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(C) BROCCOLI/ GungHo Online Entertainment,Inc./ HEADLOCK Inc.

カナトが傭兵として治安維持部隊に協力する話(後編)
出演:カロンさん、リアスさん、ホライゾンさん、グランジさん、コウガさん、スィーさん。

あらすじ
不穏な空気が流れる中、アイアンサウス軍の模擬演習が始まる。
しかし、始まったのは兵器テストではなく、トルマリンによって暴走したモンスターたちの制圧だった。
召喚されたトルマリンは、ウテナ湖だけにとどまらず周辺地域の敵まで呼び寄せ治安維持部隊の隊員たちへ襲い掛かる。

前回
カナトが傭兵として治安維持部隊に協力する話(中編)
カナトが傭兵として治安維持部隊に協力する話(前編)



 

あっという間に二週間がたち、二人はウテナ湖演習場へと赴いた。
新しく届いた制服は、ジンは青ベースのホークアイ。
カナトは紫がベースのドレスだ。
着なれない派手な服に戸惑うかに見えたが、意外と動きやすいのか不自由な様子もない。

「思ったより、似合ってんじゃん」
「世事はいらない。貴様はひどい物だな」
「正直な相方を持って幸せだよ!! うっせぇ!」

「やぁ、来ていたのかい?」

低い声にジンの背筋が伸びた。
現れたのは、職服を着込むアークタイタニア・ガーディアン、ホライゾンだ。
カナトは深々と頭を下げだし、ジンもそれに続く、

「そんなかしこまらなくていいよ。よろしくね」
「お久しぶりです、ホライゾン大佐」
「久しぶり、ジン君。元気だったかい?」
「はい! ホライゾン大佐も……」
「カナト君も一緒だときいてね。よかった」

「私はーー」
「顔を合わすのは初めてかもしれない。僕はアークタイタニア・ガーディアンのホライゾン。君の事は総隊長とジン君から聞いている。信頼しているよ」
「光栄です。短い時間ではありますが、貢献できるよう努力いたします」

慣れた物だとジンは思う。カナトの言葉使いは真似出来ないと思った。

「トルマリンは、沢山のモンスターを呼び寄せる。あの兵器がどこまで殲滅出来るかはわからないけれど、一匹も逃さないように頼むよ」

「はい!」
「了解致しました」

「ここは南側だけど、カロンとセオ君は東側にいるから、手が空いたら会いに行くといい、……カルネ君も来れたら来るみたいだけど……」
「あ、あの、ありがとうございます」
「それじゃあ、僕は総隊長をみてくる。リアス君とも、仲良くね」

「リアス?」

二人が首を傾げた直後。
ジンの隣に、イレイザーの職服を着る黒い影が見えて、悲鳴を上げた。銀縁のメガネをかける彼は、横目で尻餅をついたジンを見下す。

「相変わらず鈍いですね」
「うっせぇ!! 突然湧くんじゃねえ!!」

「リアス、久しぶりだな……」
「カナトさんお久しぶりです。職服とは驚きました」
「一時的にだが、参加することになった。よろしく頼む」
「頼もしいですね」

「俺は!?」

リアスはジンの言動を無視した。
ショックとまではいかないが、この扱いはひどい。
イライラしてる間もなく、アイアンサウス兵の奏楽隊の音楽が響いてくる、演習開始の合図だ。
ぞろぞろと出てきた兵器たちは一列に並び、ある一転に向けて砲塔が向けられる。

すぐに始まるかに見えたが、ウテナ湖の入り口に、小さな白い影がちらつくのをジンは見逃さなかった。
赤いマントに、真っ白なナイトの職服をまとう彼は、派手なイヤリングをちらつかせて、堂々と演習場に入ってくる。
後ろにはスイレン最高責任者と、同じく職服のエミル、黒髪に黒い眼帯をつける彼は、両腰に銀の長銃を吊り、足元には王冠を載せた黒猫がゆっくりとついてきている。
そんな彼を、集結していたアイアンサウスの兵士たちは苦い顔で迎え、エミル・ガーディアンのキリヤナギは、そんな相手に向けて笑みを返すと、用意された来賓の席へと座った。

