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(C) BROCCOLI/ GungHo Online Entertainment,Inc./ HEADLOCK Inc.

カナトが狙われる話
出演:カロンさん、カルネオルさん、セオさん

ロケ地:イーストダンジョン

あらすじ
メイオウ討伐クエストのため、ファーイーストへ訪れたカナトとジン。
取り巻きとなる黒狼を討伐していた二人だったが、突然見知らぬ人間達に囲まれる。


 「さぁ! 帰ってきたぜ! わが故郷」

光砲・エンジェルハイロウを肩に掛けファーイーストの丘の上から叫んだのは、
アクロポリスを拠点とする一般冒険者。エミル・ガンナーのジンだ。
彼は、きれいに広がるファーイーストの風景を眺め、大きく深呼吸をする。

「貴様の故郷は、すでになくなったと聞いたが?」

そうひんやりとした声で返したのは、4枚の黒羽をもつアークタイタニア。
タイタニア・ジョーカーのカナト。
彼は背中に長剣を携え、腕を組みながら丘の上のジンを観察する。

「まぁな。でも故郷であることには変わりないぜ」
「そうか……」

納得したのかそうじゃないのか。
あいまいな言葉で返されジンは複雑な表情を浮かべる。
確かに故郷といってもいい思い出はなかった。

「けどま、本日もお仕事がんばるぜ。俺は」
「貴様からそんな言葉が聴けるとは、今日は碌なことがなさそうだな」
「なんだよそれ……」

がっかりした表情でこちらを見るジンに、カナトがそっぽを向く。
いつものことだ。
今日の仕事は、イーストダンジョンの奥地にすむメイオウの討伐。
普段は守り神として、おとなしくしているのだが、
ここ最近、繁殖期なのか黒狼がふえ、作物などが荒らされているらしい。

「討伐だけじゃない。水辺に生えているだいこんも、ついでに採取するので、忘れるな」
「だいこん……って、晩御飯に味噌汁でもつくんの?」
「悪いか?」

素で返されてしまった。
普通の冒険者なら、夕食を酒場なので取るのが一般的なのに、
カナトは一人暮らしが長かった所為か、いつも自炊したがる。
出費を抑えられる上、何もしなくても作ってもらえるので、大歓迎ではあるのだが……。

「カナト。今日は寝るなよ」

振り向いた彼は、いたって普通だ。
しかし、彼は時間が空くと、すぐに眠ってしまう変なクセがある。
大体21時前に帰宅しなければ、そのうち眠いと言い出して、晩御飯を作ってもらえない。

「そう簡単に眠りはしない」
「嘘付け!! この前だって、俺が買い物に行った5分ぐらいの間に寝たじゃねぇか!!」

あの時は、庭を出しっぱなしで担いで帰るのにひどく苦労した。
カナトは、一度眠ると5時間は起きない。

「善処する」

信頼できない、が、信用するしかない。
ファーイーストの商店にて、実包を補給したジンは、カナトと共にイーストダンジョンへと向かった。
薄暗いこの場所はひどく空気が悪く。息苦しい。
それも、地面にしみこんでいる毒が、人体にひどく悪い影響を与えるのだ。

「ここに居られるのは、せいぜい90分。それ以上は危険だ」
「おぅ、さっさと討伐して帰るぜ」

ハイロゥに弾を装填し、ジンとカナトは、二人でイーストダンジョンを進む。
人里付近まで降りてきた黒狼は、確かに多かった。
入り口付近に居た敵を、ジンがハイロゥをつかって確実に討伐していく。
闇の化身である彼らは、額を一発で打ち抜くことでその制御を失うが、
命中させるためには集中力が必要であるため、
カナトが、後ろで動き出したカカシ曰く、スタートラーを、自分の狙撃の邪魔をしないよう討伐してくれていた。

