プロフィール

詠羅P

Author:詠羅P
Lupi鯖:ダウンタウン
アイコン:セロさん

*更新情報
eco_JK ログ
カウンター
最新記事
お話一覧(時系列順
カテゴリ
拍手
web拍手 by FC2
リンク
JKツイッター
最新コメント
アンケート
QRコード
QR
権利表記

(C) BROCCOLI/ GungHo Online Entertainment,Inc./ HEADLOCK Inc.

カルネオル君が闇落ち仕掛ける話

出演:カルネオルさん、リフウさん リゼロッテさん、リュスィオールさん、ホライゾンさん

あらすじ
配達の護衛の仕事を請け負ったカルネオルは、治安維持部隊の方針転換以降、
自らの意志がどちらへと向くか決めかねていた。
守るべきものははっきりしているのに、それを守りきる覚悟に迷いがあったカルネオルは、
ついにその迷いと向き合うこととなる。

参考:ジンが女装する話


 


がらがらと言う音を立てて、一台の馬車がキラービー峠をゆっくりと進む。
空は雨がぱらつきそうな曇天に、風がまるで悲鳴のような声をあげ、簡易な木造の馬車を揺らしていた。

現代のアクロニアにおいて、馬車は古風な乗り物だ。
時空の鍵や、魔法を使ったテレポート、さらに飛空庭での大容量の空輸が可能となっている。
その為、本来ならばこの荷物も飛空庭によって運ばれるはずだったのだが、
天候が不安定なモーグ地方では、何より飛空庭がその日、出航できるとは限らない。
落雷や暴風が当たり前の地域であるが故に、陸路は一つの手段とし未だ利用されていた。

「バギーでも借りてこれれば良かったんだかなぁ……わるいねぇ」
「いえ、お気に為さらずに……、こんなのんびりとした旅も好きです」
「はは、まだ若いのに立派だな。ボウズ」

馬の手綱をもつ彼に、馬車の最後尾に座る少年が高い声で答えた。
バギーは、ドミニオン界で利用されている機械の乗り物だ。
馬車並みに荷物を運べて馬車よりも速度が速い。

「でもバギーって、この先は辛くないですか?」
「ほぉ、よく気づいたな。確かにこの先は吊り橋で、バギーじゃ重さに耐えられないからなぁ……、モーグは初めてじゃないのかい?」
「モーグ自体は、任務でよく行きます。だけど、道中はいつも定期便か部隊の飛空艇だったので……」
「じゃあなんで吊り橋を知ってたんだ?」
「地図で見たのもありますが、同じ任務を受けた人にアドバイスを受けました。橋が老朽化していて、無理に渡るのは危険だと……」
「なるほどな。いい同僚がいるもんだ」

いい同僚といわれ、少し嬉しかった。
細い剣を大事そうに抱え、アークタイタニア・グラディエイターのカルネオルは、自前で持ってきた黄色のクッションに座り、馬車の細かな揺れに耐える。
今日の任務は、一人だった。
内容は、モーグ地方への物資の移送。
中身は、アップタウンにてモーグの企業が稼いだ資金、ジュエルゴールドだ。
本来なら空輸で安全に移送すべき荷物だが、ここ最近、空賊により強盗が後を立たないため、
やむ終えず馬車が使われる事となった。

また大勢の護衛も好ましくなく、カモフラージュもできるとして、対人経験の強い、治安維持部隊5th、アークタイタニア・グラディエイターのカルネオルが請け負うことになった。

確かにはたから見れば、体格のいい馬車の持ち主と、10台前半の少年が馬車に乗っているのだ。
親子ほどの年の差がありそうな2人が、重要物資を移送しているようにはみえない。
揺れる馬車には、ジュエルゴールドが大量に入った袋と野菜などの食料が積まれている。
量的に多くないのはモーグの経済事情があるからだろう。

ここ最近、気持ちが安定しないカルネオルにとって、この馬車は少し居心地が良かった。
重要任務ではある。
しかし、何も起きなくていいのだ。
何かが起こるから、待っているわけでは無い。
何もない事が当たり前で、それを見届ける任務であり、
もし何かあった場合に、何とかする任務。

