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Heart*Lost:第五話
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Heart*Lost
第五話 孤独からの再動

第一章
第一話:終わりの始まり
第二話:序章
第三話:失うもの
第四話:夢への入口


 カナトが気づいた時には、自室に居て、自宅には心を失い、入れ物となったジンが、点滴を打たれて寝かされていた。
その時に関わった全てのランカー達は、カナトの事を心配し、顔を見たいとも言ってくれたが、カナト自身、心の整理が付かず誰に合うことも拒み、結局、自宅へと篭ってしまっていた。

ランカーの一人が行動不能となり治安維持部隊は、その席をどうするかモメたが、死亡ではないと言う結論のもと、目覚める可能性があるとし、除名はされない方針に纏められた。
その中でランカー達は、なんとかジンが目覚める方法は無いかと、そろってセオの家にあつまる。
集まったのは、カロン、リゼロッテ、カルネオル、リアス、ぬえだ。

「で? ジンは起きんのか? セオ」
「霧散してしまった心を元に戻すのは、非常に困難です。それでこそ、コーヒーに混ざったミルクを取り除くようなもの……しかし、今のままではずっと眠りについたままでしょう」

「それをなんとかするために集まってるんでしょー? なんか方法はないの?」
「しかしセオ大尉。心は取り出した場合。殆どが結晶化した固体だと聞きます。霧散とはあまり考えられないのですが」

「リアスさん。確かに、普通は霧散ではなく、粉砕するが正しい。しかし今回は、あらかじめ“想いの力”を抽出されていたため、心その物に、固形化する程の質量が無かったのではと考えられます。真空のケース内でなんとか固形化を保ってはいましたが、それごと破壊されてしまった為に、霧散したのかと」
「なるほど」

「うーん。好きなものに吸い寄せられたりしないのかなぁ……」
「でも、ジンさんって銃ぐらいしか好きなものわかんないですよ?」

カルネオルの容赦ない発言に、もはや誰も突っ込まない。
集まってからそろそろ三時間たつが、こんな会話がループするだけで進展も望めず、セオはため息をついた。

「仕方ない。皆さん別々に行動しましょう」
「いいのかよ。それで」
「やりたい事違うようにも見えます。話し合うよりも、各々の方が納得いくでしょう」

振り返れば、カルネオルとぬえは何かを相談している。
リアスも何か思いついたのかすぐに部屋とでていき、カロンもまたあさっての方向へ視線を向けた。

「なーによ。呼んだと思えば……とんだ無駄足ね」
「リゼさん……」
「いいわ。もう帰るし、なんか進展があったら教えてちょうだい」

興味が薄れたのか、そっけない態度で出て行ったリゼロッテに複雑な心境を思う。
ホークアイの彼女に何ができるわけでもないのだが……。

先日焼いたクッキーをほおばるカルネオルとぬえは、二人でおいしそうにそれを食べており、セオはそれにほっと息をついた。





ランカー達がそれぞれに動き出す中、カナトは一人自室で目を覚ます。
時刻は10時前後。早く休んでいるためか、それとも運動をしていない所為か、睡眠が極端に減ってきた。
改善しているとも思いたいが、それを伝えたい相手が、眠りから目覚めない。
いまだ現実が呑み込めず、心の中にしがらみがあって、全てが夢であればいいと願っていた。

「カナト君~! おーきてーるー?」

扉が開く音と共に響いた高い声。
カナトはこれに目を開けると、重い体をゆっくりとおこした。
ノックをする彼女は、こんなどうしようもない自分ですらも、酷く心配し、毎日様子を見に来てくれる。
ゆっくりと扉を開けて、顔を出した月光花は、起き上がる仕草すら見せないカナトを心配そうに覗きこんできた。

「起き上がれそう……? タマゴサンド買って来たんだ。食べれる?」

何もしたくなくて、何もやろうとは思えなくて、何に対しても不感になりつつある自分がいる。
こんなとき、どうしていただろうか。
過去の自分から答えを考えてもうまく纏まらない。

「いつもすみません……」
「大丈夫大丈夫! 起きて!」

ゆっくりと翼を広げふんわりと舞い上がるカナトは、直ぐに着替えるとリビングへとでた。
するとテーブルにコーヒーが入れてあり、口をつけてみると酷く甘い。

「あ、それカナト君のコーヒーだから全部のんじゃって!」

ジンの点滴を変えて戻ってきた月光花が笑顔で述べる。
やはり彼女に料理をさせるべきではないか……。

「月光花さん、お昼は取られたのですか?」
「うん、少しね。でもあんまり食欲でなくて……」
「……」
「まだ、実感がなくてさ。あんな間抜け面で寝られたら、なにかの表紙にふっと目を覚ますんじゃないかとおもって」

