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Heart*Lost:第四話
HL_01.jpg

Heart*Lost
第四話 夢への入口

第一章
第一話:終わりの始まり
第二話:序章
第三話:失うもの


 カインロストの逃亡は、まるでスポンジに水を吸わすように組織内へ伝わった。
カインロストが、イリスカードの触媒に人間を利用したこと、またその人間は有益な人材と判断されていることもわかり、カインロストの処遇は治安維持部隊ではなく上層部の判断へと委ねられる事となった。

キリヤナギは1人、執務室へと戻ると、そこに待機している二人の真ん中を抜け、椅子に座る。

向かって右側に白羽のガーディアン、アークタイタニア・ガーディアンのホライゾン。
左側は肩に黒猫を載せる。眼帯のエミル。ハイエミル・ホークアイのグランジだ。

「判断は?」
「審議中だ。騎士団が動いて僕達は、お役後免かもしれない」
「そうですか……」
「だけど、身内に手を出してしまった以上。捕縛はあまり意味を成さない。このまま放置してしまえばイリスカードの悪いイメージが広がって、評議会そのものの立場が危うくなるからね」
「……」

「どうなる?」
「最悪、殺人許可の命令が降る。騎士団は手を汚さないから、そこまできたら、僕達に投げられるだろう」
「……」
「グランジ。どんな判断が上から下されるかは分からない。だけど、ギリギリまで粘ってくれないか?」
「……何をすればいい?」
「敵の捕縛、または駆逐。現場の状況をその目で見て知らせてくれ。判断がされたら直ぐ通信をいれる。僕の手足になるんだ」
「分かった」
「グランジ。君は騎士だ。君が受けた命令の罪を、君が背負うことはない」
「よくわからないな」
「僕の騎士として動く君は、視覚、味覚、感覚、嗅覚、聴覚、行動、判断の全てが、僕のものとなる。だから君自身が考える必要はない」
「……」
「行ってくれ」
「承知した。従おう、王よ」

グランジがでて行き、キリヤナギがふぅと椅子へ座り込む。
元宮内の連絡用デバイスも立ち上げ、落ち着かないようだ。

「どうなるでしょうか……」
「分からないよ。でも、人間が使う武器の材料を人間にすることは、何があっても許されないことだ……だけど」
「……」
「上層部は、カードの材料が人間の心でも可能である事実を隠したいだけだ。成功してしまった事実を無かった事にするために、実行した人間を消そうとしている……僕達の仲間は、その理由にお膳立てされているだけじゃないのか……」
「考え過ぎかと……」
「……すまない」
「今は、判断を待ちましょう」
「……」

キリヤナギは頭を抱え、机へとうなだれた。



ギルド元宮から飛び出したカナトは、出来るだけ高く舞い上がり、先程すれちがったドミニオンを探した。
すると南の方へ、人ごみをかき分けて進む白衣のドミニオンを見つけ、追う。
また遅れて出てきたカロンも、そんなカナトを見つけて上を見ながら南へと向った。
騎士団の検問を無理矢理飛び出し、ボロボロの白衣の男は筒状のガラスケースを抱えて平原へとでる。
ベンチのあるパーティー募集広場で立ち止り、声を掛けようとしたが、遅れてきたカロンが「カインロスト!!」と叫び、男は悲鳴を上げて逃げ出した。

更に後を追うカロンに並び、カナトが横に付ける。

「カロン殿。あいつは……」
「あぁ、大事に扱えよ。とくに抱えてるアレ、なんとしても取り返すんだ」
「!? ジンは……」
「……後で話す」

渋った返答に、カナトは眉間にシワを寄せた。
平原の東南東へ逃げ続けていたカインロストだが、突然こちらを振り返り魔法を唱える。
すると、数体のスケルトンアーチャーが現れ、二人を狙った。
カロンは、アーチャーの標的から外れると、アーチャーの数メートル付近まで接近。
“マーシレスシャドウ”を発動させ、スケルトンアーチャーを駆逐。カインロストへ影縫いをする為、“クローキング”で接近を試みた。
だが、カインロストはネクロアーマーを召喚。敵が範囲から外れ、アーマーが身代わりになった。