何も起きなくていい。

誰も手にかけなくていいならそれが一番なのに、何故こんなにも悩んでいるか自分でも分からない。
やるべきこと、守ることはずっとはっきりしていたのに、何故かうまくいかない。
振るう武器が迷いを持ち、力に躊躇いを持てば、誰しも力をセーブする。
弱くなるのだ。
以前6thの自宅に発売したばかりのゲーム機を持っていき、6thとタイマンしたところ自分が40連勝してしまい、流石に可哀想だと思ったところで負けた。
しかし、遊ぶ時間が短いと言えど、始める前に3人で練習した上、連続40戦のタイマン戦だったので、流石に疲れもあったと思う。
あぶれていた一人は、気がつけばソファでだいこんクッションを抱えて寝ていた。
6thと自分はほぼ徹夜だった。

その時は楽しくて意識もしなかったが、今考えるとそのまま自分の現状を表している。
倒すべき相手なのに、無意識な手加減から倒せないのだ。
このままではいけない。だが、どうすればいいか分からない。

「そんな辛気臭い顔してたら、余計なもんまで呼び寄せちまうぜ?」
「……? そんな顔してますか?」
「あぁ、なんとなくな」

考えごとは顔にでてしまうらしい。
迷惑はかけたくないなぁと思いつつ、カルネオルはナビゲーションデバイスを取り出した。
もうキラービー山道の頂上付近だ。
もうすぐ吊り橋が見えてくる。
何も起きない事をカルネオルはこんなにも切に思ったことはなかった。

たが、ゆっくりと動いていた馬車は突然動きを止め、カルネオルは俯いていた顔をあげる。
様子を見に行くと、目の前は吊橋だ。
また同時に嫌な予感が背筋に這い寄り、カルネオルは周囲を警戒する。
何処からか視線を感じる。
位置はわからないが、じっとこちらを狙っているようなそんな気配だ。
数が多い。あらゆる角度から、気配を感じてカルネオルは”ナビゲーションデバイス”から、応援要請を発信する。

「ボウズ!」

突然馬車主がの手綱を放し、カルネオルへ飛びかかっり荷台の下へ引きずり下ろした。
途端、甲高い破裂音が何発も響き渡り、弾丸が二頭の馬へ直撃、悲鳴を上げて走り去ってしまう。
しかし弾丸や破裂音は収まらず、屋根付きの荷台を穴だらけにした。
馬車主は、即座に荷台の片側の車両を壊し、荷台をバリケード代わりにする。

「立てるか?」
「すみません……」

こちらに放たれる弾丸は、吊橋の向こうから、打たれているようだった。
荷物が狙いなら必ず吊橋を渡ってくる。
カルネオルの武器は両手剣だ。
相性が悪くはあるが、間合いが取れればなんとかなる。
カルネオルは耳を澄ませ、隠れたこちらに対し近づいてくるであろう敵の足音を探った。
銃の音に紛れる吊橋の足音は、もう響き始めており、カルネオルは荷台へ回り込んだ敵の脛にみねうちを入れた。
仰向けに倒れた敵をおいておき、銃の的にならぬよう、さらに吊橋を渡ってきた敵と間合いを詰めて、剣の持ち手で敵の腕を殴る。
武器を離した敵の銃を蹴り飛ばし、崖したへ落とした。

敵からすれば、齢10歳前後に見える少年が次々と敵を無力化してき、その形相は信じられないような顔をしている。
カルネオルは、治安維持部隊第5期目のギルドランク5thだ。
武器を失い、尻込みした敵は、吊橋まで下がる。
しかしその顔の頰が緩んでいることに、カルネオルははっとした。

「逃げろ!!」

馬車主の声に、カルネオルは空へと飛び立つ。
始めの敵がカルネオルを狙い、再び発砲したのだ。
カルネオルは飛び立つことで回避したが、弾丸はターゲットを失い、吊橋の敵へ命中する。

この瞬間カルネオルの背筋がぞわりと冷えた。
赤い液体が、木造の吊橋へじわりと滲む。

死んだ……?

