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Heart*Lost:第七話
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Heart*Lost
第七話 覚悟への道

第一章
第一話:終わりの始まり
第二話:序章
第三話:失うもの
第四話:夢への入口
第二章
第五話:孤独からの再動
第六話:戦いの絆


 黒の聖堂。
ここの入り口にカナトは月光花とふたりで待ち合わせをしていた。

メールに気づいたのは今朝。
カナトが目を覚ますと、カロンから、霧散した心を修復する方法を見つけたとメールが届いていた。
具体的な方法まではわからないが、闇の聖杯が、心を再形成するための素材となるらしく、
カナトは情報を寄越してくれたカロンに会うために、黒の聖堂前で待ち合わせをしていた。

「よぉ、久しぶりだな」
「カロン殿。お久しぶりです」
「出てきてくれて、安心したぜ。体調は平気かい?」
「私は平気です。この度は、ありがとうございました」
「いやいや、気にすんな。とりあえず、中入ろうぜ。話はつけてあるってさ」

どういう事だろうか。
首を傾げるカナトを尻目に、カロンが黒の聖堂へと入って行く。
真っ黒な絨毯が敷かれているそこは、白の聖堂とは対となり、闇の儀式の為の悪魔の銅像がおかれていた。
そんな銅像の傍に、黒装束を纏うドミニオンが立ち尽くしている。
ウォーロックギルドマスターだ。

「よぉ、ギルドランク2nd、イクスドミニオン・イレイザーのカロンだぜ」
「アークタイタニア・ジョーカーのカナトです」
「私はウォーロックギルドマスターだ……ようこそ。黒の聖堂へ。連絡は受けているが、何の用だ?」
「過去に霧散した心を修復したって噂を聞いたんだが、できんの?」
「……心の修復、もしやネコマタの話か?」

「それです! ご存じか?」
「久しい話だ。確かに数年前、崩壊したネコマタの魂を取り戻したいというものがきた」
「!」
「私が、黒の聖杯を授けると、かの者は、霧散したネコマタの魂を集めなおし、修復した」
「本当ですか?!」
「……その様な事を聞いてなんとする?」
「……友人が、魔法によって心を奪われました」
「心か……」
「取り出された心は崩壊し、空気中へ霧散した。それを取り戻すために、ここへ……」
「なるほど……同じ方法を求めるか。心が霧散してしまうとは、また絶望的な……結晶化しているならば、まだ希望があったものを……」
「……」
「ネコマタの魂と人の心は違う、中でも、人の心を扱う魔法は禁忌とされる。もし失敗すれば、貴様自身、取り返しのつかないことになりかねんぞ」
「希望があるのなら、それにすがりたい。たとえこの身がどうなろうとも、自ら求めて得た結果ならば、どんな現実でも後悔はしません」
「愚かすぎる。人は稀に、その身の辛さから自ら心を閉ざす、本人が眠る事を望むなら、集めた心も拒絶されてしまうばかりか、目覚めたとしても、完全に修復する事はできず不完全だ」
「……」
「感情、魔力、声、体力……人を形成するありとあらゆるものの中から失う。何を失うかは、目覚めてからでなければわからない」
「何を失っていようと、私は奴を見捨てない」
「貴様に覚悟ができていたとしても、人は過酷な現実へ直面した時に絶望する。貴様は、その現実にすらも立ち向かい、受け入れる覚悟があるか?」

「……私は、奴に助けられすぎてしまった」
「……!」
「これ以上無いほどに助けられた私が、奴を裏切る理由などありません。どんなに裏切られ、拒絶されようとも、出会ったその日から、生き様を見届けると約束しました。そんなジンを、私は最後まで生かしたい。エミル族としての一生を終えるまで……」

カナサが家に来た時から、気になっていたこと、寿命という絶対的な時間の差は、異なる種族に生まれた二人にとって変えようがない事実だ。
いずれ訪れる別れは、きっとこれ以上ない程に辛くて、悲しい。そんな別れが早まっただけだと思っていたのに、今のカナトは生かしたいと述べた。
かつて、自分たちがカナトに願ったように……生きていて欲しいと願ったのだ。

