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(C) BROCCOLI/ GungHo Online Entertainment,Inc./ HEADLOCK Inc.

ジンが本部へ行く話
ランカーに登録ありがとうございますw
初交流ですがよろしくおねがいします!

出演:ホライゾンさん。カロンさん。カルネオルさん。ナハトさん。ぬえさん(名前だけ)

ロケ地:ギルド元宮

前回:ジンが本気になる話

あらすじ
前回の通り魔事件で、主力の武器である光砲・エンジェルハイロゥを破壊されたジン。
修理のために、治安維持部隊本部があるギルド元宮に赴くが壊れ方が派手すぎたため、
修理窓口に直せないと断られてしまう。
しかし、同じく武器の調整にきていたランカー達が、たまたま来ていたジンに声をかけた。


 「はぁ……」

机に突っ伏し、ため息のような声を上げたのは、エミル・ガンナーのジンだ。
彼はテーブルの上へ真っ二つになっている光砲・エンジェルハイロゥを置き、力なく声を上げている。

「さっさと修理に行って来い」
「行きたくねぇ……」
「何故だ? 現行ランカーは、無償で直してくれるのだろう?」
「そうなんだけど、本部にいきたくないんだよ……」
「?」

向かいでコーヒーを飲みつつ、読書をしているのはこの家の主、タイタニア・ジョーカーのカナトだ。
今日はたまたま、酒場で受けた依頼が明日からということになり、珍しく非番となった。
久しぶりの休日でもあり、カナトはのんびりすごしているようだが……。

ジンの手元には見事に真っ二つに破壊された武器が目の前にある。

「貴様の武器の事情はしらないが、影響が出るなら早く行け。こちらが迷惑だ」
「うるせぇ、行くよ。先延ばしにできるものでもねーし……」
「……治安維持部隊について、少し調べた」
「ほう?」
「その中で、ギルドランク5thの贈呈品は穿竜砲・ヤタガラスだと分かったのだが……」
「あぁ、一応持ってるけど、あれは銃じゃないんだ。
鉄の塊いれて電気の力でぶっぱなすタイプのレールガンみたいなもので、すっげぇ軽い上に、威力もすげぇから最強なんだけど……」
「構造など聞いていない。使わない理由を聞いただけだ」
「銃じゃない銃を、ガンナーが使ってどうするんだよ」
「……下らん」
「お前には一生理解できねーよ!」

そういってジンは席を立ち、ハイロゥを大き目のバックに移す。

「さっさと帰って来い」
「へいへい」

治安維持部隊関連について、カナトは完全な部外者だ。
職業ギルドに所属しているなら、転職などの試験で多少はギルド評議会にお世話になることはあるが、
傭兵上がりのカナトは、その職業ギルドにすら所属していない。
それがある意味、ジンにとってはありがたいことでもあるのだが、

アップタウン中央北にある、巨大な塔の建物。
ここがギルド評議会・治安維持部隊の本部がある拠点だ。
各地に散らばる職業ギルドの窓口を抱え、冒険者は現地に行かずともここで所属することができる。
そうした窓口を提供するためにあるのがギルド評議会だ。

現在もアクロポリスは周りを囲む四国に分割統治されており、国家ではなく交易都市としての役割を果たしている。
しかし、国家ではないここは厳密な法が存在しない。
かつてはここもひどい無法地帯としてさまざまなことが起こっていた。
それを平定するために作られた組織こそが、建前上このギルド元宮に本部をおく治安維持部隊。
評議会の命令に従う抑止組織だと言われている。

ジンは重い足取りで元宮の前に立ち止まり、天へ伸びる塔を見上げる。
もう当分来ないと思っていたのもあり、余計に気が乗らない。
しかし、武器を治せる人はここにしかいないのだから、仕方がないだろう。
息をつき、彼は元宮へと足を踏み入れる。

受付ブースに足を運び、武器の修理依頼のため身分証明を掲示された。
ジンは、脇にある右手用のサラマンドラを抜き、さらに写真付きのカードを掲示する。

「部隊登録ナンバー09713、ギルドランク5thのエミル・ガンナーのジンです」
「ランカーさんですね。確認が取れましたので、エレベーターにて修理窓口へお向かいください」