「ボウズ逃げろ!」

馬車主が荷台の陰から飛び出し、敵へと飛びかかる。
いけない。

「いけない! さがっーー」

馬車主は敵に飛びかかり、武器を奪おうとした瞬間。
鈍い音が、再び響いた。
体に弾丸がめり込む鈍い音。
地面の光景が、まるでスローモーションに流れて行き、カルネオルは動けなくなった。
ついさっきまでは、一緒に話していたのに、ついさっきまで、友人を良い同僚だと褒めてくれたのに……、
そう思った直後。
カルネオルは体に重い物を受け、堕ちた。


*


朝だった。
何時もならすっきり起きれるのに、今日は何故かすごく眠い。
未だひんやりとした空気が残る春の気候は、体温で温まった布団を驚くほど心地よくしてくれる。
油断すれば再び眠ってしまいそうだが、エミル・ガンナーのジンは、目を覚ますためにあえてアラームを止めず聞いていた。

眠い。
昨晩なかなか眠れなかったのは覚えている。
しかし、何故眠れなかったかは覚えていない。
目を覚ましてからゆっくり思い出そうと、ジンは寝巻きのまま、リビングへと出た。
とりあえず、ワーウルフのルナを起こして散歩にいって何を食べようか。

「おはようございます。ジンさん」

あれ? と思った。
高い綺麗な声が耳に響き、おもむろにそちらへ目線を持っていくと、金の翼をもつ彼女がキッチンへ立っている。
大きめの寝巻きへエプロンを付ける彼女に、ジンはしばらく動けなくなった。

思い出すまでもなく、ジンが昨晩眠れなかったのはこれだ。

「ジンさん……?」
「お、おはよう! 着替えてくる!」

思わず自室に逃げ込んだ。
忘れていた。むしろ忘れられたから眠れたのかもしれない。
先週ぐらいからカナトは、ストーカーに狙われていると言う彼女、アークタイタニア・カーディナルのリフウを匿っていたのだ。
もう一週間は立つのに、夜になると落ち着かず寝不足が続いていた。
恥ずかしい。
むしろ反応の仕方がわからないのが大きい。
カナトには、あまり無様な所はみせるなと釘を刺され、寝巻きや下着だけで歩くのは避けようと頑張っていたのに、寝不足が祟っていた。
どうしろというのか、一つ屋根ので女性1人に男が二人。
カナトは女嫌いもあり、何とも思っていなさそうだが、ジンはこんな事人生で生まれて初めてだ。
小さい頃に月光花が実家へ泊まりにきてはいたが、あれはノーカウントでいいと思う。

「”ジンさーん! 冷めちゃいますよ〜?”」

はっとする。
もたついて寝不足を悟られてはいけない。
気を使わせたら、またカナトに釘を刺されてしまう。
大急ぎで着替えて、リビングにでると少し落ち着いた。
しかし、寝巻きのリフウも心臓にわるい。
特にエプロンはだめだ。カナトの大根ワッペンがついたエプロンはリフウが着ると破壊力が凄まじい。

「どうかされましたか?」
「いや、その。あとは俺やるし、まだ冷えるから、着替えてきたら……」
「あ、はい。ありがとうございます。じゃあ着替えてきますね」

部屋に戻るリフウに、ジンはようやく肩の力をぬいた。

「大分動揺していたが、大丈夫か? ジン」

ルナの突然の出現に、ジンは声にならない程驚いた。
人型になったルナは、心配してくれているのか、からかっているのかわからない。

「お、起きてたのかよ……」
「ジンの声が聞こえたので降りてきた」

ジンは何故か、散歩に行きたいと聞こえた気がした。
日課ではあるので気にも止めないが、マラソンは朝食後だと難しいため、ジンはルナと町を歩く事にする。
朝から落ち着かない。
散歩の時間がようやく一息つける感じだ。

「ジンはリフウが好きなのか?」
「す、好きとかそういうのじゃ……、てかなんでもいいだろ!」
「カナトはリフウを気に入っているようだが……」
「へ?」
「ジンとはまた別の心情を感じている」

