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(C) BROCCOLI/ GungHo Online Entertainment,Inc./ HEADLOCK Inc.

ジンが女装する話

出演:ぬえさん、銀咲夜さん、リフウさん、セオさん

あらすじ
どしゃぶりの雨のなか、銃のメンテナンスに行こうとしていたジンだったが、突然自宅にリフウがおしかけてきた。
ずぶ濡れの彼女は、ストーカーに追われていると話し、ふたりは彼女を自宅にかくまうことにする。
カナトを自宅へのこし、予定通り外出したジンは、ぬえと銀咲夜に出会い。とあるバーへ潜入することになった。


 




雨だった。
上空1000メートルにある飛行庭は、どしゃ降りの雨にふられて屋根から水滴を滴らせている。
この庭の自宅で飼われているワーウルフ・ロア。
ルナは、家主であるアークタイタニア・ジョーカーのカナトにブラッシングをされていて、
それを見飽きたジンは、うす暗い外の景色へ視線を移す。

「なんで雨降ってんだよ……?」
「なんで、とは?」

エミル・ガンナーのジンの独り言にカナトがブラシの手を止める。
素朴な疑問だ、退屈が一周回って、どうでもいい事に興味がわく。

「だって、ここって結構高いだろ? 雲の上じゃねぇの? たまに下に見えるし」
「雨雲が発生する高さは、地上500mから2000m。この飛空庭は地上1000m前後の位置にあるんだ。雨ぐらい降る」
「つまり……?」
「雨の降らない環境で、人間が生きていけると思うか?」
「そんな極端な話じゃなくてさ! 」
「……雨の降る位置に庭があるというだけの話だ。それに、私は上空に行きすぎると、気圧が下がって気分が悪くなるので、通常の高さより高度を低めに設定しているのもあるな」
「へー……」
「構造上、2000m付近までなら問題はないが、上がれば上がるほど紫外線も強くなり、人体にも悪い。太陽光を遮ってくれる雲のある方が私は助かる」

つまりこの庭は、もともと雨降りやすい位置にあるのか。
紫外線は知らないが、暑すぎる太陽光も確かに困る。

「それに雨は降って貰わなければ困る」
「芝生とか?」
「それもあるが、この庭は芝生から吸収した雨水を、不純物と共に幹の中へ貯水し、浄化して循環させている」
「へー。意外と高性能じゃん」
「……私も画期的だと感心したが……むしろ貴様知らなかった事に驚く」
「なんだよ! しらねーよ、悪いか?!」
「空中に浮いているこの庭で、何故水が使えるのか疑問に思わなかったのか?」
「そ、そうだけど……」

そもそも根本から思考回路が違っていた。
やはりカナトとジンでは、思考回路が180度違うらしい。

ガスは魔法。電気は太陽光発電。水は雨水の循環か。
バオバブの土台があるなら、地上の場所をとらなくて能率が良い。

「もっと述べるなら、住める土地が少ない中で、人類が飽和状態になり、空中に居住する技術が発達したとも言える。未だ飛空庭は高価なもので、我々のような一般層が辛うじて手が届くものではあるが、貧困層には無縁だ」
「……」
「富豪や貴族は、エミル界の土地を買い、全てのライフラインを安定的に確保できるが、庭はそうはいかない。水が蒸発し不足すれば、補給しなければいけないし、発電で補えなければ、イリスカードなどで代用する必要がある。そういう意味で庭は庶民の住居なのだろうな」

庶民の住居と言われて、ジンは納得がストンと落ち着いた感覚を覚える。
前に空調機を購入する際に、二人は庭の自家発電では電力が賄えないと宣告され、仕方なくイリスカードを触媒に併用できるものを設置したのだ。
自家発電では、冷水をお湯にしたり、テレビ、ナビゲーションデバイスの充電程度なら許容範囲であるようだが、流石に空調まではまかないきれないらしい。
空調そのものは冷房と暖房も兼ね備えてはいたが、タイタニア用に設計された、この天井の高いリビングに、暖房はほとんど効かず、ジンが仕方なくストーブを自腹で買い、なんとか乗り切った。

それ以前に、一年間空調なしで乗り切った自分達を賞賛したいと思う。
あの時はカナトの判断が曖昧すぎ、行動に移せなかったのもあるが、

「世の中うまく行ってんだなぁ……」

ルナのブラッシングを終えたカナトが、彼の首筋にノミ避けのスプレーを吹きかけている。
人型のルナにかけて効果はあるのだろうか。
冷たい液体に身を震わせつつも、まんざらでもないルナに突っ込む気は起きない。

「ジン、今日は元宮に銃のメンテナンスにいくのではなかったのか?」
「んあ? そうだったけど、雨だしやめやめ、濡らしたくねーし」
「毎度時前連絡をいれていると聞いたが?」
「別にきにしねぇよ。向こうも仕事だしな」
「自分で決めた約束すら守れないとは、腑抜けめ」
「あ”、うるせーよ! 関係ないだろ?」
「自分から行くといいながら相手をすっぽかすなど、信頼性に欠ける行為だとはおもわないのか?」
「は、そ、それは……」

