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(C) BROCCOLI/ GungHo Online Entertainment,Inc./ HEADLOCK Inc.

カナトとジンが初めて会う話(前編)
ロケ地:ディメジョンサウスダンジョン

あらすじ
約一年前。治安維持部隊の大隊任務で、サウスダンジョンへ来ていたジンは、
同じ隊にいた同僚にサウスダンジョンの大穴へ突き落とされてしまう。
隊と合流するためにジンは出口を目指すが、初めにたどり着いた出口は出口ではなかった。


 
身体中が痛い。 ここはどこだ?
視界に広がる暗闇は光をすべて飲み込み、先の見えない空間が続いている。
一瞬きた衝撃は、体全体を混乱させて、エミル・ガンナーのジンは、死を覚悟した。
しかし、感じた痛みは徐々に収まり、意識もはっきりしてくる。
同時に記憶も戻ってきた。
最後に見たものは、同じホークアイの職服を纏った人間の笑顔、蔑み、自分を見下した得意気な黒い顔。
腕一本で大穴の角に捕まったのに、笑顔を見せたそいつは、ためらうことなく、自分へ銃口を向けていた。
たった一言。死ね。という言葉を放ち、銃声。

死にたくはなかった。

治安維持部隊にはいると決めた時点で、何があっても生き残ることを決め、守り通すときめた。
だから、死にたくはなかった。
反射的に壁を蹴り、相手が引き金を引く前に、自分から手をはなした。
額を撃ち抜かれて即死するより、落下の生存率の方が高いと判断したからだ。
だがしかし、すでに奇跡などすでに諦めている。
落下の最中。ずっと彼女のことばかり考えていた。
守れなくてすまないと、同僚として油断してしまった自分を悔い、落下の重力に身を任せた。
そして気がつけば、ここにいた。
真っ暗で先が見えない天井。どうやら落下場所が良かったらしい。
柔らかい資材の上だ。少しずつ戻ってくる感覚に、体の一つ一つを動かして行く。
もう痛みは殆どないが、神経がやられていないか不安だった。
手は動き、息もできる。腕も動いた。足も動く、指の先まで、無事だ。
打撲はしていそうだが、骨折で歩けないより何倍もいい。
それ以前に生命が有ることが何よりの救いだった。

「う……」

大きく呼吸する。酸素を取り込み生命があることを体に覚えさせた。
まだ生きられると言い聞かせ、ゆっくりと体を起こす。
視界に見えた景色はサウスダンジョンの一階だった。
人間ではないものの影が見えて、彼は資材の影へと身を投げて隠す。
泥だらけの職服は、以前盗まれ、先週買い替えたばかりなのに、もう切れ目が入って泥だらけだ。
そんなことを考えつつ、ジンは手持ちの武器を確認する。
腰に自動式ピストル二丁。背中に回転式拳銃一丁。
もう一丁、自動装填タイプのライフルを持っていたが、これが見当たらない。
ふと脇をみると、筒が完全に折れたライフルのラスト・キッスが、無残にも転がっていた。
鉄筋に一度ぶつかったのか、これでは使い物にならない。
ラスト・キッスの回収を諦め、ジンは残りの弾丸数を確認した。
軍用ポーチに持ってきたマガジンは10個。弾丸をバラで20発。
マガジンには約30発分込められている。幸い一つも使っていない。
自動式ピストルに、マガジンが一個ずつ入っているので、全部で380発。
サウスダンジョンの一階なら、脱出まで十分持つだろう。

そこまで考えた時ジンは、はっと顔を上げた。
上をみれば真っ暗の闇。突き落とされる前にいた場所も、サウスダンジョンの一階だった。

一階から落下し、一階へ落ちた?

記憶が曖昧なのか。それでもここは、地下三階まで降りて行く場所。
落下したなら、地下二階か三階であるはずだ。
それとも地下三階のさらに深部におち、地下一階と同じ構造をしているだけなのか、だとしたら少し厄介だ。
未開拓の土地なら、何が起こっても不思議じゃない。
見たことない敵もいるかもしれない。しかし、資材がおいてあると言うことは、人の手が入っていると言うこと、
少し進めば、人に出会える可能性もあるだろう。