「チッ」

抱えている物さえなければ、本気をだせるのに……。
カインロストはそれに気づいているらしく、接近しようとしたカロンを“ヒルダーハンド”で止めて、死神、ソウルイーターを召喚。
真っ黒な光が破裂して、視界がくらみ敵の姿が消えた。

その途端平原の床から更に、デバステイターが数体出現。
カロンが武器を持たないカナトを庇い、それを次々に退けて行く。
しかし、まるで溢れ出すように次々に召喚され、さすがのカロンも息が切れてきた。

「ちっくしょぉお、出てきやがれ」

デバステイターをすり抜け、カロンが木陰にクナイを投機。
隠れていたカインロストが木陰から這い出し、ゆっくりと立ち上がろうとする。
カロンは即座に“ヴェノムブラスト”を睡眠薬に切り替え、射程に入るためにつっこんだ、だが、木陰から現れボソボソとつぶやく敵にブレーキ、一気に地面を蹴り上げ、反転。バク宙を行った。

「“死鎌乱舞!!”」

カロンロストから、紫の鎌が出現し一気に周辺の空気を割いた。
カロンは空中へ飛ぶことでそれを逃れ後退。冷や汗を流す。

「てめぇ……」
「あれぇ、言ってませんでしたっけ? カバリストと言ってましたが、僕一応ソウルテイカーですよ?」

聞いてない。
むしろ、“死鎌乱舞”は魂を切り裂く魔法。人間相手の使用は殺人になるとして禁止されている。
殺す気だという事だ。

「ふふ、もう僕に怖いものはありません。これさえあれば……」
「そんなもん、どうせ機械がなけりゃ意味ねぇだろうが!」
「イリスカードのビジネスは、戦争がいつ起こってもおかしくないこの世界で、とても重要なもの。4つの国の何処かに亡命すれば、興味のある資産家が援助してくれるでしょう」
「んな胸糞悪い研究に誰が協力すんだ!」
「ここに物があります。これさえあれば僕は研究が続けられる。英雄になれる! 誰にも文句は言わせません。結果を出したのですから……」
「ちくしょう……」
「所で、そちらのアークタイタニアさんは初対面ですね。どうしてここへ」

「私は……」
「なんも喋んな!!……あいつは」

「おや、もしや、ジンさんの友人ですか? それは申し訳ない事をしました」
「くっ……」

「! ジンの……」
「でも大丈夫です。ジンさんは死んではいません。いえむしろ今までに無く心地のいい眠りの中で幸せでもあるでしょう」

「だまれ!!」

カナトは自分の心臓が高鳴って行くのを感じた。
ゆっくりとそれは早くなり、時間が進めば進むほど、動揺が大きくなって行く。

「何を怒っているのか、僕には理解ができませんね。でも心のない人間は、夢も悪夢も見ることなく、平和に幸せに生きていけるのではありませんか」

前をみれば、ガラスケースを抱えるカインロストがいる。
眠り目を覚まさないジンと、カインロスト。心。
ジンの心が、いまカインロストの手にあり、彼はそれを……。

カナトは、背中に持ってきていた自動式拳銃を抜いた。
不器用に安全装置を外し、カロンが即座に銃口を掴んで下げさせる。
ひどく動揺して息遣いがひどい。足も震えている。

「落ち着け、ジンに当たるぞ」

カロンに言われて、力を抜いた。
目の前がくらみ始めたが、倒れないように踏ん張る。

「おや、僕を撃ちますか? いいですよ。でもそれなら、貴方と僕は同じですね?」
「ち、ちがう……」
「自分の為に僕はジンさんの心を貰った。貴方も自分の為に僕を倒すのでしょう? ジンさんの為に……同じですよ」

カナトの手に再び力が入る。
カロンはそれを強い力で抑え、無理やり拳銃を手から離させた。
そして、床に落ちたそれを蹴飛ばし、カナトを床へ倒す。

「寝てろ」
「カロ……」

途端青い粉末を浴びせられ、カナトはひきずり込まれるよう眠りに落ちる。
カインロストはそれに高笑いし、逃げ出した。
カロンは“ナビゲーションデバイス”で、本部から応援を要請すると、大急ぎでそのあとを追おうとする。
だが、平原の外へ出ようとした直後、突然カインロストが、右肩を打たれ、床に倒れた。
さらに、二発、三発、両足を撃たれ、四発目は空いていた右腕だった。