マエストロとは確かに信頼はあるきがする。
毎度向こうのシフトに合わせて此方も向かっているが、

「友人として対等な関係を築くならば、自分で言った事ぐらいは守れ」
「お、お前に言われるまでもねぇよ! うるせーな!!」

何故こんな説教をされているのだろう。
余裕ができ、冒険者連盟に加入したカナトは、驚くほど治安維持部隊を信頼するようになった。
ジンが出掛ける時にも嫌な顔はしなくなった反面、筋を通さずにいると説教までしてくる。
以前も面倒だったが、今も大概面倒だ。

「じゃあ俺は、雨に降られ、ずぶ濡れになりながら出掛けるとしますかね」
「行ってこい。だが風邪はひくな。めんどくさい」

身も蓋もない。
しかし、言い返せもしない。
全ては雨が降ったのが悪いのだから、仕方が無いのだ。

ジンは溜息をつき、自室の光砲・エンジェルハイロゥにカバーをかけて外出の準備を始める。
カナトは、リビングの隣の部屋でピアノを使い、軽い発声練習を始めた。
以前から、歌はあまり聞いた事はなかったが、ルナが来てからと言うもの、カナトはピアノとバイオリンを午前中にほぼ毎日触っている。
聞いてもらえる人が出来たからか、生き生きとしてみえて、ジンは少し羨ましくなった。

再び窓の外を見れば土砂降りの雨。
やっぱり出かけたくないなぁと、溜息をついた時、唐突に来客のベルがなった。
ジンがハイロゥを置いて扉を開けると、ふわりと金の髪がゆれる。
白い傘をさし、スカートの裾が濡れている彼女は、水滴をついたメガネでジンを見上げてきた。

「り、りふうちゃん……?」

アークタイタニア・カーディナルのリフウ。
彼女は傘を投げ捨て、リビングに飛び込むようにジンへ抱きついてきた。
突然の出来事に、ジンはカカトを踏ん張る事で耐えるが、胸にある圧力に、一気に体温が上昇する。

「は!? え……!?」

セクハラの冤罪が怖くなり、思わず両手を挙げた。
しかし、胸に抱きついてきた彼女は、湿った髪をゆらしカタカタと震えている。
寒いのだろうか。
それとも、何か怖い目にあったのだろうか。

怯えるように震えている彼女をさすると、ひんやりとした体温が伝わってくる。
何も言わなかった。
何故彼女がこんなに震えているのかわからない。
悲しい事があったのかもしれない。
怖いことがあったのかもしれない。
でもそれを案じる自分らしい言葉はでてこなくて、情けないと思った。

とにかく、落ち着かせようと抱き返し、背中をさすっていると、後ろからカナトが来客を確認するために、部屋から出てきた。
現状をみたカナトは、数秒固まると、何も言わずジンの背中を蹴り上げる。


@

「なんで俺、蹴られたの?」
「言い訳は聞かん! 馬鹿が!!」
「言い訳じゃねぇよ! 理由を聞いてんだよ!!」

カナトに全力で蹴られたジンは、リフウに背中へ湿布を貼ってもらっている。
カナトの暴挙があり恐怖感が吹っ切れたのか。
床に倒れたジンをみてリフウは笑った。
あんなに震えていたのに、笑ったのだ。

「ごめんなさい。大丈夫ですか?」
「いやぁ、悪いのはカナトだし? リフウちゃんの所為じゃないし……? でも、来てくれるなんて珍しいじゃん。どうしたの?」
「……実は、助けて頂きたくて」
「助ける?」

いい渋る彼女には何かがありそうだが、ここで聞いても構わないのだろうか。

「そこの男。約束も守れぬ腑抜けですが故、期待されず、リフウ殿」
「うっるせぇ。痛み引いたらいくよ!!」

コーヒーをだすカナトが面倒くさい。本当に面倒くさい。

「あ、あの。実は、最近ストーカーが、いて……」
「ストーカーって、あのメールとかの?」
「メールとかはしてこないです、でもずっと誰かにみられている気がして……落ち着かないんです」

「みられている気がする、ですか」
「本当なんです! だから怖くて、さっきも視線を感じて逃げて、やっと巻けたと思ってカナトさんの庭に……」
「なるほど……ならば、一度庭を移動させましょう」

「元宮前に頼むぜ! ちゃんといくしさ!」

不本意そうな顔をみせつつも、カナトは素直に庭を動かしてくれる。
しかしそれでも、リフウのいう何もしてこないストーカーとは、珍しい。

「治安維持部隊の対応は?」
「それが、被害が何もない以上動けないみたいで……」

「まぁなぁ、メールと通信がきてるなら、立件もできるんだろうけど……」
「むしろそれは、ストーカーではなく、監視されているに近いのでは?」

「そうかもしれません……」
「思い当たる節は?」
「……いいえ」

一拍置いたリフウの返答に、カナトはもう一度彼女を見直した。
金の翼を持つアークタイタニア。
この世界でアークタイタニアは、未だ数が少ない。
昔攫われた時のようになるなら、未然に防ぐべきだとは思う。