「遅刻ですね」
「相変わらずだなぁ……」

何も言わないカナトは、じっとキリヤナギのほうを見つめる。
面接の日以来ではあるが、ジンはカナトから何を聞かれたかなど一切話してはいなかった。
あえて聞くものではないとは思うが、話そうとする空気も見せず、なんでも率直に話してきたカナトには違和感を覚える。
しかし、キリヤナギの姿をみるとこうして固まるカナトはやはり違う何かを感じているのだろうか。

キリヤナギが来賓の席へ座ったのとほぼ同時に、アイアンサウスの国歌が流れだす。
並べられた兵器のエンジンが掛けられ、内部システムが起動した。
流れ出した国歌が酷くやかましく、二人は平静を装い耐えるが、リアスは素直に耳を塞いでクローキングをするので、無理矢理抱きかかえてあぶり出してやった。

「大人しくしろ」
「うっせぇよ! こいつずるーー」

カナトに脛を蹴られて黙った。
逃れたリアスは、”ハンティング”から”クローキング”をして見えなくなる。
痛い。

「子供か」
「〜〜!!」

言葉が出ない。
リアスは消えたまま機嫌が良さそうだ。
そうして騒音に耐えていると、兵器の向かい側に透明なガラスケースが垂直に置かれている。
南軍騎士が赤い旗を上げると、数方向から銃声。
ガラスケースを粉砕した。
途端闇の魔法陣が出現し、巨大な水晶が成長する。

トルマリンだ。
溢れ出した邪悪な魔力は、ウテナ湖のモンスターを凶暴化させ、さらに敵を召喚。ジャイアントコッコーと、キングポーラーを呼び出した。

殲滅を開始するため動き出す機械。
どう動くのだろうてそちらを凝視したとき、後ろからコッコーの鳴き声が高らかに響いた。

演習場の周辺には、凶暴化したコッコーが群れとなり隊員たちへ襲いかる。

「マジかよ!!」
「なるほど、呑気に見てはいられないみたいだな」

「毒で殲滅します。ジンさんはあぶれたコッコーを」
「わかってるよ!」

ジンは、ボルトアクションでは間に合わないと判断し、光砲・エンジェルハイロゥの代わりに右腰の烈神銃・サラマンドラを構えた。

数が多すぎる。
演習フィールドへ侵入させない為、三人は群れで押し寄せてくるコッコーの殲滅を開始した。

しかし、巣穴から出てくるコッコーは数知れず、さらに海岸部に生息するコケトリスまで姿をみせるようになってきた。
エルダーワームにでかクローラーまでもが視界へちらつくようになり、
持ってきたマガジンが瞬く間に消費されてゆく。
気がつけば最後の一つだ。

「弾もたねぇぞ!!」
「北に設置されている部隊テントに補給場があります。そこからもらって来てください」
「は!? 運動会かよ!?」
「短剣貸しましょうか?」

嫌味か。
しかし、敵の数が多すぎる。
一匹倒すのに、急所へハマれば一発。外せば2発は消費する。ハンドガンの最高装填数を考えても、20〜30匹ぐらいしか倒せない。
マガジンを入れ替えても100匹にも届かないのだ。
これでも、前衛二人が大量に駆逐しているのだがら、前の数が明らかにおかしい。

弾切れが近く、唇を噛む中、後ろへ許したコケトリスをマーシレスシャドウが掠める。
クローキングから姿を現したのは黒服のドミニオンだ。

「お、やってんなぁ」
「カロンさん!? エリアちがうんじゃ……」
「いやぁ、セオと一緒でな、あっちは余裕だからスペルユーザーのいないこっちの応援にきたんだ」
「助かるっすけど弾もうないんでちょっと補給行かせてもらっていいすか?」
「おういいぜ。でも俺短剣だしすぐもどれよ」
「すんません!」