認証カードを渡され、ジンは中央のエレベーターへと向かった。
ランカーとは、いやな言葉だとおもう。そう呼ばれる度に気が滅入ってしまうのは自分だけではないと思いたい。
そんな乗らない気持ちで彼は、元宮の専用窓口へと向かった。

手早く用事を済ませ、さっさと帰ろうと思っていたのが、エレベーターを降りた直後。
ジンは見覚えのある顔に思わず足を止める。短髪にイレイザーの職服をまとうイクスドミニオン。
この時点で圧巻だが、あいては「おっ」と声をあげて、ジンは思わず「げっ」と声をあげる。

「か、カロンさ……」
「よぉお! ひっさしぶりだなぁ! ジン君!」

思いっきり肩を組まれ大声で叫ばれてしまった。
イクスドミニオン・イレイザーのカロン。ギルドランク2ndの上位ランカーだ。

「元気だったか? しばらく顔みてなかったし、どっかでくたばったのかと思ってたぜ?」
「ひどいっすよ。カロンさん……というか、重い」
「わりーわりー。今日はどうしたんだ? 珍しく公認の仕事でもする気になったのかい?」
「いえ、武器こわしちゃって」
「ほう、それは災難だったなー。相当強敵だったんだろ?」

不意を突かれたとかいえるわけがない

「どうした?」
「なんでもないっす……」
「なんだよー。俺とお前の仲だろー話せよ~」

「邪魔よ、どいてくれるかしら」

高い声が唐突に響いた。
二人が視線をむけると、短髪にもみ上げを流した、アークタイタニアの女性。
ロマンスドレスをまとい、鋭い瞳でこちらをにらみつける。

「ランカー3rdのナハトちゃん、奇遇だねこんな所で」
「奇遇の意味が食い違えているわ。気安く話しかけないで」

そういって、ナハトと呼ばれた女性は二人を強引に押しのけて去っていった。
アークタイタニア・ソウルテイカーのナハト。彼女は治安維持部隊の任務以外、眼中にないとも言われている。
ギルドランク4th以上のランカーたちは、ほぼ毎日ギルド元宮へ通い、日課的に任務をこなしているので、基本的に本部に行けば会ってしまう。
予想していたことだが、帰宅できない可能性が出てきた。

「カロンさん、職服ってことはこれから任務ですか?」
「あぁ、夜からちょっとな。武器の調整してもらってたとこだ」
「なるほど」
「来るかい? 久々に暴れられそうなうえ、報酬も弾むぜ?」
「俺そういうの向いてないんで……」
「ばっか、向いてないならさそわねーよ!」

そういって乱暴に肩を組まれる。
向いてる向いてないなど考えたことがなかったが、モンスター戦より対人のほうが分かりやすくていい。
結局ジンは、カロンと共に武器修理の受付を行うこととなり、二人で窓口へと赴いた。
すると、受付のテーブルへ背伸びするアークタイタニアの少年がいる。

「お、カルネ坊じゃん」
「わっ」

声を上げて背筋をピンっとたてた少年は、恐る恐るこちらへと振り向いた。
同じランカーは一応全員覚えている。ランク10thのアークタイタニア・グラディエイターのカルネオルだ。
齢11歳でランカーとなった、史上最年少の天才少年。

「カロンさん! こ、こんにちは!」
「カルネ坊も、武器調整かい?」
「はい! 刃こぼれをしてしまって……、直してもらっていました!」
「刃こぼれは、直すじゃなくて“研ぐ”っていうんだぜ? な、ジン」
「あれっ、ジンさん! おかえりなさい!」
「カルネ君も元気そうで何より」
「はいっ」

