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Heart*Lost:第九話
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Heart*Lost
第九話 目覚めの対価

第一章
第一話:終わりの始まり
第二話:序章
第三話:失うもの
第四話:夢への入口
第二章
第五話:孤独からの再動
第六話:戦いの絆
第七話:覚悟への道
第八話:凍てついた心



 アクロポリスから東。
ファーイースト街道の入り口に、月光花とカナトの二人は向かっていた。
待ち合わせをしているのは、ドミニオンの二人。
イクスドミニオン・ホークアイのリゼロッテと、イクスドミニオン・イレイザーのカロンだ。
リアスからの伝言をうけ、セオはカナトが気を使わぬよう顔見知りの二人へと護衛の依頼をした。
突然の話だったにも関わらず、二人は嫌な顔一つせず引き受けてくれて時間通りの場所で落ちあう。

「リアスとセオを味方につけるとは、カナトお前も利口になったなぁ」
「あらカロン、こんな可愛い子達に呼ばれたんだから、もっと楽しみましょ」

「お二方、この度はご協力をありがとうございます」
「ありがとうございます」

月光花と一緒に頭を下げる。
リゼロッテはそれをみて苦笑すると、顔をあげた二人の顔をまじまじとみた。

「難しいことは苦手だけど、こういうのは得意だしぃ、で、そっちのかわいこちゃんは、ジンのカノジョ?」
「か、カノジョじゃないですよ! ただの幼馴染で……」

「ドルイドの月光花さんです。リゼロッテ殿」
「へぇー、私は、イクスドミニオン・ホークアイのリゼロッテ、よろしくねん」

顔を真っ赤にする月光花に、リゼロッテがニヤリと笑う。
カナトの方にも視線を写し、思わず目を逸らした。何かを閃いた笑みだ。

「そいじゃ、さっさと行くか。日が暮れちまうぜ」
「ちょっとカロン、もう少し話してもいいんじゃない?」
「さっさと起こしてジンをいじってやりたいんだよ!」

本人が聞いたらどんな顔をするだろう。
そう思うと、とてもすがすがしい気持ちが心をすり抜け、洗われる気分にもなる。
肩の荷が降りた気分だ。

「カナト君。なんかたくましくなったね」
「? そうでしょうか?」
「うん、なんか大きくなった気がする」

「あら、月光花ちゃんってカナト君のお母さんなの?」
「は!? 違いますって、唯感じたことを言っただけでその……」
「浮気? あら、ジン君かわいそう。でもこんな美人な子が居たら仕方ないか」

「リゼロッテ殿。美人とは、一般的に女性へ使う言葉ですが……」
「あら失礼。でもこんなにかわいいんだから仕方ないわよねぇ、月光花ちゃん」

「え、わ、私!?」
「リゼロッテ殿……」

「なぁに、カナトちゃん。撫でてあげるから許して!」
「うわぁぁぁぁぁぁあ!」

撫でると言いつつ飛びついてきたリゼロッテにカナトが悲鳴を上げる。
賑やかだなぁと、最後尾のカロンが眺めていた。
案の定、カナトは失神して大荷物になったが、カロン憑依させてくれることになり、どうにかなった。

「カナトー、大丈夫かー」
「あの方の隣を歩きたくありません」

「あらひどい。大きくなったんじゃなかったのん?」

月光花も言葉にならない。しかし、こんな平和なやりとりも久しぶりだった。
ファーイーストの穏やかな気候は、人の心も癒し安らぎを与えてくれる。

月光花の案内で、四人は街道から外れ南へと折れる。
その中で進んで行く道は、リゼロッテとカロンにとって、初めてではない道だった。

連れてこられた場所は、沢山の建物の焼け跡がある廃墟。
原型を残す建物は殆どないが、幾つかは屋根までのこっている。
そうだ、リゼロッテとカロンは、以前ここへと訪れた。

ここは以前、カナトが攫われ連れて来られた場所。
あの誘拐した組織を、ランカー総出で潰した場所だ。

到着したことに気づいたのか、カナトがカロンからおりてくる。
カロンは、廃墟に入ることを躊躇わないカナトに驚いたが、思えば当然だ。

以前きた時、カナトは気絶していたのだから、

「ここだったのね」
「あれ、リゼロッテさん知ってたんですか?」
「ちょっと前に仕事できたの」

仕事と言えば仕事か。嘘ではない。
しかし、当時を思うと言葉にすらならなかった。

ジンは一体、どんな気持ちで、ここへと来たのだろう。

「月光花ちゃん。あまり奥に行くのはやめなさい。ならず者がよくいるから」
「あ、はい。ごめんなさい」

「家は残っていそうですか?」
「ううん、ジンの実家は道場で大きかったから、多分もうないと思う。私の家も、隣だし……」

しょんぼりとする彼女から、いつもの元気は感じられない。
思えばここへ来ると言い出した時から、ずっと元気がなかった。
今にも泣きそうになっている月光花を、リゼロッテが優しく頭を撫でる。

