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反逆の大地-Hells of Rebelion- 第十一話:神の審判
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【連載】詠羅×リュウド×ラフォル リレープロジェクト
反逆の大地-Hells of Rebelion-

第十一話:神の審判

*目次
第一話:始まりの離別
第二話:世界のあり方
第三話:捜索と出会い
第四話:冥界と言う世界
第五話:2つのあり方
第六話:偽りの仮面
第七話:結論。そして旅立ち
第八話:開戦
第九話:機械の人間
第十話:孤高なる決意


 著:リュウドさん

「てめぇ……!」

 青褪めた光に満ちた洞窟の中、フリーデンと対峙するラフォルが吠える。

「既に手遅れなのだよ。君がここに来ることは、想定より多少早かったが、結果を変えるほどでは――」

 言葉の途中、
 ラフォルは爆発的な勢いでフリーデンに向って突進していた。
 振り抜いた剣に、不可視の障壁の感触。

「ソレも見飽きてんだよぉ!!」

 転瞬、手数と速度を重視した超高速の連撃――百鬼哭が両者を阻む領域を一瞬で食い破る。息つく暇も無く繰り出された斬撃を戦斧が阻み、両者の間で激しくぶつかり合う。
 鬼気迫る表情で凄まじい攻勢を繰り広げるラフォルは、そのままフリーデンの身体を弾き飛ばす。

「おらぁ!!」

 追撃とばかりに咆哮し、己の身体を弾丸に変えた凄絶な刺突を放つ。
 だが、迫る脅威を前に、フリーデンは眉一つ動かさない。
 剣先が胴体を貫かんとしたその時、特有の発光と共にフリーデンの姿は消えていた。
 ――オールター!?いや、今の光はテレポートか……!!

「見え透いた隙に愚直に飛び込む、学習しないな君も!」

 ラフォルの後方へ転移したフリーデンが左手を振り上げると、何もない空間に無数の剣が浮かび上がる。魔力で生み出されて物質化した無数の剣は、フリーデンが腕を振り下ろすと同時に、超高速の弾丸と化してラフォルへと襲い掛かる。

「おせぇんだよ!!」

 ラフォルは繰り出した突きの勢いをそのままに、身体を捻って跳び上がると背後から迫る魔法の剣をすべて叩き落とす。

「どうした?急がなければ君の大切な人が先にくたばってしまうのではないか?」

 せせら笑うフリーデンを他所に、着地して体勢を立て直したラフォルは剣を構える。
 フリーデンの言う通り、時間に制限があるのはこちらだ。
 ――だがそんな挑発に乗ってやる必要もない。
 頭を冷やしつつ、その目には燃える闘志を滾らせてフリーデンを見据える。
 相手は強い。だからこそ、激情に任せて迂闊な攻撃を行うのは、致命的な隙を生み出しかねない。

「かかってこないのか?まさかあの程度で怖気づいたのかね?言っておくが、この程度の芸当は私にとって序の口も良い所だぞ」

 常套句のような煽りに思わず笑いが漏れる。

「はっ……わざわざそんな言い方をするってことは、あんた焦ってんのか?」
「フフッ……口の減らない――生意気だな小僧!!」

 そう煽り返すと、フリーデンはその顔に一瞬怒気を浮かべる。
 ――よし……冷静に、何時も通りの戦い方を思い出せ。もっと強い奴等と、幾千も剣を交えてきた筈だ……!
 ラフォルは、改めて黒銀の剣を構え直す。
 もう、ソリッドオーラ等貼らせる隙など与えはしない。それは相手も理解しているのか、じっとラフォルの挙動に注意を向けている。
 ジリッと踏み込み足の軸をずらし、それに反応したフリーデンの隙を見逃さない。
 神速の踏み込みから一刀、フリーデンは戦斧でそれを受け止めると、同時に虚空から死神の鎌を生み出す。
 反撃を予期して十全に構えていたラフォルは、命を刈り取らんと迫る鎌を這うように躱し、地についた左手を軸に勢いよく旋回して敵の足を打ち払う。
 しかし、フリーデンもそれを読んでいたかのように跳躍して足払いを回避する。だが、至近距離で宙に浮き無防備となったフリーデン。足払いの勢いをそのままに、ラフォルは旋風の如く回転し剣を振り抜く。それでもなお、その刃はフリーデンを捕らえることはなく、テレポートと共に発生した光を打ち払うのみ。

