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Heart*Lost:第六話
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Heart*Lost
第六話 戦いの絆

第一章
第一話:終わりの始まり
第二話:序章
第三話:失うもの
第四話:夢への入口
第二章
第五話:孤独からの再動


 「全く、なぜすぐに頼らなかったのです?」
「申し訳ない。私も、なかなか整理が付きませんでした」
「……まぁ、気持ちはわかります。よく決意したとは思いました」

アクロポリス、アップタウンの繁華街、ここを歩く二人は一般冒険者に紛れ淡々と歩を進めていた。
茶髪にパンキッシュイヤーカフをつけるのは、アークタイタニア・ジョーカーのカナトだ、
横を歩くエミルの彼はいつもの彼とは違い、右手に杖を携えている。彼は治安維持部隊、ギルドランク6th、エミル・アストラリストのセオだ。
ジンが心を失い、眠りについてから、もう10日が経過している。
初めは唯、現実を受け止めるため、淡々と日々を過ごしていたカナトだったか、弟、カナサの激励により、ジンの心を取り戻す決意を固めた。
そんな中、久しぶりに起動した“ナビゲーションデバイス”へ、セオからのメールが届いており、彼もまた心を取り戻す方法について探っていたらしい。

「僕自身、ジンが必ず目を覚ますとは言い切れない。でも、一度砕けた心を元に戻したと言う情報があるみたいでね。情報屋に依頼したんだ。今から連れていくよ」
「ありがとうございます」
「取り戻したいと思っているのは、カナトさんだけじゃないからね」

セオの言葉に、カナトはほっと安堵する。一人ではない事が、こんなにも心強いとは思わず大切にしたいと何よりも思った。
二人で大通りを歩いていると、セオは突然、赤の下地に黒いトカゲの模様が描かれた看板の前で足を止める。
その黒蜥蜴独特の看板に、カナトは目を見開いて、中へ入ろうとするセオを止めた。

「どうかした?」
「ここは……」

「ようー、久しぶりだな」

店の前で閉店中のステッカーをかけていたのは、黒蜥蜴のシュフ、イクスドミニオン・グラディエイターのマーキッシュだ

「マーキッシュ……殿」

きょとんとするカナトが、再び看板をみる。ここは飲食店、黒蜥蜴だ。
以前酒場依頼から訪れ、何度か通っている。

「とりあえず入れよ。準備できてるぜ?」

マーキッシュに案内され、二人が店にはいると、奥に座る先客に思わず歩を止めた。
右目を眼帯で覆う黒髪のエミルは、テーブルに大量の皿を並べ、上品に料理を頂いている。
足元に黒猫を連れているのは、エミル・ホークアイのグランジだ。

「な、何故貴方が!?」
「カナトさん……」

「知り合いですか!?」

セオが思わず叫ぶ。
グランジの器の一つが空になったことを確認したマーキッシュは、それを厨房の奥へと持っていき、追加の料理をもってきた。

「災難だったなぁ」
「ともかくマーキッシュ殿。お久しぶりです」
「5thが倒れたんだろ? バカやったな……情けないぜ」
「不甲斐なく、思います」
「あんたじゃねえよ。自分の身も守れねぇようじゃ、話になんねぇって意味さ」

「だけどマーキッシュ。ジンは――」
「うっせぇセオ、身内にやられたんだろ? 知ってるよ聞いた!」

「ジン君じゃなく、カナトさんを心配してるんだよね。まーくんは」

新しい声に、マーキッシュが顔を真っ赤にした。
のれんを上げて出てきたのは、メガネをかけるカンフークロスの男性。エミル・ダークストーカーのザークシーズだ。

「ザークシーズ殿、こんにちは」
「やぁ、カナト君。今日も綺麗だね」

思わず、出された水をむせこんだ。何を言い出すんだ。

「ともかく、知り合いなら話は早い。本題を――」
「その前にセオ殿……何故ここへ? 関係があるのですか?」

「あぁ、そう言えば、話してなかったね」

ザークシーズの言葉に、カナトが息を飲む。まさかとは思ったが、カナトの予想は的中した。

「黒蜥蜴は、表向きには料理店だけど、裏向きには情報屋をやっているんだ」
「情報屋……ザークシーズ殿がですか?」

楽しそうな笑みは肯定か。知らされた事実にカナトの胸が高鳴る。運命かとも思った。

「今回は、さっき言った噂の信憑性を調べて貰ってたんだ。で、どうだった? ザクス」
「霧散した心の修復……聞いた事は有りませんが、記憶を辿ると、ある冒険者が話していたのを思い出しました。宿主を失ったネコマタの魂が、一度霧散して消えたが、その消えた魂を集め直し、再びネコマタとして蘇らせたと……」
「!!」
「戻した本人へ話を聞こうと努力しましたが、ネコマタそのものが不安定な存在である分、見つける事は出来ませんでした」