ワーウルフ・ロアのルナはカナトの心に住んでいる。
その為に心を共有している話は聞いたが……。

「俺とは別? 俺のもわかんの?」
「システム一部を渡しているからな、全ては分からないが何となくだ」

曖昧すぎる。
しかし、カナトの心情は少し気になる。
カナトがリフウを特別視していると言う意味か。それとももっと別の意味だろうか。
たがそれをルナに直接聞くのは卑怯な気もして、ジンは何も言えなくなる。

「言葉にするなら、ジンに対しての気持ちと変わりない。家族だな」

……。
つまり何とも思ってないのか。
普段の扱いの酷さが思い出されて、考えた時間がもったいない気もする。
しかし、リフウが来てからまだ1週間だ。
カナトが、ジンに対して家族にも近い感情を得ているなら、カナトはリフウをたった1週間でそこまで信頼したのか。
そう思うと普通でも無い気がしてくる。

「お前そんなこと俺に話していいのかよ?」
「カナトがリフウを特別視していると勘違いしていたんじゃないのか?」
「別にそんなんじゃねーし、あいつ女嫌いだしな」

ルナは誤解を解きたかっただけか。
しかし、カナトが普通の男なら、確かに勘違いしたかもしれないとは思う。
女性嫌いがなければ、惨めすぎて生きていられる自信かない。

考えたり、ほっとしたり、うな垂れたりしているジンの心情を、ワーウルフのルナはずっと感じていた。
メインシステムはカナトに宿っているため、カナトの心が優先的に伝わってはくるが、カナト自身はまだこの時間は眠っている。
そのためこの時間はいつも、ジンの心情がダイレクトに伝わってくる。
恥ずかしさとか、照れとか、嬉しさとか、悪い感情はない。
ただその感情の行き場所が分からずいつも動揺してパニックになっている。その為、落ち着きがない。
疲れないのだろうか。むしろ疲れたから、寝不足なのだろうか。

「ジン、疲れてるなら無理するなよ」
「なんで心配してんの……?」

カナトとは違い、ジンの心情の全てをルナは理解できない。その為に会話が噛み合わずジンが困惑するのでルナは口に出すのを避ける事にした。
半端に理解しても、誤解しか生まない。
町をあるいているうちに、ルナはカナトが起きた事に気付いた。
ジンの心も、外に出て落ち着いている。
カナトが起きたなら、ジンはもう動揺しないだろう。
寝不足で大きく欠伸をするジンを引っ張り、ルナは自宅へ戻ってきた。

普段より早めに起きたカナトは、ジンよりも眠そうだった、
カナトは朝に弱い。たまに椅子に座ってそのまま寝ている。
そうするとジンがソファーまで引っ張って寝かせ、正午ぐらいに起きてくる。
ジンに言わせると以前より、大分起きているらしいが睡眠時間が少し多めで、ルナからすれば物足りない。

熱いコーヒーにちまちま口をつけるカナトは、キッチンに立つリフウをまるで気にしていない。
ジンとは違い、ちゃんと着替えて出てきていて少し関心した。

「カナト、俺ちょっと本部に出かけてくるぜ?」
「……あぁ、ついでに、リフウ殿の生活用品を」

「え、あの。気になさらないで下さい!」
「リフウちゃんも気にしなくていいぜ?」

「共有出来ないものは必ずしもあります。ジンに任せにくいものは月光花さんに……」

リフウがここに来る前、月光花はリフウから鍵を預かり、彼女の私物の大体を此方へ運んでくれた。
この一週間は、それで乗り切れはしたが、消耗品が底をつきかけている。買いに行かなければいけないが、リフウは今、外に出られない。
安易にでて、ストーカーに場所を悟られては行けないと思う。

「ついでに、聖堂に出入りしてる変な連中がいないか聞いてくる」
「それがいい」
「カナト、お前は?」
「私はリフウ殿と掃除でもしている。少し散らかしてしまっているからな」
「俺の部屋には入んなよ……」
「何か困る物でもあるのか?」
「あ、あるよ! あるに決まってんだろ!!」
「ほう、ついに開き直ったな。だがシーツぐらい変えさせろ、一緒に洗わなければ面倒だ」