彼の笑顔がまぶしい。
自分が治安維持部隊を嫌っていると知ったらどんな顔をするだろうか。

「ジンさんも武器が?」
「え、うん……派手に壊して、というか、直せないだろうし相談に」
「直せないってどういうことですか?」

そんな会話をしているうちに、カロンの武器とカルネオルの武器が返却された。
ジンは、空いた受付スペースに真っ二つになったハイロゥをおく。

「うわぁ……派手にやったなぁ」
「これは……」

「どうやったらこんな風になるんですか! ありえないでしょう!」
「す、すいません……」

修理担当のマエストロさんにも怒られてしまった。
特別発注で数も少ない治安維持部隊の武器は、そう簡単には直せない上。部品の数も少ない。

「これは完全に交換ですね……。ランカーさんの武器の取替えとか聞いたことないですけど……」
「こいつがないと結構大変なんで、なんとかならないっすか?」
「贈呈品の再配布が、果たして許されるのかどうかは分かりませんが、
破損報告書さえあれば対応はできるとおもいます。ともかく、すぐには受付できないかと」
「で、ですよね……」

報告書の受理までにいったいどのぐらいかかるだろう……。
今から書かなければいけないと思うと、正直気の滅入る作業だ。
しかし、無償である上、自分なりにカスタマイズしてもらえるなら、プラスに考えるメリットもあるか……。
結局ジンは、修理室のデバイスを使い報告書の作成を行うことになった。
文章の作成が苦手なため、カルネオルとカロンに手伝ってもらい、すこしづつ文章を仕上げていく。

「通り魔に襲われたのか、災難だったなぁ」
「元ランカーの逆恨みで。結構強かったですけど剣士さんだったので何とかなりました」
「剣士さん!? 剣士さんだったのです!」
「え、まぁ……」
「同職として許せません! 今度襲ってきたら僕が捕まえます!」
「いやもう一応、取り調べ終わったし」
「あぁ、それってもしかしてこの前の? 元ランカーってあいつか」
「あ、たぶんあってると思います」
「えぇー、一体誰ですか! ぼくにも教えてください!」

そんなカルネオルの声はおいておき、報告書の作成が大方終了した。
これを今提出して、武器修理の担当者に渡り、再作成の許可と再申請の処理を……。

「……一ヶ月でかえってきますかね?」
「甘いぞ。武器はややこしいからな」
「めげないでください、ジンさん!」

そうやって肩を落とし、書類の印刷ができたところで、新しいノックが響いた。
思わず身を震わせたジンに、カロンがにやりと笑みを見せる。

「おまえそういうところ治せよなぁ」
「えっとぉ……」
「苦手なのはわかってっけどさぁ」
「すみません……」

「おや、君は」
「あっ!」

カルネオルの明るい声にカロンとジンも振り向く。
白銀の翼を持つアークタイタニア。凛とした身なりをしているのは。
ギルドランク1stのアークタイタニア・ガーディアンのホライゾンだ。

「ジン君。久しぶりだね」

固まる。言葉が出ない。
唯でさえ普段から居らず居心地が悪いのに、このタイミングで会うものなのか!?
何も言えず呆然と突っ立っていると、カロンがジンの前にでる。

「どうも、ホライゾンさん。すいませんこいつ固まっちゃって」
「そうか、やっぱりまだ苦手かジンくん」
「え、まぁ……」
「けど、仕方ないといえば仕方ないか。君は結局最後まで部隊には馴染めなかったしね」

「え、あ、えっと……すいません。お世話になってます」

萎縮し言葉を迷う、目すらあわせることができないのは、ずっと一人で戦っていた時に、
唯一自分を守ってくれていた相手だからだ。
ランカー達はみな、こうして仲良く接してはくれているが、それはランカーになってからの話であって、
それ以前の下っ端時代に気にかけてくれたのは……。

「そういえば、今日はどうしたんだい? 珍しいじゃないか」
「えっと、」
「こいつ武器壊したんですよ。それで修理できなくて、いま報告書を出しに行こうと思っていた所」
「修理ができない?」
「えぇ、筒から真っ二つ」
「ちょっと、報告書を見せてみなさい」

そういわれ、ジンが3人で作成した破損報告書をホライゾンへ渡す。
彼はその書類を一読し、「ふむ」と一言言うと、

「これなら、私が上に掛け合ってみよう」
「え――」
「修理できないのなら、マエストロに報告しても意味がない。
私が直接、最高管理者のルーラン様へ掛け合えば、武器もすぐに発注できるはずだ」
「だ、だけどそんな……」
「君はまだ若い。時々は大人に頼りなさい」
「そうだぜ? それにランカーの俺達には誰も文句は言わないさ。もっと堂々としろ」
「そうですよ! ジンさん」
「あ、ありがとうございます」