「そう……来るよなぁッ!!」

 不可避の一撃を避ける転移魔法。しかし、ソレも何時使うのかが分かれば驚異ではない。
 転移先に現れたフリーデンが着地するよりも早く、無理な体勢で全身が悲鳴を上げるのも構わず、全力で地面を蹴り身体を弾く。

「チッ……小癪なガキめ!!」

 フリーデンが忌々しげに舌打ちをして、魔力の塊を機関銃の如く放つ。
 迎撃に放たれた魔力弾――フォトンランチャーを全て叩き落とし、そのまま振りかぶった剣を打ち込むかと思えば、ラフォルは急速に速度を落とし、間合いの手前で剣を振り抜いた。

「……!?」

 予想外の動きに、フリーデンの戦斧は空を切る。
 対して、間合いの外で振り抜かれたはずのラフォルの一閃は、真空の刃を生み出しフリーデンを斬り裂いた。
 初めて受けた明確な傷にたじろぎ、キッとフリーデンが前方を睨むが、ラフォルの姿は既にない。
 足元に浮かぶ影に気付き頭上を見上げると、そこには剣を振りかぶった姿勢のラフォルがいた。

「堕ちろぉおおおおおおお!!」

 そのまま上から押し潰すように、グラディエイター最強のスキル、ジリオンブレイドで嵐のような剣閃を放つ。

「ぐぅ、ぉぉぉぉおおおおおおおおおおお!!」

 ここに来て遂にフリーデンは吠え猛り、手に持つ戦斧を荒々しく振りかざして、ジリオンブレイドに対抗しようとする。
 だが、防ぎきれなかった剣閃の数々は、戦斧の防壁を掻い潜り、四肢に、鎧に、覆しようのない傷跡を残していく。

「お、おのれぇえ!!」

 叫びを上げるフリーデン。完全に至近まで肉薄した両者は、黒銀の剣と戦斧で鍔迫り合いの姿勢となる。
 直後、ラフォルの握る剣の力が弱まり、それに引き込まれるようにフリーデンの戦斧が前方に絡み取られる。
 そして、次の瞬間フリーデンの戦斧は宙空を舞っていた。
 その光景に、フリーデンはこれまでにない驚嘆の表情を浮かべる。

「とったぁぁああああああああ!!」

 ラフォルが、振り上げた剣をそのまま袈裟懸けに振り下ろすと、ドミニオンの偉丈夫は鮮血を散らしてその身体を大地に沈めた。
 地に伏したフリーデンを一瞥し、ハァッと息を吐き出すとすぐさまドラッキーの元へ駆け出す。

「ドラッキー!!今助けるからな!!」

 そう言って祠へ近付こうとするラフォルの背後から、それを許さぬ強烈な殺気が突き刺さる。
 反射的に振り向くと、眼前には魔法剣が迫っており、咄嗟に防ぐが全ては防ぎきれず身体を掠めて行く。

「なるほど……見事だよ……私も君の力を見くびっていたようだ。奥の手を秘していた非礼は詫びよう」

 確実に致命傷を与えたはずのフリーデンが、死人のような顔にも関わらずそこにハッキリと立っていた。

「ッ……!ネクロリザレクションか……どこまでもしぶとい奴だな……!!」

 周囲に凄まじい圧力と殺意を充満させ、唐突にフリーデンは語り始める。

「六年前だ……この鉄火山エネルギープラントが生成するエネルギーの中に、不可解なエネルギーが混ざっている事に気付いたのは。私は、その力をどうにか抽出し、有効に活用出来ないかと考えた……だが、その膨大な力と制御できない不規則さには、研究を続けるほどに翻弄されていったよ」