ジンが眠りについてから、もう一週間が経過していた。
あの日からカナトも月光花も実感を得られず結局なにもしないまま、過ぎている。

「ジンの事だし、そのうち目覚ましそうな気がするんだけどなぁ」

目は覚まさない。
心を消失し容れ物となった器はただ存在するだけの人形に過ぎないと言う。
また、心が霧散してしまったと言う事実から、もし取り戻したとしても、同じジンでは無いかもしれないとまで言われた。
なら、一体どうすればいいのか。

情報が欲しいが誰も頼れない自分の立場にぐっと唇を噛む。


「あ、カナト君。私、そろそろ出るね。午後からまたあるから」
「はい」
「なんか買い物してこようか?」
「お願いします、食べたい物の材料があれば作りますよ」
「ほんとに! やったぁ。あ、ジンに会って行くね!」

パタパタと、月光話がジンの部屋へかけて行く。
カナトは一人、月光花が作ったコーヒーを処理し、汚した食器を洗いはじめた。
ため息を落とし、ふっと水を止めると、小さく押し殺した声がカナトの耳に届く。

「ばかぁ……ジンのばかぁ、起きなさいよ。どれだけ心配かけてんのよ……大っ嫌い……」

小さく聞こえてくる声に、何も言えず、後悔だけが心に残る。
あの時、何ができただろうかと、何をしていただろうと、
一番近くにいたはずなのに、目覚めた時には全てがおわっていた。
誰のせいでもなくて、恨みたい人間も、もういない。

小さなすすり泣く声が響くなか、一滴の雫がまた頬を伝った。


そんな日々を二人が送る中、アクロポリスを歩く青年がいた。
一枚の黒羽に、白を基調とした高価そうな服をまとい、うしろにはスーツの男性を引き連れている。

「カナサ様。本気で、向かわれるおつもりですか?」
「当たり前じゃないか! 兄上が僕のメールを返さないなんて、あり得ない。絶対なにかあったはずなんだ!」

声を張り上げ、そう述べたのは黒羽のタイタニア。アークタイタニア・カナサ。カナトの双子の弟だ。
以前からカナサは、カナトと数日に一度メールのやり取りをしていたが、ここ一週間ぱったりとそれがなくなり、返信も来なくなってしまった。
一日ぐらいなら、きにもしないのに一週間、何度送っても返信されず、カナサは我慢できなくなり自分の足で出てきたのだ。

“ナビゲーションデバイス”に搭載された位置情報システムで、カナサは、飛空庭を見つけ出す。
タイを直させると、彼は堂々と呼び鈴を鳴らし、庭へと上がった。
扉の前まできて、バトラーが代わりにノックすると、高い声と共に扉が開いた。
現れたのは、青を基調としたワンピースを着る、女性。
青髪の彼女にカナサは思わず言葉を失い、目をまん丸にする。

「か、カナト君!? ……かとおもったけど、違うか。ごめんなさい。こんにちは」
「だだだだだ、誰ですか貴方は!!」
「へ?」
「こ、こ、ここは僕が兄上に差し上げた自宅で……」
「兄上……カナト君が? あ、もしかして、弟のカナサ君!! 始めまして、私、月光花。よろしくね」
「き、聞いてません!! そ、そんな事より貴方は兄上のなんなのですか、あ、兄上が女性を自宅に連れ込むなんて、そんな、破廉恥な……」
「カナサ様、ここは冷静に……」

明らかに動揺しているカナサに、後ろのバトラーがなだめに入る。
月光花が首をかしげていると、後ろから楽しみにしていた声が響く。

「カナサなのか……?」

月光花の後ろから現れた黒羽。
カナサは目を輝かせ、カナトへと抱きついた。

「兄上! お久しぶりです」
「突然……どうしたんだ?」
「兄上がメールを返されないので、心配していたんです!!」
「あ、ぁあ、すまない。全く、みていなかった……」

ふと、数日ぶりに“ナビゲーションデバイス”をみると、完全に電源が落ちて起動すら出来なくなっている。
仕方なく、カナトは自室に戻り一週間ぶりに充電をする事にした。

憂鬱な態度を見せるカナトに、カナサが、不思議そうな表情をみせる。
それに気づいたのか、カナトは苦笑すると、

「とにかく、よく来た。ゆっくりしていくといい」
「兄上、なにかあったのですか?」
「カナサ……?」
「兄上らしくないです。僕の知っている兄上は、もっと堂々として……」
「……大分会っていなかったから、じゃないか? それに今日は少し体調がよくないんだ……」
「そう、ですか? それなら仕方ないですね。お大事になさってください」