目の前にウォーロックマスターは少し考えると、カナトと再び目を合わせる。
アークタイタニアとは思えない発言だと思う。長命なタイタニア達はその大半が短命なエミル族やドミニオンを哀れみ、だれしもその存在を重要視しない。
死という別れを介しても、それを当たり前と思い、悲しむものもいないというのに、このアークタイタニアは、エミルを救いたいといった、生命を見届けると。
面白い。珍しいとも思う。ならばチャンスを与えたとき、こいつはどう動くのか、個人的な興味がウォーロックマスターの心を動かした。

「そうか。いずれ別れると知りながら、あえて救いの道を選ぶとは、物好きなアークタイタニアがいたものだ」
「……」
「よかろう。貴様の覚悟を受け入れた。闇の聖杯を受け取るがいい」

ウォーロックギルドマスターの両手に、紫の赤黒い光が集結する。凝縮され、形を成したそれは、小さな器へと形を変えた。
それはカナトの手にゆっくりとわたり、優しく包むようにそれを受け取る。
装飾が入ったそれは、黒の聖杯と呼ばれるらしい。

「魂は、思い出のある場所へ帰ると言われている」
「思い出……?」
「その聖杯を、思い出のある場所へ掲げ、念じろ。そうすれば貴様の呼びかけに応じた心が、その中へ封印される。必ずそこあるとは限らないが、霧散した心は既に大気と同じだ。空間を流れ様々な場所へと行き着く」
「……」
「当然、完全には集めきることはできない。しかし、その聖杯一杯分を集める事が出来たならば、少なくとも、目覚める事は出来るだろう」
「ありがとうございます」
「貴様の覚悟、見せてもらおう」

渡された聖杯をカナトが握り締める。すると、聖杯の上にぽとりと一滴の水滴が落ちた。
それは聖杯の見えない蓋に阻まれ、逆さまにしても零れない。

「ここにも思い出があったか……」
「これが、思い出ですか?」
「心当たりはあるか?」

カナトにはない。
しかし、カロンは少し考えてゆっくりと口を開いた。

「そういやいつかは忘れたが、イーストの国境地帯の村が壊滅したっつって、ここに遺体を運んだ話をきいたことがあるな」
「遺体……?」

「この黒の聖堂は、肉体を失った魂を鎮めるという意味で供養する場でもある。一度ここに運び清めた後、墓へ埋葬するのだ」
「あいつ、両親いないだろ? もしかしたら一度それでここにきたんじゃないか?」

両親との最後の別れ。聞いた話では写真すらも、家といっしょに焼けて残っていなかったという。
記憶しか残っていない思い出は、あまりにも儚く曖昧なものではあるが、
形として現れたものはほんの少量で、これが思い出としての量ならばそれでもいいと思った。
つらい思い出は、少ない方がいい。

じっと聖杯を見つめるカナトに、カロンはいたたまれない気持ちになったのか。
とん、と肩をたたいて、沈黙を破る。


「意外とすぐ見つかるんだな」
「思い出のある場所へ、心は帰る……形を失ったのなら、他の場所にも戻っているだろう」
「ならあちこち探すより、あいつの行きそうな場所探した方が早そうじゃね?」

「たしかに、様々な場所に心当たりはありますが、私はジンと出会ってまだ二年です。それ以前の事は存じません……」
「そういやぁそうだったなぁ……でも、あいつも部隊で五年だらだらしてたし、本部回ってみりゃ、意外といけそうなきもするけど……」
「確かに……」
「ま、気を落とすなよ! 方法がみつかったんだ。喜べ!」
「……はいっ」

「聖杯が一杯になったならば、持ち主の前で聖杯を解放する。そうすれば再び結晶化するだろう……」
「協力を、感謝します。ありがとうございました」
「友が目覚める事を祈ろう」