「聞いてたよりも多いぜ?」
「あぁ、酒場に依頼されたことも分かる」

順調に討伐を行う二人。
このまま水場へたどり着き、お土産のだいこんを採取できればと思っていたのだが、
原初の森へたどり着いたとき、突然カナトが、何かに反応した事に気づいた。
モンスター戦に長けている彼は、周辺の生物の気配に敏感でもある。

「どした?」
「人の気配がする」
「? ……狩場だし、ほかの冒険者が観光にきてんじゃね?」
「いや……数が多い」

ジンの視線が鋭くなる。
ハイロゥの安全装置をかけ、肩にかけなおした直後、岩場の影から数名の人間がのっそりと顔をだしてきた。
物欲しそうな目でこちらを見つめ、ニヤニヤと笑っている。

「なんだ、お前ら」
「これ以上先は、俺達の領地だ。通すわけにはいかない」
「独占は、評議会の規約で禁止されてるだろ」
「俺達はファーイーストの国民だ。そんなもんに縛られねぇよ」
「国際法においても、独占は許されていない筈だが?」
「どうでもいいね。俺達は親方様に雇われてんだ、お前の言い分なんてしらねぇ」

親方。彼らのボスだと把握はしたが、ジンの表情がゆがんだのをカナトは見逃さなかった。
妙な威圧を放ち始めた彼の後ろで、カナトは自分をじっと見る敵と目が合う。
意味深なほどに目が輝き、気分が悪くなりそうだ。

「カナト。さがっとけ」
「?!」
「こいつらの狙いは、お前だ」

言葉の意味が理解できなかった。
身構え今にも向かってきそうな敵、ジンはその前に立ち、背中のハイロゥを投げ渡してくる。

「お前、話が分かるな。こっちの人間かい?」
「ありえねぇよ馬鹿。ただアークタイタニアを使った、悪徳な商売をやってる連中を知ってるだけだ」
「へぇー……面白いな」

ここまでいわれた段階で、カナトが言葉を失う。
イースト方面で横行しているとされる、アークタイタニアが行方不明になる事件。
あまりしられていないが、彼らの羽を手に入れるために地方の豪族が誘拐していると言われている。
ジンはその余波で孤児になった、ある意味での被害者だった。
驚き、硬直しているカナトへ、突然脇に居た男が突っ込んできた。
ジンはその前に立って、あごに蹴りを入れる。
前歯を完全に折られた敵は、大きく弧を描いて吹っ飛び、床に叩きつけられた。

「失せろ」

2,3人が一気に突っ込む、ジンは左脇の銃を抜いて、至近距離の男へ発砲。
腿へと弾丸を撃ち込み、時間差で接近した敵の腕をつかんで投げる。
その瞬間、残っていた敵がジンの後ろを取り、彼の頭に銃口を突きつけた。

「やるな。だが終わりだ」

両手をあげ背筋を伸ばす。
カナトは後ろから飛びつかれ、腕を後ろに取られた。
筋がねじれる痛みに、声を上げた直後。
ジンが手の甲で敵の顔を殴り、襟をつかんで投げ飛ばす。
肩を撃って動きを止め、カナトを掴む敵へ、こめかみギリギリに発砲した。

「触わんな!」

そう言い放ったジンの瞳に、今までの明るさはなく。
抑えた男が青ざめ、カナトすらもその威圧に動けなくなってしまった。
ゆっくりと離れ、敵が手をあげて距離をとった直後。敵の口元が緩む。

「ジン!!」

後ろだ。
ハッとして振り向いたときには遅く、どんっという衝撃を得て、ジンは床へと倒れこんだ。
頭を鈍器で殴りつけられたらしい。衝撃で銃が手から放れ、無残にも音が鳴る。
胸を踏みつけられ、落とした烈神銃・サラマンドラを突きつけられた。