「どん詰まりか……」

思わず頭を抱えてしまう。
事実があったとしても、方法が分からなければ動きようがないからだ。

「まず、その宿主は冒険者なのですか?」
「恐らくは……数名の冒険者が、語っていた事なので、本人ではないでしょう」
「ならば、話していたその冒険者を当たってみます」
「ガラが悪そうな連中だったけど、平気かい?」
「構いません」

カナトのまっすぐな瞳に、ザークシーズは、嬉しそうな笑みをこぼす。
奥から来店記録を取り出すと、リストから名前を選び出し、白い紙に何かを書き始めた。
鉛筆で、描かれて行くものは似顔絵で、

「確か名前は、ヴェリタス。グラディエイターだったかな? しっぽが三俣だったから、恐らくイクスドミニオンだよ」
「こんな詳細な情報を……どこから?」
「んー、ちょっとした体質でね。目で一回みたら、全部覚えちゃうんだ。忘れられなくて、最初は苦労したけど……」
「……!」
「今は、有効利用できてるし、便利でしょ」
「……えぇ、ありがとうございます」
「こちらも、来店されたら声をかけておこう」
「……この方の、何か手がかりになるような物は?」
「手がかりか……あまり、知りすぎると盗み聴きの因縁をつけられそうだけれど――」
「……」
「東軍がどうとか、魔女ロキがどうとか、話してたな……」
「魔女ロキ……!?」
「知り合いかい?」
「以前少し……、あまり深い関係とは言えませんが」
「なら、彼女を当たってみてもいいかもね」

ロキ。以前月光花とともに、彼女の屋敷へと踏み入れたことがある。
彼女の執事だと名乗ったヨルムンガンドを介せば、会うことはできるか……。

「ともかく、ありがとうございます」
「お礼ならセオ君にいうといいよ。情報はタダじゃないからね、ここの厨房を手伝って買ってくれたんだ」
「そんなことまで……!?」

「何を言い出すんだ、ザクス……」
「ははは、まぁ、良かった。気をつけてね」
「はい。必ず見つけ出します」

そうして、セオとカナトは黒蜥蜴を後にした。
店長のザークシーズは、折角なので何か食べて行けばいいと言ったが、2人とも、自宅に待っている人がいる為。
デザートのココッコーあんまんを頂き、帰路へと着く。
そのついでに、カナトはセオと共に夕食の買い出しに向かい、セオが自宅まで送ってくれる事になった。
セオと共に帰宅したカナトは、ドア前に待ち伏せしていたカナサに抱きつかれてしまう。

「兄上! おかえりなさい!!」
「カナサ。びっくりするじゃないか……」

「か、カナトさんが2人!?」
「申し訳ないセオ殿。弟のカナサです」

「兄上、どちら様ですか? このエミルさんは……ご友人ですか?」

抱きついたまたまじっとセオを見るカナサ。
カナトは、優しくカナサを解くがカナサはセオに興味を示さず、カナトを見て目をキラキラさせている。

「兄上、兄上! 実は本日僕は――」
「バトラー、セオ殿にお茶を頼む……」

「承知致しました」
「聞いてくださいよぉ! 兄上ぇ!」

バトラーに上着を脱がしてもらうカナトは、慣れた物だ。
以前と様変わりしているカナトの自宅に、セオも呆然と立ち尽くす。

「セオ殿。賑やかで失礼を……」
「いや、少し安心したよ。良かった」

何気無い会話をする2人に、カナサが眉間にシワを寄せる。
じっとジト目でセオを睨み、ついでに出されたジュースのストローを咥えてぶくぶくと泡を立て出した。

「カナトさんの弟ということは、ルシフェルさんの――」
「えぇ、カナサ。自己紹介を」

「兄上ぇ……」
「私の友人なんだ……カナサ」

この言葉に、カナサは何か納得したようだった。
左胸に手を当て小さくお辞儀をした、カナサは頭を下げたまま口に出す。

「初めまして、わたくしは、アークタイタニア熾天使、ルシフェルの実子、第一後継者。堕天アークタイタニア・カナサです。お見知り置きを」

「30点ですな」
「なっ、バトラー!!」
「誠意が足りません。もっと相手の方を思いつつご挨拶しなければ……」

バトラーとカナサのやり取りをカナトはまるで当然のように流す、貴族の挨拶の練習か、カナサが表に出てこないのには、未だ世間を知らないかららしい。
無関心を決めるカナトの態度に、カナサはさらにむくれてしまう。やらせておいて、この兄は弟に厳しいのか。

