろ?」
「ブレードの扱い方としては、刃を食い込ませ、滑らす、つまり片刃のサーベルのような使い方になります」
「えっとぉ……」
「つまりですね」

カルネオルが、バレットセイバーのブレードの腹をカカシへ着ける、そして手前へゆっくり引く事で、ブレードを食い込ませた。

「こんな感じで、腹から滑り切る。軽いのは遠心力から一気に振り抜く為でしょう」
「へぇー」
「見てて下さい」

そう言って、カルネオルはバレットセイバーを左脇付近に持つ、左手は勢いの為に右へ回し、地を蹴った。
左下から、右へと降り抜かれたセイバーは、八つ当たりカカシへ半分切り込みを入れる。

「おぉ……」
「こんな感じです、形状から切り落とすまでは行きませんが……」

カルネオルの無駄のない動きに、ジンは思わず拍手した。
さすが本職といったところだが、サーベルの付いた銃など、聞いたことがない。
しかし、セイバーの別名はサーベル、バレットセイバーとはここから来ているのか。
扱い方がわかり、ジンは再び八つ当たりカカシを呼び出す。
カルネオルに、サーベルの構え方や振り方などを細かく教わっていると、
自宅の方からマグカップを持った黒羽のアークタイタニアがのんびりと出てきた。
茶色のシャツに黒ジャケットを羽織った、ネクタイ姿のカナトだ。

「何してる?」
「カナ、サーベルの使い方教わってたんだ」

手前には、エミル界でいう10歳前後のアークタイタニアの少年。
奥には先日、二十歳になった相方がいる。
二十歳の方が教わっていると述べたので、カナトは理解の仕方を混乱させた。
とりあえずコーヒーを一口飲んで、冷静になる。

「貴様、いつの間に舎弟になったんだ?」
「とりあえず、どうしてそうなったか三行でまとめろ」

とんでもない誤解をされた気がするが、指を折って真面目に考えだしたので、天然なのか故意なのかすらわからない。
どうやって説明すべきかと思った矢先。
カルネオルがそそくさとカボチャマスクとマントを着て叫んだ。

「カナトさんカナトさん! トリックオアトリート!」

はっとした。
これで先ほどの散々なイタズラをされたらいい。
慌てるカナトはどんな顔になるかと思ったが、彼は冷静にポケットへ手を入れると、
透明な袋に包まれた棒付きアメ、ロリポップを取り出した。

「ロリポップ! やったぁ! ありがとうございます!」
「……カナト、なんで持ってんの?」
「コーヒーの友」

意味が分からない上、何処から突っ込めばいいのか……。
付き合いだしてから、もう一年になるのに、未だこの堕天使の行動は読めない事だらけだ……。
色々と負けた気分にはなったが、カルネオルが衣装を脱いで再び、使い方を教えてくれる。
カナトはそんな様子をぼーっと観察し、ようやく口を開いた。

「失礼だが、剣士殿か?」
「あ、はい。ギルドランク10th、アークタイタニア・グラディエイターのカルネオルです」
「ランカーの方か、成る程」
「あれ? カナト、会った事なかったか?」
「ある。しかし、ランカーとまでは把握していなかった」
「あれ? 僕言った気がしますけど……」

寝起きだった為、記憶が曖昧なのか。
首を傾げるカナトがいるが、今は訓練に集中したい。
コーヒーを飲みつつ此方を観察して居たカナトだったが、ふと脇をみると姿が見えず、ジンは飽きて戻ったのかと思った。
しかし数分後。赤い太刀を持ってカナトが出てきて、訓練をしている自分達に触発されたのか、素振りを始める。

「あ、カナトさん! 姿勢が違いますよ!」

そんな感じで、ジンは10歳(?)。カナトに至っては推定50歳以上も年下の相手に武器の振り方を教わる。
ジンは、普段の訓練もあり、ある程度教わるだけで動けたが、
何故かカナトが壊滅的で、構え方から振り方まで、全てにおいてド素人だった。
ジンはこの時始めて、スキルさえ使えれば、大体なんとかなる世界を知ったが、
今思えば、前に立って殴って居るだけで、カナトがまともに振っているのをみた事がない。
そう思うと、ジョーカーの強みは、体術的技術が無くともある程度戦える事なのだろうか……。

