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カナトが傭兵として治安維持部隊に協力する話(中編)
出演:エリュシオヌさん、スイレンさん、

あらすじ
模擬演習に参加することになった二人は、カナトの面接のために治安維持部隊本部へと足をはこぶ。
制服の採寸だといって、呼ばれたカナトとジンだったが、実際は一つの交渉の始まりだった。

前回:カナトが傭兵として治安維持部隊に協力する話(前編)


 一週間ほど経って、ジンはカナトを連れてギルド元宮へとやってきた。
待ち合わせ時間の15分前に来たが、入口にアーチャー部隊最高責任者のエミル・ホークアイのスイレンがおり、ひらひらと手を振っている。

「久しぶり、ジン君、カナト君も」
「お久しぶりっす」
「ご無沙汰しております」

「それじゃ、カナト君はこれを首にかけて、ジン君はいつも通り受け付け、総隊長の所に連れていくわ」
「何故、総隊長に?」
「部隊総括管理もあの人だしね。嘱託でも重要任務の時は一度顔をみたいんだって」

「いつも思うんすけど、やっぱり総隊長らしくないっつーか……」
「今に始まったことじゃないでしょ? ほら、さっさと受け付け」
「は、はい!?」

急かされ、ジンもロビーから受け付けを行う。
初めての筈なのに、カナトは何故か落ち着いていて、言葉を話す気配すらない。

「あ、ジン君。貴方は私とアーチャー部隊系列で参加登録だから、ついて来てね」
「あ、そうなんすか?」
「カナト君が面接してる間に済ませちゃえば、二人とも一緒に帰れるし、効率もいいでしょう?」
「でも、こいつ一人ーー」
「カナト君は、貴方より年上なんだから平気。それに、ちゃんと部屋までおくるわ。安心しなさい」
「カナト。大丈夫か……」

「あ、ぁあ、大丈夫だ。覚悟はできている」

意味深な言葉だ。
ジンはきょとんとしつつも、エレベーターを出るカナトの後に続く。
何が起こるわけでもない。
覚悟とはどう言う意味をジンは聞くべきか迷った。

「さて、ここよ。ノックすれば返事があるはず、私はジン君と受け付けしてくるし、頑張ってね」
「スイレンさん? 頑張るってーー」
「一応面接なんだから、頑張れでしょう? ほら、登録登録」
「カナト、なんかあったら呼べよ」

ジンの言葉に、カナトは聞こえたそぶりをみせず、ノックから中へはいる。
閉じられた扉の音は、むなしく、人の消えた廊下へ響いた。



広い部屋だった。
革製のソファーに、巨大な執務机がある部屋。
脇には、フェンサーギルドの巨大なタペストリーが飾られ、棚にコーヒーメーカーが配置されている。
そんな広い部屋の窓際に立つ白服のエミルは、ゆっくりと振り向き、微笑んだ。

「やぁ、こんにちは」

青年の声だ。落ち着いた挨拶の言葉。
カナトは胸に手を当て深々と頭を下げる。

「お初にお目にかかります。本日お呼びに預かった。タイタニア・ジョーカーのカナトです」
「会えて嬉しいよ。カナト、僕は治安維持部隊総括、最高管理者、総隊長、エミル・ガーディアンのキリヤナギだ」
「……」
「君はアークタイタニアだよね。何故、プライドを捨ててまでタイタニアと名乗っているんだい?」
「私には、アークタイタニアと名乗る資格はないと判断しているからです」
「なるほど……、でも君のその翼は、たとえ君自身がタイタニアと名乗ろうとも、アークタイタニアだと肯定するものだ」

ゆっくりと歩みよって来たキリヤナギは、そっと手を差し出して来た。

「お手を拝借……」

述べられた騎士の言葉に、カナトは差し出された手をとった。
すると、膝を付いたキリヤナギは軽くカナトの手の甲へ口づける。

「僕は騎士。本来ならば私が、貴方方、アークタイタニアをエミル界にて守護する立場にあります。今その責務こそ果たされませんが、どうかお許しをーー」

騎士の定例の挨拶か。
これを行う事で貴族は、自己の立場と価値を表現する。
こちらの意思にそぐわずとも、それは自己の立場の為に行うのか。

「私は、タイタニアだと述べた筈です」
「僕にとっての君は、アークタイタニア意外の何者でもない。熾天使ルシフェル。アークタイタニア・フォースマスター、ウォーレスハイム様の嫡男、カナト様はね」
「っ!?」
「各地を放浪していた君が、まさか、僕の部隊に所属するジンと組み、同居している。何かの運命かな?」
「私は……」
「君は、僕がもっとも会いたかったアークタイタニアの一人だ。勘当された時点で、もう二度と会えないと思っていたけど……嬉しいよ」
「分かりません。何故私なのですか? 私の立場はーー」
「確かに、貴族の君はもういないかもしれない。今は冒険者だし、ジョーカーだもんね。だけど、僕は君に会いたかった。この意味はわかるだろう?」

