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Royal*Familiar:第五話
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Royal*Familiar

第五話:望みの代償

前回
第一話:決意の序章
第二話:別離の序章
第三話:再開の対価
第四話:策略の輪廻


 

リフウは一人、豪華な円卓のある部屋でソファへと座っていた。
赤いじゅうたんの敷かれた、大きなシャンデリアがある広大な部屋だ。
円卓にはたくさんの食べ物が並び、テーブルの脇には光を反射して輝く、銀食器も置かれている。
部屋のありとあらゆる場所にはピアノや、楽器、小さなステージまであって、人数がいれば簡単な舞踏会も開催できそうだ。
しかし彼女は、そんな部屋にひとりきりだった。
他に誰もいない。時々使用人が現れて料理の状態をチェックして帰っていく。
まばらに置かれたソファに腰掛け、クッションを抱えながら、ずっと一人考え事をしていた。
どのくらいここに居なければならないのだろうとか、
ラファエルはどうなるだろうとか、結局、姉に会うことはできなかったとか、
後悔と自分の未熟さと悔しさが、ずっと胸でぐるぐる回る。
メロディアスはどうするのだろう。
レミエル・ギルバートは、ラファエルの家督を預かるといった。
しかし、預かっていられる期間にも限界がある。
リフウが考えられる期間はおそらくラファエル・セレナーデが絶命するまでだ。
セレナーデが他界すれば、レミエルは嫌でもラファエルの権限をフィランソロに返さねばならない。
本来ならリフウがその後を継ぐつもりだったが。
リフウは今ここにいる。
レミエル、ギルバートはおそらく、リフウをいないものとし自身の権限がシャロンへと移るまで意地を張るだろう。
そうすれば、リフウはもうここで一生暮らさなければいけないことになる。

憂鬱だ。
覚悟していたとはいっても、このまま一生ここで暮さねばならないと思うと、同ともいえない気持ちになる。
これからどう生きていこうかと、リフウはため息をついた。

時刻はもう夕食時。
食べなければいけないのに、食欲はわかない。
むしろこんな場所で、生きるために食べて何の意味があるのか。
このまま絶食して、飢え死んだたほうが、レミエルに一泡吹かせられるのではないか。

そう思っていたとき、部屋の入口が二名の使用人によって開かれた。
現れたのは、先ほどの紫の翼をもつ、金髪の相手。ギルバート・フォン・ジェラシアだ。
リフウは、現れたレミエルに、スカートをつまんでお辞儀をすると、彼の元へ歩み寄る。

「ご機嫌は如何かな? リフウ姫……」
「私に……何か御用ですか?」
「そう、ご機嫌を崩されず……。つまらないものではありますが、貴方様に少しばかり手土産をお持ちしました」
「手土産……?」
「えぇ、……でもその前に、リフウ姫殿下。貴方がエミル界を支配ではなく、和平という形で愛されているということは、先ほどの話で分かりました。僕もさっきは感情的になりすぎた、その上でもう一度言いたい」
「……」
「ラファエルを継ぎ、どうか僕の妻として、天界の発展に貢献していただけませんか?」
「私は……姉が嫁いだメロディアスを裏切ることはしません。貴方が私をここへ閉じ込めている限り、私がお母様からラファエルを継ぐことはないでしょう」
「そうですか……。仕方がないですね。これから貴方はずっとここへ住むことになる、その為にこれを心の癒しとしてこちらをお受け取りください」

ギルバートは、懐から小さなデバイスを取り出すと、リフウの前にサイバーインターフェースを拡大して展開した。
そして、そこへ一枚の写真を参照する。

それを見た瞬間、リフウは絶句した。
独房の様な場所に人が吊るされている事へ、まず言葉を失う。
その後に、写真への映るエミル族を理解したとき、リフウは衝動的な涙を抑えることができなかった。

「ジン……さ……」

両手を天井へ吊るされた翼のないエミル族。
毎日一生懸命セットしている髪は無様に乱れ、服は殴られたのか、切られたのか、あちこち擦り切れて泥だらけになっている。
幸い血が流れている様子はない。

「今、こちらへ移送中です。日付が変わるまでにはこちらへ着くでしょう」
「どうして!! ジンさんは……彼は関係ありません!!」
「確かに、彼はエミル族だ。関係ない、でもこれからずっとここにいる貴方にとっては、きっとよき友となってくれるでしょう」
「いや、やめて! ジンさんを巻き込まないで、放してあげて!」