しかし……、

「しばらくはここにいても、構いませんが……」
「本当ですか。ありがとうございます!」

「聖堂の方が安全じゃね?」
「あそこは目立つからな、雲隠れできるに越したことはない」

「それって匿うってことか?」
「そう、したいが……」

カナトが冷や汗をかいて目を逸らす、女性嫌いは未だ治っていない。
何とかしたい気持ちはあるが、少し荷が重そうだ。

「げ、月光花さんの方に……」
「流石にあの家に二人は無理だろ……」

月光花の住む自宅は、以前カナトが住んでいた庭だが、水質系のシステムが古く風呂がない。
その為に月光花は、聖堂の寮にあるシャワーを浴びて帰ってきているのだが、
もしリフウを匿うなら、風呂のあるカナトの自宅の方が外出の必要がなく能率がいい。

「外出は憑依をすればなんとか……」
「匿うんだろ?自分の言った事ぐらいちゃんと守れよ」

カナトが殺気を込めた目で此方をみている。
怒らせたら面倒だろうなぁとも思うが、いい負けたままなのは癪に触る。

リフウのことをカナトに任せ、ジンは傘を手に逃げるように自宅を出た。
元宮の側であるため、下りて五分もない。
駆け足で元宮へ駆け込み。
殆ど濡れることはなく辿り着くことができた。

茶化してはみたが、カナトはリフウを泊まらせることは到底できないだろう。
女性に対して三メートルは距離がないと鳥肌が立つらしいし、視界にいるだけで酷く落ち着かない。
散々弄られた代わりに、帰宅した時の立場逆転が少し楽しみだ。
そんな事を考えて、ジンは一人元宮の武器修理窓口へ足を運ぶ。
受付にいたマエストロは、快くジンを迎えてくれて、今日も洗浄を請け負ってくれた。
武器を預けたジンは、時間潰しも兼ねてラウンジへと足を運ぶ。
するとそこには、一つのテーブルを囲むロングスカートの二人がいて、ジンは思わず首を傾げた。
メイド服……?
ここはランカー専用のラウンジだ。
ウェイトレスは制服ではあるが、メイド服ではない。
しかし、ここにいるなら自分となにか関係があるはずだ。
知り合いではなくともこの出会いは、たまたまそこに居た運命もある。
一目惚れと言う言葉もあるのだから、とりあえず声を――

「あ、じんじんだー! どーしたの!?」

あろう事か、向こうから声をかけてきた。
しかもそれは、とても聞き覚えがある。
整えた黒髪をゆらし、こちらに手を振るのは、目隠しをしてメイド服を纏うアークタイタニア・フォースマスターのぬえだ。
脇には同じく、メイド服にフリルカチューシャをつける銀髪の女性がいる。
ジンは彼女を初めてみた。

「じんじん?」
「そ、あれがじんじんだよ。サクヤ」

「じんじんって、おれはジン……」
「じんじんはじんじんだし、じんじんでいいじゃん?」

名前を連呼され過ぎて訳がわからない。
しかし、ジンは気づいた。
初対面の相手に最悪の出だしだ。

「こんにちは! おれは、エミル・ガンナーのジンじ……ジンだぜ!」
「自分でいった! 今いったよね! サクヤ!」

「言いましたね」
「ジンだよ! エミル・ガンナーのジン!」

ぬえが爆笑している。自分の滑舌を呪いたい。
しかし、気がつけば銀髪の彼女がじっと此方をみている。
ぬえと話しているのがそんなにふしぎだろうか。

「君は? 初めてみるっすけど?」
「私は――」
「サクヤはねー! ボクの後輩なんだ、イレイザー!」

「へー、よろしく! サクヤちゃん」

ぎろりと殺気をを込めた目で睨まれ、ジンが硬直した。
なにか悪いことを言っただろうか……。

「あ、じんじん。サクヤはねー、あんまり親しくない人にサクヤって呼ばれると怒るよ?」
「は!? 早くいって……って、すんません、なんもしらなくて……」

そっぽを向いてしまった。
色々最悪だ……。

「そうだなー。サクヤは、ギンってよぶと怒らないよ」
「えっと、ギンさん?」
「うんうん、ギンサクヤだからね」

ぬえのように珍しい名前だと思った。
ギンサクヤは、ジンが誤ったことに機嫌を直したのか再び此方と視線を合わせる。

「というか、ぬえちゃんって黒髪だった……?」
「あ、これね、これから任務だから変装だよ」
「へー、似合ってるぜ!」
「変装で似合ってるってなんか変な感じ」
「黒髪のぬえちゃんもいいなーっておもっただけだって!」
「ありがと! でもじんじんはその髪型にあわなーい!」