「ゲームオーバーだ……」

油断した。
脳震盪を起こしたのか、動けない。
隠れていた一人に気づかなかったのか、いや、カナトに気を取られすぎたのだ。
叫ぶような声が聞こえる。それでも、体が動かずどうしようもない。
引き金に指がかかり、絞られると思った直後、金の鎧が目の前を遮った。

「スピアサイクロン!!」

竜巻が起こった。
吹っ飛ばされた相手は、サラマンドラを手放し、床に叩きつけられる。
突きつけたのは、雷剣・カラドボルグ。
ギルドランクに乗った冒険者のみがつかえる。最強の武器だ。

「帰れ……」

放たれた言葉に、腰を抜かしている。
数十秒立ったのち、相手は四つん這いになって逃げ出した。
またカナトを抑えていた一人も睨まれ、逃げ出す。
開放されたカナトは、腕を抑え、そこへ立っているイクスドミニオンを凝視する。
金髪、4枚羽のドミニオン。
彼は倒れて動かないジンを起こし、
血を流している後頭部へヒーリングを詠唱した。

「リカルド……殿」
「……ご機嫌よう。お怪我は?」

イクスドミニオン・ガーディアンのリカルドは、ジンを抱え、男達が倒れている場所からだいぶ離れた物陰に向かった。
そして、自らのマントを枕に寝かせ、再びヒーリングを唱える。

「助かりました。……感謝します」
「強く殴られてているので、暫く目を覚まさないかかと……」
「そうですか……。何故ここへ?」
「本部からの任務でここに溜まる賊の調査と取り締まりに、お二人は?」
「討伐の仕事で、メイオウです」

リカルドが頷き納得したようだ。
ヒーリングによる応急処置が終わったのか、彼の手元の光が消える。
眠るような表情をみせるジンにカナトはホッと息を付いた。

そんな様子をみて、リカルドは”ナビゲーションデバイス”に何かを入力すると、カナトと目を合わせ述べる。

「応援を呼びました。来るまでは護衛させて頂いても?」
「しかし、ご迷惑では?」
「ここでは、アークタイタニアが頻繁に行方不明になっています。ジンもきっと、起きてすぐは戦えないでしょう」

確かに、頭を殴られて元気な人間は、そう居ない。
再び襲われたらどうなるか……。

「討伐も付き合います」
「流石にそこまでは……キャンセルしてーー」
「冒険者の行動を妨げない事こそ、我々治安維持部隊のあり方でもある。手を貸すのもランカーとして当然です」

言い返せなかった。
目を逸らし返答を渋るカナトへ、リカルドは手を伸ばすと、
彼の左腕へ向けて再びヒーリングを唱える。

「……!?」
「痛みは?」
「もう、痛みません」
「よかった」

そこから数分、二人は横に並び何もしゃべらなくなった。
フードを被りうずくまるカナトは、何処か怯えているようにも見える。
羽を畳みマントで隠しているのは、自分が狙われている事に責任感を感じているのか。
そんなことを考えていると、彼らの足元で横になっていたジンの首が動いた。
ゆっくりと目を開け、目の前の景色を把握したジンは、ばっと起き上がり、ふらつく。

「ジン、そんなすぐ起きてはいけない……」
「リカじゃん……なんで? というか、カナトお前」
「すまない、ジン」

気にしているのか、顔を見せようとしない。
そうわかりやすく落ち込まれると、こちらまで申し訳ない気分になってしまう。
リカルドから、彼がここに来た理由と絡んできた連中のことを聞き、
ジンも少し複雑な表情をうかべた。
素人だと油断したものの、彼らの動きは人を捕える動きだ。手慣れている。

「おそらく、何人か捕まっているだろう」
「……」

リカルドの言葉をカナトに聞かせたくはない。
本人も気を使っているのか、それ以上は言わなかった。
未だに後頭部がじんじんと痛み、思わず触れてしまうが、更に痛みが走る。