残り五発を切った所で、ジンはリアスの言う補給場へ向かった。
救護所も兼ねているのか、コケトリスにつつかれた新人隊員でいっぱいになっている。

ジンのエリアは、コケトリスとエルダーワームやデカクローラーだったが、場所によってはココッコーやイマチュアーコッコーが出現するらしく、可愛すぎて攻撃できないと泣きつく隊員もいた。
一番悲惨なのは、付近の開拓村に出現するイワンコフのエリアで、硬く武器が通らないから、突撃を止められず直撃された隊員に骨折者がでたとの事だった。
そのエリアは危険であることから、魔法に長けるぬえとナハトが担当しているらしい。

ちらちらと聞こえるランカーの名前を聞きつつ、ジンが手早くマガジンへ弾丸を補給していると、ふと視界に来賓の総隊長、キリヤナギが目に入る。
後ろにグランジを立たせ、正面を食い入るように見つめる彼は、アイアンサウスの軍事兵器を凝視していた。

気がつくと軍事兵器はジャイアントコッコーとキングポーラーではなく、ふんどしマンとアルカナキングを相手にしている。
ダンジョンボスを押さえついるところをみるとやはり闘える機械らしい。

しかし、何故闘える機械があるのに、自分達が戦っているのだろう。
仕事ではあるが、戦う為に生み出された機械の為に、自分達は今戦っている。

わけがわからない。
考えることは苦手だが、戦う機械の横で沢山の人間が怪我をして、戦って、ボロボロになっている。

悔しい。
しかし、何を思ってもここはそういう世界なのだ。
機械より安く見られる人間も存在するどうしようもないそんな世界。

そう思うと少し虚しくなった。



「おせーよ!! ジン、なにしてたんだ」
「す、すんません!」

「サボりたかったんです?」
「ちげーよ!! 広すぎて迷ってたんだ!」

「あほか!!」

リアスの声がパーティ通信から流れだし、思わず声を荒げた。
しかし、もう一人からの言葉が来ない。
本人は奥のフィールドで、でかクローラーを相手にしているが、

「ちょっと疲れてるな。カナト連戦慣れてないんじゃね?」
「いや、そんな事は……あいつのスキル、敵の体力を吸収できるみたいだし?」
「それにしちゃ、やばいな。一旦引かせろ。お前の言うことなら聞くだろ」

前衛を引き受ける為、カロンが前へと駆け出した。
カナトの敵を横から奪い、位置を取る。

「カナト! ちょっとかえってこい!」

リアスがあぶれた敵を沈めふたりで抑えられそうだ。
ジンに呼ばれたカナトは、ゆっくりと羽ばたいてこちらへと戻ってくる。
手間に着地した瞬間。
カナトはそのまま膝をついて、倒れこんでしまった。

「おい、カナト!? 」
「疲れた……」

羽がしなり酷く疲れている。
息も切れており起き上がる気配がない。

「なんかあったのか!?」
「……吸収、出来きない……」
「!?」
「回復が出来ない……すまない」

どういうことだろう、救護室へ連れて行こうにもテントは人ではいっぱいだった。
恐らく順番待ちになるだろう。

「カナト、憑依しとけ」
「……」
「本部に世話になるよりマシだろうが!」

怒鳴るとようやくアクセサリーへ消えた。
世話が焼けるが仕方ない。帰ったら怒る、絶対。

そう考え、ジンが再び銃を握った時、空が酷く真っ暗になっている事に気づく。
しかも北の空にはあおぞらが広がっていて、ウテナ湖周辺のみであることが分かる。

異常だ。
ふと後ろをみると、トルマリンがさらに成長し、また二体の敵を呼び出した。
現れたのは、ライオウとメイオウ。
思わず言葉を失った。

だが兵器は果敢にも砲塔をひらき迎え撃つ。
馬鹿か? と思う。
下手したら大惨事になる強力な敵だ。
今すぐ殲滅しなければ、アクロポリスまで逃げられ被害がでる。
戦ったからこそわかることだ。