頭に重石が落ちた気がした。正直なのは罪だと思う。

「これから任務って、どんなやつ? ギンさんとペアっすか?」
「そそ、最近本部が調査してた場所にガサ入れすることになったの。ボクとサクヤはアルバイトとして潜入して、中から抑えて、後からくるセオに外から抑えてもらうかんじで!」
「ガサ入れって、突入ってことっすよね……! 女の子二人とか危なくないっすか!?」
「サクヤがいるし平気さー! ボクも初めてじゃないしね!」
「でもやっぱり心配っすよ。俺でよかったら、協力するぜ?」
「へ? じんじん来てくれるの?」
「おう! ぬえちゃんとギンさんだけじゃ、絶対怖いだろうし、こういう時こそ俺みたいな男がなんとかする時だろ?」
「へー! じんじんかっこいい!」

ギンサクヤが呆然とジンを見上げている。
何もおかしなことは言っていない。ぬえも拍手をしてくれているし、ジンは自信満々に胸を叩いた。

「じゃあ、出発前に準備準備! 僕たちはお店にバイトとして潜入してるから、じんじんもお店の制服に着替えていこ!」
「大丈夫かな?」
「助っ人連れてきたって言えば大丈夫! じんじんこっちだよー!」

心配そうなギンサクヤに見守られ、ジンはぬえに、彼女のプライベートルームへと引き摺り込まれた。
そして、渡された服を着ることになる。

@

「じんじん、終わったー?」
「ちょっと、もう少し……」
「もう15分もたってるよー!」

どうしよう。と、ジンは困惑していた。
渡されたのは、制服だった。
制服は嫌いではない。
服をいちいち選ぶ必要はないし、コーディネートについて文句も言われないからだ。
女性の着る制服は、規律に束縛されていると言う意味で、背徳感もあっていいと思う。
だが、

「じんじん、もう着れたでしょ! 開けるよー!」
「ま、まだ! まっ――」

遅かった。
カーテンを勢いよくめくったぬえは、こちらの姿をみて嬉しそうに頬を染める。
しかしこちらは、膨らみのある肩のデザインに、締まった袖。
腰にはコルセットを入れるつもりが、入らずズレて、長いスカートのみを腰から降ろしている。
脇に置かれているのは、前だれ付きのフリルエプロンだ。

「あぁ、コルセットかぁ! それは時間かかるよね。僕が手伝ってあげるー!」
「ちょ! ぬえちゃ、や、やめ!」
「あーぁ! 胸のパットもズレてるね。サクヤはそっち直して!」

「分かった」
「ひぃ! 腰はやめっ…」

「あ、じんじん腰よわいのー? ガマンガマン! 意外とほそーい!」

女性に触られるなど、月光花以外で生まれて初めてかもしれない。
ぬえとギンサクヤのアルバイト先は、男子禁制の女の子バーで、ジンは手伝うため、女性に扮することになったのだ。
軽返事で協力することになったが、女装するとは思わず、現実を飲み込めない。

「じんじん。すね毛ないんだねー!ニーソはいてニーソ! あとこれガーターだよ」
「ガ……」
「あ、もしかして、トランクス派だった? 大丈夫、タタラべギルドの知り合いに男性用フリルパンツを用意してもらったから!」
「はい!?」
「新品だし大丈夫だよ! くれる代わりにじんじんの写真でいいって言ってくれたから!」
「いらな、流石に勘弁してくれってください!ごめんなさい」
「だめ! それがウリのお店だから」

身の危険すら感じ始める。
胸が締め付けられる下着に息がつまりそうだが、胸の位置にできた膨らみに違和感を覚える
これが女性の感覚なのだろうか。

「かわいい! さぁ次はニーソを――」
「自分ではきます! 履くんでゆるして!!」

泣く泣く二人を追い出し、ジンは生まれて初めて始めてのスカートとニーソックスを履いた。
ふんわりとした裾の長いスカートは、背中からヒップのラインを際立たせ綺麗なウェーブを作る。
これは確かに、トランクスを履いていては崩れるだろう。

「わぁ、意外と似合ってる。じんじん華奢だし違和感ないね!」

ギンサクヤがワックスで固めた髪を崩しメイド服似合うように整えてくれている。
チークとかアイラインとか、グロスなどもつけてもらい、最後にヘッドドレスを着けて完成した。

