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(C) BROCCOLI/ GungHo Online Entertainment,Inc./ HEADLOCK Inc.

ナハトさんの話
出演:ナハトさん、リアスさん、カロンさん、

あらすじ
治安維持部隊でのイリスカードの使用が始まったことをうけて、部隊内でイリスカードを使う上での意見交換会が開かれることになった。
ランカーとして意見を求められたナハトは、融通の利かない使い方を示す部隊員へ喝をいれる


 

優雅な朝だった。
ひんやりとした空気が冬の空気から一変、暖かい日の光が心地よい朝。
アークタイタニア・ソウルテイカーのナハトは、ランカー専用に与えられた個室で優雅にお茶を楽しむ。
窓から外を覗きこみ、アクロポリスを行き交う冒険者を眺めていると、1人、ふぅとため息を落とした。
今日も一日が始まる。

この日は午前中に開かれるイリスカードの意見交換会へ参加する予定だ。
なんでも、イリスカードについて総括するカインロストがランカーとしての意見を聞かせて欲しいと言い出し、イリスカードを使用しているナハトに声がかかった。
この誘いをうけたのは、カインロストが同じウォーロック系の人間だと言うことと、どのような話し合いなのか少し興味を持ったからだ。

ナハトは1人、教室の際奥の壁際にて傍聴する。
複雑な話ではあるが、理解はできる。
簡単に言えば、治安維持部隊の中で積極的にイリスカードを使用すべきと主張するという意見と、対人で使用する上で細心の注意を払い最後まで使わずに置くべきだと言う意見だ。
どちらも納得の行く考えであり、前者は隊員の安全を、後者は冒険者の安全を考えるもの。

「ではランカーのナハトさんはどう思いますか?」
「相手によるわ。最初から使わないと決めつけて倒されるなんて、道理に外れるわ。必要となれば使う、それだけよ」

要は使い分けだ。
しかし部隊ではこれが一番難しい。

「しかしナハトさん。部隊にはイリスカードの生産過程に納得が行かないため、使いたくないという隊員もーー」
「そこまで使いたくないなら自己責任でさせたらいいじゃない。それで命を落としてもそれは自業自得よ」

教室がざわめく。
ランカーだからこその意見だが、ランカーだからこそ言うべきだ。
彼らはそういう意見を求めて自分を呼んだのだから、

結局、意見はまとまらず、ナハトは教室をでる。
なんの収穫もない時間だったが、考えるのは嫌いではない。
イリスカードを扱う上で、衝突が起こるのはある程度予想できたことだ。
今更驚かない。

「ナハトさん!」

廊下をあるいていた所て、呼び止められた。
振り向くと先程教壇に立ち自分に意見を求めた彼。
治安維持部隊においてイリスカードを担当するドミニオン・カバリストのカインロスト。
ナハトからみても、既にソウルテイカーを名乗っていい実力者だ。

「何か用でも?」
「今日は来ていただいてありがとうございました。誰も彼も意見がバラバラで纏めようとする気がなくて……ナハトさんのおかげで少しはまとまると思います」
「そう、ならいいことでないかしら?」
「でも、ナハトさんはイリスカードを使っていますよね? それは何故ですか?」
「いつも使っているわけじゃないわ。必要であるなら使うだけ、必要でないなら使わない」
「あ、すいません。そうでしたね、同じ質問をーー」
「あなたも、イリスカードを使う側でしょう? それなのに、同じイリスカードを使う私の意見を聞きたいと思ったのは何故かしら?」
「あはは、……実は友人にどうしても僕の研究を理解してもらえなくて、イリスカードを使えば、自分の穴を埋められて強くなれるのに、意地でもカードを使ってくれないんです。それで――」
「自分と相手、使う、使わないなんて人の勝手。理解されようと思う方がどうかしてるわ」
「……ナハトさん?」
「他人なんて期待するだけ無駄なもの、諦めなさい」