腰に固定したナビゲーションデバイスを確認し、アプリケーションを使って、半径100mの構造をスキャン。
簡易マップを自動作成すると、やはりサウスダンジョンの一階だ。
ジンはそのデータと、あらかじめ登録しているマップデータの最適化を行い位置を特定。
場所は中央の大穴から西へ直進した場所だ。南へ進めば出口まで行けるだろう。
一応パーティー通信で位置を確認したが、すでに追放されていた。
予想していたことだが、計画的なものだとは思えないので、突き落とした奴が、証拠隠滅の為に除名したのだろう。
上では、自分から脱退したとでも言われているか……。

しかし今は、そんなことを考えている場合ではない。最短距離で突破したいが、モンスターも当然居る。
モンスターの急所について一応学んではいるが、種類が多すぎてほとんど覚えきれなかった。
自分の不真面目さを悔いても、ここは仕方が無い。

気を取り直し、ジンは入口へ向かう覚悟を決める。右腰の自動式拳銃一丁を両手で持ち、筒を額へあてた。
長く使っている相棒。何度も部品を交換し、この三年間を戦ってきた。
手へと馴染んだ感覚は、疑う余地もなく、同じ人間の何倍も信頼できる。
こいつと一緒なら負けない。生きて行くたびに選んだのだから……。

顔をあげ、モンスターの視線を確認。両手で銃を持ち、資材置き場を出た。
弾の消耗を抑える為、できるだけ戦いは避ける。
壁の影に身を隠しながら確実にゆっくりとすすむが、一階とは思えない風景にジンは驚くばかりだ。
もう何年も前から放置され出したサウスダンジョンは、すでにモンスター達で生態系確立してしまっている。
そのために生息地や出現場所などが、ある程度分かれている為、
場所によっての武器変更で対応が出来るのだが、ジンが今いる場所は、一階にいるはずない敵、
ドミニオン背徳者が徘徊し、三階にしかいないはずのシュバリスや、赤い鳥ホウオウもいる。
「一階の敵が上へ登ってきたのか」と考えながら、ジンは再び身を隠しつつ、出口へと走った。
おかしい。モンスターの数も普段倍以上で、進めば進むほど知らない空気が広がる。
人によっては恐怖を感じるだろう。
だが、今生きている恐怖より、目の前に迫った死の恐怖の方が怖いということを、ジンは何より知っている。
だから、こうして知らない場所を走り、怖いと思うことは何より生きている証であり、生き残る意味での未来がある証明だ。

神経を削り、ようやくジンはサウスダンジョンの南西、半分まで来た。
酷く敵がおおい、見つからなかったのが奇跡なぐらいだ。
隅の資材の影に身を隠し、ジンは数分の休憩を挟む、普段から定位置に座り、スコープ覗いているので長距離を走るのが苦手だ。
本部に入ってから大分鍛えた方ではあるのに、ダンジョンになるとやはりからっきしだ。
出来るだけ小さくたくさんの空気を取り込み、ジンは職服の袖口で汗を拭った。
あとは直線距離。ここを抜ければ出口だ。息を整え、ジンは敵の視線が逸れたところで再び走り出す。

嫌な予感がする。
恐怖からなのかもわからないが、"ナビゲーションデバイス"のゲームアプリのパズル系で遊んだ時にこんな感覚になる。
最初はいいのだ、ただ触るだけ、いじっていれば道が見えてくる。
だが、知らないうちに泥沼となり、見えていた道が完全に消えて無くなってしまう。
結果クリアできず、未だ殆が放置状態だ。元々、パズル系は苦手なのだと思っていたが、今ここでそれを感じたのは何故だろう……。
そうやって、ジンはゆっくりと長い距離を進む。
元々重い銃がさらに何倍も重く感じ、かなり疲労していると分かり、出口まで持つかどうかは分からない。
でもそれでも走らなければと思い、次の物陰へ移ろうとした時、線路の段差に気づかず、ジンは前方へつんのめった。
これが引き金となり、後方の白い使い魔が、ジンの存在に気づき魔法を詠唱。
連鎖的に、背徳者、ネクロアーマー、ホウオウとこちらを見る。
すぐ様態勢を立て直し、発砲した。

浮遊するネクロアーマーは、硬い鎧でこちらの弾丸を弾きながら向かってくる。
予想できない跳弾は危険が伴うため、ジンはホウオウの足を撃って、追いつけなくしたあと、背後を気にしながら駆け出した。

前方にも更に敵。風属性のシュバリスだ。
魔法を唱えさせないため目を撃って潰す。全力で逃げ、ジンは出口まで走った。
そして滑り込むように一階の出口へ飛び込んだが、広がった景色に思わず絶句する。

海だ。空が黒い海。
空間が欠けたように、先の見えない海が、そこ広がっていた。
水はあるのに先は何もない。こんな光景見たことない。

どこだここは?