「かわいい!」
「ぱっと見分かりませんね」

コメントもできない。
だがここまで来ると開き直りたくもなる。

「が、がんばります……」
「うんうん、ありがとう!!」

たのしそうだ。
ギンサクヤは素直にそう抱く。

「あの……武器は?」
「武器は、スカートの下だね。下から抜かないといけないから、気をつけて」

見えそうだと思う反面。
見えないように抜く事が必要なのだろう。
ぬえは魔法だが、ギンサクヤは慣れていそうだ。

「私は脛に、座れば抜けるようにしています」

僅かに持ち上げられたスカートの裾。
見えたのは黒光りするブレイド付きのガンソードだ。
両足に一丁ずつ。自動式と回転式の2種が見える。

「慣れない服だろうし、訓練もできてないからこんなこと言うのも酷だけど、頼りにしてるよ!」
「……はい!」

頼られているならやるしかない。
準備は整ったのだから、あとはやるだけだ。
濡れないよう元宮から雨合羽を借り、三人は裏口から元宮をでる。
追跡されないよう。ぬえの”インビシブル”で姿を消して、三人はバラバラに散った後、同じ店で落ち合った。
ダウンタウンの南東にある地下街。そこからさらに階段を降りた場所にあるひっそりとした扉だ。
ぬえとギンサクヤは、慣れた素振りで扉をあけてジンも招き入れる。

「てんちょー! こんにちは!」
「おや、いつも早いね。感心感心」

ぬえに店長と呼ばれた相手は、胸元が大きく開いたドレスの女性。
ふとももにギリギリまでスリットがはいり、下着が見えそうだ。

「それでその子がさっき言ってた……」
「そうそう、新ジャンルだよ、てんちょー、人手足りないって言ったら一日限定で手伝ってくれるって!」
「つまりタダ働きってことかい?」
「うん! チョコレートの髪のチョコちゃん!!」

突然名前を付けられ戸惑いはしたが、上手いと、ジンは素直に思った。
アルバイトならある程度の信頼がいるが、ただの手伝いとしてなら口約束ですむ。しかも、一人分の労働力に給与を出さなくていいなら、試しに使って見る価値はある。

「接客はしたことあるの?」
「へ、は! はい、なんどか……」
「立ち方が男っぽいよ。女ならもっと脇しめて、背筋のばしな」

背中に嫌な汗を書きっぱなしだ。

「うちの客は面倒な奴が多いからね。毅然としないとなにされるかわからない。かわいいと余計にね」
「か、かわいい……?」

思わず聞き返してしまうぐらいに、疑問だ。かわいいとは誰に対して言ったのか。
もしかして、気づかれて居ないのか?

「じゃあモモ、適当に教えておいて、私は商品をみてくる」
「イエッサー!」

モモと呼ばれて、ぬえが返事を返す。
ぬえの偽名か。ギンサクヤは、ギンと呼ばれているらしい。
目の前から店長が消えてホット肩を下ろし、三人はオープン前の店の整理を始めた。
窓のない地下の部屋には、高級感のある絨毯が引かれ、食事用のテーブルがある。
また、奥にはカーテンステージがあり、オークション会場のようだ。

「普段は骨董品とか年代物の家具が出品されるオークション会場だよ。でも、月に一度、とんでもないものが出品されるって聞いたんだよね」
「とんでもない物?」

「まだわからない。商品は店長しかしらないから」

つまり店長はディーラーなのか。
手に入れた物品をオークションで捌く商売。
手数料としてマージンを受け取っているのだろう。

「でもさ、変だよね。普通冒険者のみんながやるオークションって、そんなに高額にはならないはず、なのにここは絨毯にブランド家具もあるし、カーテンはシルク……儲かりすぎじゃない?」

たしかに、ぬえの言う通りだ。
時々、冒険者主催で開かれるオークションは、誰が着ていたかもわからない下着が高額で取引されていたり、
開封されていない木箱が、ストライダーたちに無意味に釣り上げられていたりと、価値がよくわからないものばかりで採算を取れている空気を微塵も感じないが、ここはえらく豪華だ。
オークションを主催する大企業が裏にいるとしても、こんなひっそりとした場所でやる必要があるのだろうか。

そんな事を考え、ジンは会場のテーブルセッティングと共に、簡単な給仕もすることになる。
飲み物の大体は奥で店長が用意するらしい。

「開場は18時。オークションが始まるのは20時前後だから、それまではバーみたいな感じ、普通にオーダーを聞いてもっていってね」
「は、はい。ぬ、モモさん!」
「はい! チョコちゃんよろしくー!」

慣れない。
しどろもどろしつつも、ジン曰くチョコは、大方の準備を終え、開場を待った。
いざ入り口の扉が開かれると、豪華な宝石で飾るマダムや、ドレスを着た女性で席が埋まっていく。
雨であるにもかかわらず、皆よく来るものだと思った。