「あくまで応急処置だ。触ってはいけない……」
「あぁ、サンキュ……リカ」
「さっきの賊のうち二人は逃げた。仲間がくる可能性がある。応援がくるまでは奥に向い隠れたほうがいい……」
「……だな。カナト、ついでに討伐もやっちまおう」

動かない。
何もできないという現状が許せないのか。
カナトは動こうともせず、両腕の中へ顔を埋める。
ジンは少し困りはしたが、ため息をついてカナトがかぶっていたフードをまくった。

「味噌汁つくるんだろ?」
「……作る」
「行こうぜ」

そう言って、ようやくカナトが立ち上がった。
ハイロゥを受け取り、ジンが歩き出すと、カナトも自らの足でジンの後をついて行く。
羽を畳み地面を歩くのは、タイタニアにしては珍しい光景だ。

「憑依するか?」
「いらない」

即答に安心した。
ジン、カナト、リカルドの三人でパーティを組み、彼らはイーストダンジョンの最奥を目指す。
光砲・エンジェルハイロゥを構え、再び黒狼を仕留めていくジンだが、
その狙いは先程とは違い、黒狼の額から若干ずれた位置に当たる。
しかしそれでも、弱点であることには変わりなく、討伐はできてはいたが、
やはり照準があわないのか、何度か大きく外れ一発では仕留められていない。

「ジン」
「……きにすんな。調子が悪いだけだよ」

痛みが響いているのか。
カナトはフォローする為、できるだけ前に出て殲滅を行う。
ジンからみれば、やはり動きが鈍い。普段浮いており、床を蹴る動きに慣れていないのか。
時々バランスを崩すので、気を使いつつも援護射撃をいれる。
リカルドはそんな様子を心配そうに見つめ、後ろから近づいてくる敵の駆逐に専念した。

そうしている間に、3人は水場の入口へとたどり着く。
だいこんはこの先に生えているが、カナトが帰りでいいと言い出したので、
ジンは無理やり先導をきり、二人を水場へと向かわせた。
小さな湖畔があるこの場所は、水が浄化されていて、何故かだいこんが収穫できる。
誰が植えたわけでもなく、誰が世話をしているわけでもない。
ただ、襲いかかってくる敵がおおいので、味噌汁の具材を求めた冒険者が、
ときどきここに収穫に来るらしい。

水場に連れてこられたカナトは、ところどころに生えているだいこんを見極め、
気に入ったものを引っ張り出すので、ジンは微笑ましくそれを眺める。
根が張っているのか、なかなか抜けない。やっと抜けたとおもったら、カナトは勢いで尻餅をついてしまった。
なんだかんだで嬉しそうなので、とりあえず気が済むまで放っておくことにする。
これで機嫌をなおしてくれるなら儲けものだからだ。
ふと脇をみれば、リカルドも同じことをやっていたので、ジンはなぜか疎外感を感じた。
そうしている間に、両手へ二本づつのだいこんを持ったカナトがもどってくる。

「そんなにいるか?」
「コタロウさん達の分」

さぁ、どこから突っ込こもう……。
振り向けばカナトの倍のだいこんを握るリカルドもいる。
これは逆に、自分の方が浮いているのかもしれないという危機感をジンは覚えた。
名前のキズを入れ、二人は湖畔の脇にだいこんをまとめる。
どうやら一時的にここへ置いて、帰りに持ち帰るらしい。
同じようなだいこんが、束になって置かれていた。

「狩りの邪魔になるからな」
「へぇー。考えてんな」
「……常識」

主夫の常識なんて知らない。
そう心で反論するが、タダで手に入るならそれに越したことはないのは確かだ。
特にだいこんはここでしか取れないため、アクロポリスではそこそこ高価な野菜でもある。
ある意味おいてけぼりの空気に、ジンが複雑な心境で立ち尽くしていると、
突然二人が何かに気づいて顔をあげる。