ゆっくりとカナトが一礼する。
黒の聖堂を出たカナトは、早速アクロポリスの中央で黒の聖杯を掲げた。
すると、ポタポタと数滴零れ落ちて、アクロポリスでの印象深さを感じる。

「余裕じゃね? どんどんいこうぜ!」

その後にカナトは、カロンアクロポリスの周辺を隈なくまわった。
ギルド元宮は入れないので、カロンに頼み、ジンが使用していたという寮とか、射的場をまわった。
本部では三滴程溜まったが、アクロポリスを周り尽くして五分の一も溜まらない。

「思ったよりもすくねぇなぁ、本部ならもうちょっと溜まるとおもったんだが……」

ギルド元宮。
確かにジンにとっては印象深そうだが、あまりいい思い出はないとよく言っていたのを覚えている。
それがこの量へ反映されたのか。
そう、カナトがカロンの背中を見た時、ふと懐かしいものが頭をよぎった。
ふてくされ機嫌が悪い時、ジンはポケットに手を突っ込む。カロンがふと、同じ動作をしてカナトは思わずそれを重ねた。

「カロン殿……」
「んぁ? どした?」

そっと黒の聖杯を差し出した。
当然カロンは、受け取るために手を伸ばす。しかし、カナトはそれを離さず、念じた。
一緒に訓練したあの日を、二人でカロンを倒そうとしたあの時を、共にECOタウンへ向ったあの日を……、
そう、思った時、黒の聖杯へ七色の雫が零れる。
集まった心は、他ならぬカロン自身の中にあった。

「へぇ、俺の中のジンか。おもしれぇ」
「ありがとうございます」
「いんや。俺も嬉しいぜ。サンキュ」

こん、と拳をぶつけ、カロンが楽しそうに笑う。
もう少しアクロポリスを回りたいと思ったが、突然目の前が傾き、空間が反転した。
倒れかけたカナトは、辛うじてカロンに支えられ、事なきをえる。

「おいおい、大丈夫かよ」
「申し訳ない。平気です……」
「無理してんじゃねぇの?」
「そんなつもりは、ないのですが……」

カロンの表情は心配か、眉間にシワを寄せる。無理はしていないはずだ、やりたい様に動いている。
しかし、二人の表情はどこか複雑で心配をかけるのは申し訳なく思えた。

「すみません。今日は、一度帰ります」
「おう、ちゃんと休めよ」
「ありがとうございます」

無理はしていないのだ。
しかし、気がつけば酷く疲れていて、ふらついてしまう。
心配したカロンに自宅まで送ってもらい、カナトは一人で自宅へと帰宅した。

「兄上! おかえりなさい!!」

迎えてくれたカナサは、自分の返りを待ちわびたのか、目をキラキラさせている。
居てくれるだけで支えだ。ありがたい。

「あの、兄上。ジンさんを起こす方法は見つかりましたか?」
「あぁ、とても確かな方法を見つけた」
「本当ですか!?」

カナサに聖杯について話すと、方法が見つかったことを喜ぶ。
しかし、カナサが眠った後にバトラーの話を聞くと、一緒に出掛けられないことが、カナサにとっては辛く、もどかしい気持ちがあるのだと教えてくれた。
カナト自身、悪いとは分かっている。たが、自分一人ではカナサを守りきる事はできない。
それは、守られていた自分だからこそ、分かる事だった。

バトラーも休み、カナトは一人リビングへと残る。
聖杯をテーブルへ置くが、まだ殆ど溜まっていない。
いつ目覚めてくれるのか、叶うなら今すぐにでも目覚めて欲しいのに、彼は未だ眠りについたままだ。
一体どのくらい経てば集まるのだろう……。

冷静に考えれば、気の遠くなる作業だ。
目には見えず、この世界のあらゆる場所に流れ着くのなら、それはもう世界の一部になってしまったのではないか。
もう戻らないのではないかと、カナトは胸が締め付けられるのを感じる。