思わずレミエルへ飛び込んだ。
自分の所為でジンが巻き込まれた?
あんなに傷だらけでボロボロになって何をされたのかも分からない。
だが、これだけはわかる。
目の前のこの男が、ジンの生命を握っているのだと……、

「何でも、しますから……」
「?」
「彼を助けて……やめてください……」

懇願するようにリフウはレミエルの胸を叩く。
彼は、優しく彼女を抱き返し、そっと頭を撫でた。

「そうですね。今は動揺されているでしょう。明日お会いになってから再び聞かせてください」

胸が締め付けられるように痛む。
なんども心へ繰り返した。ごめんなさいと、何度も、何度も……、
崩れ落ちたリフウは、込み上げた涙を抑えられずレミエルが出て行くまで泣いていた。
ずっと……ずっと……。



****



暗い場所だった。
冷たい、小さな一つの明かりだけがある窓のない部屋。
どこだろうここは?
ジンのいる場所は、薄暗い鉄の部屋だった。
思い出したのは、命令違反をしたときに入れられる独房。それに似た部屋に、自分はいるということはわかる。
両腕が引っ張られるように痛いのは、天井の両端から両腕を吊られているからだ。
動けない。
腕の痛みを抑えるために立ち上がろうとしても、足首を床に固定されていて、立ち上がることができない。
それ以前に、この気分の悪さは何だ。
お香のような甘い香りが部屋中に漂い、ひどい頭痛がずっとする。
全身の感覚が無いように痺れ、まともに暴れることもできない。
その上に部屋そのものが時々揺れているようで、酔いのようなモノも感じた。

頭を揺らし意識をはっきりさせようとするが、頭痛がひどくてうまくいかない。
とにかく感覚で、ここに居てはいけないということだけは分かる。
逃げなければ、脱出しなければいけない。
しかしそれでも、体がほとんど動かせずどうしようもない。
このままどこへ行くのか。自分はどうなるのか、考えれば考えるほど絶望した。

すると、カベの向こうからフィルターを介すように話し声が聞こえる。
ジンはその声に全身を研ぎ澄ませて耳を澄ませた。

「”おい、起きたみたいだぞ”」
「”ち、もうすぐ到着だってのに、おとなしく寝ていればいいものを……”」
「”どうする?”」
「”無傷で連れて来いと言われている。意識がある状態で運ぶのは面倒だ。気絶させろ”」

こちらの壁から何も見えないのは、おそらくマジックミラーだからだろう。
唐突に、暗い部屋で紛れていた扉が開いた。
何をされるのかとおもったが、頭をつかまれ再び首を抑えられる。

「放せっ」

振り払おうとしても大人4人に押さえつけられる。
痛い。
顔を振って振り払ったら、膝蹴りが飛んできて腹に入った。
吐き戻しそうな痛みがきて、動けなくなる。

「護送の準備をしろ。厳重な拘束を忘れるな」

悔しい。
やっと手枷が外されても体がほとんど動かない。
体中がしびれているように痛くて、朦朧とした意識だけが残っている。

カナトはどうしているだろうか……。
リフウは無事だろうか……。

そんなことを思いながら、ジンは再び目を閉じた。

***

清々しい日差しが差し込み、カナトは”ナビゲーションデバイス”の目覚ましで目を覚ました。
いつ眠ったか全く覚えていない。
しかし、自身はベッドに横になっていて、着ているものは下着と着て来たワイシャツのみだ。
寝間着ではない為、結局うたた寝をしてしまったのだろう。
起き上がらなければいけない。
しかし、まだ眠い。

「起きたか、カナト」

目の前にワーウルフのルナが表れた。
父はどうやらうまくやってくれたらしい。お礼を言わなければいけないと思ったが、
カナトは目の前のルナの違和感を覚える。
礼装を着ているのは、確かに昨日とは違う。
そう思ったのも、ルナはカナトのベッドの上で跪いている。
跪いたルナは横になっているカナトを見下ろしているが、何かが違う。
カナトは、何も言わず、目の前のルナの身体を掴んだ。

「カナト!?」

小さい。
身長1mあるかないかぐらいだろう。
起き上がって両手で捕まえてみると、やっぱり小さい。
髪や身体つきも確かにルナだ。
しかし、小さい。

「ま、まだこの体に慣れていないんだ!」

はっとしてカナトが放すと、ルナはふわりと浮く。
まるで妖精のようだ。

「小さい」
「……小さくなりはしたが、変わってないぞ?」
「その服は、どうしたんだ?」
「バトラーが、ドール用の服を用意してくれた」
「そうか……」

小さい。
触れることができるのに浮いているのが不思議だ。
ルナの顔はカナトの手のひらほどしか無く、何もかもが小さい。

再び、色んなところを触り始めたカナトに、ルナは困惑を隠せなかった。
だが、朝起きて気がついたら小さくなっていたのだ。誰だって驚く。

「今日は、庭に戻るんじゃないのか?」

再び捕まえられたルナに言われ、カナトが我に帰る。起きたばかりで忘れていた。
解放して貰ったルナは、脇のクローゼットからバスローブを取り出し、カナトにシャワーを浴びるよう促す。
部屋に完備されているシャワー室で汗を流すと、ルナは服の着替えまで丁寧に手伝ってくれた。