カインロストの悲鳴が響く。緑の草原がどんどん赤く染まりカインロストは尻餅をついて弾丸がきた方向をみた。
カロンも恐る恐るそちらをみると、眼帯にホークアイの職服を纏うエミル。
彼は銃の弾倉に弾を詰めると、血だらけになった敵に再び銃口をむける。

「誰だ……!?」
「治安維持部隊・騎士。エミル・ホークアイのグランジだ。我等の王、キリヤナギの命で来た」
「なんだと……!」

構えた銃の撃鉄をおこし、血だらけになるカインロストへとそれをむけた。
完璧すぎるその狙いにカロンは思わず言葉を失う。

「何する気だよてめぇ……」
「王の命令を待つ。それまではこうしている」
「どんな命令だよ」
「捕縛、または……」
「!?」
「殺人だ」

これをきいたカロンは、即座に右肩を突き出した。
だが、グランジはそれをひらりとかわし、背中のスイッチング式ガンソード抜いてプッシュ。
ブレードをカロンへ振り抜いた。だがカロンはそれに応戦し、振られた刃をクナイで受け止める。

「殺すのか?」
「命令が来たらな」
「やめろ」
「貴様には関係ない」

キンキンと金属音が数回鳴り二人が後退して距離を取る。
カロンはその数回のやり取りで全て察した。
手加減されていると、元々あれだけの命中精度を持っているにも関わらず、ブレードを出した時点で違和感がある。
心が無いわけではないらしい。

グランジは戦いの体勢を崩し、脇で喘いでいるカインロストをみた。
相変わらず大事そうにケースを抱え、痛みに耐えている。
ゆっくりと接近しようとしたが、カインロストはなんとか座りこみ、自由な左手で懐の銃を取りだすと、それをケースに突き付けた。

「!?」
「近づくなぁ!!」

手が付けられない。
グランジに殺される前になんとかしたいと思ったが、その空気を破る様に、デバイスの通信がひびく。

「"グランジ、指示がでたよ"」
「!?」

無音の空間に聞こえて来た声。
聞き慣れたそれは、総隊長、キリヤナギの物で……

「"殺人許可が降りた。奪われた物の奪取が困難な場合、加害者の生死は問わない。まかせる"」
「……了解した」

グランジが、迷わず銃口を向ける。ひっ、と悲鳴を上げたカインロストは血だらけで怯えた表情で此方をみた。
無様だな、と思ったが、直後。
グランジの脳裏に、黒髪の少女がよぎる。
頭から血を流し、床に溜まる血だまり。自分はそれを何時間も眺めていた。
みて来た笑顔がはしり、泣いた表情が浮かび、

途端、衝撃がきて、目の前の景色がひっくり返り、床へ倒れる。
カロンに殴られたのだ。
彼はグランジに飛びかかるが、それをかわし、腕を掴んでカロンを投げた。
そこで分かったのは、冷や汗がひどく吹き出していること。

倒されたカロンは、打ち所が悪く腕を骨折したらしい。
グランジは、再びカインロストに銃口を向けた。
よぎり出した過去は、あまり残酷で、グランジは目の前の敵をそれに重ねる。
震え出した手は、恐怖と逃避に始まり、気が付けば、銃を両手で支えていた。

「うわぁああああ!!」

ズドン。と響く、二回三回と響き、一発はケースにヒビを、もう数発はカインロストの腹部へめり込んだ。
五発全てうち終えたグランジは、銃を落として四つん這いになる。

「イリア……!」
「!?」

嘔吐するグランジを、カロンは見据える。
全てが終わったかに見えたが、僅かに発動した闇の魔法にカロンは気づいた。
カインロストの銃口は未だケースに向けられており、カロンは反射的にクナイを投機。

だが、ドンと言う銃声と共に、ケースが粉砕。
閉じ込められた心は、安定を失い霧散。
数秒差で、カロンのクナイがカインロストのコメカミへ突き刺さり、カインロストは絶命。

全てが終わった。

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本編 | 【2014-02-27(Thu) 12:30:00】 | Trackback(-) | Comments:(0)
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