 悠長に話しているはずなのに、突き刺さる強烈なプレッシャーで身動きが取れない。

「……それと、この破壊神の復活と何の関係がある」
「あるさ。プラントのエネルギーについて更に調べるうち、この冥界に封印された破壊神の存在に行き着いたのだよ。最初は驚いたがね……王族のみに伝わるとは言え、所詮おとぎ話にしか思っていなかったことが真実だったのだからな。そして考えた、私が本当にしたかったことを……エネルギープラントの力を解明し、DEMを倒すことなのか、と……いいや違う、違う、違う違う違う違う違う!そうではないのだ!!」
「ッ……!?まさかてめぇ……!!」
「眼を逸らし!ずっと自分を誤魔化し続けていた!!だが破壊神の存在を知った時に、私は気付いた!!私が本当にしたかったこと!!それは、この不条理で!無価値な世界に復讐する!!世界そのものを破壊することだ!!」
「その為に……同族も犠牲にするのか……」
「同族だからこそ、許せないことがあるのだ!!」
「!…………あぁ……そうか」
 いつかアルフレッドが聞かせてくれたフリーデンの話を思い出す。
「あんたの気持ち、なんとなくわかる気がするよ。でも、だからこそ!オレはオレの為に"フリーデンさん"、あんたを倒す!!」
「不可能だ。お前は今から、絶望を知る」

 フリーデンが懐から取り出したのは、紫色の宝石のような小さな石。

「これは、エネルギーの抽出の成果だ。何年もかけて、これだけしか取り出せなかった。だが、貴様を始末するには十分だ。何しろ、この力は破壊神の力そのものだったのだからなぁ!!」

 そう言うと、フリーデンは胸の傷口に勢いよく石を押し込んだ。
 次の瞬間、フリーデンを中心に、その周囲には禍々しいエネルギーと光が発せられる。
 ラフォルの背筋にゾクリとした悪寒がせり上がる。
 全身から立ち昇る紫のオーラはフリーデンの身体を包み、先程とは比べものにならない程邪悪な気配を放っている。

「くっ……!!」

 獲物を失い無手となったはずのフリーデンだが、ラフォルの心の中で鳴り響く警鐘は先ほどの比ではない。

「見るが良い。そして知るが良い、人間の限界を。ここから先は、お前に毛筋ほどの勝機もありえん」

 言葉と共に強烈な突風が吹き荒れると、ラフォルの周囲に無数の剣が展開される。
 先程までとは数も大きさも段違いであり、何よりもその色が禍々しい紫黒に染まっていた。比較的剣の密度の薄い場所へ駆け込み、ジリオンブレイドで活路を開く。だが、強化された魔法の剣を全ては捌き切れず、身体の端々が切り裂かれて行く。
 武器を構え直し警戒すると、先程よりドラッキーとの距離が離れている事に気が付く。
 ――誘導するためのレイビングソードか……!
 悠然と構えるフリーデンの動向を伺いながら呼吸を整える。

「……託してくれた武器、ここが使い所ってことですよね……!」

 キリヤナギが話していた破壊神。敵がその力を使っているというのならば、今こそイリス武器を使う時だと考える。
 ラフォルは事前にキリヤナギに教わった通り、心象エネルギーを武器に込めてイリス武器の力を開放しようと試みる。
だが、治安維持部隊が秘蔵とする武器は、ここに来て切り札としての役目を果たさなかった。ありったけ、今この瞬間、自分の心にイメージした力ある想い。それを受けてなお、イリス武器は沈黙したままなのだ。

「なっ……!?」

 驚くラフォル。だが、意識をそればかりに奪われる訳にはいかなかった。目の前では黒色の怨念が地面を爆散させながら迫って来る。

「くそっ!!」

 それが無詠唱で放たれたダムネイションだと察することが出来たが、それだけだ。
 無造作に受けるわけにはいかない。その一心で爆発する地面を掻い潜るように駆け抜け、黒銀の剣を一閃する。
 いくら強化されたとは言え、敵は無手。こちらの間合いに持ち込みさえすれば――
 だが、その想定は簡単に打ち破られる。ラフォルの渾身の一撃は、フリーデンが虚空から生み出した紫黒の剣によって受け止められていた。

「物質化しているんだ。当然こういう使い方も出来る」

 物言わぬラフォルの疑問に、それが先程まで幾度も放たれた魔力の剣であると答えるフリーデン。そして、お返しとばかりにその紫黒の魔剣を振るう。
 直感が武器で受ける事を拒否し、全力で回避行動を取った。空を切った斬撃は、刃に奔流する魔力を吐き出し、その先にある地面を大きく抉り取る。