しかし、殲滅の指示が出ない。

「なんでライオウが!?」
「しらねぇよ!」

「まずいですね、指示でるでしょうか」

キリヤナギのいるテントを見ると、彼は涼しい顔でそれを眺めている。
知らないのだろうか。
モンスター戦は苦手だといっていた。
伝えないければいけない。

カロンの止める声を無視し、ジンはキリヤナギのいるテントへと駆け込んだ。
それを総隊長は眉一つ動かさず見据える。

「総隊長! ライオウとメイオウは危険です。 今すぐ殲滅しないと」
「あぁ、知ってるよ」
「は?」
「知ってる。だから見てるんだ」
「なんでですか! ライオウは飛べるんですよ! 逃げられたらーー」
「知ってる。だからジン、今は耐えて」
「なんで……」

わけがわからない。
沢山の人がが戦って、沢山の怪我人がいて、これは唯のデモストレーションなのか。
闘える機械がいるのに、それ以下として使いまわされる人が沢山いてーー。

ジンは腰の銃を抜き、ライオウへ向けようとした。
翼の急所を打てば、少なくとも足を奪えると思った。
だが、それを見たグランジがジンをつかみ、床へ抑えつける。
叩きつけられた衝撃で、ジンが首から下げていたダブルハートペンダントが外れた。
途端、アクセサリーにいたカナトが弾きだされる。

眠ったまま床に投げ出れ倒れこんだカナトに、グランジはジンを開放すると、迷わず、自分の長銃をカナトへ突きつけた。

「……!!」
「どうする? キリヤナギ」
「僕は何もいってないよ。ジンがライオウに攻撃しない限り命令違反にはならない」

グランジの銃口は、疲労で眠るカナトのこめかみへ向いている。
動けば撃つと言いたいのだろう。
動けない。

「カナト……」

目覚めない。
声を掛けたぐらいでは起きない事をジンは誰よりも知っている。

息が切れる。
心臓が爆発しそうだが、何も言われない事に徐々に頭が冷えてきた。
そして、気づく、自分は今、最大の慈悲によって守られているのだと、

思わず握った銃を落とした。
何もできないのだ。
悪いのは自分であるのだとわかり膝をつく。

それを見たグランジは、銃をしまいキリヤナギの後ろへと戻った。

情けない。
守るつもりが守られている。
それにすら気づけない自分は、一体何処まで愚かなのか。

床の硬さに気づいたのかカナトが低い声をだす、
思わず顔をあげてジンが近寄ると、ゆっくりと体を起こし、少し心苦しくなった。
カナトは眠そうな目でジンを確認すると、アクセサリーがない事に気付く。
ジンはそれに慌てて拾って付け直すと、カナトは何も言わず再憑依してきえた。

「謝らないでね」
「! 総隊長?」
「僕も今日はお互い様だ」

言葉の意味がよくわからなかった。
しかし、事象はすぐに起こった。
戦っていた兵器から、白煙がのぼり、メイオウとライオウの魔法が焼き付いている。
兵器は火属性。
つまり、風の魔法を使うライオウと闇のメイオウでは、最悪の相性だ。
ギシギシと軋み、限界近い機械はいつ壊れてもおかしくないだろう。

「あれ! ジンさん!?」

響いた声に、顔を挙げた。
振り返ると黒髪黒羽のタイタニアがこちらを除きこんでいる。
いつからいたのか。

「お久しぶりです! スィーです!!」
「スィーさん!? なんでーー」

「スィー! 早くバリア!」
「こ、こうがさん! ごめんなさい」

スィーのさらに後ろへいるのは赤髪のタイタニアだ。
こちらは始めて見る顔でもある。
コウガと呼ばれた彼はこちらをみて踵がえすと、ライオウとメイオウを見据え前に出る。

「そろそろか……」
「悪いね」
「別にきにしないっすよ、こちら久々で血が騒いでるぐらいっす」

「おっかないなぁ……」

「全ては彼らの手の内に過ぎない……ここからが、メインだ」
「……」
「始まるよ」

キリヤナギがそう述べた直後。
兵器の間接部が外れ、本体が床へ落下。
砲塔がさがり、駆動が停止した。
メイオウがそれを更に噛み砕き、眼前の南軍待機所へ魔法を詠唱。
背筋が冷えたが、回り込んだスィーのリフレクションが光り、南軍待機所を守った。