困った表情になるカナサに、カナトが再び苦笑する。
ちょうど月光花と昼食をたべており、料理はあと二人分あった。

しかし、キッチンや部屋の現状をみて、カナサが更に苦い表情をみせる。
洗い物は殆ど片付けきれておらず、洗濯物はたまり、お世辞にもいい状態とは言えない。

出してもらったシチューは、分量を間違えたらしく、味が安定しないし、カナサは再び目の前のカナトを凝視した。
虚ろな瞳で、何かを考えているようにも見えない。
だが、不味い料理を平然と出せる人ではない気がする。
ここまで考えて、カナサがはっとした、もう一人がいない。

「そういえば、兄上のご友人のエミルさんは……」

カナトと月光花が手をとめた。
口に運ぶのをやめて、音を立てないよう食器をおろす。

「出かけて、いるんだ。ジンは……」
「あれ? そうなのですか! じゃあこの料理もあの人が?」
「いや、これは私だ……」
「ご体調の悪い兄上に作らせるなど、家事をサボっているとしか思えません。帰ってきたら僕が一言行って差し上げましょう」

何を言っても変わらない兄の表情に、カナサは手ごたえのなさを感じずにはいられない。
昼食にほとんど手を付けず、スプーンを置いてしまったカナサは、机を殴りつけて立ち上がった。

「なんなのですか!! 兄上」
「……」
「そうですね。僕はよそ者ですものね、兄上に何の力にもなれない無力なタイタニアです。それでも、隠したいことがあるなら、もっとわかりやすく隠してください。でないと……僕が……僕が……」

じんわりと頬が赤く染まるカナサに、月光花は思わず手を止めた。
どうしたらいいかわからない、こちらだって整理がついておらず、どこから話せばいいかもわからないのだ。
しかし、目の前にいるカナサは自分たちの態度が気に食わず、ぐっとこぶしを震わせている。

「カナサ君――」
「いや、いい……。月光花さん。嘘はつきたくない……すまないカナサ」
「……兄上」
「なにもないんだ……。カナサ、ただお前が、ジンの事をあまりよく思っていないことは知っている。だから、あまり口にしたくはなかった。それだけは理解してくれ」
「……やっぱり、あの人ですか。どうして兄上はそこまで、あの人の事を……? 僕には理解できません」
「……」
「辛いだけではありませんか……。エミル族は僕達タイタニアよりも何百年も早く寿命を終えてしまう。そんな人たちと関わるだなんて、僕は悲しすぎて……」
「……私も、初めはそうだった」

「!?」

「寿命が違い、時間の感覚が全く違うエミル族は、私たちにとって別れの象徴でしかない。いつの時も先立たれ、別れを惜しむのなら、初めから関わらないほうがいいのではと……」
「カナト君……」
「……しかし、それでも私は、奴と出会った。生きることをあきらめ、希望を失い、できるなら永遠に眠りにつきたいと願った時に……会ったんだ」
「……」
「どんなに時が短かけれど、今こうして生きている事に希望を得られるならば、それでいいのではないかと、奴はそれを教えてくれたんだ」
「……兄上」
「すまない。カナサ、私には捨てられないんだ……」

ゆっくりと断定された言葉にカナサは、一瞬、なにかに絶望したような表情をみせた。
しかし、それでもぐっと噛みしめゴシゴシと顔をぬぐう。

「探しに、行きましょう。……兄上」
「探す?」
「今ここに、あの人はいないのでしょう? なら、探しに行けばいいではないですか!」
「だが……」
「僕の知っている兄上は、そんなすぐあきらめるような人ではないはずです! エミル一人ぐらい、すぐ見つけられます……だから……」

押しの強いカナサの言葉に、カナトは何も言えなくなってしまった。
双子であるが故、考えている事は手に取るように分かり、感じる。
だからきっと彼も、自分と同じで経験しなければ、理解など得られないと考えていた。
しかし、今のカナサは、他ならぬ自分の言葉を聞き、それを受け入れようとしている。
未だ納得がいかないようにも見えはするが、その小さな努力を無駄にはしたくはないと思った。

「カナサ……ありがとう」
「兄上?」
「とても身近にある、大切なものに気づけた」
「僕は、兄上のですから……でも」
「?」
「僕は、兄上の一番には、なれないのですね」
「なにを言ってるんだ?」
「へ?」
「どんなに離れていても、時間が経とうとも、私達は双子で、兄弟だ。家族ではなくとも、その事実は変えることはできない。そんな絶対の絆を持つのは、お前だけじゃないか。カナサ」
「僕だけ……」

