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サドンデス・サバイバル
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利他さん、結城隆臣さん、詠羅による、ぷちリレー企画

出演:リゼロッテさん、カロンさん

あらすじ
その日、ジンは突然リゼロッテによってマイマイに連れてこられる。
銃を渡され、防弾ジョッキを渡された彼は突然銃口をむけられた。
始まった死闘は今までに経験のない程過酷なもので、ジンは生死の境をさまようことになる。

前回:外伝:怒る。


 

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著:利他さん


「どうして、どうしてこうなった…。」
少年が木の根元に身を隠し、頭を抱える。

バスッ。

足元に弾痕がのこり、土が巻き上がって地面がえぐれる。

「隠れてないで、でておいでなさいな。鬼さんが着たわよ。」

どこからともなく、声が聞こえる。
このまま隠れているだけでは、また、手榴弾であぶりだされてしまう。
転がるように根元を這い出て、銃をひっつかみ、応射する。

音のほうにむけて、放たれた弾丸は、発砲音が虚しく木霊するだけであった。

そう、彼は今。

再びマイマイの地で、リゼロッテと特訓をしていたのであった。

事の発端は、リゼに最近アンタたるんでんじゃなーいのぉー?と酒場で絡まれたのが原因である。
というかそもそも、二十歳を超えてからというもの酒場にむりやり連れて行かれて酒を飲まされた時点で絡まれているのだが、そこは割愛しよう。
以前、評議会のラウンジで首根っこをつかまれてからというもの、リゼは事あるごとに訓練だなんだと、模擬戦や、トレーニングをさせてきたが
以前にくらべて、ひどく、ハードルがあがっている。
ハードすぎて食べたものを戻す、などいつものことであり、訓練をサボろうとでもしようものなら道中でズボンをぬがすなど、もはや虐めのレベルに達していることをされる。
ゆえに、素直に聞いていたところ。マイマイの地につれてこられたと、いうわけだ。今が三日目といったところか。初日のことを思い出せば、腹が立ってくる。



「というわけで、いざマイマイの地ってことね。」
「はぁ、マイマイですか。」
目を爛々と輝かせながら、銃の手入れをする陣に今回の「訓練」の説明をするリゼ。
「で、四の五の言わせないからのりなさいな、バイク外とめてっから。遅れたら殺すわよ。」
そう、軽く物騒なことをいいながら、ラウンジを後にする。
「はー・・・、今度はどんな訓練に・・・、ってえぇ?!」
遅れないよう、サラマンドラだけひっさげてリゼの後ろを追う。

ところかわって、マイマイ。
いそいでデバイスでカナトに「訓練」の二文字だけ送ったせいか、ひっきりなしにメールがくる。
「あら、≪彼女≫からメール?モテる男はつらいわねー?」
なんて、からかいながら。リゼはちゃかしてくる。この人は人をおちょくらないと会話できないのか、とたまに思うが、口にはださない。
「そんなんじゃねーっすよ。心配しないように、カナにメールいいっすか?」
はぁ、とため息をもらしながらリゼに抗議する。そうすると、太陽よりも赤い髪をかきあげて、なるほど、と得心いった顔をする。
「それなら、カナトくんもこっちによんどくわ。これで憂いなし、ね。エモノもちゃんともってきてるようだし。十分ね。はいこれ。」
そう、リゼが言いながら防弾ジャケットと弾丸を押し付ける。弾丸の数は弾倉がみっつ、といった感じ。
「わかりました、とりあえず何を倒せばいいんです?」
ドラゴあたりだろうか、と思案しながらリゼに尋ねる。

「ん?アタシよ?今から一週間。実弾をつかってアタシと殺しあいをしてもらうわ。一週間以内に私から逃げ切るか、倒すかすればその時点で終了。んじゃ開始。」

「はっ?」

いきなりの展開に目を白黒させているうちに、リゼのライフルがジンの左胸を突く。
「今から、って宣言してから13秒、開始といってから1秒。猶予はあげたわよね?」
トリガーが引き絞られ、パン。と火薬が破裂する。
命からがら、横っ飛びに回避したものの。
今度の訓練は、ドラゴよりよっぽどおそろしい相手になってしまった、と素直にこの場に来たことを後悔する。
大急ぎでその場をにげながら、ジャケットを着る。その間にも、自分の頬や、地面、足元に弾丸が擦る。

これが、一日目、はじまりのときだ。
デバイスをいじり、マイマイから抜け出そうと手配しようともしたが、島全体にジャミングをかけられているようで、儘ならず。
力づくで島をでようともしたが、そこかしこに地雷が埋まっているようで、ひとたび森から足をふみはずせば、その時点で足がなくなりそうな気がしたので、やめた。
いつの間に、準備されたのか皆目検討がつかないし、食料がないところをみると自分で原生生物からの採取しかない。
要するに、本気でこの『訓練』に望まないと、自分の命が危ない、ということだ…。