そこまで考えて、ジンは後ろの気配へ即座に身を隠す。
モンスターは入って来られないのか、ある一定領域で足を止め、バラバラに散って行った。
縄張りから外れたのか。しかし、安堵する余裕もなく、ジンは上空の黒い空にただ言葉を失うだけだった。
出口だと思っていた場所は出口ではなかった。
海はあるが、先が見えなければどこにたどり着くかもわからない。飛び込むなんて自殺行為だ。

壁に持たれ休憩をとったところで、ようやく動揺からまともな思考が戻ってくる。
海が見え空港があるということは、ここはサウスダンジョンのマルクト船着場。
一階の一番奥にある場所だ。
確かに南にある出口へ向かったはずなのに、マルクトだと……。
あり得ないが、目の前の光景を受け入れざる得ない。
それ以前に、ここが出口でないのなら、一体どこが出口だというのか。
泣きたい気分にもなり、顔をあげる。「生きろ」といいきかせて、ジンはこの場所の散策を行うことにした。
空港の構造がそのままあり、小さな小屋がいくつかある、空は黒いが、見た目は普通のマルクト空港と同じものだ。
しかし、当然の事のように人の気配がない。
外には何もなく、ジンは小屋の中を探すことにした。

「……すみません。誰かいませんか?」

誰もいない。人の気配もない。
突然現れても困るが、それでもいいから今はいて欲しかった。
銃を撃てる状態にして、音を立てぬよう小屋へとはいる。

その瞬間ジンは救われた。
酷く散らかっているが置かれているものは未だ新しい。
携帯食糧のゴミが山積みにされ、ちらちら揺れるランプもみえた。
そして、その一番奥に、まるで死んだように動かない人影を確認する。
全身黒づくめ、金属の靴に膝のサポーター。腰のガードアーマー。ハルシネイションコートだ。
さらに黒くボロボロのマントを着こんで、頭にはフードを被ったまま死んだように座り込んでいる。
最後に視界へ入ったのは黒羽。両翼が二枚という事はアークタイタニアだ。
左手には剣を持っていたのか、離され床に転がっている。
ジンは驚き、銃の安全装置をかけタイタニアへ駆け寄った。
まだ息がある。

「おい、大丈夫か!?」

返事はない。諦めず体を揺らすが、反応がない。
根気よく何度も呼びかけ、ジンは起こすために銃を使用することにした。
ボロボロの天井へ向けて、意味なく発砲。すると、タイタニアは銃声に驚き少し身を揺らした。

「大丈夫か!?」

ゆっくりと青い瞳が除く。その目は死んでいた。
生命感を感じない深い瞳。それを確認した直後タイタニアは、ジンを突き飛ばした。
武器を拾った相手に、ジンは反射的に拳銃を掲げて振り下ろされた刃を受け止める。

「ご機嫌よう……天使さん!」

ギリギリと震える腕。重い……。
しかし起きてくれたことは嬉しい。殺されるのは勘弁だが……。
がむしゃらに剣を振り回しタイタニアがジンを小屋の外へ追い出した。
そこでは終わらない。
タイタニアは一度ジンの元を離れ羽ばたいて飛び立つ、実に優雅だ。
しかし、唱えられたスキルに驚いた。口でスキル名は言わないが見ればわかる。

"スタイルチェンジ"と"神の守護"、ジョーカーだ。

向かってくるタイタニア。殺気は本物だ。
此方を全力で駆逐する気だろう。なら迎え撃つしかない。
威嚇射撃を行う。旋回する相手に当てられるとは思ってはいない。
が、あるタイミングでこちらへ真っ直ぐに突っ込んできた。
無垢だ。ここにくる前の自分なら、間違いなく身を守るために打つだろう。
だが、極限状態で見つけた生命がこんなにも有難いとは思えず、ジンは撃つことができなかった。
この相手なら殺されてもいいと始めて思った。自分の分まで生きてくれとそう思った瞬間、