「また武器を弾き飛ばしてみるか?今度は同じ結果にはならないだろうがな!」
「くっ……何でもありかよ!!」

 フリーデンから一旦距離を取ろうとする。しかし、それすらも許されない。
 突如足に絡み付いた黒き手の幻想。気が付けば足元に無数の怨霊の腕が這い出ており、ラフォルの身体を拘束する。
 地面に貼付けられたラフォルに迫る魔剣の一撃、腕を十字に重ね、左腕の盾でその一撃を受けるが、その衝撃は胴体を貫き、盛大に吹き飛ばされる。更に吹き出した魔力が、盾で防ぎきれない身体の端々を削り取って行った。

「っ……ゴホッ!」

 外壁に叩き付けられ、思わず血反吐を吐く。
 無論、それだけで済むはずがない。
 立て続けに放たれる闇色に染まった魔力の弾丸が、無防備になったラフォルを打ち、受ける鎧は軋みを上げる。

「ハハハハ!どうした?さっきまでの威勢は、私を倒すのではなかったのか?貴様が倒れていては逆ではないか!!」

 ラフォルは、嬲るようなフリーデンの攻撃をただひたすら受け続けるのだった。



著:詠羅

部隊本隊は引き続き前線を維持していた。上空の庭で見守る彼らにも徐々に安堵の表情が見えはじめ、治安維持部隊の本隊はDEM軍を押し返しつつある。

「皇国軍側。引き続き防衛線の維持を確認。拮抗しています」

 平原の楔が発動してから、それなりの時間が経過していた。皇国軍は地上部隊の約半数失い、その戦力を削がれつつも辛うじて前線を維持している。動きがおぼつかないDEM軍を蹂躙し、僅かに押し返しているように見えるものの、数において絶対有利のDEM軍の戦力は留まることを知らない。また南の改革軍側も確認すると、こちらは楔による損壊が3軍の中でもっとも大きく、逆に劣勢の状態が確認された。

「いっそ、旧アクロポリスへの直接攻撃は?」
「何度か試みましたが、都市を囲むバリアに阻まれてダメージが入りません」
「都市そのものに『ブロック』は入れれない?」
「魔法を構築しているデバイスを、都市内部から破壊する必要があると思われますが……」

 斥候が必要か。生産ラインの破壊のついでに破壊できないのだろうかと疑問にも思う。だが、状況的にその考えはすでに遅い。

「一度、一番、二番艦を隊に帰還させよう。十一番、十二番艦を皇国軍へ。もしかしたら独自に連絡をもらっているかもしれない」
「『了解』」
「あと、南側が火力的に余剰してると思うんだけど、ホライゾンどう思う?」
「……確かに改革軍勢との重複ポイントで、ある程度は問題なさそうですが、こちらの戦力に後がない以上、推奨はできないかと」
「……まずくなれば戻せばいい。ここで改革軍ともうまく接点が取れたら、それだけでいい土産話にもできるだろうし」

 ずいぶん野心的な話をしていると、ホライゾンは少しだけ呆れた。そんなホライゾンが戦場を俯瞰すると、西から南アクロニア平原にかけて扇型に展開する治安維持部隊は、前と後ろの二列に分かれ、入れ替わりで迎撃に臨んでいる。この弾幕は当初の予定だと一列約十機で届くだろうと目測されていたが、並ぶ庭の最低距離で踏まえると予想よりも狭く、当初より広がった扇形に展開することになってしまった。よって当然のごとく一番隅になる四機は火力が余剰する。セオも同じくそう判断したのか、余剰した庭にあえて他軍の掩護に回らせることで、迎撃範囲を増やす選択肢を取ったののだろう。

「僕なんか変な事言った?」
「いえ、良いとは思います」
「じゃあ九番、十番、十九番、二十番艦は本隊と距離を取り、南アクロニア平原側の迎撃の援護に向かって、南西フィールドは七番、八番、十七番、十八番が引き続きローテーションを組んで迎撃」

 各艦から応答した後もキリヤナギは映像を見て、何かを考えている。指揮官らしくなっているとホライゾンは感心もするが、この役目のほかにキリヤナギはやるべきことがあるとホライゾンは分かっていた。