「はー・・・派手にやりあってんなぁ。」
などと、気のぬけたことを口からもらしながら、砂浜にロッジを組んでリゼから頼まれた仕事を終わらせたカロンが大根の味噌汁を口にしている。
「はあ・・・左様ですか、何かと思えばジンがリゼ殿に訓練ですか。」
横で大根を口に含み、咀嚼しおえたカナトがのんびりと答える。
「まぁ、いつものことだが、今回はとくに容赦ねえな。」
チュン、と流れ弾が此方に飛んでくるが、涼しい顔で顔を数cmずらして味噌汁をすするカロン。
「しかし、急にまた、マイマイにつれてこられたときは正直驚きましたよカロン殿。」
「おれもだ。」
などと、まったりとした空気のなか。BGMはジンの悲鳴と銃声。はたからみればとてもシュールなものだろうか。
「んじゃ、俺はまた、仕事いってくるから。カナトは適当にロッジの中で皿でもあらっててくれ。防弾はばっちりだから。疲れたら寝ててくれ。」
そういって、地雷を担いで森のほうへ向かう。今回の弾丸はペイント弾でないところをみると、リゼもそうとう本気で鍛えようとしているのか、と少し思案する。
そもそもあいつは子供が戦うことを嫌っている口だったが、ジンが例の一件以来名が売れてしまい、もう、一般人を名乗れないと踏んだのだろう、ここの所ドミニオンの軍人のようなメニューをこなさせているところをみれば、それは容易にわかる。
あれは、自らを鍛えるのではなく、いわゆる死なないために必死に生きるための術といったものだ。
つまり、戻すのではなく、生かすことにしたのだろう。そう、お日様がきらきらと光る絶好のバカンス日和に、地雷を改めて念入りに設置しながら、思考をめぐらせていた。

「さて、と。360度ばっちり。んじゃ、俺もいくとするかな。」

そう、言いながら、森の中へ踏み込むカロン。その表情はすこし、いや、かなり楽しげだった。
ようするに、悪魔二人がサディスティックに少年兵をしごく、という至極わかりやすい構図だったわけだ。



「こな、くそっ!!」
パン、パンと銃声が森の中に響く。小鳥たちが騒ぎながら飛び立つほどに森のなかは物騒なことになっている。
すでに戦場と化しているのか、一度逃げた道を通ろうものなら、ブービートラップが作動して、じわじわと行動範囲が狭まれてくる。
とはいえ、マイマイの森は広い。群生した植物たちは他の土地の植物たちにくらべてひどく成長速度がはやい。
つまり、森が生きているという表現がぴったり嵌るように、三次元的には逃げるところはいくらでも出来る。
ようするに、どこにだってある程度は。
「退路は、ある」
そう、つぶやきながら、木の根が絡まった、自然の洞穴に逃げ込む。
急ぎ、弾倉を銃に装填し、銃が土や埃で詰まってジャムらないよう簡易的なメンテナンスを施す。
弾丸から香る火薬のにおいが、如実に、この訓練は尋常ではないことを逐一思い知らされる。
「ふぅ…、しばらくは篭城できそうだな…。コール。」
そう、影から灰の狼を呼び出し、周囲を警戒させる。彼らは自発的には攻撃できないが、防衛には非常に向いているのである。
これは、リゼがよくつかっているのをみて、自分もつかってみたもの、である。
基本的には、自分は短銃捌きと身軽さで敵の攻撃を凌いでたから、必要ないもの、と割り切っていたが切れるカードは多いに越したことはないと痛感する。
狼に警戒させ、すこし水を含む。これは、そこらへんの動物や、川からろ過して得たものである。常にいつ、スコープで狙いをつけられているか解ったものではないから、ほんの微量しかないが。
それでも、必死に走りぬけ、乾いた喉を潤す清涼剤には掛け替えのないものであった。
そんな、小休止をしていたところ、灰狼が一斉に吼えはじめる。
きたのか、はやいな。と銃を構えなおし、出口にむかって銃口を向ける。
が、そもそもの判断自体がすでに誤っていたのにすぐ気がついた。