「かっこよかったよ。カナサ君」
「! セオさん。本当ですか?」

「あまりお世事を述べられず……そもそも、言葉が――」
「兄上ぇ……」
「あはは……、僕は、治安維持部隊。ギルドランク6th。エミル・アストラリストのセオ。よろしくね」
「ランカー……じゃあ、あの人と?」
「あの人?」

「ジンの事です」

カナサの表情が曇る。兄を思う弟の心はどうにも複雑らしい。

「そ、そんなことより。兄上、今日、バトラーと一緒に買い物にでて兄上の服を選んだのです」
「服? 十分すぎるほどあるだろう?」
「違いますよ。ハルシネイションコート、ボロボロじゃないですか! 僕が新しいのを見立ててまいりました!」
「あまり無駄遣いをするなとあれほど……」
「兄上は贅沢しなさすぎなのです!」

去勢を張るカナサにカナトは呆れてしまったようだった。
兄の方が一応上だが、弟も負けてはいないらしい。

「よかったじゃないですか。カナトさん」
「セオ殿……?」
「せっかくの好意なら、受け取ってもいいんじゃないかな?」

「セオさん!? ありがとうございます」

セオのフォローにカナサはよほどうれしいのか、目をキラキラさせている。
調子の乗ったのか、座っていたカナトを無理やり立たせ、カナサはバトラーに服を着せるよう、カナトを自室へ押し込んだ。

「カナサ君は、エミル族が苦手なのかい?」
「あの、いえ。ただジンさんの件でちょっと……でも、僕。セオさんのことジンさんより好きです!」
「あはは、ありがと」

そのあとも、セオが同居している相方の話とか、部隊でのジンの話を少ししたところで、
カナサが買って着たという服を着たカナトがゆっくりと自室から出てきた。
ボディスーツに装飾が入ったその服は、動きやすそうにも見える。

「キサラギのスーツか……また高いものを――」
「お似合いです兄上!」

兄の話など聞きもしない。
しかしそれでも、うれしそうなカナサの表情にカナトはほっとする。

「ありがとう。カナサ」
「当然です!」

その後、セオは夕食の支度があるといって、月光花と入れ違いで帰宅した。
次の日にカナトは、セオと黒蜥蜴の彼等が与えてくれた情報を元に、月光花と二人でロキの元へと訪れる。
彼女は、カナトには目もくれず月光花がいる事に了承し、すぐ屋敷へと通してくれた。

「ヴェリタス? あぁ、西の剣士ね。いつもタンクで、面倒なのよね……」
「知り合いですか?」
「フィールドで顔を合わす程度よ。フレンドでもないわ」
「……そうですか」

「ねぇ、ロキちゃん。ヴェリタスさんと、なんとか話せないかな?」
「……身内主義なやつだし、手を貸すとは思えないけど、会うだけならなんとかなるかも? ……そうね。今の時間なら闘技場で遊んでるんじゃないかしら、私もいってあげるわ」
「ありがとう。ロキちゃん!」
「げっかちゃんの為だもの。ザコはどうでもいいけど、げっかちゃんが辛いのは嫌よ」

女性の友情はよくわからないが、協力を得られた事は有難かった。
出かける準備をすると言って、ロキは先へ行くよう促し、月光花とカナトは、2人で闘技場へと向かった。
闘技場には演習を終えたばかりなのか、たくさんの冒険者達が溜まっており、未だ武器を振り合う彼らがいる。
見かけない顔ぶれに2人は視線を浴びたが、カナトはその中で目が合った相手へ、歩み寄った。

「失礼します。ヴェリタス殿を探しているのですが……」
「ヴェリタス? あぁ、西軍の……うーん、ここにはいねぇなぁ、まだロビーじゃないか?」
「そうですか、ありがとう。少し待ってみます」
「なんであんな奴に? 見ない顔だけど……」
「詳しく聞きたいお話がありまして、伺えればと参りました」
「ふーん……、あ、あれじゃね? あのバサバサの奴」

指差された方向をみると、グラディエイターの鎧をまとう青年がロビーからゆっくりと出てきた。
背中にはブーストを背負い、赤い瞳が鋭く光る。
右手に大剣を携えているのは、三俣のしっぽを持つドミニオンだった。