「悪いな……」
「バトラーが手伝って欲しいと言ってくれた。朝は忙しいらしい」

たしかに、バトラーはハウス・スチュアートだ。
執事の中での現場監督に等しい。
目が覚めてくる中で、昨日のことがゆっくり思い出されてくる。
ジンは無事だろうか。
そう思い、カナトが手元のナビゲーションデバイスをみると、深夜に一件のメールが届いていた。
キリヤナギからで、件名は、すまない。
この時点で全てが分かる。
間に合わなかったのだと……。
しかしキリヤナギは、月光花を自宅で保護し匿っているらしい。
ジンのデバイスは、飛空城に移動してから圏外となったらしく、おそらく先に天界へ行ってしまったか。
待っておけと言ったのに、自分より先に天界へ行ってしまうとは、考えもしなかった。
しかし、キリヤナギの働きを責めることはできない。
メールの届いた時刻は、朝の4時だ。
おそらく、最後の情報が見つかるまで粘ってくれていたのだろう。
自分なんて寝てしまっていたのに……、

「カナト……」
「ルナ。朝食後に一応庭にもどる。天界へ行く以上、数日家を開けることになるだろう。手伝ってくれ」
「分かった」

そうしてカナトは、居室をでて家族の朝食の席へと向かう。
ウォーレスハイムは、情報誌を読みながら優雅な朝食をとり、カナサは寝坊しているのか来ない。
シャロンは……。

「あいつなら、カナトにメシ作るって張り切ってるぜ?」
「私にですか?」
「あぁ、気をつけろよ。腹壊す程じゃないがクソまずい」

月光花を思い出し、カナトは背筋が冷えた。
急いでキッチンに駆け込み、オムレツにイースト菌を入れようとしていたシャロンを止めて、自分で作った。
この日ほど、自分で料理が出来ることに救われた日はない。
寝坊したカナサも、ようやく起きてきて、カナトの作ったオムレツをたべた。
カナサは朝から家庭教師の授業があるらしく、急いで朝食をかきこむと、お礼だけを言って部屋をでていく。
シャロンもカナトの料理を食べて満足したのか、刺繍をやると言って出て行ってしまった。

「カナト。キリヤナギからのメールは来てるか?」
「はい、先程拝見しました」
「残念だったが、あいつも頑張ったし勘弁してやれ」
「分かっています……むしろ私は賞賛したい」
「騎士にとっちゃ、それが最高の誉れさ。本人に言ってやれ。喜ぶ」
「分かっています」
「そんで、いつ出るんだい? 俺の城なら移動時間は3時間かね」
「早くないですか?」
「レミエルの城なんて、旧式のオンボロ。あいつエミル界こねーからその辺は大雑把なんだよ」

6時間は、おそらく一般の城の話か。
確かに、頻繁にエミル界と天界を行き来するなら、必然的に早いものが必要となる。
ウォーレスハイムは行き気が頻繁であるため、早いものを使っているのか。

「天界に行くのはいいが、カナト。今のレミエルにはあわねぇ方がいいぜ……」
「やはり……そうですか」
「会うだけ無駄なのと、その場で切り捨てられるか、ジンの全てを交換条件に突きつけられるだろうな。急いで天界にいくより、ギリギリまでこっちにいて作戦練る方が安全だと思うね」

一理ある。しかし、向こうの情報が此方に届くまで大きな時差があるのは確かだ。
はやる気持ちで、天界に向かい居城へ尋ねて来られれば、逃場もない。
人質が取られた時点で、こちらに不利なのは確かなのだから、

「時差もあるが、向こうにそのデバイス持って行っても、直ぐには使えねーしなぁ」
「登録の手続きは……?」
「サーバー管理はミカエルがやってるが、あいつはある意味レミエルより危険だからな……」

どう言う意味だろう。
深く答えようとしないウォーレスハイムに、カナトは首を傾げる。
朝食を終えたカナトにルナは小さな体でコーヒーを用意してくれた。
やはり、小さい。