刃の先端が首に触れた時点で、剣が止まった。
ジンの指先はトリガーから離れつつも、タイタニアの額へ向いている。

「大丈夫か? 天使さん……?」

ジンが銃を手放したと同時に、タイタニアも剣を落とした。

「人間……? 敵ではないのか?」
「あぁ……。助けにきたわけじゃねぇけどな」
「……!?」

すると気を失うようにタイタニアは倒れる。ジンはそれを支えて、彼を小屋へ連れて行った。
その後タイタニアは眠ってしまい、ジンは空港の物資を漁る。食料は大量にあった。
コンテナからマガジンがまるごと出てきたり、矢束もあれば鉱石まで、
必要なものが要らないほどにそこにあって、タイタニアもこれで生活していたのだろう。
使用した分の弾丸を補充し、タイタニアが目覚めるのを待っていると、約五時間後。彼はようやく目を覚ました。

「大丈夫か?」
「……」
「返事ぐらいしてくれ……」
「……」

まるで口が聞けないのか、呆然と天井を眺め、ジンは会話を諦めた。
体を起こしたタイタニアへ見つけた加工食品を渡し、自分もそれを食べる。

「……貴方は?」
「エミル・ガンナーのジン。あんたは?」
「……タイタニア・カナト」
「ここで何してたんだ?」
「……戦っていた」
「なんで?」
「……外に出たかった」
「あんたもここに落とされたのか?」
「……落とされた?」
「どうやって、ここへきたんだ?」
「……分からない。気がついたらここに居た。落ちはしなかったと思う」
「そうか、出口はねーの?」
「……さがした。だがない」
「反対側の入り口は?」
「……空間が途切れている。先に進めない。見えない壁だ」
「そうか……。いつからここに?」
「……分からない」
「サウスダンジョンへきた理由は?」
「……討伐の仕事。ホウオウの羽の採取」
「討伐ってことは、暦の初めに一斉に開始されるやつか。
どんな時期に受けて、参加した?」
「……数日前に申し込んで、初日から、採取はついで」

そこまで聞いて、ジンは自分のナビゲーションデバイスを確認した。
圏外でも自立的に動く時計は7日を示している。一週間か。

「お前のナビゲーションデバイスは?」
「……三日目で電池がきれた」
「そうか……約一週間経過している。俺はここにきてまだ12時間ちょっとだ。外は夜だな」
「……そのうちそれの電源もきれる」
「きれる前に出ればいいだろ?」
「……出口はない」
「探せばいいじゃねーか」
「……もう探した」
「諦めるなよ」
「……疲れたんだ」

この言葉でジンが押し黙る。散々探したと言いたいのだろう。
たしかにコートはボロボロ、アーマーも傷だらけで、何もしていなかったわけではないらしい。
単純計算で150時間以上ここに居れば、たしかに諦めたくなる気持ちも分かる。

「ここから下の階層は?」
「……分からない」
「入り口はあるのか?」
「……見つけた」
「行ったか?」
「……行ってない」
「なんで?」
「……奥へ行ってもやることがない」

ごもっともだ。
出口を探しているのに、出口から遠ざかってどうする。

「俺が落ちてきた場所の天井。真っ暗で何も見えなかったんだけど、もしかしたらあの上が出口とか」
「……見えないぐらいに高いだけ、天井は有る」

浮遊できる相手に反論できないか。

「なら一度奥に行ってみようぜ? 出れるかもしれない」
「……どこから?」

痛い質問だ。確かに地下へ降りてどうやって地上にでろというのか。
うつろな瞳で淡々と返答するカナト。
そういう性格なのか、それにしても言葉の一つ一つに心が見えない。

「ここが出口じゃないなら、逆に行き止まりの場所が出口ってこともあり得るって」
「……」

突飛押しもない発言に理解を諦めたのか、カナトは返答を寄越さなくなった。
確かに無謀だと自分でも分かっている。
もし行き止まりで、モンスターに囲まれてしまえば、今度こそ命を落としかねない。
床へ座り込んでしまい、ジンは加工食品頬張った。

「……ここに出口はない」
「おまえはここから出たくないのか?」
「……そう願った。だが、なぜそう願っていたのか、今はよく分からない」
「お前……」
「……デバイスの電源がきれたとき、私は絶望した。ここの食料を口に含むことにすらすでに意味を感じない」
「死ぬぞ」
「……死とはなんだ? ここから開放されるのか? 開放されるなら、それは救いではないのか」