既にジンは放置され、カルネオルがカナトに付きっきりになっている中、気がつけば汗だくになっている事に気づく、
運動をする上で軽装にはなったが、このままでは外へ出られないので、ジンは服を持って一度自宅へ戻った。
軽くシャワーを浴びて、Tシャツ一枚でもどってくると、カナトも疲れたのか上着をぬぎ、珍しく床へダウンしている。
そんな中、一人、何事もなかったかのように素振りをしているカルネオルは、流石剣士というべきだろうか。

「ジョーカーさんって、意外と体力無いんですね……」
「こいつ、普段スキルに頼ってるんで……」

“ジョーカー”のスキルの一つ特性は、敵の生命力の吸収。
つまり攻撃が、一種の疲労回復に繋がるため、永久機関として戦えるのだが、
スキル無しでこれは、少し体力を付けさせた方が、いいかも知れない。

「そうだ、ジンさん。これ家にあったので、持ってきたんですけど」
「家って、カルネ君の実家?」
「はい」

取り出されたのは、紫の悪魔の様な顔が、描かれた箱。
ジンはそれをみて、げっと後ずさりした。
本部では訓練用危険物として扱われている、モンスタービックリ箱。
召喚魔法が組み込まれており、各地にいるダンジョンのボスモンスターを召喚する箱だ。

「なんでこれが……」
「分かりません。うちにあっても仕方が無いので、本部に持って行けと言われて……」
「そ、それならわかるけど……わざわざ出したのは?」
「武器を使うなら、訓練より実践の方が良くないですか?」

ごもっともだが、いきなりボスなのか。

「弱いより強い方が良いと思いますけど……」

正論過ぎて言い返せない。
後ろではカナトがようやく起き上がり、ふらふらと自宅へ戻っていく。

「確かに強い方がいいが、倒しきれなかったら流石に不味くないか……?」
「大丈夫ですよ! ジンさんは強いですから、自信を持ってください!」

言い返せない。
どこに根拠があるのかわからないが、この言葉を否定すると自分が弱いと認めていることになるので、返答に困る。

「じゃあとりあえず、なんかあったら、本部の応援を呼ぶって事で」
「大丈夫です。僕が保障しますから、安心してください」

根拠もない、確信もない。なのに、カルネオルはジンが強いと言う。
ジンにはそれが良くわからないが、カルネオルの言う強さは、戦う為の強さの意味と何処か違う気がした。

その後、ヘトヘトになった2人は、カルネオルと共に三人で昼食をとり、人気の少ないウテナ湖の隅へ向かった。
カナトは、戦闘用のハルシネイションコートに着替え、ジンも万が一の為に、バレットセイバーと光砲・エンジェルハイロゥを持ち出した。
何が出るかはわからないが、訓練としてやってみる価値はある。

モンスタービックリ箱から、10mほど距離をとり、ジンがサラマンドラの筒へ弾丸を装填。
2人に了承を得て、唱えた。

「インパクト!」

爆音。
対物の威力を発揮した弾丸は、箱を派手に破裂させて魔法陣を起動。
ゆっくりと呼ばれた敵は、魔法使いのトンガリ帽子をかぶったカボチャ。
呼ばれた敵は地面が地に着いた直後に、"ディスペルオーラ"を纏う、
"ディスペルオーラ"は魔法を完全に無効化してしまうバリアであり、打撃を専門とする自分達には無関係だ。
ジンは一応訓練である為、バレットセイバーを抜き接近を試みる。

「馬鹿が! 下がれ!」

カナトが叫んだが、遅い。
停止する前に唱えられたのは闇の魔法。巨大な球体が現れ、発射された。
ジンは体を倒す事で直撃を回避したが、後ろの壁となっていた崖を抉り、青ざめる。