「父上は一体どうやって情報を?」
「ミカエルからのもあるが、代々でフィランソロに仕えている家系があってな。今回の件で、レミエルに全部吸収されちまったから、情報ながしてもらってんだ」
「それは、スパイ行為と言うことですか?」
「そうなるか? 別に向こうは隠してねぇし、知ってようが知らまいがかわんねーよ」

隠していることなら、確かにスパイになる。しかし、確かに向こうは隠そうとしていない。
大分大ざっぱな理屈だとはおもうが、納得はできる。
天界で当たり前に知られている事であるなら、自分達も知らなければおかしいし、
現に、カナトとウォーレスハイムはジンやリフウが天界へ行った事を知っているのだ。

「リフウ嬢やジンが天界にいる事を、他の七大天使の方々は知っているのですか?」
「さぁ、知らないんじゃないかねぇ。聞かれてもしらばくれるだろ。リフウ姫はラファエルの継承権を拒否し、再びエミル界に行った、とでも言い訳すりゃ、それ以上言及できねぇしな」
「ジンは……」
「連中にとって、エミル族は居てもいなくても同じだよ。でもお前とリフウ姫にとっては最大の弱点だがな……」

その通りだ。
現にジンがつれ去られた所為で、すぐに天界へ行くのは危険になってしまったのだから、

「父上、天界に付添人を連れていけますか?」
「構わねぇけど、誰を連れて行く気だ?」
「身を守る手段として、キリヤナギを……」
「あいつかぁ……確かにキリヤナギなら、うまくやりそうではあるが……あいつはエミル界の騎士だからな。だが、天界に連れて行った時点で、てめぇの元でしか、効力はないぜ?」
「分かっています。しかし、堕天・ルシフェルの息子として赴く以上、その思想や考えを納得させる為、敢えてエミル族の騎士を率いることに意味はあるかと」
「ん~、確かに異例だわな。でも俺はルシフェルの事、あんまり考えてないぜ?」
「私は、エミル界との友好を望んでおられるように伺えますが……」
「そうだな。平和ならそれに越した事はねぇ、天界嫌いだし」

つまり帰りたくないだけか。
ティーカップのコーヒーを飲み干したウォーレスハイムは、脇の腕時計を確認して席を立つ。
情報誌をテーブルへとおき、待機していた執事に上着を渡された。

「それじゃ、出かけてくるわ。出発決まったら言えよ。出航には最低1時間はかかるしな」
「はい。あの、父上、ルナをありがとうございました」
「おう、気にすんな。大事にしてやれよ」

ウォーレスハイムが出て行き、カナトもまた、外出の準備を整える。
大きめのトランクケースと、袋を数個。
ジンが居ないなら、冷蔵庫の中身を回収しなければいけない、以前一週間留守のしたときの惨状はある意味トラウマで、ジンに掃除してもらうまで手を付けたくなかったのが本音だ。
あの悲劇を二度と繰り返したくはない。

小さくなったルナを連れて、実家を出たカナトは、家のすぐ傍に庭を呼び出した。
たった一日あけていただけなのに、なぜか別の場所のようなきもしてくる。

紐をたどり、庭へとのぼったカナトは玄関の扉の脇に、黒い小さな影がうずくまる影をみつけた。
小さくふるえる彼は、ひざを抱えて座り込む。リアスだ。

「リアス……」
「か、カナト……さん」

顔を上げたリアスの目は、真っ赤に腫れている。
ずっと泣いていたのか。
リアスは、カナトをみると更に目を潤ませて泣き出してしまう。

「カナトさん、ごめんなさい。ごめんなさい、ジンさんがぁ……」
「ジン……!? 知っているのか……」
「うぅ、おれ、ジンさん見に来てて、ジンさんイライラしてて、寂しそうだったから……」
「そうか、一緒にいてくれてくれたんだな。ありがとう、やつの代わりに礼を言わせてもらう……」
「でも、ジンさんは、連れて行かれてしまいました。おれ、何もできなくて、気がついたら、聖堂で手当てされてて……」
「そうか……大人数だったのか?」
「15人ぐらいいて、倒しても倒してもどんどんでてきて……なにも……」
「そうか、ありがとう」
「これ、ジンさんの、武器……あいつら全部捨てていって……」

リアスの懐から出て来たのは、烈神銃・サラマンドラの入ったホルスター二丁と、剥き出しの自動式だった。
連れて行かれるときに、捨てられたのか。
リアスはこれをずっと抱えていたらしく、暖かくなっている。