こんなにも暖かいのに、どうして自分はこんなにも信用できないのか。
1年前、部隊合同任務の際、サウスダンジョンの大穴へ突き落とされた。
そのため、たとえ同僚でも敵になりかねないと学び、ランク制度を使って治安維持部隊の本部から逃げ出したのだ。
突き落とされた時期と、認定の時期がちょうど同じで、ダンジョンから生還した直後に、
本部から出ることはできたのだが、

こうして自由に行動できるのも、そんな事情を知るスイレン最高責任者と、
部隊時代から気にかけてくれてくれた1stのホライゾン。
そしてもう一人は、自分をここへ導いた。もう一人、

「そういえば、総隊長が君に会いたがってたよ?」
「え゛、なんでですか!?」
「この前君が、本当の事情を知ったときいて、複雑な顔はしてたけどね」
「は、話たんですか……」
「それでも、せっかく来たなら挨拶していけばどうかな? 喜ぶと思うよ天然だし」

自分より地位の高い相手を、そうやって言うのもどうかとおもった。
だが、せっかく来たんだ。確かに挨拶する価値はあるだろう。

「ホライゾンさん。ありがとうございます」
「……なら、この報告書は僕が預かるね」
「俺もそろそろ任務だし、出るわ」
「僕も晩御飯なので」

「俺はこれから、総隊長に挨拶してそのまま戻ります」

「あぁ、いつでも戻ってくるといい」
「そういや、ぬえが書庫にこもってでてこねーし、ついでに会って来いよ。せっかくだしさ」
「忙しいなら、邪魔するのもダメだとおもうんで……というか、今日ランカーさん多いんですね?」
「あぁ、動ける人を集めてほしいって上から達しがあってね。少しづつアクロポリスに集まっている。見かけることもあるだろう」
「心配すんなよ。お前はお前のやりたいことやっとけ」

そういってくれるのはありがたい。
だがこの人たちから受けた恩は計り知れなくて、とても自分だけ逃げようとも思えなかった。

「……もしよかったら、情報回してもらえませんか?」

「かまわないけど、いいのかい?」
「はい。参加するかどうかは自分で決めます」
「……分かった。ジン君のデバイスもメーリングリストに追加しておこう。だが義務はないからむりはしないでね」
「はい」

「それじゃあ、僕はこれをルーラン様に渡してくるよ。またね」
「はい、また」

そうしてホライゾンが背を向けたあと、カロンはジンの肩へ手を回す。
少しづつではあるが、彼らをまた信用したいとジンは素直にそう思った。

光砲・エンジェルハイロゥの残骸を、ジンは修理窓口へと渡し、一人元宮の最上階へと向かう。
混成騎士団総隊長。アクロポリスへ派遣されている4国の騎士団のアクロポリス側の総隊長だ。
そして同時に、治安維持部隊の統括。つまり最高権限をもった総隊長でもある。

彼と初めて会ったのは、アクロポリスへ連行された時。
部隊員になるかどうかを聞いてきた相手こそが騎士団隊長だった。



***


「君の正当防衛は認められる。罪に問われることはないよ。だから安心して」
「月光花とあわせてくれ」
「その前に、ちょっと選択をしよう」

目の前に置かれた3枚の書類。
いまだ15歳前後だった自分に、その文面の言葉の意味は殆ど理解ができなかった。
その上で、総隊長はあえて分かる言葉で説明する。

「これがジン君の国籍、つまりファーイーストの国民である一つの証明。
そしてこの二枚目が、治安維持部隊への加入書類で、こっちがファーイーストの孤児院への入院書類だ」
「……」
「何故この書類がでてきたかっていうとね。君はファーイーストの国民だから、冒険者としての登録ができない」
「冒険者?」
「住民票を持たない人々のことだよ。国籍があればその国の権利も得ることはできるが、治安維持部隊への所属はできない。
国籍をもったままここにいようと思えばファーイースト騎士団に所属することになるからね」
「??」
「む、難しいよね……でも一応説明きいてね。分かったときのために」