「ありゃぁ相当、機嫌わるいなぁ……相当ボッコにされたんじゃね?」

イライラしているのかまわりが道をあける。
一緒に出てきたのはため息をつく女性だ。ヴェリタスと思われる彼は、そんな女性の励ましにも応じず、肩を揺らして闘技場を出て行こうする。
まわりが雰囲気に気圧される中、カナトは月光花が止めるのも構わず、ヴェリタスと思われる相手へ近づいた。

「失礼、ヴェリタス殿でしょうか?」
「あん? 誰だよお前……」
「お初にお目にかかります、タイタニア・ジョーカーのカナトです」
「あ? まぁ、俺がヴェリタスだなぁ……」
「少し、お話を伺いたいのですが――」
「話だぁ? 今の俺は機嫌わりぃんだよ。空気よみやがれ」
「申し訳ない。こちらも、一時も早く動きたい次第です、協力していただけないだろうか?」
「てめぇの都合なんてどうでもいいんだよ!! 失せろ!!」

ガッ っと床に大剣をたたきつけ、思わず身がこわばる。
しかしそれでも、この相手が情報をもっているなら、何としても話をきかなければいけない。

「……ヴェリタス殿、失礼を承知で伺います。ご友人がネコマタの魂を復活させたというお話は事実でしょうか?」
「あ”? ネコマタだぁ? そういえばそんな話もどっかでしたきがするなぁ」
「詳しく、伺いたいのですが……」
「なんだてめぇ、それが人にものを頼む態度かよ」
「……」
「でもま、一応敬語はつかってっしな。そうだなぁ。ここに来るってことぁ、それなりの達者なんだろ?」
「達者……?」
「対人好きってことだよ。今の俺は機嫌が悪いんだ。相手しろよ」

「あ、あの、カナト君は――」

止めようとする月光花の言葉を静止し、カナトが武器を握りしめた。
ド素人の自分にどこまでできるかはわからない。
だが、この相手に、取引ではなく戦いで機会を得られるなら、それは説得よりも手早い方法ではないかと考えた。

「わかりました。お相手しましょう」
「へぇ、ノリがいいじゃん。お前が勝ったらいうこと聞いてやるよ。俺が勝ったら……そうだな、ジョーカーってっと中から役に立つしな。俺に憑依して演習にでろよ」
「……分かりました」

「カナト君……」

結果がどうなるかはわからない。
しかしそれでも、希望があるならそれにすがりたいとおもった。どんな結果になっても……。

闘技場の中央に立ち、カナトは向かいのヴェリタスを見つめる。
背中の武器を取出し、下に構えた彼はじっと意識を集中した。
“スタイルチェンジ”から“神の加護”を唱える。“ジョーカー”を唱える暇はないと判断し、必要加護だけかけて、突っ込むのが得策だろう。
もともと体力のない自分は、長期戦ではもたない。ならば最初から突っ込み、初手で決めてしまわなければおそらく勝ちはない。
相手が、自分の支援をかける前に倒す。

武器を握り直した直後。カナトとヴェリタスの足元に無属性の魔方陣が展開。
闘技場モードとして、安全バリアが張られた直後。
突然ヴェリタスが、カナトの間合いへ突っ込んできた。“無拍子”だ。

一瞬で目の前にきたヴェリタスに、カナトの判断が遅れる。
赤い瞳が目の前に来て、反射的に防御へ移る。

ガギン、と金属の交わる音が響く。早い。

「おっせぇなぁ!!」

スキルを唱える前に抑えられた。いけない。

「“グラヴィティ!”」

圧力がカナトにかかり、吹っ飛ばされる。
バランスをとるために翼を広げたが、これが決定打になった。
的が大きく見たヴェリタスは、バランスを取ろうとするカナトを追いかけ、さらに距離を詰める。
小さく“エヴィクリー”を唱えたヴェリタスは、大剣を大きく振り上げ、刃が闘技場のライトに反射してまぶしく光った。

「“神速切り”」

肩から一気に振り下ろされ、カナトは体が完全に二分する痛みを得た。
翼が分断される痛みに、思わず悲鳴を上げかけたが、振り下ろした大剣をさらに構えなおし、
ヴェリタスは、さらに笑みをこちらに見せる。

「“ジリオン・ブレイド!!”」

斬撃の舞がカナトの体を切り刻んだ。黒い羽根が数枚散り、床へたたきつけられる。
何が起こっているのか理解できなかった。
月光花は、ただ茫然と言葉を失い、画面がゆっくり暗転していく。
この程度なのかと、カナトは自分自身で全てを後悔した。