「危なかったね!」

スィーの掛け声の後に、コウガがガッツポーズをすると、殺界から神速斬りを発動。
メイオウへ切り込んだ。
標的を失ったライオウは、高い声を上げ、再び魔法を詠唱。
魔法陣が数多発生する中、グランジがゆっくりと前へでた。

「いっておいで、グランジ」
「全てを捧げよう。我が王よ」

ざっとジンが身震いした。
数歩進んだグランジは、二丁ライフルを抜き、一気に4発打ち込む。
喉元を貫通した弾丸はライオウの声帯を掠り詠唱を止めさせた。
しかし、巨大な敵は弾丸如きに声帯を壊されない。
高い悲鳴のような鳴き声を響かせ、何十匹ものホウオウを召喚。

空へと飛びたった。
グランジは、弾丸を装填し直すと歩を進めて小さく歌う。
魔法の詠唱だ。
不得意であるためか、遅い。
しかしそれは、確実に加護を発動させた。

「ヒットコミュニオン!」

エミル族には使えない筈の魔法。
唱えられた力は、騎士と名乗る彼ら全員に加護を与える。

クリアな視界を凝視し、グランジはオーバーレンジからのホークアイ、を詠唱、一瞬で二丁のライフルを構え、撃った。

「ミラージュ!!」

打ち出された二発の弾丸が、ねずみ算式のように分散。
空中に飛ぶホウオウとライオウへ鉄の槍を浴びせた。
また、内部で弾丸が破裂。
飛びたったライオウとホウオウは落とされ、巨大な図体が床へと堕ちた。
グランジはそれを見ることなく。
銃を戻し背を向ける。

誰もが黙り、唖然とした様子をみせる中で、
今度はキリヤナギがグランジとすれ違い前へでた。

「時は一刻を争う、治安維持部隊総隊長、キリヤナギの名において、この場の人外となる敵を完全殲滅せよ!」

キリヤナギがダインスレイブを掲げる。
顔を上げたのは、各部隊の警備員達だ。

トルマリンはまだ動いている、手を止める訳にはいかない。
よく見ると、ライオウも飛行能力を失っただけで、部隊員がトドメを刺すために動いている。
ジンもカナトを回収し、持ち場へ戻るべきかと考えていると。

騒がしい戦場を、彼はゆっくりとあるき、中央のトルマリンへと歩を進めていた。
血剣・ダインスレイブとセンチネルシールドを携え、トルマリンと対峙する。
すると、トルマリンからぬっと赤い騎士が現れ隊員たちが顔を引きつらせた。

周りから、ペンドラゴンか!? と声が響いたが、ペンドラゴンではなく、ナイツ・オブ・ラウンドテーブル。ペンドラゴンの使い魔だ。

ペンドラゴンが現れると誰もが身構えた時、キリヤナギが動いた。
ナイツ・オブ・ラウンドテーブルの甲冑の隙間へ、剣を突き刺し、そのままトルマリンへ突き立てたのだ。

ビギっ、とガラスのような音が響く。
キリヤナギが打ち出したのは、ライトオブダークネス。
光の神速突きを食らったトルマリンは、ひびを全体まで至らせ破砕した。
邪悪な力があふれ、キリヤナギのダインスレイブへ乗り移る。

「ティー…」

キリヤナギがチョーカーを外す、途端背後に黒いサラマンドラが現れ、まるで飲み込むように、闇の魔力を取り込んだ。
その時のキリヤナギの瞳には闇の魔法陣が現れ、ジンは悪寒と恐怖に全身を持っていかれる。

事を終えたキリヤナギは、まるでほどけるように魔力を失うと、ダインスレイブを持って膝を着いた。
即座に、討伐を終えたスィーとコウガが駆け寄るが、彼は自分の足で立ち上がりフィールドをでていく。

