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Heart*Lost:第三話
HL_01.jpg

Heart*Lost
第三話 失うもの

第一章
第一話:終わりの始まり
第二話:序章


 武器修理の受付カウンターを出たセオは、戻ってきた杖の稼働を確かめていた。
壊れたというわけではなく、スイッチから展開させる簡易ギミックの滑りが悪くなっており、油をさしてもらってきたのだ。
大型の杖に当たる"宝杖・レッドルナ"を伸縮性にすることに、武器改造の彼らは、とても嫌な顔をしてくれたが、無駄がなく完璧に展開してくれてセオは尊敬と感謝を思う。とても優秀な人材だ。

小型に戻した宝杖・レッドルナを、セオは腰のベルトへ戻し、ナビゲーションデバイスで後のスケジュールを確認する。
いつもなら総隊長の仕事の具合を見にいくが、先ほどヒントを与えてしまった為、今日は行かない方がいいと判断。デバイスの新着のメールの確認を行った。
すると、カインロストからの新着メールが一件、貴重な触媒を発見した為、見て欲しいとの事だった。
セオとカインロストは、イリスカードの導入が決められた時に初めてあった仲で、カインロストは元宮側の研究員としてラボとの橋渡しを行っている。
へらへらしていて頼りない印象ではあったが、蓋をあけてみると頭の中ではイリスカードばかりだった。

しかしセオの記憶によると、今カインロストの居るらしいラボは、今日は休日で誰も居ないはずだ。
一人で研究室にこもり、作業を行うも彼らしいといえばらしいだろう。
ちょうど時間もあるし、話だけでも聞きに行こうか。
そんな心持ちで、なんとなくランカー専用のラウンジへと訪れたセオは、一番奥の席に相変わらず突っ伏しているドミニオンに、ふぅとため息をつく。
こんな場所で寝て、風邪を引いてしまったらどうするのか。

「カロンさん起きてください」
「……zZZ」
「カロンっ」

呼び捨てにされてようやく目を開けた。
大きくあくびをした彼は、うーんと寝返りをうって「セオ?」と眠そうに口を出す。

「なんだよ~、俺昨日も夜勤でつかれてんだけど……」
「もう夕方ですよ」
「え、まじで? やっべぇ!!」
「カロン。ジンさんをみませんでしたか?」
「ん? なんだよ、お前も探してんの? しらねぇぜ?」
「そうですか……」

ふとデバイスを見る。
元宮の地下にあるカードラボは、関係者以外に立ち入りを硬く禁じる場所だ。研究者を除けば、ゲストはおろか大尉以上の階級がなければ入ることができない。
セオは少し考え込み目の前のドミニオンをみた。

「なんだよ」
「カロン、すこし付き合って頂けませんか?」
「あん? なんで?」
「まさかとは思いますが、地下の研究所にジンさんがいるのではないかと」
「そんな場所あるのか?」
「大尉以上の階級はなければ部隊員ははいれませんが――」
「あいつ実働兵だろ? 降格してたし」
「しかし、未だ見つかった連絡がないとなると、確かめる価値はあります」
「……しゃねぇなぁ。俺はいれんの?」
「私が許可します」
「へいへい」

そうしてセオに後押しされ、カロンがのっそりと立ち上がる。
ラウンジを出た二人は迷わずエレベーターにのって、地下の研究室へと急いだ。
初めて入るその場所にカロンは少し驚き、表情一つ変えないセオの横を歩いていた。

「カロン……」
「ん?」
「クローキングで隠れていてください。あとは好きにしてくれていて構いません」
「……?」

意味深だ。好きにしろという事は、カロンの勘を信じているのか。
カロン自身はこんな空間に興味はない。しかし、ガーヴィンはここに入ってからか感じる嫌な空気に背筋がぞわぞわする。
大体、生物実験が行われている場所に感じる空気だ。

「なんの研究所なんだここ?」
「イリスカードの製造、量産を行うための施設です。実験の段階ですが……」

成る程。以前モンスターの心が使われていると聞いていたが、ここがその施設か。
どちらにせよ気分が悪い。

カロンはクローキングを使い、セオの一歩後ろを音もなく進む。
扉前のロックにデバイスを掲げたセオは、分厚いオートドアを開けて、中へと入った。
すると、目の前の巨大な機械を動かす白衣のドミニオンに視線を持っていかれる。

「セオさん!! 待ってました!」
「カイト。お待たせ、今日はどうしたんだい?」
「ついに手にいれたんだ。完璧な触媒を! みてください、こんなにも沢山のイリスカード、予想以上です」

セオが機械へと歩み寄り、カインロストが指差すそれを覗き込む。
まるで虹の様に輝く板に、セオは思わず見惚れた。
また、それが大量に生産され続けており感心する。

カロンはしばらく、そんな2人を観察して居たが機械の付近にあるロープのかけられた不自然な椅子に首を傾げた。
椅子の表面に僅かな温もりがのこり、ガーヴィンの嫌な予感がカロンの中へ走る。
カロンが音をたてぬよう研究室の奥へと進み、応接室の飲みかけの二つのティーカップを発見。
さらに毛布も使われたのか、しわくちゃになっていた。
カインロストが仮眠をとったにしては、偉く不自然でもありもう一人いたのでは無いかと思わせる。