目が覚めるとそこは、知らない天井だった。豪華な天井が見えて、周りにはカーテンが下りている。
一瞬実家かと思い、飛び起きるとよく見れば周りの空気が違っていて、脇には心配そうにこちらを見る月光花がいた。

「カナト君! よかった、大丈夫?」
「ゲッカ……さん? ここは?」
「ロキちゃんの家だよ。カナト君、完全に気絶しちゃって……ロキちゃんのフェンリルに運んでもらったの」
「……」

うまく理解ができなかった。
しかし、ヴェリタスに倒されてしまったことは覚えている。情けなかった。

「申し訳ない。月光花さん……」
「ううん……大丈夫。どちらにしろ、わからなかったみたいだから……」
「わからない?」

「心の件よ」

後ろでヨルムンガルドとティーセットを広げるロキが、突然声を発した。
彼女は、真っ白なショートケーキをほおばり、ヨルムンガルドに頬についた生クリームと拭いてもらっている。

「心を元に戻したっていうのは、確かにヴェリタスのフレンドだったみたいだけどね」
「なら何故……?」
「ヴェリタスの友達は、もともと冒険好きの人みたいで、あちこち飛び回ってたみたい。それで、冥界で出会ったネコマタの魂を確かに修復したみたいなんだけど……」
「……?」
「彼、ヴェリタスの友達は、そのネコマタの故郷を探しに行ったきり、帰ってきてないみたいなの。数年前の話よ」
「そんなことが……?」
「エミル界へちょっと顔を出した後、すぐまた冥界へいっちゃったから、話も聞けずじまいだったんですって。聞いた話によると、戦争に巻き込まれて死んだんじゃないかって言われてたわ」

つまりネコマタの魂の話を持ち出したことで、彼の逆鱗を無意識にあおってしまったのか。
それならば、戦いの取引を持ち出されたのも納得がいく。

「えっと……ヴェリタスさんに話を聞いたらね、そんな友達の情報をすぐには渡したくなかったみたいなの……だから、恨まないであげてね……」
「……そんなことはありません。ロキ殿……ありがとうございます」
「アンタはどうでもいいわ、ゲッカちゃんがそうしたいって言ったからよ」

ぷいっとそっぽを向いてしまったロキに、カナトは微笑をこぼす。
目覚めた時刻は午前中で、昨日から丸々一日眠ってしまったことがわかった。
カナトと月光花は、昼食だけロキの家でいただき、午後には、いちど帰路へとつくことにする。
そんな、帰り道のさなか、屋敷前のアクロポリス噴水広場の前でブーストを背負う一人のドミニオンが腕を組んでこちらをにらんでいた。

カナトはそんな彼を発見すると、大急ぎでそちらへと向かう。

「おせーよ」
「ヴェリタス殿……昨日は本当に失礼した」
「うっせー、ザコにいわれたかねぇよ」
「……」
「悪かったな……」
「!?」
「ロキからいろいろ聞いた。てめぇも、相方が寝込んでんだろ?」
「……はい」
「俺も演習終わったばっかで気が立ってたんだ……悪かったな」
「いえ、こちらこそ……貴方の気も知らず、申し訳なかった」
「……いい奴だったんだ。一緒に演習出てたんだけどよ、俺にはやっぱり冒険があってるっつって、一人でふらふらしてやがって……戻ってきたら乗るっつってさ……憑依箇所も空けてたのに……」
「……」
「先いきやがって、んっとばかみてぇだぜ」
「ヴェリタス殿……」
「……でもま、仲間を大事にするやつぁ、嫌いじゃないぜ?」
「!」
「俺が勝ったからな、時々演習に来いよ」
「はい……」

ヴェリタスに差し出された拳に、カナトは拳で応じた。
成果は得られなかったが、その分みのりはあったのだと思い、カナトはその日も月光花とともに買い物をして帰宅する。

そうして一日を終えて、少し夜更かしをして眠ったころ、深夜あたり、カナトのデバイスへ一件のメールが届く。





*GEST
jk_veritas_140120.jpg

イクスドミニオン・グラディエイターのヴェリタス

年齢:20歳

性格
アクロポリス・ダウンタウンで毎日開催される。混成騎士団演習へ参加する冒険者。
乱暴な性格で、なんでも対人で決着をつけようとするが、仲間には寛容で義理堅いところを見せたりする。
同時に中家からの信頼も厚い。
死んだといわれた仲間がいまだに生きて帰ると信じてまっている。

Chara:PRIGRESSIVEさん


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本編 | 【2014-03-20(Thu) 12:30:00】 | Trackback(-) | Comments:(0)
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