「あの……」

突然声を掛けられ、我に帰る。
オーダーかと思い、メモを取り出したが、女性きはじっとこちらを見つめていた。

「えっと、ご入用でしょうか……?」
「あ、いえ、もしかして……おとこのこ……ですか?」
「はひ!?」

ばれた。
いやむしろ、ばれない方がおかしいと思っていたのだ。
店長はなんとかバレなかったのに、まさか客にばれてしまうとは……

「おとこのこ!? ……ねぇ、おとこのこよ!!」
「へぇ、この子がおとこのこ? 確かに似合ってる。華奢だと可愛くなるのねー!」

「は? ぇ……?」

おとこのこと言う言葉に女性客が集まってくる。
かつてどれほど夢に見た光景だろう。しかし、いざ囲まれると緊張して動けなくなってしまった。

「ねぇねぇ、こっちきなよ!」
「ばか! 固まっちゃってるでしょ!」
「この子は商品じゃないのー?」
「カメラカメラ!早く!」

訳がわからない。
相手がか弱そうな女性であるため、押しのけることもできない。
写真だけはやめてほしいが、シャッター音はすでに何度か聞こえた。
逃げ出したい気分に駆られる中、人ごみの向こうでぬえが手を振っている。

「はいはーい。チョコちゃんはお仕事中だから、邪魔しないであげてー! 構いたいなら一人ずつ並んでー!」

ぬえの助け船には感動したが、余計なことはやめて欲しかった。
結局その後、おとこのこの意味が男の娘であることを知らされ、スカートをつまむ礼とか、「お嬢様」などのメイド奉仕ごっこをさせられ、給仕姿を散々写真にとられ、開き直りたくもなる。
しかし受けた傷は大きい。
つぶやきツールで拡散されませんように。

そう、裏方の隅でうずくまっていると、ギンサクヤが優しく肩を叩いてくれた。

「ドンマイです。ジンさん……」
「あ、はい……」

「2人とも、そろそろオークションはじまるよ!」

もうそんな時間か、放心状態になりつつも、ようやく女性ばかりの環境に慣れてきた。
しかし、表にでるといちいち視線が痛い。

「そろそろですね……」

そうだ。時間が迫っている。
治安維持舞台の突入時刻だ。
何が商品とされているのかは知らないが、女性ばかりのこんな場所で何が始まるのだろう。

会場の明かりが落ち、ステージがライトに照らされる。
店長がステージの傍らに現れ、一例をしたかと思うと、ステージの逆側から黒ずくめの人間に手を引かれ白い四枚の翼をもつ小さな少女があらわれた。
服は袖がない布に穴を開けただけのもので、わずかに見える細い腕に銀の鎖がみえる。
これを見た瞬間、ジンはぞっとして動けなくなった。

「本日の一品目は、アークタイタニア、二枚羽の純血です。名のある家系であり、今後150年は羽も色づく事はありません。品質保証もお付けして、1000万ゴールドから!」

あり得ない。と、ジンは思った。
また、後ろから聞こえる途方も無い金額が頭に残らず通り抜けていく。
わけのわからない驚きを通り越した感情が徐々怒りに変わる。
とんでもない物か、たしかにとんでもない。
足元がふらつき、思わず壁に支えを得る。

すると頭に、ひんやりとしたものが押し付けられた。
硬い金属音。
ジンの知っている音だ。
しかしこの音は、長年使い込まれたパーツが削られ内部に空洞があるときに聞こえる音。
本来なら鳴らない音、しかし、使い込まれていると言うことは、素人である確率は低い。
場慣れしているか。

「バレバレの変装でよく潜り込みましたね」
「は、はぁ? なんのはなしっすか……?」

とりあえず両手を上げておく。
今はオークション中だ、客に騒がれた方が面倒だ。

「いくら女の子好きの店長が美人だからと言って、そんな恰好で近づこうとするのは貴方が初めてです」

……?
はて、何を勘違いされているのだろう。

「女の子の恰好をしたって、店長は私だけのものです!! 近づかないで!!」

既に誤解を誤解としてどう認識すればいいかすらわからない。
後頭部にある銃のせいで動けず突っ込むことすらできない。無駄な思考回路を閉じて、ジンは考えるのをやめた。

「あ、あの、俺、確かに店長美人だとおもうすけど、あくまで、同年代ぐらいのおねーさんにしか興味ないってか……」
「嘘よ。女の子の服が似合うかわいい男の子が好きなのよ店長は、貴方はそんな店長の好みを知ってるからきたんでしょ!!」

どんな趣味だと思ったが、ぬえは知っていたんだろう……。
あっさり採用された理由がようやく理解できた。

「店長のこと好きなんすね……」
「す。すきとかそういうんじゃ……」

相手の緊張が緩んだ瞬間を、ジンは見逃さなかった。
銃の斜線からズレて手首を掴む、相手は手馴れていて、空いている左手からもう一丁抜いた。
ジンは姿勢を低くして女性の下半身へ軽い体当たりを加え撃つ前に床へ押し倒す。
両腕を押さえ身の安全は確保した。