「なんだこいつ!?」
「ノーザン魔法学校のソーウェン祭に乗じて出現する精霊だ。
無尽蔵の魔力を持っている。気をつけろ、直撃したら骨も残らない」

ゾッとした。
ジンは即座にハイロゥへ持ちかえ時弾装填。後退した。
カナトもまた空へ飛び立ち、天空からスキル、"ジョーカー"を唱える。
しかし距離をとりながらであるため、断続的に攻撃が出来ない。
ジンが舌打ちをし、カルネオルの姿を見ると、彼は真っ直ぐな瞳で敵を睨み"殺界"を唱えた。
そして、"神速切り"を発動し切り込む。
危険だと思った。
だが、接近したカルネオルは、さらに"ジリオンブレイド"へ繋げ、
"居合い"、"斬撃無双"から"百鬼哭"へと繋げる。
剣聖だ。グラディエイターを極めたからこそ、繋ぐことができる技。
無駄がない。
スキルを振るい、切り込んでいくカルネオルに2人は思わず見入ったが、直後唱えられた、"エセリアルボディ"に、カルネオルが後退。
カナトが動く。

「"イクスパンジアーム!"」

ガラスが砕けるように、バリアが粉砕。
そのタイミングを狙い、躊躇いなく引き金を引いた。
発砲音と共に、弾丸が着弾。

「フレア!」

炸裂。
内部の爆発にハロウィンキングがひるむ。
その瞬間を狙い、カルネオルがさらに”神速切り”から”ジリオンブレイド”へ繋げた。
このままでは拉致があかないと思い始めたとき、敵が再び魔法を詠唱。
カルネオルが後退した。
しかしその後退の軌道に魔法弾が現れ、カルネオルを追う。
直撃すると、ジンが武器を投げ捨てた瞬間。
空中にいたカナトが、カルネオルへ向かう魔法弾をぶった切る。
余波によりハルシネイションコートの裾が焦げた。
だがカナトは勢いをとめず、一回転をして剣を振り下ろす。

「”ダメージチャージ、発動!”」

雷撃。
起こったのは小規模な爆発だった。
受けたダメージをそのまま返すスキル、”ダメージチャージ”。
魔法弾の余波によって威力を蓄積させたカナトは、それをそのまま敵へと返したのだ。
余波だけでもある意味とんでもない威力だったのか、ハロウィンキングは爆発と共に仰け反る。
ジンはそのタイミングからサーチウィークポイントを唱えた。

「”テンペスト!”」

発砲。
放たれた弾丸が幾重にも分散し着弾する。
しかし放たれたのは、炸裂弾だ。

「フレア!」

粉砕。
ハロウィンキングあちこちで、弾丸炸裂しカボチャ頭へ亀裂をいれた。
動作をとめ、人形のようになった敵へカルネオルが接近。
"殺界"から、グラディエイターの最強スキルを唱えた。

「”ジリオンブレイド!”」

斬撃が孤を描き乱舞する。
一瞬で切り刻まれた敵は、まるで霧の様に霧散し消滅した。
同時。霧散した霧から沢山のカボチャが現れ、その場に山積みになる。

それをみて、ジンはホッとしたがふわふわと地面へ降り、ダウンしてしまったカナトに驚いた。
”ダメージチャージ”は受けた分のダメージを返すスキル。つまり被弾しなければ、発動出来ない。
土壇場でハロウィンキングを倒せるだけのダメージを受けたのだから、ある意味当然の反動だろう。

「カナ、大丈夫か?」
「疲れた……」
「カナトさん、気をしっかり……」

うつ伏せでぐったりしてしまったカナト。
起き上がる気力もないのか、肩から持ち上げ久しぶりにカナトおぶった。
私服なら軽いのに、今日は鎧であるため重い。
カルネオルに、光砲・エンジェルハイロゥ任せ三人が帰路につこうとした時、後ろから突然芝生を踏む足音が聞こえた。