言い負けているジンに、リフウは笑っていた。
ジンはジンで、自分で洗うのは面倒ではあるし、やってくれるなら文句を言うのも野暮か。
ジンはモッズコートに着替え治し、部屋に散乱していた雑誌とか漫画を収納ボックスに全て纏めた。
不味いものは底にして、普通の漫画は背表紙を上にして並べる。
出されてもいいようにタオルで中身を隠した。
この方法なら今の所は見つかっていないはずだ。
以前はボックスもなく、カロンに借りた雑誌を丸腰で隠していたら、いつの間にかなくなっていて、とても申し訳ないことをした。
カナトは大分古い雑誌だったので構わないと思ったらしいが、借り物だと言うと流石に反省していたらしく、以来勝手に捨てられることはないが、掃除される度に見つかって精神がえぐられている。
もう見つかるのは何とか避けたいと思う。

ジンは出かける前に、バレットセイバーに弾丸が入っていない事を確認すると、ガンスタンドにカバーをかけて立てかけた。
光砲・エンジェルハイロゥは元宮に持っていくため、弾倉を抜いていると、趣に構えたくなり、少しスコープを覗いて遊んだ。

「まだいたのか?」

ノックなしで入ってくるのはやめてほしい。
ほっかむりのカナトに追い出されるように、ジンは自宅を出て行った。
元宮の受付ロビーは今日も賑やかで、治安維持部隊の隊員や仕事を請け負いにきた冒険者で溢れている。

「ご機嫌よう。6th、ジン様」

銀髪の受付嬢と目が会い、ジンは数秒固まった。
艶やかな銀髪を下ろし赤い瞳を持つ彼女の声を、ジンは知っている。
今まで当たり前すぎて気にも留めなかったが、いつも上げている髪を下ろしており気付いた。

「もしかして、リュスィちゃん?」
「はい、私はランキング4th、DEM・リュスィオールです」
「いつから受付に?」
「貴方がランキング5thに認定される前からここにおります」

ずっと居たのか。
何処かでみたと思って、忘れていて思い出せなかった。
来るたびに確認を忘れていたのもある。

「今日はどちらに?」
「銃のメンテだけど……」
「了解致しました。6thランカーの権限の行使をDEM・リュスィオールより申請します。武器はお持ちですか?」

懐のサラマンドラを見せると、リュスィオールは武器の内部にある固有識別番号を検証した。
武器の形、構造からその武器がどのようなものかも検証する。
また同じものがもう一つ、背中にはエンジェルハイロゥがある。
こちらは弾倉がぬかれていたが、背中はにもう一丁あった。

DEM・リュスィオールは、ジンが来るたびに重装備だと呆れていた。
大体受付にくる部隊員の武器は、多くても二つ、護身用の銃と狩りように使う武器、剣や短剣、爪なのに、ジンは来るたびに4丁は持ってくるし、何年か前は5丁の時もあった。
始めの頃は驚いたものだ。
しかし、危険だと申請しても何故かジンは認可されて入場ができる。

不思議だった。
他の隊員なら、武器が三つ以上の時点で何故そんなに持っているのか聞いて、必要なら預かるのに、ジンは何もしなくていいと言われる。
ランカーだから信頼されているのだろうかと無理矢理納得していたが、DEM・リュスィオールがランカー認定されたとき、思い切って総隊長に聞いてみた。
すると総隊長は、深く語らずとも、ジンは武器を持たねばならない経験をしているのだと、教えてくれた。
武器を持たねばならない経験とはなんだろう。
冥界の戦争を乗り越えた、現アーチャー部隊最高責任者、リゼロッテならまだ分かる。
しかし彼女でもライフルとリボルバーと弓の3つだ。
ジンは倍近い武器を持ってくる時もある。
何故だ?