自分自身に言い聞かせているようにも思い、しゃべり過ぎたことを後悔する。
あまり感情的にはなりたくない。

肩を落すカインロストを前にし、ナハトは再び窓を覗きこんだ。
冬とは思えない暖かい日だ。
こんな日は、カフェテラスでゆっくりすれば気持ちも和むだろう。
再び溜息を落とし、ナハトがその場を離れようとすると、三人の少年達が街の大通りを歩いていた。
覚えのある三人に、ナハトはきゅっと唇を噛む。
三人のうち1人は、銀髪で同じ二対の黒羽。
アークタイタニアだ。
ここからでは向こうにはわからないだろう。
思わず視線を背け、再び除いた時、三人は二人の人間と合流していた。
黒羽のアークタイタニアがもう一人。
そしてもう一人は……

「5th……!?」

信じられなかった。
5thと一緒にいる黒羽は噂には聞いていたが、まさかあの二人ともう一人の彼が一緒にいるなど信じたくなくて、思わず胸に手を当てた。

「ナハトさん?」

カインロストの心配そうな声にナハトがハッとする。
彼も窓を除きこみ、あ、と声を上げた。

「あ、ジンさんですね! 最近元宮で会わないから見るの久し振りだなぁ、隣の三人は誰だろう」

知り合いなのか。
カインロストの言う理解して貰えない相手にナハトはピンときた。
あの単細胞なら、イリスカードなど面倒だと言い張って使わないだろう。

「黒羽のアークタイタニアがいるの、見える?」
「あ、はい! カナトさんでしたっけ? 噂は聞いていますよ!」
「違うわ。向かいの銀髪の方……」
「え、始めて見る方ですね……?」
「……弟なの」
「弟?」
「私は、物心つくまでは天界にすんでいたの。だけど、住んでいた土地の言い伝えに黒羽は災いの象徴だと言うものがあってね……私を含めた家族はずっと迫害され続けていた……」
「迫害……!?」
「アクロポリスに来てからそういうのは殆どなくなったけれど、今でも一部のアークタイタニアからは穢れた家系として忌み嫌われている」
「……」
「貴方は、友人に理解して欲しいと言っていたわね」
「……!」
「たとえどんな人間でも、他人よ。理解したといっても、ほんとうの意味で理解はされない。諦めなさい」
「それでも、ナハトさん。貴方の弟さんは、あんなにも楽しそうに……」
「あの子の事は言わないで! あの子はーー」
「!」
「あの子も結局…私とは、違うもの……」

そう言い張ったナハトは普段見ることが無い辛い表情で、カインロストは何も言えなくなってしまった。
・自分でも何を話しているのだろうとも思い、差し出された手すら払う。
身を翻した彼女は、いつもの無機的な表情を作り何も言わず、その場から立ち去った。



「重い……」
「モタモタするな。早く帰らないとーー」
「うるせーよ! たかがテレビ番組一つに……」

アクロポリスの昼下がり、暖かい気候に誘われ買い物にでたカナトとジンは、大量の荷物を抱えて街を歩く。
カナトが急いでいるのは、ここ最近始まった昼ドラマに間に合う為であり、ジンもその為にしぶしぶ足を早める。
ドラマの内容は、なんでも冒険者を名乗る探偵が、アクロポリスに潜む悪をダイナミックなアクションで解決するもので、ミステリーものなのかアクションものなのかと言う議論が話題をよび、冒険者の間ではひっそりとブームになっているらしい。
毎回使われる武器がちがうことから、探偵はジョーカーらしく、カナトが共感しているようだった。
ジンはジンで、使われる銃がきになり、興味が無いわけではなかったのだが、

「みようと思えば今すぐみれんじゃん」

ナビゲーションデバイスのテレビ機能は当然屋外でも使用可能だ。
みようと思えば、歩きながらでも見ることができる。

「家で昼食を食べながら見る」
「あ、そう……」

「あっ、ジンさん! カナトさん!」

新しく響いた高い声に、二人がはっとした。
ジンは聞き覚えがあり、ゆっくりと振り向こうとしたが、その振り向きざまに、突然腰へ打撃が入る。
ごふっ、と鈍い声を上げたジンは持っていた買い物袋で受け身がとれず、顔面から床へ突っ込んだ。