「あんた……!」
「すません。もうちょいの辛抱で……」

床に響いた音に会場が騒つく、荒立てるのはまずいなと思ったが、突然入り口の扉が開き、職服の人間が入ってきた。

「人身売買の現場、確かに抑えました。全員動かないよう、指示に従いなさい!!」

凛とした声で響いたのは、聞き慣れた彼の声だ。
あたりを見回し、こちらと目があった彼は愕然とした目でこちらをみる。

メイド服をきた男が、女性を押し倒しているのだ。

「何をされていたのかは知りませんが、そこも動かないように」
「ちょ!? 誤解すんじゃねぇよ!!」
「誰ですか。女装する友人なんてしりません」
「俺いまナチュラルに絶交された!? それともマジでわかんねーの!! セオ勘弁してくれよぉ!!」

セオと呼ばれたことに、何かに気付いたのかこちらへと歩み寄る。
彼は治安維持部隊、少佐。エミル・アストラリストのセオだ。
そんな彼は、女性を抑えるジンをマジマジとみて「あ」と間抜けな声を上げる。

「なんだジンか」
「なんだって、マジわかんなかったの!?」

遠目で見ればたしかにわからないのかもしれない。
抑えていた女性を確保してもらいほっと息をつくと、突然横でシャッター音がした。
気がつけばセオのナビゲーションデバイスのカメラがこちらを向いている。

「セオ、今何した?」
「え、記念」

記念とはなんなのか。
勘弁して欲しかったが、駄々をこねても返してもらえず、口頭のみで消去の約束をとりつけ本部へと戻ることとなった。

部隊仲間と本部へ戻り、更衣室で着替えていると、事の流れを聞いたセオが腹を抱えて笑いだ、ジンは脱力と共にあきらめの感情すらこみ上げてくる。

「はははっ、それでぬえちゃんに女装させられたのか。自分で言った手間、断われないねぇ、ぬえちゃんはわかってたんだろうけど」

よくよく考えれば、ウエイターではなく突入側での参加もアリだったのだ。
現場指揮がセオであった時点で、話をしておくべきだった。

「僕も助っ人を一人連れてきたとは聞いてたけど、まさかジンだったとはねー!」
「冗談きついっつーか、ぬえちゃん……」
「ふふ、良く遊ばれたと思うよ」

コルセットにある、背中の留め具に戸惑っているとセオが気付いて外してくれる。
着るのも大変だったが、脱ぐのも一苦労だ。

「セオ……、今回のアレってなんだったんだ?」
「……あそこは、建て前上、オークション会場兼バーとして申請されていてね。人身売買自体は、かなり前から行われていたらしい。高価な宝石とか、鉱物なんかに混じって、時々人間が出品される。始めは、実際に人をステージに上げず、宝石の名前でカモフラージュされていたり、頻度は年に一回か半年に一度くらいだったみたいだけど……」
「ここ最近は、調子に乗ってた……ってかんじか……」
「いや、そうでもないんだ。過去に取引された人間は、総勢10人前後だった。つまり、一回のオークションでも、被害を受けたのは一人か二人になる。でも今回保護した被害者は、エミル族、イクスドミニオン、アークタイタニアと合わせて4人」
「……多いな」
「あの現場を抑えるために保護した人数も合わせると7人になる。……元々裏付けが取れたのも逃げ出した被害者がいたからだ。あのまま続けられていたと思うと、ぞっとするよ」
「……あそこに出された人たちって、なんであーなったんだ?天界や冥界の貴族なら家族がいるはずだろ?」
「……大体は、天界からの旅行にきた時に誘拐されたとか、事情があって天界に住めない貴族が狙われたりとか、酷い被害者だと、屋敷に火をつけられて攫われるケースも……」
「どれだけ必死なんだよ……!」

ロッカーを思わず殴りつけた。
そこまでして人間が欲しいか?

「イクスドミニオン、アークタイタニアは数が少ない。かつてその翼が願いを叶えると言われたように、上位種族を所有できることは、エミル族にとってもまた、同じタイタニアやドミニオンにも、最大限の愉悦なんだろう。自分の権力を象徴するための宝石、それが連中の考えだ」
「んなもん物でやれよ。金持ちの考えは理解できねぇな」

「……とにかく、カナトさんには夜道に気をつけてと伝えてね」
「おう、いろいろ騒がして悪かった」
「ほんとだよ。まさか僕に女装が趣味の友人がいたなんて、仲間にどう説明すれば――…」
「頼むから誤解は解いておいてくれよ……」

懇願しつつも、なんとかいつものジャケット姿へ戻れた。
やはりこの格好が一番落ち着く。
セオと一緒に更衣室をでると、目の前に白い服の数名が目の前をすり抜けていった。
部隊本部なのに、職服でもなく変わった服をきている。

「なんか人探しの為に天界から来たらしいよ。なんでも、治安維持部隊に似た名前の人がいるらしくて探してるんだってさ」
「へー、天界からお迎えって、そんなえらい人いんの?」
「さぁ、少なくとも僕の知る範囲じゃ、大体がエミル界に帰化しちゃってるし、しらないなぁ」
「じゃあ、誰?」
「守秘義務だって何も話そうとしない。自分達のことはなんとかするから名簿だけ寄越せと煩くて、こっちもプライバシーがあるし、とりあえず本部だけ自由に出入りする権利渡して放置してる」