DEM・リュスィオールと有線で繋がれる機器は、まるて当然の様にジンの”ナビゲーションデバイス”を認可した。
いつも通りだ。
武器のメンテナンスなら普段の所持量から少し増えても、大体許可はでる。
しかしそれでも銃なら多くて3丁ぐらいなのに、ジンは4丁でも5丁でも認可がでる。

「あの……」
「さんきゅ、リュスィちゃん。今度また良かったら一緒にどっかいこうぜ!」

ジンはデバイスを受け取ると、それだけ言い残して行ってしまった。
DEMである自分は、心を得てもう大分年数がたつのにまだまだ理解が及ばない部分が沢山ある。
いつか聞く事が出来るだろうか。
一緒に出掛ける機会があれば、教えてくれるだろうか。
そんな事を思いながら、DEM・リュスィオールは受付作業へ戻る。


*

ジンはじっと見てくるリュスィオールの視線が耐えられなかった。
DEMとは聞いていたが、驚くほど整った顔立ちに今日は鎖骨の見えるドレスだった。
とても耐えられない。しかもじっとこちらを見てくるし、恥ずかしくなった。
本当に朝のリフウとリュスィオールにかけて本当に落ち着かないと思う。
女性に対して意識しすぎだ。
冷静にならなければと思いながら、ジンは武器修理の受付まで向かった。
マエストロはいつも通りだ、無茶な使い方をするジンにも親切に応じてくれた彼は完全分解も快く応じてくれて、ジンは時間つぶしに元宮のラウンジへと向かう。
カロンが居なくなった元宮はやっぱり少し殺風景にも感じて、いたたまれない気持ちにもなってしまった。
しかし、武器のメンテナンスが終わるまではいちいち自宅に帰る気も起きない。
どうしたものか……。

ラウンジの看板前に立ち、季節限定スイーツの写真を見ていると突然後ろから軽く肩を叩かれて驚いた。
とっさに振り向くと、赤い髪をまとめ上げたスレンダーな女性がこちらを見下ろしている。
とても、久しぶりだった。
元々元宮に通う回数を減らしてから、ほとんど会う機会がなくなってしまったのだが、いいタイミングだったのだろう。
イクスドミニオン・ホークアイのリゼロッテは、ランカー時代に使っていた武器、色違いの光砲・エンジェルハイロゥを肩に乗せジンににっこりと笑みをみせてくれた。

「リゼさん!」
「はろー、久しぶりねぇ、ジン君。なにしてたの?」

着崩したスーツに武器を背負っている。ハタからみればすごい恰好をしていると思った

「俺は武器のメンテっす! リゼさんは?」
「私はアーチャー部隊の訓練の帰り、時々みにくるんだけど、やっぱりさびしくなるわね」

カロンが居なくなって、ジンも武器のメンテナンス意外に通う理由がなくなってしまった、
彼がいる時は、ずっと組み手をしてもらったり相談に乗ってもらったりもしたのに、今思うとカロンはジンが元宮になじむ理由をくれたのではないかともおもう。

「訓練はつづけてる?」
「あ、はい。今朝はさぼったけど……」
「続けることに価値があるんでしょーが! 一日休むと取り戻すのに一週間はかかるわよ!」
「えぇっ、は、はい!」
「相変わらず頼りないわねぇ。良いわ、来なさい!」
「へ……」

ジンはそのまま、引きずられるようにして訓練部屋へと連れて行かれた。
有無を言わさず、リゼロッテとの組手に付き合わされることになる。
リゼロッテは相変わらずだった。
相変わらずというのは、早くて無駄がないのはもちろんで動きのキレが増していて、タイミングが取れない。
強い。回避するので精いっぱいだ。

「そういえば、聞いてる?」
「何をっすか?」
「昨日、カルネ君が撃たれたって」

リゼロッテの言葉に、ジンは彼女と距離を取る。
カルネオルが撃たれた? どう言う意味だろう。
組手の手を止めて、ジンはリゼロッテの次の言葉を待つ。

「護衛任務で襲撃されて、銃持った敵に撃たれたってね……」
「なんで……」
「さぁ……、私も空飛べるあの子がやられるとは思えないんだけど、腹撃たれてとどめ貰いそうな所に、応援部隊が駆け付けて、幸い一命は取りとめたって、配達の護衛で馬車主は殺されてるし、物資は奪われかけるし……、どうフォローしたもんかね」