「鉄火山に、行かなくてもいいのですか?」
「……えっ、何。突然」
「カナト君のウイルスのおかげで、殲滅に苦労はしていません。大丈夫ですよ」
「だけど、あれはこっちが終わってから行くつもりで……。どちらにせよ、庭がないと移動できないし、前線を張ってる庭を使ってまで移動できないよ」
「実は私の権限で、小型の移動用の庭を一機、飛空城に格納して転送しておきました」

……。

「……は?」
「移動用として手続きしたので砲台がなく、一機としてカウントされませんが、旧式のモーグ炭を使うものを用意したので馬力がありますし、こちらの庭よりもかなり高速で移動できます」
「ほ、ホライゾン。ぼ、ぼく、君が何を言ってるか分からない」

 ホライゾンの優しい笑みは普段のものだ。それは何かを見透かしたような、やりたいことを全て理解されているような笑みで、キリヤナギは時々それが怖くなる。でもそれはホライゾンなりの気遣いでもあって、

「大隊の指揮は私が、お任せを。総隊長」

 こんな時、彼はとても頼りになる。リング時代からそうだった。キリヤナギがどうしても手が回らないとき、外せないとき、彼はその時の全てを引き受けてくれる。今回もそうだ。前線にいなければいけないキリヤナギの代わりに替わってくれようとしている。

「いいの?」
「指揮を続けたいのなら、無理には言いませんよ」

 感情論を持ち出されたらもう何も言えなくなってしまうじゃないか。素直にずるいと思うが、これが何十年もの間ランキング1stにあり続ける彼の本領でもある。

「わかった。行ってくる。ありがとう、ホライゾン」

 優しい彼の笑みにキリヤナギは気持ちが前向きになる。これから向き合わなければいけない問題の為にもキリヤナギは手元のピンマイクに声を通した。

「『これより、艦隊の指揮をホライゾンに移譲する。全艦は速やかに指示に従い、迎撃を続行せよ!』」
「『はー!! またかよ。キーリ お前本当だらしねぇなー!』」
「『えっ、ヴァル? みんな聞いてるんだから――……』」
「『お前今回こそ全部やるって言ってた癖に、そういうところがダメなんだよ。ちゃんと責任感を持った方がいいぜ?』」
「『みんな聞いてる中、ダメだしとか本当勘弁して!』」

 年上の皆は呆れている。また他の部隊員達もなぜかそのやり取りに笑っていた。張り詰めていた空気が一気に壊れ、一転して緩む。これが冒険者たちの普段のやり取りだからだ。

「『でもま、気を付けて行って来いよ。前線は引き受けたぜ』」
「『……うん。みんな、後はよろしく!』」

 ホライゾンにタッチしたキリヤナギは、コウガと共に指令室を飛び出し、なぜか待機していたぬえと顔合わせした。彼女はキリヤナギの走りに合わせた速度で並び滑空する。

「ぬえ! どうしたの?」
「後ろの庭に飛び移るんでしょー! 運んであげるよー!」
「おっと、頼もしいじゃねーか。俺一人じゃきつそうだなぁって思ってたんだよなー」

 コウガに憑依するつもりだったが、ぬえの好意ならば甘えないわけにはいかない。
タイタニアの滑空力を使い支持された庭へ飛び移ったキリヤナギは、数名の乗組員を確認して、鉄火山へと向かう。内装は簡素なものだが、よく見ればエミル界の最新型のエンジンが搭載されており、ホライゾンの抜かりなさが怖くなった。

「えへへー、リクライニングルームもあるよー!」
「あれ、ぬえも来るの?」
「うん、大戦飽きちゃったし抜けてきちゃった」

少しだけ前線が不安になったが、彼女はランカーなので誰も文句が言えない。ぬえの自由奔放な性格は部隊でも有名だからだ。
ゆっくりと遠のく前線をキリヤナギは見送ろうとするが、コウガはそれを立ち塞がるように止める。

「前を向いていこうぜ、隊長!」

コウガの言葉に、キリヤナギは振り返るのをやめた。目指す場所を見るべきであると。

「行こう」

キリヤナギを乗せた高速船はエンジンを最大限に蒸し発進する。



「さて、この辺りかね」

 キリヤナギが鉄火山に向けて出発した同時刻。カロンは再び空にそびえるその尾ひれを見上げていた。巨大なインスマウスの尾ひれのようなそれは、七色に輝いているようにも見えて、綺麗という感情すら出てくる。