気がつけば、ベイヤールやゲッコの姿はなく、周りの空気が冷めていた。
主にボスが出現する時こんな気配にはなるが、メイオウがいるフィールドはもう少し先だ。
やはり、少しづつ出口へと降りてきているらしい。
武器を構える二人、つられるようにしてジンも一歩下がって、ハイロゥに次弾を装填する。
一発目はグレネードだ。催涙で目くらましを行う。

「カナト。飛べよ」
「わかっている」

いちいち構っていたら、逆に倒されてしまう。
メイオウはボスのうちでも強敵だ。油断はできない。
水場の入口からのっそりと現れた、真っ黒な狼。
黒狼の10倍はあるだろうか、闇の魔力をまとうそれは、喉を鳴らし暗闇から姿を見せた。
同時、カナトが剣を投げ、唱える。

「”スタイルチェンジ”、”神の守護”」

「”ジョーカー!”」

強化スキル。
武器を変えるごとに特性を変化させるその魔法は、
素手で発動させることにより、自己のステータスの強化を行える。
ジンはあまり見たことはないが、これを使うということは彼自身本気だということ、ならばこちらも、それに答えなければいけない。
”精密射撃”と”オーバーレンジ”を唱え、ジンがライフルを構える。
腰を落とし、スコープを覗いたジンは、挨拶として全力で打ち込んだ。

「”インパクト!”」

爆発音とともに、戦闘が始まる。
カナトはダンジョンの天井、ギリギリまで飛び立ち、
急降下からメイオウの額にむけて剣を振り下ろした。
リカルドもまた、地上から”プロテクト”を唱え、”ストライクスピア”を突き立てる。
剣で殴られ、銃で撃たれ、槍で突かれても、分厚い体表に武器を切り込ませることができず、
メイオウは力任せに二人を振り切った。

「ジン!」

お呼びだ。
言われなくともわかっている。
外からがダメなら、中から攻撃すればいい。
ねらいどころは最も体表が薄い、正面胴体。

カナトの掛け声から一泊置き、ジンが引き金を絞る。
打ち出された弾丸は、メイオウの正面胴体に滑り込み、食い込んだ。

「フレア!!」

弾ける。
体内で粉砕した弾丸にメイオウは悲鳴を上げた。
すかさずリカルドが追撃を加え、カナトも防御を崩しにかかる。
それに危機感を得た敵は、突然”エセリアルボディ”を唱え、物理攻撃を遮断した。

「ちっ。カナ!」

空を舞う姿は、実に優雅だ。
サウスダンジョンで初めて出会い対峙した様を、ジンは今でも鮮明に覚えている。

大きく旋回を行い。勢いをつけたカナトは、”ディレイキャンセル”を唱え、
メイオウの背後から突っ込んだ。

「”イクスパンジアーム!”」

振り下ろし、まとわれていた魔法が破壊される。
ガラスのように砕け散り、メイオウのバリアが粉砕した。
ジンのガッツポーズとともに、さらに追撃ができると動いたとき、
メイオウの背中にいるカナトの上へ、白いロープが飛んできた。
一瞬、それがなにか理解できなかったものの、そのロープはカナトの翼に引っかかり、
彼は引き摺り下ろされる形で、メイオウの背中から落下する。

「カナ!」

現れたのは、さっきの賊二名だった。
背中を強打したカナトは、その痛みでゆっくりと起き上がろうとするが、
二人がカナトを囲み、銃のような小型の機械を取り出す。
それを見た瞬間、ジンは背筋が冷えた。

麻酔銃だ。
すかさず銃を構えたが、照準が合わなくなっている自分の腕を疑う。
もしカナトに当たったら……。
直後、カナトの首へ麻酔針が打ち込まれ、叫ぶ暇もなくカナトは気絶した。