「なんの騒ぎかと思えば、貴方方ですか」

響いた新しい声に、ジンが固まった。
現れたのは、ランキング10th以内に譲渡される杖。宝杖・レッドルナを持ったエミル。
腕を組み苛立った視線を向ける彼は、ランキング6thのエミル・アストラリストのセオだ。

「セ、セオ中尉……どうしてここに?」
「ウテナ湖で、ハロウィンキングが暴れているとの通報を受けた次第です、それに中尉ではありません。先日昇格しました」
「え、そうなんすか? おめでとうございます……」
「まさかの初仕事で、貴方に出くわすとは予想もしませんでしたが……」
「えっとぉ、奇遇ですね……」
「話は本部で聞きましょう」
「は、はい……」

よりによってセオがくるとは、今日はついてない日だ。
何を言われるかなどあながち予想がつくが、背中でぐったりするカナトをジンはおぶり直す。

「セオちゅ……大尉」
「なんですか?」
「こいつ置いてくるんで、いったん帰っていいっすか……? ちょっと討伐して疲れちまったみたいで……」
「なら、簡単に治療して差し上げます。それで文句ないでしょう」
「あ、はい……」
「ジンさん! 良かったですね!」

良くない。治してやるから逃げるなということだろうか。
遠回しに説教するから来いと言われ、ジンは諦めてため息をつく。

その後、セオに着いてきたウァテス系の冒険者に"ヒーリング"と"オラトリオ"を貰って、カナトは何とか体力を取り戻した。
ジンはカルネオルと二人で、何をしていたのか散々言及されたが、
自分たちで処理できた上、個人的な訓練をやっていたと報告したが、
処理出来なければどうするつもりだったのかとか、崖が崩れて事故が起こったらとか、散々言われはしたが、
結果的に大事にはならなかったので、反省文の提出だけで許してもらえる事にはなった。
そうしてすぐに返してもらえはしたが、あんまりな気分にため息をつく。
すると横を歩いていたカルネオルが、ふわりとジンの前舞い降りると顔を近づけて笑った。

「いろいろ言われましたけど、僕の言ったとおり倒せました!
やっぱりジンさんは強いですよ!」

改めて言われて驚いた。一人で倒したわけじゃない。
でもそれでも、倒した事には代わりはなく。
カルネオルとカナトが居たから……。

「そうだな。サンキュ」
「はいっ」

彼らがいれば、強くあることができる。そう思った。

そうしてジンは元宮の外で待つカナトと合流する為に、再びカルネオルと元宮の出口へ向かった。
カナト自身はジンを待つ間、一人だいこんのストラップがついたナビゲーションデバイスを持ち、
最近登録したつぶやきツールで遊んでいたが、そんなカナトを数日前から尾行する影があった。

情報は黒羽に茶髪のアークタイタニア。
気配の察知に長けてはいるが、せいぜい10mが限度らしく、それ以上離れるとわからないらしい。
アークタイタニアである事だけでも珍しく目立つので、人違いをする事はなかったが、一人でいるところをあまり見ない。
大体だれかと一緒におり、黒服を好むのか、背中の黒羽が同化して翼が見づらく人ごみではよく見失う。
また一人になったとしても、せいぜい30分前後。
人通りの多い場所を選んでおり、声を掛けたら怪しまれてしまうだろう。
しかもここは元宮前。下手に動けば危険だ。
そう言った考えを巡らせて居るうちに、元宮からジャケットのエミルが出てきた。
肩に掛けて居るのは光砲・エンジェルハイロゥ。治安維持部隊のランカーの持つ武器。
アークタイタニアだけならまだしも、ランカーは対人慣れして居るので相手にはしたくない。
アークタイタニアはランカーと知り合いなのか。合流し、帰路に就く。
影は、2人の自宅飛空庭をナビゲーションデバイスのカメラに収めた後に姿を消した。
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本編 | 【2012-10-26(Fri) 18:00:00】 | Trackback(-) | Comments:(0)
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