何が起こっていたのだろうか。
見るのは二度目だ。
誰もが顔を青くして、キリヤナギの行いをみていた。
憑依ではないのか。しかし、見えたのはモンスターだった。
わけがからない。

「おい、ジン!!」

はっと我に返った。
肩を叩いてきたのは、カロン。ジンの持ち場にいる彼が何故。

「トルマリン壊れて、敵が落ち着いたんだ。えらいもん見ちまったな……」
「カロンさんなんか知ってるんすか?」
「いや、しらねぇ。でもなーー」
「カロンさん?」
「……ジン、総隊長がギリギリまで俺たちに討伐させなかった意味わかるか?」
「えっと、横槍したら立場がわるくなるから?」
「ちげーよ。なんで私兵を先に戦わせたかだよ」

言われればそうだ。
キリヤナギは、治安維持部隊ではなく、自らの私兵に討伐をさせた。
討伐を支持するなら、始めから部隊でもよかったはずなのに、

「アイアンサウス兵の思惑は、トルマリンでこちらの戦力を図ることと削ぐこと、プラスで自国の戦力アピールだな。自兵じゃなく、機械にモンスターと戦わせて、周りの敵を警備員として戦わせれば、自国の戦力を削がず相手の戦力を削れる……」
「……」
「相手の思惑はそうだったが、総隊長は、私兵によってアイアンサウス兵を守ることで、騎士の存在意義の大義名分と実力を誇示させた。その上でボス二体を相手させて、戦力を把握させないようにしたってところだろ。グランジが倒し切らなかったのもそれだな」
「えっと……つまり?」
「超わかりやすくしてやったのにてめー! サボったことチクるぞ!」
「うぇぇぇえ!! 勘弁!!」

よくはわからなかった。
そんな事よりも、ジンは先ほどのグランジの行動が頭に焼きついて離れない。
何故ならあの時、自分の1番の弱みを始めて知った。

人質を取られる現場は、何度か遭遇したことはある。それなのに、頭が真っ白で微動だにできなくなってしまった。
何が違うのかはわからない。
日常が穏やかすぎて平和ボケでもしたのだろうか。
カナトを天秤にかけられた時、自分は限りなく無力でどうしようもない。

「なんだよ。スネてんのか?」
「そんなんじゃねぇっすよ!」

がむしゃらに帰すジンに、カロンは内心で安堵する。
助っ人が間に合い様子を見に来たカロンは、終始ジンとカナトのやり取りをみていた。
そこで見たグランジの行動にカロンは少し驚き、確信した。
カナトもまた、キリヤナギにとっての一つの駒に過ぎないことと、大切なカードであると言う事実だ。
なんのカードなのかはわからない。
カナトが起きていれば別の展開だったのかもしれない。
様々な意味であり得ないことが数分で起こり、それ程までに重要な何かをキリヤナギは何かを持っているのだ。

そんな不穏な空気を残し、アイアンサウス軍の兵器実験は終了した。

後に倒れたカナトを診てもらうと、カナト自身、疲れただけで健康上の問題はなかった。
しかし、配備されていたウァテスの彼らによると、トルマリンによる異常環境の影響で治癒力が酷く低下していたらしく、回復系の魔法の殆どが機能しなかったらしい。
つまり、トルマリン周辺のこの場所では、人間の自然治癒力でしか回復ができなかったのだ。
また、このような環境になることはあらかじめ部隊員に知らされていたらしく、キリヤナギがお互い様と言ったのもようやく理解した。

「納得がいかん!!」

テーブルで銃の手入れをするジンに夕飯を作るカナトが大声で噛み付く。
トルマリンの環境下の影響か、数日元気をなくしていたカナトだが、ようやく元気になり事実を聞いて怒鳴り出した。
褒賞もかなり出ていい仕事だったとは思うのだが。