ぞくりとジンの背に嫌な感覚が走った。
以前カルネオルは、正当防衛の是非について悩んでいる事をジンはヒカから聞いていた。
あの時は適当にあしらってはいたが、ジンもまた出来れば手を下したくはない。
何が力になれるだろうか。

「カルネ君は、今どこに?」
「聖堂で入院してるとは聞いたけど……」
「会えますか?」
「カルネ君次第じゃないかしら?」

ジンはこれを聞いて、脱いでいた服を着直した。

「リゼさん、ありがとうございました」
「いいわ、また来なさい。自前に連絡くれたらまた相手にしてあげるわ」

武器のメンテナンスはまだ終わっていない。
しかし、そんな事よりもジンはカルネオルに会いたかった。
何ができるかもわからないが、今の彼はかつてジンが抱いたものと同じ悩みを抱えている気がしたから……。

*

白いカーテンがひらひらと揺れる部屋にカルネオルは寝かされていた。
自動式拳銃の弾丸を腹に受けたカルネオルは、痛みで地に堕ち、そのまま気を失ったのだ。
目を開けて数秒天井を見つめていたカルネオルは、傍の人の気配に気づく、

「気付いた?」

聴き覚えのある声だった。
毎日ではないが、たまに聞く声、今にも泣き出しそうな相手は座っていた席を立って、膝をついた。

「そう、たい、ちょう?」
「良かった……。カルネオル、大丈夫?」

痛みはもうない。
視界に居たのは、治安維持部隊、総隊長。エミル・ガーディアンのキリヤナギだ。
部隊の管理があるのに、何故こんな所にいるのだろう。

「ずっと、悩んでたって聞いてたから……、僕から話さないといけないと思って……ごめんね」

何故謝られているのだろう。
怪我したのはカルネオル自身で、任務も酷く失敗してしまったのに。

「任務なんてどうでもいいよ。無事で良かった……」
「だけど、総隊長。僕は、僕は守れなかった……」

まるで懺悔をする様にカルネオルが口を開く、悔いるような悲しい声だ。
悩ませてしまった理由は知っている、カルネオルが最近不調であったことも、グラディエイターの部隊から聞いていた。
だから、悩ませてしまった本人から話をしなければ行けないと思ってキリヤナギはここへきた。

「……カルネオル、君は、何を守ろうとしていたの?」
「!?」
「馬車主? 荷物? 自分? それとも敵?」
「……分かりません。でも、……全部だと思います」

カルネオルは怒られているのだと思った。
手を広げすぎたからなのだと、絞らなければいけないのだと、もうこんな事繰り返差ない為にも、キリヤナギの言葉を全て受け止めようと思った。
だがキリヤナギは、その言葉を聞いて笑った。
安心したように嬉しさもある笑みだ。

「そっか……、ありがとう」
「へ……」
「カルネオルは、僕と同じだね。何もかも全てを守りたいって思ってくれてる。嬉しいよ……」
「なんで……」
「僕の考え、あんまり理解して貰えないからさ……、無理だとか無謀だってよく言われるんだよね……」
「……」
「だから、カルネオルが同じ考えを持ってくれて、僕は嬉しい」
「キリヤナギ、総隊長……」
「でも僕は、同じ考えを持ってくれる君を失いたくない……だからもう無茶しないで、もう一人で行っちゃ駄目だよ」
「はい……」

何故だろう。
叱られると思ったのに、叱られたのに、ずっと悩んでいた事がどうでも良くなってしまった。
全てを守りたいなら、そうすればいい。
守る努力をすればいいだけなのに、何故それに気づかなかったのか。
悔しさと、ホッとした気持ちと、許された気持ちが込み上げてきて、カルネオルは腕で両目を隠した。

「馬車主さんは……?」
「……彼と山賊の一人は、弾丸が頭に当たってて、即死だったみたい」
「馬車主さんは、僕を助けようとして撃たれてしまいました……、なのに僕まで、撃たれた……」
「そっか……すぐに行けなくて、ごめんね」