こんな時、ジンならどうするだろう……。

そう願った時、聖杯へ、一滴。二滴、三滴と零れる。

一瞬、何が起こっているのかわからなかった。だか……

ジンが居る……

零れた思い出は、小さな波紋を広げて消えた。

あぁ……

居るのだ。ジンが、この中に……。
まるで、勇気付けるかの様にこぼれた水滴は、さらに沢山落ちて、四分の一程にまで、それを溜めた。

出会った時から、生活から、歩けないことから、ジンはずっと助けてくれていた。
だから今度は、こっちが助ける番だと思っていたのに、

こんな状態になっても、彼はこうして、自分を元気付けてくれるのか。

何も言わず、大丈夫だと、お前なら出来ると、そう言われている様にも思え、カナトは思わず両手で聖杯を握りしめた。
何も言わない相方が、こうして助けを待っている。
なら、救うしかないじゃないか。

「ジン……すまない。俺は――」

救いたい。
出来るなら、もう一度声を聞きたい。
強く握りしめ、カナトは声を押し殺し、涙した。
その数滴は、聖杯の封印に弾かれたが、幾つかは、思い出となって溜まる。

カナトはそれを見て安心し、聖杯を抱いたまま、腕に顔を埋めた。



それから数時間がたっただろうか。
くしゅん。と言う変な音にカナトはゆっくりと顔をあげた。
外が明るい。
ふと時計をみると、短針が6時を、珍しい時間に起きたとおもう。
枕にしていた両腕がしびれてきており、目の前には闇の聖杯が変わらずに存在した。

くしゅん。

また聞こえた。
何の音だろうと辺りを見回す、バトラーが起きてくるのは6時半だ。
カナトは辺りを見回し、音が響きやすい窓へと目を向ける。
翼を広げて舞い上がると、音を立てないよう窓へと近寄った。
ゆっくりと窓を開けて外を見回すと、窓脇に眼鏡をかける金髪の少年が、膝を抱えて座っている。
服の裾で口元を拭うのは、くしゃみを必死でこらえようとしていた。

くしゅん。
ギルドランク8th、エミル・イレイザーのリアスだ。

「リアス!? ……何故、ここに?」
「う、ジンさんが助かる方法がわからなかったって、気になって……」

くしゅん。

「夜、冷えました……」
「とにかく、中へ入れ、暖まるといい」

鼻が真っ赤になって、鼻水もでている。
カナトは、リアスが風邪を引く前に風呂に入らせ、起きてきたバトラーに朝食を作らせた。
リアスは昨晩、丁度カナトが寝てしまった所に訪れ、完全にはいるタイミングを失ったらしい。
仕方が無いので、起きるまで待っていたそうだ。

「起こせばよかったものを……」
「ずびばぜん……」
「それにしても、何故わざわざ……」
「ジンさんが、助かる方法を、ずっと探してました」
「!?」
「でも、見つけられなくて……」
「そうか、ありがとう。リアス……」
「おれ、カナトさんが気になって、方法を探してる間にも、なにかできるか考えました。そしたら……」
「?」
「前みたいに、護衛できればとか思いました」
「護衛……?」
「ジンさんが、動けない今、カナトさんは一人ですから、外を一人で歩かれるのは心ぱ……気になります」
「そうか、ありがとう。好きにするといいが、私が見つけた方法では、1日や2日だと終わらん……それでもいいか?」
「いいです。おれがそうしたいので」

ずずず、とコーンスープをすするリアス。
カナサが起きてくる頃には、新しい顔のエミルに思わずたじろいだが、すぐにカナトの友人だときいて納得した。
一通り事情を聴いたリアスは、その日はすぐに家をでたが、
その次の日からリアスとカナトは、二人でアクロニア大陸を歩きだす。
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本編 | 【2014-03-27(Thu) 12:30:00】 | Trackback(-) | Comments:(0)
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