「キリヤナギはトルマリンの異常環境の作成をあらかじめ把握していたんだろう!? それを態々黙っているとは、私を騙したとしかおもえん!」
「だから、伝え忘れたって言ってんじゃん。お詫びで褒賞も倍にしてもらえたし、きにすんなって」
「褒賞ごときで丸くおさまらん! 私はキリヤナギに借りを返してはいない! 貴様もあの程度で褒賞を受け取るなど……」
「俺は本部の仕事しただけだし、散々だったし? ついでに健康診断してもらえたしよかったじゃん?」
「貴様が寝ている私を勝手に連れて行っただけだろうが!!」
「あぁ、お前低血圧なんだから、肉食え肉」

一時契約の傭兵として扱われていた為、一時的に部隊員として扱われた。
眠っているうちに聖堂へ連れて行き色々サービスを受けたが、睡眠障害もうつ症状も今は改善していて、疲れやすいのは、スキルに頼りすぎることによる体力の低下だった。
朝が起きれないのは、低血圧や過眠による癖があるらしい。
どれも生活の改善でなんとかなりそうだった。

「お前体力ないんだから、朝起きて散歩でも行けよ」
「うるさい! 話題を逸らすな!」
「逸らしてねーし、てか体力ありゃちゃんと借りぐらい返せたんじゃね?」
「そ、それは……」

体は基本だ。
カナトの言葉は立派だと思う、筋は通すし、決めたことは曲げない。
だが体がそれに追いついて居ないのだ。
実現するには、まず土台を固めなければいけない。

「別にいいんじゃね? 人間一人じゃいきていけねーしさ。貸しなら貸しといても誰も文句いわねぇよ」
「私は……」
「じゃあ、朝飯ぐらい食え」
「努力する……」

カナトは、わがままを通す為にジンといる。
以前そんな事をセオと話した。

言われれば確かにその通りで、カナトはジョーカー、何者にも縛られない自由人だ。
ジンとは違い、ノルマも目的もなく好きに生きてきたのだから、今更それを制限されることに息苦しさを感じるのだろう。

ジンはジンで、目的があり願望もあり、それの為に全てを尽くしてきたのだが、いざ其れを得た時、自分には何もないことが分かった。
してきた努力を無駄とは思わない。が、自分自身が何かをしたいなど考えたことがなく、多彩な趣味を持つカナトに少し羨ましさも感じる。

自分もカナトの様に自由に生きていいのだろうか。
今こそ自由だが、カナトをみているとそうも取れない気がして……。

ボーっとするジンを見てカナトがむくれる。
たまにはこんな立場逆転も悪くない。
そう思ったとき、来客のベルが鳴って、ジンはカナトを抑えて自分が出た。
現れたのは、頭に黄色いココッコーを載せる眼帯の彼。

「邪魔をする」
「ぐ、グランジさん!? なんすか!?」

ココッコーがぷんっと鳴く。
カナトも唖然としていたが、外は冷えるため室内へと招き入れた。

「そのココッコー……、どうしたんすか?」
「先日の演習で拾った卵を、ゆで卵にする為に持ち帰ったのだが、お湯を沸かしている最中に孵った」

確かにコッコーの卵は食用にはちょうど良いサイズで、一般的な市場にも売られている。

「ココッコーは、始めて見たものを親だと認識し懐きやすくなると聞きますが……」
「離れようとしないのでそのまま連れてきた」

どこから突っ込めばいいのだろう。
ジンが頭を抱えていると、部屋からジンのココッコーが降りてきた。
ぴよだ。

種族が同じで仲間意識があるのか、二匹で遊びだし、微笑ましい。
だが、そんな絵図を他所にカナトが泡立て器を持って酷く深刻な表情を浮かべている。
ジンは何事かと思ったが、口を開いた彼に全てを委ねた。

「グランジ殿」
「?」
「本日の献立は、オムレツですが、大丈夫でしょうか」
「問題ない」

「いいのかよ!!」

グランジは即答だが、二人は罪悪感がこみ上げ、
結局食事はあまり喉に通らなかった。
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本編 | 【2013-12-26(Thu) 12:30:00】 | Trackback(-) | Comments:(0)
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