「ジン! 久しぶりだな!」
「ハク殿……コタロウ殿、クオン殿も、お久しぶりです」

「シロ! ジンさん大丈夫ですか!?」

腰に抱きつかれ硬直が入っている。受け身を撮り損ねたジンは、額をぶつけしばらく動けなかった。

「カナトさん。こんにちは」
「またお会いできて光栄です。クオン殿」
「こちらこそ」

「じんー、起きろよぉ?」
「だー! 重いッつってんだろォォ!!」
「やっとおきたな! 寝過ぎだぞ、だらしないな!」

「こらシロ! 失礼だろ!」
「所でお三方は、なにを?」
「ああ、三人で外の空気を吸おうと思って、散歩をしていたのです」
「これから、ご用事は?」
「特にないです。ね、クオン」

「ないよ」
「でしたら、久しぶりにうちで昼食でも如何ですか? このまま別れるのは惜しい」

「カナト、行っていいのか!」
「えぇ、私の自宅でよければーー」

「ありがとうございます! 是非!」
「やったー!」

喜ぶ三人の手前、クオンがふとギルド元宮を眺める。
高いその建物は、窓がたくさんあるが光が反射し中が見えなかった。

「クオン君、どうかした?」
「いえ、ジンさん。なんでもないです」

「腹減ったぞ! 早く行こうぜー!」
「ドラマも始まる! 急げ」

「分かったから、荷物運ぶの手伝って!?」




個室へと戻り、ナハト再び溜息をつく。
何故あんなにも話してしまったのだろう。今を思うと馬鹿馬鹿しく、愚かであったとも思う。
調子の悪い日だ。
おとなしく部屋に居るべきかと思った時、天井のスピーカーから、ランカーの呼び出しアナウンスが響く。
手が空き次第、総隊長キリヤナギの元へへ来いというものだ。
本部に居るなら、セオやぬえ、カロン辺りがいくだろうが、気晴らしになればと、ナハトは1人、治安維持部隊総隊長、キリヤナギの元へと向かう。

「君が来てくれるなんて、珍しいじゃないか、ナハト」

相変わらずのポーカーフェイス。
調子の狂うしゃべり方だ。
ランカーの呼び出しは、大体部隊では手の回らない野暮用が多い。
それも、運搬や討伐などではなく、大体が対人だ。
その為、数名で行うことが多いのだが、

「セオ来ないなぁ、忙しいのかなぁ……」
「セオさんは外出中、カロンさんはホライゾン隊の任務中です」

上から響いた新しい声に、キリヤナギが顔を上げた。
天井から表れたのは金髪にメガネをかけるイレイザー。
エミル・イレイザーのリアスだ。

用意したコーヒーをすすり、ナハトはリアスの登場にも反応をよこさない。

「リアス、来てくれてありがとう」
「参加する気はありませんが、誰が来ているのか気になりました」

身も蓋もない。
結局、15分経っても誰も来ず、キリヤナギが「うーん」とうめき出す。

「まぁ、いいや。とりあえず概要を言うと、一週間ぐらい前モーグシティで、ギルド評議会が運営するイリスカードのショップが強盗にあったらしくてね。アクロポリスに逃げて来てたんだけど、そのアジトが見つかったから行ってもらおうと思って……」
「……」
「1人じゃ流石に任せられないからなぁ……カロンとジンなら好きそうだけど」

何が前提で言っているかは不明だが、出された名前に驚いた。
5th。ジンだ。
彼の名前から先程の事がよぎり、ぐっと心が締め付けられる思いを感じる。
弟、クオンは何故彼と一緒にいたのだろう。

「ナハト?」
「イリスカードの密売人を壊滅させればいいのかしら?」

反応を横したのはリアスだった。

「ナハトさん、行くのですか?」
「1人では嫌よ」
「ナハトさんがいくなら、おれもいきます」

「でも、流石に2人だけじゃ、任せられないよ?」
「あら、早く終わらせないとイリスカードがあちら側に出回りすぎて大変な事になるんじゃなくって?」
「そうだけど、一日二日伸びたぐらいで大差は……」