カロンは、カインロストに見つからないよう、棚の物影に隠れセオにメールを送信。
他に誰か居るのかどうかを聞くように促した。

メールを受けたセオは、友人からのメールと前置きして、まるで自分の質問のように問う。

「カイト、今日は休日だけど、一人でここに?」
「えぇ、本当は明日報告しようと思ったのですが、どうしても我慢できなくて」
「あはは、気持ちはわかるよ」


カロンはそんな話に、更に嫌な予感を感じる。
そこから、奥の薬品室から睡眠薬の紙袋が放置されていて、カロンはそこから隣の仮眠室へと足を踏み入れた。
夜目はまだ聞かない、しかし一番奥のベッドに寝かされる影に、カロンは言葉を失った。
ジンだ。

即座にクローキングを解除して、小声で呼びかけるがまるで目を覚まさない。
息はしている。端から見れば眠っているようにしか見えない。
が、感覚的にカロンは、これはジンではないとわかった。
いやな感覚だ。
本人なのに、まるで人形のような気配がある。
カロンはセオにメールを出し、ジンを見つけたと報告。
毛布だけかけてやり、カインロストのいる場所へと戻った。

「カイト。イリスカードの生産効率は分かりました。しかし、この生産効率を生み出すあの触媒は一体……」
「あれですか? あれこそ、僕が待ち望んだ触媒ですよ。慈愛と勇気に満ち溢れた真っ直ぐな心。様々な事を有りのままに受け止めて、正直な表現をするこれは、ありとあらゆるアビリティベクトルの可能性……」
「いえ、カイト。僕はあの触媒がなんなのか知りたいのです。見る限り心ですが……」

そうセオが聞いた直後。
カロンからのメールに、心臓がどくんと音を立てた。
目の前の輝く心、慈愛と勇気。確かにその通りだろう。
何処までも優しく危険を省みない性格は、なんど此方をヒヤリとさせたか……

「カイト、今すぐこの装置を停めろ」
「えぇ、なんでですか!? まだまだ生産できますよ」
「なら聞くよ、カイト。この触媒は一体なんの心だ?」
「やだなぁ、当たり前じゃないですか。……人間ですよ」
「カロン!!」

セオの叫びに後ろのカロンが、爪を構えて突き出す、カインロストは、白衣を切り裂かれたが、後退して機械を停止。上げられたレバーを下ろした。
カロンはそんなカインロストに斬りかかるが、機械に爪を食い込ませてしまい、抜けない。
その間にカインロストは裏の排出口から、触媒をガラスケースごとひっつかみ、逃走。
セオは、エレメンタルメモリーを唱えたが、敵は即座にネクロアーマーを盾に、更に魔法を唱えた。

「ヒルダーハンド!!」

床から数多の手が2人の足を掴む。

「返せ!!」

セオがそう叫んだ直後。
研究室の出入口が開いた先に、目の合った影がある。
黒羽に茶髪のタイタニア、後ろにはキリヤナギ、横にはピンクのぬえがいる。
探しにきたのか。

カインロストは、走ってその三人とすれ違い、待機していたエレベーターへと飛び込む。
キリヤナギはそれをみて、嫌な予感を察した。

「カナト、ぬえ。先に行って僕は仕事ができた」
「え、はい」
「セオとカロンをお願い」

そう言ってキリヤナギは、非常転送の機械から地上へと戻っていった。
カナトとぬえは床へへたり込むセオとカロンに駆け寄る。

「追いなさい。今すぐ、早く、カナトさん……」
「落ち着いて下さい……一体なにが!?」

「ジンだ……仮眠室……」

カロンの言葉に、カナトが顔を上げる。
ゆっくりと指さされ、嫌な予感がした、奥にある薄暗い部屋に明かりをつけ、カナトが中にはいると、まるで死んだように動かないジンが居て、肩を揺らす。

「無駄です……」
「!?」

恐る恐る振り向くと、セオが深刻な表情で此方をみて、膝をつく。

「それは、ジンさんじゃない。心を抜かれた、ジンさんの入れ物です」

なにを言われたのか、理解できなかった。
しかし、セオは膝をつき杖を床へ落としてしまう。
カナトは、数秒間それを眺めていたが、何かにはっとして仮眠室から飛び出した。
カロンもまた、後を追って飛び出す。
残されたぬえは、膝をつきぼろぼろと涙をこぼすセオの手を握った。

「大尉。大丈夫、大丈夫だから、大尉のせいじゃないよ」
「ごめんなさい。ジン……」

そうして、研究室にはセオとぬえ。
ジンの入れ物のみが、残された。
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本編 | 【2014-02-20(Thu) 12:30:00】 | Trackback(-) | Comments:(0)
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