カナサはぐっと唇を噛み、カナトの言葉をのみこんだ。
欲しかった言葉とは、全く違う言葉だが、カナサにとっては、十分すぎて、思わずカナトへ抱きつく。
カナトは軽く頭を撫で、落ちつかせると、頃合いを見計らい、ジンの現状を彼に告げた。
カナサはジンをみて、何かに絶望した表情をみせたが、カナトの表情をみて落ち着く。

「ごめんなさい……兄上。無責任な事を」
「構わないんだ、カナサ。おかげで決められた」
「決めた? 何をですか?」
「探せばいいと、お前が教えてくれたんだ」
「!」
「今まで私は、奴に頼りすぎていたのかもしれない。だから今度は、私が動き、探す。必ず見つけ出そう、お前の兄として」
「兄上、僕は、兄上の弟である事を、誇りに思います……」

堪えていた涙を、カナサは我慢しきれず一気に吐き出した。
ひたすら泣いて、疲れてしまったのか、カナサはそのまま眠りについてしまう。

カナサが来た理由をバトラーに詳しくきくと、父、ウォーレスハイムが、母方の実家へ呼び出しを受け、留守にしているらしい。

「どうして、カナサ君は一緒にいかなかったの?」
「カナト様とカナサ様の実の母上は、物心つく前に亡くなっています」
「え、じゃあ……」
「今の母上は、血の繋がらない母上……、実家は天界の政治に関与する大貴族です。彼らは何より血統を重視するため、血の繋がらないお二人はよそものなのでしょう」

「父上は、自らの役職。ルシフェルをカナサへ譲渡するため、今の母上と婚約し、一族の地位を絶対のものとした。……お互いが大貴族であり、かつ、七大天使同士ならば、周りは文句もつけられないからな……」

「しちだいてんし?」

カナトがはっとする。
目を点にする月光花には、どこかジンの面影がちらつき、思わず頬が緩んだ。

「いえ、お気になさらず。天界の話です」
「へぇー、天界ってどんな場所なの? 私行ったことないんだよね」
「わ、私は、まだ足を運んだ事はありません……。申し訳ない」
「あれ? そうなんだ?」
「私は生まれつき堕天で、エミル界で生まれ、エミル界で育ちました。ただ、実家に居た頃に、天界の政治体制や考え方を学びました。……当時の知識なので、おそらく、今は全く別物になっているでしょう」

目を合わせないカナトは、天界について話す事を、酷く戸惑っているようだった。
今まで殆ど口にせず、あまり聞いたことがなかったが、

「私が、今ここにいる理由を安易に暴露すれば、おそらく、私の実家そのものが没落してしまう……。どうか聞かれず、カナサの為にも……」

よくはわからなかった。
しかし、そんな大貴族の長男が目の前にいる事自体、本当ならあり得ない話で、そうなり得る程の理由があったのだと、月光花は理解する。

そんな話を、続けていた所、ようやくカナトのナビゲーションデバイスが、充電完了の音を鳴らした。
久しぶりに電源を入れてみると、大量の着信とメール、リプライが来ており、思わず言葉を失ってしまう。
何も言わず眠りについた相方は、かけがえのないものを、残してくれた……。

「カナト君?」
「いえ、なんでもありません。月光花さん、私はかならずジンを呼び戻します」
「あは、ありがとう。でも、無理はしないでね」
「はい」

「僕も、手伝います……」

上から響いたもう一つの声は、未だ目を赤くするカナサだった。
彼はふわりと舞い上がると、カナトの目の前へ、そっと着地する。

「あのエミルの、ジンさん代わりを、やらせてください」
「……それはできない。カナサ」
「何故ですか……!?」
「カナサは、私達とは立場が違う。何かあれば父上の進退にも関わるかもしれない」
「でも、僕は……」
「……連れては行けないが、父上が戻るまでは、ここに居ても構わない。それだけで十分だ、カナサ」
「兄上だって、何かあるかも知れません……」
「大丈夫だ」
「え……」
「私には、ジンが残してくれた仲間がいる。だから……一人じゃない」
「……兄上。……わかりました」

そうカナサに言い聞かせ、カナトは一人、ジンの部屋へと向かう。
静かなその部屋は、心地よさそうに眠る彼がおり、窓からは月が輝いていた。

必ず取り戻すと誓い、カナトは、その次の日から再動する。


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本編 | 【2014-03-06(Thu) 12:30:00】 | Trackback(-) | Comments:(0)
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