ぎ、っと睨みつけられキリヤナギがたじろぐ。
誰の所為だともいいたげだ。

「セオさんもぬえさんも、今日と明日は無限回廊の援軍でいません。できるなら早い方がいいかと」
「でもなぁ……、あ、僕がいけばーー」

殺意の目で睨まれ、キリヤナギが手元の書類で顔を隠した。
冗談でもあり得ない発言だ。

「何かあれば援軍を呼びます」
「……そこまで言うなら、止めないけど、敵はそれなりに力のある冒険者雇ってるみたいだから、気をつけて」

そうして二人は受注処理を終え、ダウンタウンの南東区画へとむかう。
武器、黎明杖・カドゥケウスは、ランカーだとばれてしまうため今日はおいていき、代わりに護身用のマジカルケインをナハトは携帯することにした。
治安の悪いダウンタウンでもゴロツキがあつまる場所だ。
アークタイタニアであり、貴族育ちの気品を兼ね備える彼女は当然此処では悪目立ちをする。
数回話しかけられたが、睨みつけて追い払った。

「ナハトさんって人間嫌いですよね」
「悪いかしら?」
「気持ちは分かりますが、部隊で苦労されませんでした?」
「複数人で動く任務は別よ。余計な私情は持ち込まないわ」
「理解しました」

リアスはこの会話で、ナハトが部隊で嫌われていない理由を理解した。
普段冷面な彼女でも、任務中はそれなりに協力していたのだろう。
同行した隊員からの評価は消して低くはなかったのだから、

「よ、こんなとこでなにしてんだい? ねーちゃん?」

柄の悪いドミニオンがまた話しかけてきた。
リアスはタッチの差でハンディングを行い、男に気づかれていないようにする。
普通なら無視するが、そのドミニオンが出てきた区画が、任務でしていされた場所でもあり、経験上での嫌な勘が働く
少し興味をもち、ナハトが口を開いた。

「少し探し物をね……ご存知ないかしら?」
「まだ内容も聞いてねぇのにわかんねぇよ。もしよかったら協力するぜ? 奥のテントで……」

「”ナハトさん。すみません、“クレアボヤンス”を使うウァテスがいて、近づけません。しかし、建物区画から見下ろしたところ、目視で5名。テント内はナビゲーションデバイスのサーモグラフィで5名確認しました。人数に無理があるため、応援要請に報告を兼ねて行きます」

正しい判断ではある。
三人ならば勝機はあるが、2名で10名を相手にするのは無謀だ。
通信が途切れ、ナハトは一人残される。

「なら、少し聞いて頂こうかしら」
「いいのりだねぇ、きらいじゃないぜ?」

残された自分がやるべき事、それは応援がくるまでの時間稼ぎだ。
連中がどこまで自分達を把握しているかは不明だが、応援がくるまでの時間なら、稼ぐことはできるだろう。

ドミニオンの男に連れられ、ナハトは路地裏のテントへと連れて来られた。
テントの周辺には見張りと、イリスカードをもつゴロツキがいて、ある程度は納得する。
テントの入り具合を開けられて中へ入ると、黒服サングラスの男が、うしろに大量のイリスカードをおいてにやりと笑っていた。

「ほぉ、これまた綺麗なお嬢さんがきたなぁ!」
「探し物をしてるっつって、連れてきましたよ」
「探しもん?」

「イリスカードを大量販売してる場所があると噂に聞いていたわ。まさかこんな場所にあるなんてね」
「あや、もうそんな伝わってんのかぁ。ここにも長居できねぇなぁ……ところで、何か入り用かい? ほぼ全種類のカードが揃ってっぜ?」
「言うまでもないわ。その後ろのカード、全て売ってくれないかしら?」

騒がしかったゴロツキが一瞬で黙った。
目の前の裏商人も笑顔のまま固まる。

「え、えっと?」
「あら、聞こえなかったかしら? その後ろのカード。全て売って欲しいの、当然料金だすわ」
「な、何につかうんだ!? こんなーー」
「見てわからなくて? 私は貴族よ、イリスカードについて先日勉強を始めたばかりで、色々試して見たいの。でも、公認店だと大量販売はしてくれなくて……」
「ま、まぁ、公認店は裏流通を防ぐために一回100枚ぐらいまでしか買わせてくんねぇしなぁ」