「とにかく中へは入るといい。温かいものを出そう」
「すみばぜん……」

リアスは自分の庭で、カナトの庭へ近づきずっと帰りを待っていたらしい。
泣きすぎて真っ赤なリアスをみれば、目の前の出来事が、どれほど絶望的であったが想像がつく。

「ジンさん……今頃悔しくて怒ってる……」

そうだろう。
人質である以上、殺される事はないはずだ。
いやむしろ、死ぬまで人質として飼われるが正しいかもしれない。
500年近く生きる種族の世界に捕まったのだ。敢えて殺す意味もない。

顔が真っ赤なリアスのために、小さなルナが気を使って清潔なタオルをもってきてくれる。
リアスはそのタオルを受け取る前に、身長一メートルほどの彼をみて目を真ん丸にした。
タオルを受け取る前に両手で捕まえて凝視する。小さい。
カナトはリアスに背を向けてお湯を沸かしていた。

「カナトさんは、ジンさんを助けにいくんですか?」
「そのつもりだ。元々、リフウ嬢を連れ戻すために行くつもりだった」

「カナトさん。おれも行きたいです 」
「……天界でのエミル族はどんな扱いを受けるかわからない。すまない。リアス、巻き込みたくはない」
「いやです! おれ……ジンさんにごはん奢ってもらう約束して、まだ食べてないんです。だから……」

リアスの気持ちをカナトは汲んでやりたいと思った。
しかし、ここで彼をつれていき、ジンのように巻き込まれてしまっては、意味がない。

「少し、考えさせてほしい。すまない」
「……分かりました。立場上、難しいのは理解できますから、でも、おれは行きたいです」
「そうか……」

リアスの両手からかろうじて抜け出したルナは、すり抜けるように逃げて、カナトの足元で狼となった。
まるで怖がるように、カナトの後ろに隠れてしまう。

「カナトさん。そのペットなんですか?」
「ルナはうちの番犬だが……ワーウルフ・ロアと言うらしい」
「ロア!? カナトさんももってたんですね」
「私も?」
「治安維持部隊で何人かが使ってます。でも、人と見分けがつかなくて、誰がロアで人間なのか分かりません」

治安維持部隊が運用しているのは昨日、ウォーレスハイムとキリヤナギから聞いた。
人と見分けがつかないと言うのは、他のロアは人型をしているのだろうか

「狼になるロアもいるんですね。ちょっと驚きました」
「ルナは何か特殊らしい。私の心が転写されたときいている」
「なるほど、面白いです」

カナトの後ろにいる狼に、リアスは目線を合わせてみる。体長だけで1mはゆうに超えており、大型犬ぐらいの大きさがあると思う。

「少し片付けをしたいのだが、リアス手伝ってくれるか?」
「片付けですか?」
「ジンが戻るまで、実家に戻る。しばらく家をあけることになるからな」
「なるほど、分かりました。手伝います」
「助かる」

カナトはルナとリアスで庭を少し清掃すると、泊まりの為の荷作りを始めた。
レミエルが動くまでは、こちらも動くのは難しい。
しばらくは実家にいて、情報を整理するのがいいだろう。
冷蔵庫の中身も出してみると、運ぶのが難しいものが割とある。
フルーツジュースのパックと、ミルクのパックをリアスに持たせ、カナトは冷蔵庫の中身を実家へと運んだ。
それを見つけたバトラーが、慌てた様子で庭の掃除をやるといいだした為に、カナトは結局、庭の管理も実家に任せる事にした。

元々多少の着替えも、実家に戻るときに持ち出していたため、冷蔵庫の物以外はそんなに荷物も多くない。
早ければ2、3日で戻るし、任せる必要もないと思っていたのに、バトラーは律儀だ。

「バトラーさん、大変そうです……」
「全く、私も自分で出来るというのに……」

そういう意味じゃないのに……。
そもそも使用人がいるのに、自分で掃除する大貴族なんてどこにいるのか。
自分の庭に帰る理由が、冷蔵庫の中身だというのも、何処かずれているきがする。
そんな事を思いながら、リアスはストローでジンの残したフルーツジュースを啜っていた。

「では、バトラー。私は少し出かけてくる」
「はい、ご一緒致しましょうか?」
「ルナが居るので、大丈夫だ。夕方には戻る」
「分かりました。いってらっしゃいませ」

獣型のルナのリードを引いて、カナトは実家をあとにする。
リアスは、バトラーに一礼すると、駆け足でカナトの後を追った。







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本編 | 【2015-06-04(Thu) 12:30:00】 | Trackback(-) | Comments:(0)
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