無言でうなずいたことを覚えている。
理解を得ない自分を気遣って、分かりやすくゆっくりと話してくれた。
その意味に気づいたのは一年後だったが。

「君自身のこの国籍を持って、ファーイーストへ戻れば、孤児院へ入ることができて平和に暮らせる。
でも、この国籍を捨てて、治安維持部隊に入ることもできる。それが冒険者になるってこと」
「冒険者がわからない……です」
「どんな場所にでも自由に行き来できる旅人のこと。私もそうなんだ」
「貴方も?」
「うん」
「……月光花と、帰りたい」
「そういうと思っていた……。だけど、彼女は帰れない」
「!? なんで……」
「あの子は、君と同じ、ファーイーストの国籍を持っていなかったんだ。
だから、帰ったとしても君と一緒にいることはできない」
「どうして……」
「不法入国者ってしってる?」

ジンの息が止まる。聞いたことがある。

「国籍がない。月光花ちゃんの両親は、ファーイーストの国民じゃなかったんだ。
だから一緒には帰れない。つまり月光花ちゃんは、帰る場所がない以上。ここにとどまるしかない」
「そんなこと……」
「うん。だからジン君。君はどうする?」

一人で故郷へ帰るか。それとも国を捨てて部隊員となるか。
生きるすべのないジンにとって道は二つに一つだった。

結果、部隊員となった自分は、去年ランカーとなり現在に至る。
当時は幼い自分なりに相手をうらんだものだ。理不尽だと世界を恨んで自分の運命をのろった。
だけど、真実は違った。

月光花の両親は不法入国者であることは嘘にすぎず、
もしあの時、月光花と共にファーイーストへ帰っていたら、
自分達の町をつぶした豪族に殺されていた可能性があるのだから……。


***


そんな過去を思い出し、ジンは騎士団隊長の執務室の前に立つ。
一瞬ためらったが、ノックをすると「だれ?」と気の抜けた声が返ってきた。

「ランク5th。エミル・ガンナーのジンです」
「じん!?」

どたとだと足音が聞こえる。
即座にジンは、相手に扉を開けさせまいと扉を開けたが、
ごんっという鈍い音がなって、相手は逆方向に吹っ飛ばされた。

「うわぁあああ!! ごめんなさい! キリヤナギさん!!」
「い、いたい……」

エミル・ガーディアンのキリヤナギ。
混成騎士団総隊長であり、治安維持部隊をまとめる最高管理者だ。

「おかえり、ジン! 元気だった?」
「あ、はい。戻りました。総隊長」
「なんかすごく強くなってたから、びっくりしてた」
「そ、そうなんですか?」
「うん。がんばってるなーって、ホライゾンからも聞いてた。だけど」
「ごめんなさい……」
「ううん。幸せそうでよかった。部隊に居た時より生き生きしてる」
「そう、ですか?」
「うん」

相変わらずの天然度合いである。総隊長がこんなのでいいのだろうか。
「お茶飲む?」とにこやかに進めてくるキリヤナギに、ジンは両手を振って遠慮すると、
彼は中央のソファーに座るように促した。

「今日は何か用事があってもどってきたの?」
「はい、ちょっと武器壊しちゃって……」
「武器っていうと、なんとかヤタガラス?」
「いえ、光砲・エンジェルハイロゥです」
「へぇー、あれ構造が複雑なヤタガラスよりは丈夫って、マエストロの人が教えてくれたけど、
やっぱ使ってるとこわれるものなんだね」
「いや、えっと……それが」

結局。先日のことと修理の件を説明することなり、キリヤナギはうんうんとそれを聞いてくれた。

「修理できないぐらいか、普通の剣で切れる金属じゃなかったと思うけど」
「おなじ部隊の武器にやられたんで、仕方ないと思います。ハイロゥがなかったら、俺死んでたし」
「じゃあ、私も武器が早めに発注できるよう掛け合ってみよう」
「え」
「だって、それがないとジンもこまるでしょ?」
「こ、こまりますけど、総隊長の手を煩わせるのも……」
「開発部から1丁まわしてもらうだけだし、大丈夫。
カスタマイズ用の書類を発行するようにって連絡入れておくから、この後もう一度修理受付によって書いてくるといい」
「え……えっとぉ」
「ホライゾンも武器壊れたときによく言ってくるんだ」