はっとした。鼓動が高くなり、思わず視線を落とす。

「でも、顔みれてよかった。来てくれないと思ってたし」
「……」
「そうだね。ジンは、しばらく君に預けるよ。優しいから、好きに使うといい」
「!? どういうーー…」

言いかけた所で、カナトは息を止めた。
そうだ。ジンの行動理由はーー

「そろそろ、聖堂の終業時間かなぁ。月光花ちゃん、僕、最近あって無いんだけど、元気かな?」

月光花だ。
彼女は聖堂管理協議会に所属している。毎日通っている彼女が、任務に駆り出されないのはーー、

「人手不足なんだけどね。普通ならジョーカーさんと絡んで欲しく無いからさ、無理やりにでもひっべかずけどーー」
「……」

ジンに関わる時点で、全ては手のひらの上。
そう言いたいのか。
逆らえない空気に言葉もでず、思わず頭を抱える。
自分の立場を理解させる為に、キリヤナギはカナトをここへ呼び出したのだ。

一度考えを整理した時、カナトは先程のキリヤナギの言葉を思いだす、

アークタイタニア。
そう見えるとキリヤナギは言った。
この時点で全てを理解する。
ジンを送り込むのも容認しているのは、"キリヤナギが、カナトを貴族としてみているから"だ。ならば、護衛も当然であり、今までの待遇も当たり前となる。

「騎士よ」
「如何なさいましたか?」
「アークタイタニアの名を持って、働きは認める。だが、私には不要、全ての気遣いは要らない」
「しかし、大貴族の嫡男たる貴方が、この世界で安全に暮らせるとは思えません。せめて、一人でもそばへ置かせていただきたい……」
「何故そこまでして、私を? 守ってなんになる?」
「貴方がルシフェル様の嫡男だと、私が知った上で放置した場合。どうなるかお察し下さい」

あぁ……。
既に自分だけの問題ではなかったのか……。

「そうか……」
「そういうことさ。自由にしたいのは分かるけどね。この世界はややこしいから、仲良くしようよ。けーすばいけーす?」

意味が違う気がする。

「しかし、何故今更? 数年程まえまでは、何も」
「アクロポリスに居ることは把握してたし、僕自身、君の存在は、この立場につく以前から知ってたんだ。よく引っ掛かってたでしょ? そんな中、なんとか会えないかなぁて考えてて、ある日、たまたま調べてもらったジョーカーさんが、君だったんだよ。……病気は治ってそうだね。よかった」

なにもかも、知られていたのか。
今までの自分が情けなくすら思えてくる。

「あ、ジンがそっちに居るのは僕の命令じゃないから、安心してね、自覚ないみたいだから、内緒で」

そうだろう。
よく愚痴を聞かされたので、それは分かる。
ジンが此方に転がりこむ事は、キリヤナギにとってもっとも都合がよかったのだ。
その上、ランカーは治安維持部隊にとって有益な人間が選ばれる、つまりジンは、無意識にも治安維持部隊へ服従している可能性もあるのだ。
無意識であるぶん、こちらも安易に追い出せない。キリヤナギはそれすらも知っている。
恐ろしいエミルだ。一体何処まで計算されているのか。

「とりあえず、僕のお仕事を手伝ってくれるんだよね?」
「は、はい。一応は……」
「これを機会にさ、友達にならない?」
「お断りする」
「ぇぇ!? なんで!? ぼ、ぼく結構便利だよ? ほら……総隊長だし」

調子の狂う話し方だが、裏を返すとツテを付けようとしているのだ。安易に連絡を出来るようにして、連絡網をはる。
後に何を要求されるか分かったものではない。

「父の立場から私をみられているなら、貴方は私自身には興味がないと判断できます。それを友人として思う事はできません」
「へー、お父さん嫌いなのかい?」
「好きや嫌いなどの問題ではーー」
「君が勘当されていないなら、僕はこうして、君に会いたいとは思わないよ」
「!? どういう意味ですか?」
「ふふ、秘密。とりあえず保留にしよう。今日は君自身、僕への借りを返しにきたみたいだしね」
「……」
「君は、いつか必ず僕を頼りにくる。その時こそ、友達になろうね」

意味深な言葉だ。
笑顔が恐ろしくも感じてしまう。

そろそろ返してもらえるだろうかと思った時、背中にしていた扉からノックが響いた。
どうぞ、と述べたキリヤナギの言葉に赤い沢山の装飾が付いた服の女性が入ってくる。
彼女はカナトを、足元から頭までまじまじとみたあと、キリヤナギをみた。