貴族らしいといえばらしい。
裏商人は納得したようだが、ナハトはイライラしていた。
貴族の身分を捨てた自分が再び貴族を名乗る違和感にだ。

「そうね、一億ゴールドほどかしら?」
「お、う、流石にケタがでかい。けど流石に明日また貴族さんが買いに来る予定だから、全部は売れねぇなあ……」
「あぁ、忘れていたわ。こんなに集めるのも大変だったでしょうね。ここにいる人の人件費も含めて、一人一億ゴールドでどうかしら?」

全員が黙った。
さらに会話を聞いていた見張りも覗きにきてその場が、騒然とする。

「じゅ、じゅうおく!?」
「えぇ、全員分必要でしょう? 足りないかしら?」
「そんなに使ったら、パパに怒られやしないのかい!?」
「お父は私の行動を叱らないもの」
「い、いいとこのお嬢さんだな……」

そういった直後。
ナハトは後ろに違和感を感じ、振り向きざまに立ち上がる。
しかし、間に合わず、口を抑えられてしまった。

「おい! 大事な客になにしてんだよ!?」
「別に売らなくてもいいじゃねぇか、こいつから身代金貰えばもっと増えそうだし、使わせてもらおうぜ!」
「お前らの理屈ではなしてんじゃねぇ!!」

やられた。
護身用のマジカルケインを持っていた為、スペルユーザーだとばれていた。
口を押さえられてしまっては、フェンリルを呼べない。
振り払ったとしても手持ちの杖でこの人数相手は危険過ぎる。
しかし、ふと気が付くと見ていた見張りがいない事に気付いた。先程まで居たのに、

直後。
強烈な破裂音が響き、足元からテントが吹き飛んだ。
目の前にいた露天商も吹き飛び、テントがまるで箱のように開く。
開けた視界に見えたのは床に倒れるゴロツキと、一人だけ立つ影。

テントに吊るされたランプが割れ、資材に引火。
燃え始めた火の明かりで、最初に見えたのは、金の装飾が入った銃だった。
見覚えのあるそれは、烈神銃・サラマンドラ。

「やりすぎんなよ。ジン」

冷静に放たれた声色。
新たに出現した黒い影は、テントの中にいた人間を、ヴェノムブラストへ巻き込んだ。
炙れた一名が、奥にいるジンと呼ばれたホークアイへと向かっていく。

一瞬で背中のバレットセイバーを取り出したジンは、向かってきた敵の脇腹へ切り込む。
これによりナハトを拘束していた男の手がゆるみ、蹴り飛ばして詠唱。

「“ダムネイション!!”」

床から、数多の手が伸びその場の全員が拘束された。
気がついた時には全員動かず、呆然とする。

「あれ?」
「なんだよ。手応えねぇなあ!」

「カロンさんもジンさんも、本気だしすぎでしょう? 」

終わった。
危険な状況から開放されナハトは、思わずその場へ座り込んでしまう。
ジンはそれに気づいて、俯いた彼女へかけ寄った。しかし、手を差し出しても彼女は取ろうとしない。

「大丈夫っすか!?」
「どうして……きたの……?」
「へ? そんなん、ナハトちゃんがピンチってきいたら、来ないわけないじゃないすか!!」

即答なのか。
仲良くした訳でもないのに、色々な感情を彼に抱いていたのに、自分が情けなくなってしまう。
そう思い、ナハトが手をとったとき、再び弟の笑顔がふっと頭によぎり、
途端にナハトの瞳から一滴の水滴が伝う。

あれ……?

らえることができず、倒れる用に抱きついてしまった。

怖かった。
何をされるのかと思った。
知らない人間に触られるのが、こんなにも怖いとは思わなかった。

抱きつかれたジンは、数秒固まりはしたが、落ち着いて優しく頭を撫でられる。
これがさらに滑車をかけ、涙がさらに止まらなくなった。
本当は寂しかった。辛かった。
弟と別れたあの時も…カフェテラスで見たあの時も、弟が暖かい人達に囲まれているのが羨ましかった。