妥当だと思う。
あの総隊長もたまにはマシな仕事をやるもんだ。

「朝から晩までウロつかれて気が散るし、さっさと出てって欲しいね」

愚痴をこぼすセオもどこか新鮮に思えた。
長い一日ではあり、散々だったが、臨時収入が手に入ったのでよしとする。
雨も上がっていて綺麗な夕焼けだ。
帰ったら、とりあえずシャワーをあびて、落とし切れなかった化粧を洗い流したい。
その後は、人気アイドル、デイジーとリリーのブログをチェックして新曲の予約をしよう。
臨時収入なのだから、きっとカナトも文句は言わない筈だ。

そんな浮ついた気分になりつつ、ジンが自宅に戻ると入り口前でルナが箒をはいている。

「ジン、戻ったか。カナトが心配していたぞ」
「ただいま。あいつ心配すんの?」
「俺が見た限りでは、心配だった」

よくわからない言動だが、ルナの言葉は、であったときからよくわからなかった。
深く考えるだけ無駄だろうと思い、ジンが自宅に入ると、目の前に飛び込んできた金髪に思わず荷物を落とす。
華奢な肩、長い金髪と余裕のある服は、おそらく寝巻きだ。
色からみてカナトのものだろう。

「ジンさん。おかえりなさい」

どうしよう。
もうとっくに帰ったとばかり思っていたのに、彼女、リフウはそこにいた。
大きめのカナトの寝巻きを着て、その上にエプロンをつけている。
仕草をみると夕食を作ってくれているようだ。

「いま支度をしていますので、もう少し待ってくださいね」

どうしよう。
混乱から思考回路が破裂しそうだ。
これは男として……。

「おい」
「うわぁぁぁぁあ!!」

突然聞こえたカナトの声に、飛び上がる。
床に倒れこんだジンを、カナトは明らかに怒った目で睨みつけていた。

「貴様、今やましい事を考えただろう?」
「は? いえ、なんのことでしょう、カナトさん? っていうか、リフウちゃん? なんで?」
「うちで匿うと決めたんだ。全く……」
「へ?」

「あ、あの、ジンさん?」
「リフウ殿。奴にはくれぐれも気をつけください。何をするかわかりません」
「人を犯罪者予備軍みたいに言うなよ!!」

カナトをよく見ると、両手に大量の紙袋を下げている。
買い物に行っていたのか。

「必要なものをある程度揃えてきました。他にも足りない物があれば言ってください」
「あ、ありがとうございます」
「その寝巻きもサイズがあっておりませんのでこちらに――」
「あ、いえ、今日は、これで、いい、です」

カナトがキョトンとする。
服が乾くまでとりあえず貸したものではあったが、余裕があるほうが楽だからだろうか。
ジンは後ろで死んだ魚のようにこちらを見ている。
しかし、本人がそれでいいならいいだろう。

「ジーン、何固まってんの!?」

開けっ放しの扉から、月光花が帰ってきた。
彼女も連絡をうけていたのか、カナトと同じく買い物袋を下げている。

「なんでもねぇ、どうせ俺とかフツーだし、ただの男だし、パッとしねーし……」
「何の話かしらないが、貴様。私に何か言うことはないのか?」
「あ? 何の話だよ」

「そーよ! どういうことかきかせてもらおうかしら?」
「ゲッカまでなんの話……」

「あの……ジンさん」

割って入ってきたリフウが、恐る恐るこちらにナビゲーションデバイスをさしだしてきた。
その時点でジンがいろいろと察す、いや、察したくない。
自分は何もつぶやいてはいない。
ぷるぷると震えながらそれを受け取り、省電力設定で暗くなった画に触れてみると、スカートをぎりぎりまでたくしあげさせられている自分が映り、おもわずデバイスを投げそうになった。
何も言わず逃げようとしたが、入り口で待機していたルナに確保され、無我夢中であばれてみる。


「ああぁああぁ、るなああはなせええ!!」
「あきらめろ、ジン」
「やだあ、しにたい!!」

「ひどい趣味だな。恥知らずめ」
「ここバーよね? もしかしてソッチ系とか?」

「女の人……ばっかりですよね?」

「ちげぇえよおお。俺も被害者だからああ!!」

ひょいっと担ぎ上げられてしまい。
自分の体重のなさに絶望した。
ルナが入口にいたのも、カナトが後から帰ってきたのも、ジンを囲い込むための包囲網だ。
してやられたと思った割、泣きそうになる。

「ルナ、つれてこい」
「あ”ああぁ”」

無情にも自宅の扉が閉まった
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本編 | 【2014-11-20(Thu) 12:30:00】 | Trackback(-) | Comments:(0)
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