「ジン!!」

リカルドの言葉にはっとする。
発砲したが、それは大きく外れ弾丸は足元の床へ食い込んだ。
即座に駆け寄ろうとしたとき、メイオウの咆吼が響く。
足元に展開した魔法陣は広範囲に光を放ち”メガダークブレイズ”を放った。
賊二人は即座にはなれ、ポケットから〝時空の鍵”を取り出す。

だめだ。

銃を放り、ジンが駆け出す。
鍵の起動から発動まで約二秒。間に合わない。
目の前がゆっくりと光に包まれ、目の前の三人の姿が消えて行く。

こんなにも近くにいるのに、

自分はまた守ることが出来ないのか。

そう心に思い、ジンがバランスを崩した直後。
カカッ という静かな音を立てて、賊の持っている時空の鍵が粉砕。
転送が停止された。

見えたのは、黒い影。
ジンは即座に、カナトを捕まえる二人へ膝蹴りをいれ、
強引にカナトをひっぱりだした。
そしてその場から即座に離れ、黒い影の相手を凝視する。

しゃらりと響く装飾の音、背に生える一対の翼は冥界の種族ドミニオンの物だ。
一瞬みえたその影は、直後には消滅し青い粉が周辺に錯乱する。
スキルでいう”ヴェノムブラスト”。
本来なら毒によって紫色をしているが、見えた色は何故か青色だった。
ジンは影響を受けぬよう、
その周辺から離れ、警戒の意味を込め銃を構える。

ゆっくりと晴れて行く視界へ目に入ったのは、イレイザーの職服を纏う青髪のドミニオンだった。

「カロンさ……」

ギルドランク2nd。イクスドミニオン・イレイザーのカロンだ。

「”ジリオンブレイド!!”」

さらに奥で響いた高い声。
白い羽の小さな少年は、キラリと輝く細い剣を携え、メイオウに向けて幾多の剣撃を放った。
そして、リカルドもまた、両手槍を振り回し突っ込む。

「”ライトオブダークネス!!”」

一閃。光の力をまとう槍がメイオウの前方から後ろへ突っ切る。
光の追撃をくらったメイオウは、その清浄な光に浄化され、溶けるように空間へと消滅していった。

「よぅ、待たせたな。ジン、リカ」

ホッとしてジンは思わず床へ座り込んでしまう。
目の前には、カナトを攫おうとした賊二名。
二人は、毒を睡眠薬に変えられたのか、気絶したように眠っている。

奥でリカルドへ援護をいれたのは、ギルドランク10thのアークタイタニア・グラディエイターのカルネオル。
齢11歳でランカーとなった天才少年だ。

「大丈夫か、腰ぬけた?」
「すいません……つい」

横には完全に気絶し、眠ってしまっているカナトがいる。
いつも通りの寝顔なのに、ここまでヒヤっとしたのは初めてだ。
翼に引っ掛けられたロープを、ジンはカロンに借りた短剣で切断し、
首に打ち込まれた麻酔針も、目を覚ます前に抜いてやった。

「ジン。無事か?」
「リカ、ありがとう。助かった」

差し出された手をとり、ジンが立ち上がる。
すると後ろから、何かを抱えたカルネオルが舞い降りてきた。

「ジンさんリカルドさん! 大丈夫ですか!?」
「カルネ君も来てくれてサンキュ。
でもタイタニアのカルネくんがなんで……?」

「コイツ、リカがピンチだってきいて聞かなくってな。仕方なく連れてきたんだ」
「失敬なカロンさん! 僕だって戦えますよ!」

「全く、毎度無計画で困ったものですね。貴方達は……」

さらに後ろから響いた新しい声に、4人が振り向く。
数名の部隊員をつれて現れたのは、ギルドランク6thのエミル・アストラリストのセオだ。

「実働兵である貴方方だけで、あんな大人数を連行できる訳がないでしょう?
もっと考えて行動してはどうです?」
「……す、すみません」

「いや、ジン。セオは俺らに怒ってんだよ。お前じゃねぇ……」
「え、あ、えぇ?!」

「貴方もですよジンさん。アークタイタニアが危険といわれるこの場所で、
あえてその方を連れてくるとは……」
「あれ? ジンさん。ここが危ないって知ってたんですか?」
「えっ!? あの……」