カロンが脇で口笛を吹き、リアスがジト目でみてくる。

「よかったな……」
「なんでそんな哀愁漂ってるんすか!?」

その後、部隊の応援がきて密輸されかけていたイリスカードは全て回収された、火も無事消し止められ、四人は無事本部へと帰還する。

ナハトから弟クオンのことについて聞いたジンは、少し驚きはしたものの動揺はせず、結構前から交遊があったことを話した。

その後本部で話していることは肩身狭いと思い、ジンはナハトを自宅へ連れ帰る。
クオンもいる中、久しぶりの再会ではあったがクオン自身、以前より丸くなった姉に安心し、ほっと肩をなでおろした。

「タイタニア・ジョーカーのカナトです。ナハト殿」
「あら、プライドがないのね。珍しいわ」
「父は堕天、私は生まれからアクロニアで育ちました」
「堕天……なにか罪でも犯したの?」
「実家は墜天として翼が黒く染まりはしましたが、エミル界では、墜天という言葉に馴染みがなく理解されません、その為、あえて堕天と名乗っております」
「……確かに、認識は間違っていないでしょう。アークタイタニアは少ないものね」
「ご理解、感謝致します」

「だてん? ついてん?」
「ジン……」
「地に降り立った大天使以上の存在は、基本的に堕天と総称されるけれど、実際には神を裏切り地に堕とされた大天使を堕天。自らの意思で地上へ降り立った大天使を墜天とよぶの」

ジンが目を点にしている。

「でも、エミル界ではそんなのあんまり関係ないからカナトさんは堕天と名乗っているのですね?」
「そうです。また、あえて名乗って関わらないようにと……」

「貴方も、なにか事情がおありななしら?」
「実家は大貴族。父は七大天使の1人ルシフェルです。私は勘当されておりますが……」
「複雑なのね、いいわ。あえて聞かずに起きましょう」


カナトが何も言わず頭を下げた。
ジンとハクのみがわけがわからないずキョトンとしている。
思わず目を見合わせた様に、ナハトがクスりと吹き出した。

「そっくりね」

「なんで」「だよ!?」

やっぱり似ていた。
久しぶりに見た姉の笑顔にクオンが驚く。
よかった。

ナハトもクオンもきっと複雑な気持ちがあるだろうが、それでも彼女たちは姉弟だ。
どんなに時間がかかっても分かり合えるものがあると思う。

そんなことがあり、ナハトは数日後再びイリスカードの意見交換会へと呼ばれた。
カインロストを筆頭として話し合いをする彼らは以前より柔軟な考え方を見せ、意見を出し合っている。

「では、イリスカードの使用については、部隊員全員に補助系のイリスカードを携帯するように義務づけ、生存のために必要なときに使用するという方向でまとめさせていただきます」

きれいな形にまとまったとナハトは思った。
攻撃補助のイリスカードのならまだしも、隊員に生命危機が迫ったときのみ身を守るための補助系のカードの義務付け。
これでおそらく隊員の生存率は確実にあがる。
使わないと決めた人間であっても、自らの生き残りがかかる状況で使わないという愚かな行為をすることはないであろうし、守るためのものであれば納得も行くだろう。
彼らの意思決定において、何か力になれたのなら、それでいいと思う。
そうして終わった意見交換会だが、教室を出ようとしたとき、ナハトは再び呼び止められた。

「ナハトさん。このたびは貴重なご意見ありがとうございました。みなさんナハトさんのご意見ですこし考え直したみたいでスムーズに話し合いができたみたいです」
「そう、ならよかったわ」
「いろいろとありがとうございました。あ、あの……」
「何かしら?」
「弟さんの件はなんとかなりましたか?」
「……えぇ、以前は理解してもらえないとおもっていたけれど、人は努力次第で分かり合えるのね。ありがとう。カインロスト」

相手がきょとんとしてこちらをみた。
お礼を言われたことに照れたのか頬を染めている。
すべての人間が一人の人間を好くことなどありえないのだから、逆にすべての人間が自分を嫌い、迫害することはない。
天界という狭い世界ではなく、エミル界という広い世界で生きていこうとナハトはおもった。

微笑のまま身をひるがえし、去っていくナハトの横で、カインロストが肩をなでおろす。

「なるほど、努力次第で理解してもらえるなら、結果次第ではみんな僕を認めてくれるんですね……!」

カインロストの小声が小さく響いた。



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本編 | 【2014-01-23(Thu) 12:30:00】 | Trackback(-) | Comments:(0)
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