「家がないなら、早く連れて帰りましょう。ちゃんとした家にね」
「はい……」

カナトが聖杯を取り出し、月光花に渡す。
すると空気中から沢山の雫が生まれポロポロと聖杯へこぼれた。
聖杯が一杯になるまで溜まり、最後の一雫は、月光花の涙。

「おかえり、ジン」

来れてよかったと思う。とても長かったが、ようやくおわった。

「へぇー、そうやって溜まるのね。ちょっとかしてみて」
「落とすなよ。カナトの苦労が台無しだぜ?」
「わかってるわよ」

リゼロッテが月光花から聖杯を受けとった直後。
一杯の聖杯へまた数滴、思い出がこぼれる。
リゼロッテの中のジンだ。

「あら不思議ねぇ……」
「俺より多くね?」

「あ、あの、ありがとうございます」
「なんで月光花ちゃんがお礼いうの?」
「え、その、護衛ありがとうございました」

パニックになっているようだ。
カナトは月光花から闇の聖杯を受け取ると、そそくさとカロンに元に戻り憑依する。
リゼロッテが相当怖いらしい。

「帰ったらちょっと遊びましょうか。カナト君」

リゼロッテの笑いがトラウマになりそうだった。
目が腫れてしまった月光花を、三人はイストー岬で休ませてからアクロポリスへともどる。

自宅へともどったカナトだったが、カロンにもう少しまてと言われ、仕方なく彼が戻るまで、月光花と二人で待っていた。
二人で、セオが差し入れてくれたクッキーを食べていると、20分ほどしてからカロンが戻ってくる。

「よう、またせたな」
「カロン殿、お疲れ様です」
「どうしても連れて来たい奴がいてねぇ、悪いな」

そう言われ、カロンの後ろから現れたのは黒いドレスを纏う女性。
漆黒の翼を持つ彼女は、カナトの前へふわりと舞い降りた。

「ナハト殿……?」
「お久しぶり」

彼女はアークタイタニア・ソウルテイカーのナハト。ギルドランク3rdのランカーだ。

「カナトさん!! ジンさんが起きるって本当ですか!!」
「カナトんお疲れ様ぁぁ、ジンさん、おっはよぉお!!!」

「うわぁあああああ!!!」

飛び込んできたカルネオルとぬえに、カナトが悲鳴をあげる。
真正面から飛びこまれ、勢いのままひっくり返った。

「あれ? なんでカナトさんが寝てるの?」
「ぬえさんは抜かりないですね」

カナトの上に座り込んだぬえを、突然現れたリアスが諌める。
一気に現れた来客に月光花は言葉もでず、呆然と立ち尽くしてしまった。

「あーぁ、カナトまた失神してやんの……月光花ちゃんだっけ? ちょっと起こしてやってくんね」
「は、はい! 」

”リザレクション”が唱えられ、カナトが目を覚ます。大勢に囲まれた彼女は顔を真っ赤にしてしまった。

「申し訳ない。彼女は、ジンの幼馴染で――」
「え、エミル・ドルイドの月光花です……こんにちは」

「わぁ! 幼馴染って、ジンさんの彼女ですか!?」
「彼女!? 月光花さんジンさんの彼女なの!?」

「ちちち違います!! 誰があんなやつの彼女なんかっ」
「はははっ、まぁ、もういいだろ。カナトも起きたしな!」

「カロン殿。ありがとうございます」
「いんや、ま。闇の儀式なら専門家がいた方が安全だしな」
「ナハト殿、来ていただきありがとうございます」

「余計なことはいいわ、何をすればいいの?」

ナハトの言葉に促され、カナトは闇の聖杯を差し出した。
波打つそれを受け取り、しばらく眺めるとため息をつく。

「闇の聖杯……。なるほどね、心を無くしたとは聞いたけど、そういう事だったの……」
「はい……」
「よく集めたわね、こんな気の遠くなること本当にやるなんて」
「……」
「……いいわ。連れて行きなさい」

カナトが皆をジンの部屋へと案内する。
彼女は、数秒部屋を見回したあと、ポールハンガーにかけられているホルスターを見つけ、歩み寄った。
ジンと刺繍されているそれは、薄っすらと薔薇の模様が入っており、汚れの一つもない。

「大切に使ってくれていたのね」
「こいつ、なんだかんだで律儀だからなぁ。そういう所が気に入ってたんだろ?」

ナハトは何も言わない。
ホルスターへ聖杯を近づけると、数滴雫がこぼれて溜まった。

「そんなとこにもあんのか!?」
「人の思い出の数は、こんな小さな器に収まらないわ。むしろこんな小さなものに集めることすら、間違っている。だからこそ禁忌とよばれているの」
「……」
「でも、この方法を選んだ以上、貴方はその罪を背負わなければならない。ウォーロックマスターに言われたでしょう?」
「はい」