カルネオルは首を振った。
この総隊長は、一体何処まで寛容なのだろう。
優しく頭を撫でてくれるキリヤナギの手は暖かい。普段グローブに隠されているその手は思ったよりも細かった。
キリヤナギはその手で、小さく”ライトヒーリング”を唱えて、カルネオルのニキビ跡を綺麗に治してくれる。
悩んで抱えたストレスで出来てしまったものだ。
初めてもらった彼の”ライトヒーリング”は弱くとも優しくて、カルネオルは目を瞑り心地よさに浸っていた。
すると、病室の外から騒がしい足音が聞こえてくる。
徐々に大きくなるその音に、キリヤナギも振り向いた。

「カルネ君大丈夫!?」
「ジン? そんなに急いでどうしたの?」
「総隊長!? なんで……」

飛び込んできたのは、見知ったジャケットの、エミル・ガンナーのジン。
走ってきたのか肩で息をしている。
彼もまた、心配して見に来てくれたのか。ゆっくりと上体を起こしたカルネオルに、ジンは安心したようだった。

「カルネ君が、撃たれたって聞いたから……」
「弾丸は貫通してるし、応急処置も最適だったから命に別状ないよ。今はもう治癒して貰ったみたいだしね」

「は、はい……」
「よかった……、カルネ君。俺、相談にのるから、なんかあったら言ってほしい! ほら俺、前にカルネ君に助けられたからさ! なんか出来ると思って……」

一通り言った後に、ジンはキリヤナギとカルネオルがぽかんとしている事に気づいた。
何か変なことでも言ってしまっただろうか。
聞いていたカルネオルは、ジンがキョトンとしているのを見て、思わず吹き出してしまう。

「へ? え……」
「じゃあ、ジンは今度から、カルネオルと一緒に任務行ってあげてね?」
「へ? なんで任務……?」

「い、いえ、ジンさん。ありがとうございます。また一緒に、ゲームして下さい」
「え……いいけど」

笑っている。
カルネオルは悩んでると思っていたのに、会いにきてみれば笑っていた。
解決したのだろうか。

「総隊長。やっぱりここでしたか」

ジンの後ろから姿を見せたのは、背の高いアークタイタニア。
騎士服の彼は、ジンがいるのを見ると優しく笑ってくれる。

「ホライゾン……」
「デバイス、今日はわざと置いて行きましたね?」

苦笑いするキリヤナギに、ジンとカルネオルが口籠る。しかしホライゾンは、あまり怒っていると言う空気でもなさそうだった。

「場所の予想はついていたので、心配はしていませんでした」
「ごめんごめん。すぐに戻るよ。それじゃ、ジン、あとはよろしくね」

「へ?」

立ち上がり、赤いマントを翻すキリヤナギをジンは呆然と見送った。
ホライゾンも笑みで、カルネオルの部屋から出て行く。
何なのだろう。総隊長がカルネオルのお見舞いに来ていたのは分かるが、ジンには何が起こっていたのかさっぱりだ。
カルネオルには、また調子の悪さも感じられず以前のようなポーカーフェイスに戻っている。
結局二人でこの前遊んだ新作ゲームについて会話に花を咲かせた。
そんな二人を残した後に、キリヤナギはホライゾンと元宮へ戻る。

「何故聖堂に?」

ホライゾンの言葉に、キリヤナギは一度目を瞑った。
カルネオルが撃たれた事を、ホライゾンは知っている、ならば今この質問は、それ以外の答えを求めるものだ。

「連中が聖堂に張り付いているらしくてね。目障りだからなんとかしろって、シュトラールから言われたんだよ」
「ほぅ……」

シュトラールはウァテス部隊最高責任者、兼聖堂管理協議会の総括の名だ。
普段から温厚で優しい彼が、疎ましく思うのも珍しい。

「僕は本部の立ち入り許可はだしたけど、聖堂までは出してないからね。僕が来るとかえってくれたさ……」
「なるほど……」
「……しばらく聖堂に通う」

ホライゾンの無言の応答を、キリヤナギは肯定ととった。



web拍手 by FC2
本編 | 【2015-04-16(Thu) 12:30:00】 | Trackback(-) | Comments:(0)
コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する