 「よっしゃ、やるか」

 カロンが身構えた時だった。グランジがすでにイリス武器を右手に携えており、唐突に唱える。

「『ヴァン・スピアニア!!』」

 鮮血の鮮やかな赤をまとったそれが天空の尾ひれへと強襲する。だがそれはジンが以前見たものとは違い、小さく減衰されているような見た目をしていた。

「仕切り直しぐらいさせろ!」

 カロンの突っ込みを無視したグランジだが、直後まるで笛を吹いたような高い鳴き声がその場に響き渡り、床が揺れに襲われる。そして三人の足元へ七色の魔法陣が展開した。とっさに散開して回避した瞬間、地底から大爆発が起こり、更に空から『サンダーストーム』による落雷が発生する。まるでピンポイントで飛来する落雷に、三人は迂闊に森林に戻れず回避に追われた。

「なんじゃこりゃ!!」

魔法の規模が明らかに違う。本来シャーマン系の魔法は地面にから鋭利な棘を突き出したり、空から電撃が僅かに降る程度のものだが、今狙いに来るそれは地面が割れて溶岩が吹き出し、落雷は悠遊と木々を真っ二つに焼く。魔法が打たれる度に回避場所が減り、地面がなくなってゆく。

「しゃぁねぇ! 『メフィスト!!』」
「!!」

カロンの手に、悪魔をかたどったハンマーが手に宿る。またそれと同時に真っ黒なギザギザの口を持ったカバのようなものが姿を見せた。

「『ボミングフォール!!』」

大口を開けた悪魔・ファウストから真っ黒な砲丸が複数発射された。命中したのか花火のように爆発し、鳴き声はさらに甲高く響く。

「当たってんのかアレ!」

巨大さゆえ、距離が離れすぎて攻撃が入っている気がしない。落雷の的にならないよう三人が崖影に逃げ込み、ようやく落ち着いたかに見えたが、天空に深紅の魔法陣が輝き始め、爆発。木々に火を放った。

「うっそだろ!!」
「ちっ、アルカード。イリス粒子は?」
「相変わらずですわ」
「……ジン!」
「へ? グランジさん!?」
「……使えるか?」
「でも、イリスないんじゃ……」
「俺がサポートする」

 グランジの言葉にジンは返す言葉が見つからなかった。そして彼に言われるがまま、武器の名を呼ぶ。

「ワーウルフ!」

 途端。スィーが言っていた意味を理解する。使えばわかると言われたそれは、自分の脳裏にスキルの具現イメージが浮かび、発動方式が感覚的に入って来るものだった。マニュアルに記されたスキルとは違う。どうすればそれが出現するかわかる。

「……敵が攻撃を受けた瞬間を思い浮かべろ」

 ハタから見ればそんな説明で分かるわけがない。が、この武器はそれが分かる。空を仰ぐを尾を見上げたジンは、それを目指して、叫んだ。

「『ウルフ・オブ・チェイン!!』」

そのスキルの叫びに呼応するように、七色の尾の周辺から無数の黒い鎖が出現。まるでがんじ絡めにするように、破壊神の尾を縛りあげた。
カロンがガッツポーズをする中で、グランジが、懐から緑の数枚のカードを取り出す。

「イリス・アサルトエンハンス!!」

グランジが一気に六枚のカードを弾き、砕いた。途端周辺に満たされた力は手元に展開していたイリス武器に集約する。

「刻め!! 『ブラッティ・ストーム!!』」

イリスカードのエネルギーを吸収したイリス武器が、抑制されたその力を一気に放出する。鎖によって縛り付けられた『破壊神』を、巨大な赤い竜巻とズタズタに切り刻まれた木々が殴りつけた。赤い防風に視界が奪われる中、飛んできた大木にジンが巻き込まれそうになるも、カロンが抱えて退避する。抱えられたジンは、木の上に飛び移ったカロンと共に、再びその巨大な『破壊神』を見上げた。

「やったか!?」

 ゆっくりと冴えてくる視界の中、『それ』は再び高い声で鳴く。自分を縛る鎖を、いとも容易く引きちぎり、『破壊神』は更に天空へ無数の魔法陣を呼び出した。そして、

「げぇっ」

 その全てを放った。

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本編 | 【2019-04-12(Fri) 20:00:00】 | Trackback(-) | Comments:(0)
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