ナハトからそう投げられた言葉を、カナトは全て飲み込んだ。
そうだ。ひと時も忘れたことはない。

「……目覚めたものは、必ず何かを失う」
「えぇ、大切な何かを失う。選びだされるのは、戻された器が最も大切にすべきものだと言われているわ。貴方は、そんな大切な物を失った彼を、生涯支えなければいけない罪を背負うの」
「罪、とはおもいません。これは私が選んだ道。後悔はありません」
「……そう、いい友人ね。少し羨ましいわ」

微笑を浮かべるナハトは、少し安心したようにも見えた。
そうしてナハトは振り返り、ベッドで眠るジンの方を見る。
浅く寝息を立てる器。機能が自然停止するまで、ただ動くだけのジンという体。
彼女は、そんなジン彼に歩み寄ると、聖杯を優しく抱きしめた。

「こんな私でも、好きで居てくれてありがとう。ジン」

淡い光が、ナハトの胸へと集まる。
近くにいた、カルネオル、ぬえ、リアス、窓の外からも光が集まり、一杯になった聖杯へさらに沢山の雫がこぼれてゆく、思い出が溢れ出し、聖杯が形を失った。
光に包まれた聖杯は、以前みた美しい結晶へと形を変え、ナハトの手へと落ちる。

まるで宝石のように輝く心を、ナハトはカナトへ手渡した。
赤い優しい光が溢れる心。
聖杯の影響か、僅かに闇の魔力を纏いカナトは覚悟を決めた。
何を失っていても構わない。今はまだ生きて欲しい。
そう願い、カナトはゆっくりとそれをジンへ返した。

まるで吸い込まれ流ようにして、ジンへ消えた心。

同時に、呼吸が聞こえた。
聞こえない程に浅かった呼吸が聞こえたのだ。
そしてまた「ん」ともう一つ聞こえ、体が動く。
寝ぼけ目で、ゆっくりと目を開けたジンは、のんびりと起き上がって、欠伸した。

カナトはそれを見て、無言で部屋をでていく。

ぼーっと頭をかいていたジンだが、顔をあげて、目を点にした。

「な、なんで、皆いるんすか……?」
「おはよう、ジン」
「わぁ、ナハトちゃんに起こしてもらえるとか、いい夢だなぁ幸せ――」

言葉を終える前に、平手打ちが来た。後ろで見ていた月光花が飛び込み張り倒したのだ。

「いってぇぇぇえ!!」
「この大馬鹿ジン!ばがぁああほ、このやろう!!」
「ちょ、痛い痛い痛い痛い。針ささってる、てか点滴してんのなんで!?」

どこから突っ込もうか。

突然殴られた事にジンは悲鳴をあげる。
押し返そうとして、ふと月光花の顔をみると、彼女は今まで見たことがないほどの涙をこぼして泣いていた。

わけがわからない。
何故、泣いているのだろう。
自分の所為なのだろうか。
周りはみんな此方をみている。

あぁ、また泣かせてしまった。

「うぇぇぁぁあん、ジンのばかぁ……」
「ごめん。ゲッカ……。ごめん」

訳が分からないまま、抱きしめた。
みんながいて、月光花がいて、でも彼女が泣いている。
もう泣かせたくないのに、泣いている。
それだけは嫌だった。
だから、もう一度ビンタをもらった。

「ジン、俺が分かるか?」
「カロンさん……なんかあったんすか?」
「覚えてねーの? カインロストになんかされただろ?」
「カインロスト……カイトさん。あぁ、なんか睡眠薬盛られて、なんか……」
「おまえ、あれからずっと寝てたんだぜ?」
「寝てたって、確かにあんまり覚えてないっすけど……」
「ちなみに、二ヶ月近く経ってんぜ?」
「は? まさか……」
「二ヶ月だぜ?」

「二ヶ月よ」
「……」

「ど、どうなってんすかぁあ!?」

気持ちはわかるが、賑やかで安心する。
やはりジンはジンだ。

「ま、詳しい説明は相棒に聞け」
「相棒?」
「あいつがいなけりゃ、お前まだ寝てただろうしなぁ」

キョトンとするジンに、カロンが違和感を覚える。
まさか、

「カナトさん早く!! ジンさんがおきましたよ!」
「カルネオル殿、私は構わないと……」
「ジンさんジンさん! カナトさんですよ!」

「ジンが大好きなカナトんだよー!」
「ぬえ殿それは誤解を――」

「お前誰だ?」


一瞬、ジンが誰に言ったのか、その場の全員がわからなかった。
しかし、ジンの真っ直ぐな視線は、他ならぬカナト向いていて、

「お前、誰だ?」

そう、繰り返された。




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本編 | 【2014-04-10(Thu) 12:30:00】 | Trackback(-) | Comments:(0)
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