その瞬間。ジンは銃口を向けた。
カナトは微動だにしない。むしろ撃ってくれと言わんばかりだ。

「俺の前で安易な死を口にすんな」
「……お前が言ったことに答えただけ」

ダメだ。感覚的にこいつは心が死んでいると察す。
喜、怒、哀、楽、この四つが完全に抜け落ち、1の言葉に1しか帰ってこない。
ネガティブなどという生半可言葉では表現出来ないほどに、カナトとの会話は一方通行だ。

「うたねぇよ馬鹿」
「……」
「お前は何も感じなくなったのかもしらねーけど、俺は諦めたくない。生きたい」
「……」
「だから、カナト、俺に付き合え。お前が、死を救いと考えるなら、それは奥へ行ってから決めるべきだ。その方がずっと清々しいだろ?」
「……」

カナトの言葉がなくなった。
希望を持たせることが出来なくても、ジンは奥へと行きたかった。
それに、ここまで自分に興味がない相手なら、裏切られることもない。

「……分かった。言う通りにする」
「サンキュ、じゃあちょっと実包探してくるわ。それちゃんと食っとけよ。やるからには中途半端は許さねぇ」

そう言って、ジンは小屋から出て行った。
手元にある携帯食糧は軍用の少量で済むもの、これを持ってきたということは何処かの組織に所属しているのか。
ふと目の前の棚をみると、電源の入ったナビゲーションデバイスが置かれている。見ていて持って行くのを忘れたらしい。
カナトはそれを手にとり、小さく刻印されている治安維持部隊の紋章に納得した。
治安維持部隊。アクロポリスの自治組織の一つだ。
さらに画面をみると、外界の最新ニュースが一日前で終わっている。
久しぶりに見た情報は、アイアンサウスが軍力の増強を測っているというものだった。
ジンがここへきたのは、治安維持部隊の任務か。

「カナト、俺のデバイス……って勝手に見てんじゃねぇよ!」

取りあげられてしまった。
よく見れば職服だし、部隊にいたと言うことは見ればわかることだったか。
怒るほどの内容でもなかった気がするのに……。

「見た?」
「……?」

見られたくないものが在るらしい。何も答えないカナトに、ジンはホッとしたのか。
「食っとけよ」と再び言い残し、出て行った。

その後カナトは三日ぶりの固形物を口にする。
すぐ出るのかとは思ったが、ジンは疲れたので一日休むといいだし、結局その日はもう一日小屋で過ごした。
驚いたのは外であるにもかかわらず、昼夜がない。
空が黒いためか、吸い込まれそうにも思えた。
たしかにここで一週間は気が狂ってもおかしくないのかもしれない。

「カナト」
「……?」
「おまえは、どこ出身なんだ? 天界だよな」
「……アクロポリス、父が堕天で私はこの世界で育った。
天界には行ったことはない」
「あれ、そうなのか。でもアークタイタニアなら貴族だろ?」
「……勘当されている」
「へぇー……。評議会には登録してないのか?」
「……父がいるので遠慮した。未所属」
「ふーん。親父さん偉いの?」
「……天界におけるルシフェル。外交官だ」
「めっさえらいじゃねぇか……」
「……」

ここまで答えたところでカナトがこちらを見た。何も言わず「お前は?」と聞かれていたらしい。

「ファーイースト出身の一般人だよ。悪かったな」
「……治安維持部隊?」
「アーチャー部隊所属。"実働兵"エミル・ガンナーのジンだ。一番下っ端な」
「……」

あからさまにつまらない顔をされ、ジンが目を逸らす。
マガジンの補充を終えて、ジンは背中の回転式拳銃の弾丸も入れ替えた。

「というか、ジョーカーさんなんて始めて見たよ。いるもんなんだな」
「……ジョーカー?」
「カナトの職業だよ」
「……未所属だが?」
「未所属の冒険者を、俺の所属する治安維持部隊はジョーカーっていうんだ。イレギュラーな存在って意味で」
「……」
「常識だぜ、覚えとけ、タイタニア・ジョーカーのカナトさん」
「……評議会の決め事は気に障る」
「じゃあ、好きにしろよ」

そういって、ジンは銃の準備を終えた。
ここが死ぬ場所になるか、それとも奇跡が起きるのかは分からない。
だが、生きるときめた気持ちは揺るがなかった。

「貴様の生き様、見届けよう……」
「あぁ、最後までみとけ!」

強化スキルを唱え二人はマルクト船着場をでた。
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本編 | 【2012-09-13(Thu) 18:00:00】 | Trackback:(0) | Comments:(0)
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