「お前は滅多に本部こねーから、知らないのは当然だよな!」
「……は、はい」

「………なら仕方ありませんか」

少し間を置いたセオに、ジンは少し違和感を感じる。
知らなかったといえば、嘘になるのかもしれない。
複雑な心境に耐えかねジンが俯くと、それを察したカルネオルが、
両腕に抱えるそれを見せてきた。

「あ、聞いてくださいジンさん! ブーストですよ! 秘宝ですよ! やりました!」

「へぇーすっげぇ。でもカルネ坊はタイタニアだから、背負えないんじゃね?」
「なにいってるんですかカロンさん。このこぶよぶよですごく気持ちいいんですよ!」

思いっきり抱きしめ頬ずりをするカルネオルに、
ブーストが青い顔をしているが、ここはあえて突っ込まない。
そのあと、ジンはカナトをおぶり、本部の一団とイーストダンジョンをでた。
殴られたケガは、今回もリカルドに手当てしてもらい、
ジンは頭に包帯を巻いた状態で、帰路へと入る。

討伐の依頼を完遂できたのはよかったものの、
ジンは背中で眠っているカナトに、後ろめたさを感じずにはいられなかった。
仕事とはいえ、リカルドと会わなければもっと大変な目にあっていた可能性もあるのだから、

自宅に戻り、カナトを自室に連れて行ったジンは、
一人リビングで銃のメンテナンスを始める。
ため息をつき、晩御飯をどうしようかと考えたとき、突然リビングにノックが響く。
誰かと思い、扉を開けてみると両手いっぱいにだいこんを握ったリカルドがそこにいた。

「リカ……」
「忘れものだ、届けに来た」

大量のダイコンをみせられ、ジンは思わず尻込みをしてしまう。
少し多くないか?

「調理しようとしたんだが……、やっぱり無理だ……」
「なんだお前、野菜ダメなの……?」

仕方なく受け取ろうとしたが、重いからといって、テーブルまで運んでくれた。

「カナトさんは?」
「まだ寝てる。あいつ一度ねると5時間は起きないんだ。この時間だと、朝まで起きないと思う」
「……夕食は?」
「まだ」
「作らないのか?」
「……食べれる気分じゃないんだ」

そう言って、ジンはリカルドへコーヒーを入れた。
再び座り、銃の手入れを始めたとき、向いに座ったリカルドが口を開く。

「あまり無理をしない方がいい」
「サンキュ」

リカルドに言われると少し安心した。
コーヒーを飲むリカルドの前で、ジンは銃の洗浄を行う。
数分は経っただろうか、サラマンドラ一丁の洗浄を終えたとき、突然上から、扉の開く音が聞こえた。
寝巻きでうつろな目をするカナトは、のんびりと階段を下りてくる。
まだ3時間前後しか経ってない。

「カナト!? 起きたのか!」
「だいこん……」

寝ぼけているらしい。

「だいこんは、リカが届けてくれたから安心しろ」
「リカルド殿が……?」

テーブルに座るリカルドを確認し、さらにキッチンに置かれているだいこん6本をみて、カナトはほっとしたようだった。
それにしても、5時間以内に起きてくるなんて初めてだ。

「眠い……」
「寝んな馬鹿! せっかく起きたんだから……」

ふぅと倒れてしまうカナトをジンが支える。
リカルドはそんな様子を見て、安心した表情をみせると「よかった」と言い残し、帰路にはいった。

「リカ、今日もありがとな」

何も言わず目を合わせ、リカルドはそのまま家を出て行く。



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本編 | 【2012-09-20(Thu) 18:00:00】 | Trackback:(0) | Comments:(0)
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