言葉がでない。
キリヤナギはそういった後、自分のナビゲーションデバイスでどこかへ連絡入れると、
数分だけ話してきってしまった。

「うん。完了した」
「えぇええぇえ!!」
「?」

そう首を傾げられても困る。

「……治安維持部隊はジンにとってちょっと居心地が悪いかもしれないけど、
やっぱり、いなくなるのは寂しいから」
「……」
「あと2年じゃなくて、もう少しいてもいいんだよ?」
「ありがとうございます」
「強制はしないけど、ジンは優秀だしなぁ。でも次回のランク選抜もわかんないから今言うことじゃないね」

苦笑するキリヤナギに、ジンもほっとした表情で返す。
安心してもいいのだろうか、信頼してもいいのだろうか。
どこかに残るしがらみがやはり自分を踏み留まらせる。

「じゃあ、俺そろそろ帰ります。相方がまってるんで」
「わかった。気をつけてね。また襲われたらだめだよ」

ダメって言われてもなぁとおもったが、
心配そうな表情をみると「はい」としか返せなくなってしまった。
結局。再び修理受付でカスタマイズの発注を行い、ジンはエレベーターへと向かった。
途中、職服をまとった同僚にであったものの、彼らは自分を見るなり目を合わせずその場を去る。
ここにいても多くの同職に煙たがられるだけだ。

光砲・エンジェルハイロゥは納品ができる状態になるとメールを入れてくれるらしい。
一階の受付まできてくれということだった。

「先ほど本体納品のメドだたったみたいなので、カスタマイズの拡張が終了すれば納品できると思います」
「いつ頃になりそうですか?」
「あくまでアクセサリー拡張のみだったので、明後日にははいりそうですね」
「早!?」

にこやかな受付の表情をうけ、ジンは納品の最にメールを入れてもらうよう頼み、ギルド元宮をでた。
いろんな意味で来たくはなかったが、ある意味来てよかったのかもしれない。

「おい!」
「へ?」

元宮をでて目の前。
私服で買い物袋を提げているのは4枚羽のアークタイタニアだ。

「カナト?」
「貴様、何時だと思っている」
「え、」

気がつけば夜だ。そういえばさっさと帰って来いといわれていた気がする。
そこまで考えて思い出したのが、晩御飯当番が自分だった。

「え、ごめんカナト! ……忘れてた」
「元宮に行ったついでに買い物でもしてくるかと思ってたが、まさかこんな時間までだらだらと」
「わるかったって、ちゃんと作るから! な」
「……いやに素直だな。気持ち悪い」
「いろいろあったんだよ」

むっと顔をしかめるカナト。
時間にルーズである彼がここまで怒っているのは、おそらく相当おなかがすいたからだろう。
しかし何も聞かず飛行庭を呼び出した。

「帰るぞ。さっさと」
「あ、あぁ……」

ほっと肩をおろし、ジンとカナトは自宅へと戻る。
そこでほっと息をつくかに見えたが、

「おかえりなさーい!」
「!? 月光花」
「お前が出かけているうちに来られて、待っておられた」
「ジン遅すぎ! 待ちくたびれたじゃない」
「ご、ごめん。すぐ晩飯作るから」
「ふふ、あまりに遅いから今日は私が作ってみたの」

二人が固まった。

「ごめん、カナト君。勝手にキッチンかりちゃった」
「え、はい……」
「お、お前がつくったの?」
「そうよ! たくさん食べてね」

見た目は普通の晩御飯だ。
むしろ豪華にも見えるほどに、だが、彼女の料理は今までまともな味をしていたことがない。

結局その夜。カナトと共に腹を壊し、彼女が帰った後に寝込んだのは、いうまでもなかった。
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本編 | 【2012-08-13(Mon) 21:30:33】 | Trackback:(0) | Comments:(0)
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