「お呼びですか? 総隊長」
「わざわざ悪いね。シオン……。カナト、彼女はエリュシオヌ、君と同じだよ」

「同じ……?」
「エミル・ジョーカーのエリュシオヌです。始めまして」
「ジョーカー……!?」
「治安維持部隊にも、ジョーカーはいるのさ、職服の採寸を頼もうと思ってね。シオン、お願いできるかな?」
「はい、メジャーに体重計、座高、握力など、全ての計測ができるよう、準備ができています」

メジャー意外関係なさそうな気がするが、この空気で突っ込んでいいものが戸惑う。
しかし、カナトは突っ込む以前に、メジャーを掲げてジリジリと迫るエリュシオヌに、さらにジリジリと後退した。
応接机を中央にして、ゆっくりと二人で間合いを取り合う。

「ち、治安維持部隊で、ジョーカーとは珍しい……ですね」
「はい、私を含め数名しか居りませんが、ジョーカーであっても冒険者達へ貢献したいと考えました」
「成る程……実に立派な……」

距離は縮まらない。
キリヤナギは執務卓でコーヒーへ口付けるが、苦いのかむせ混んだ。

「ところでカナト様」
「な、なんでしょうか? エリュシオヌ殿……」
「採寸が出来ません。もう少し距離をーー」
「心苦しいのですが、エリュシオヌ殿。本日はスケジュールが切り詰めております故、後日、自宅で採寸した物を報告すると言うのはーー」
「む、しかし、模擬演習は二週間後。本日採寸を行い、発注をしなければ、日程が間に合いません」
「ならば、本日中にでも転送させて頂きたくおもーー」

直後。エリュシオヌが執務机を乗り越え、カナトのネクタイを掴んだ、そしてそのまま、後ろのソファーへ押し倒す。
途端、カナトの悲鳴が響いた。



スイレンに連れていかれ、模擬演習の参加登録をしたジンは、ホークアイの新しい制服の採寸を終えていまに至る。
登録はすぐ終わったが、採寸してくれたホークアイの女の子が可愛く、アドレスを聞き出そうとは思ったのだが、引きつった微笑で断られてしまった。
本部での自分の扱いはお察しだが、ここまで嫌われていると原因を考え直してしまう。

さっさと帰るかと思い、ジンがカナトを迎えにくると、

『うわぁぁぁぁぁぁあ』

室内から悲鳴が響いて来た。
カナトの声だ。
まさかと思いジンは総隊長の部屋へノックなしで飛び込む。

「カナト!!」

するとそこには、ソファーに服を脱がされ、失神したカナトと、それを押し倒す女性がおり、ジンは思わず扉を閉じた。

『あれ!? ジン!? どうしたの?』

居たのか総隊長。
あまりの衝撃的な絵図に、視界にすら入らなかった。
総隊長の部屋の前で、ジンがしゃがみ込み頭を抱える。
ゆっくりと開いてきた扉の隙間から、ようやくキリヤナギが顔をだしてきた。

「ジン? 大丈夫?」
「いえ、あの、……何してたんすか?」
「採寸だけど……」

ようやく思考が戻ってきた。
何処から突っ込めばいいだろう。
数秒考えたが答えがでず、ジンは一番重要な事を口にした。

「あいつ、女性だめなんすけど……」
「ぇえ!? 通りで……最初に言っといてよ!! シオン、カナト君にリザレクションサプリ飲ませてあげて!」
「ぁぁあ!! ちょっとちょっと! 女性ダメなんですって!!」

結局、ジンが”リザレクションサプリ”を飲ませたが、カナトは目を覚ます事はなく。
その日はおぶって帰る事になった。

次の日の早朝に起きてきたカナトは、女性に襲われる夢を見たと、この世の終わりのような顔で言うので、羨ましくも複雑な気分にもなったのは、言うまでもない。

「警備の話覚えてっか?」
「あ、あぁ、一応は期待されている分最善を尽くすつもりだ」
「そっか……」
「……? どうした?」
「なんもねぇよ」

態度だけを見ると、あまり気にしていないようには見える。
カナトからすると部隊への借りを返しに行くものであり、これで関係を断てるからだろう。

しかし、それでいいのだろうか。
関わりが無くなれば救済がなくなり、カナトはまた一人になる。
一度は救えたが、二度目はない。
守り切ると決めたのに、ジンは一度カナトを守り切る事が出来なかったのだ。
そこまで考え、ジンは、自分を酷く情けなく思う。
無力さを知ってしまった自分は、どこまでも泣きたいほどに弱かった。

結局話もできないまま、二人は二週間後の演習を迎える。


続く




*GEST
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エミル・ジョーカーのエリュシオヌ

治安維持部隊に所属する数少ないジョーカーの中の一人。
様々な武器を使いこなせるため、多くの任務へと旅立ち実績を持つ実力者でもある。
しかし、真面目な一面もある反面、男性に触れるのが好き。

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本編 | 【2013-12-19(Thu) 12:00:00】 | Trackback(-) | Comments:(0)
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