ころり、と手榴弾が足元に転がってきたのだ。
ばっちり信管はぬかれており、マジで爆発する5秒前といったところだろう。

「うっ、うわあああああ?!」

悲鳴をあげながら、手榴弾を蹴り、洞穴の外に物騒なものが舞う。


ずどぉん、と大きな音をたてて、鉄片と爆炎があたりの空気を焼く。

「あら、いきてたの。ふくろのねずみゲットって思ったのに。残念だわ。」
そう、赤い髪を揺らしながら、にたぁ、と口はしを歪めて銃を構える悪魔の姿が見えた。

「そう、すきかって、させないです、よ!!」
俊敏に動きながら、スコープから逃れ木から半身を出しながら、サラマンドラが吼える。
二三発うったところで、身を隠す木が圧し折れる。リゼの弾丸は、マイマイの木をたやすく穴だらけにするような代物なのだ。
だが、それはすでに知っていたこと、といわんばかりに、倒れる木に併走しながら身を隠し、ナイフを抜く。
「うおおぉおぉおぉ!!」
きゅん、とナイフを一閃、横なぎに太陽の反射光を煌かせる。
だが、切っ先は赤い悪魔を捕らえず、がつ、とリゼのナイフとカチあう。
「判断はよかったけど、まだまだルーキーねぇ。」
驚く暇もなく、リゼの膝が自分めがけて飛んでくる。
唇をかみながら、それをかわすも、くじけず後ろとびしながら、発砲する。
「・・・、あら。なかなかやるじゃない。」
短銃をた弾丸はリゼの前髪をすこし削っただけであったが。

すこし、前髪を、さすり。
とても楽しげに、ドミニオンが微笑む。

「なるほど、なるほど。やるじゃない、…それじゃあ、おねーさんももっと、がんばっちゃうわ。」

リゼが銃を杖のように、地面に立てて、棒高跳びの要領で踵を落としてくる。

「上にとんだら、よけられない。ハズ!!」
しめた、といわんばかりに迎撃と追撃をかねた銃弾を放つ。
弾丸はリゼを抉り。血を撒き散らす。

はずだった。

飛び散ったのは、空中で霧散した灰の狼であり、自分の鼻血であった。

事を理解するのに瞬刻かかったが、リゼのつま先が、自分の鼻を蹴り上げたのだ。

つまり、リゼは棒高跳びをしようとし、自らの体を跳ね上げた後、狼を呼び出し、その狼をこともあろうかジンの方に蹴り、自分は着地して。
すかさずジンへサマーソルトをきめたのだ。

ぐにゃり、と視界がゆれる。血で鼻が詰まり、脳に十分な空気の供給がなされず、ひどく息苦しい。
「あら、まさか鼻血がでたから、いったん休憩、なんてやさしーこというなんて、おもってないわよねー?」
などと、ニヤニヤ笑いながら、休む暇なく黒い軍靴が襲い掛かってくる。
ぱん、ぱん。と素手で脚撃をいなしながら、やりすごす。
目をほそめ、呼吸をみださぬよう。おちついて。
幾度か、白兵戦をくりひろげたのち、二人は距離を自然と距離をとりなおしていた。
さすがのリゼも、すこし驚いた表情をしている。
「あらら、あたしも鈍ったかしら、それとも坊やががんばったのかしらね。それとも、いい先生が、ついてるのかしらね?モテモテだこと」
リゼの目は笑ってはおらず、いつの間にやら、その手にはライフルが握られていた。
だが、ジンの手にも短銃は構えられており。双方銃口はむけて、にらみ合う。

「「フレアショットッ!!!」」

ひどい爆風と爆音をたてながら、そこらへんの木屑が吹き飛ぶ。
ふたりが口を開くと同時に、銃口からは、凶悪な弾丸が放たれ、空中でぶつかりあったのだ。
たがいの弾丸は相殺され、その 応酬の爆風である。

風がやめば、その場からはリゼはいなくなっており、胸をなでおろす。
すこし、戦闘をしたら、リゼはいなくなるという法則があるらしく。いなくなった後は基本的にはリゼは、襲ってこない。
トラップは四六時中襲ってくるが。
胸をなでおろし、崖の近くで休憩する。
日は落ちて、森は夜を迎え始めた…。
昼夜が逆転すれば、森は別物のように姿を変える。

だが、それは森だけではなかった。



休憩をとり、体を休めたジンは、うつら、うつらと船をこぎ始める。思えばここ二日ほど神経を張り詰め、ろくに休まず、食事は野草とひどい生活を送っていた。
疲れるのも無理はない。それを慮ってか、発砲音もきこえないし、万が一のことを思ってか、夜の間は作動する赤外線のポインターも見受けられない。
「ふぅ・・・、つかれたな・・・流石に・・・。」
そう、だれに聞かせるでもなく一人つぶやき、ドラゴの肉をナイフで切り落とし、火であぶる。
おいしそうな肉汁がたれ、ほどよく焼けた肉をほおばりながら、ここ最近で急激にたくましくなった自分を痛感する。
いまとなっては、ゲッカの飯ですら恋しい、とおもったけどそうでもなかった。
焼けた肉の香りが鼻腔をくすぐり、空腹に嘆く腹が満たされる感覚に陶酔する。マジ美味い。肉マジ美味い。と寂しく夜の森で孤独のグルメを広げる少年。
ひとしきり、食事を済ませ火種を落とし、あたりを見回せば。
火種を落としたはずの薪の奥には紅い霞のような鈍い光源が。

「ま、まさか。マザー…?」
残弾数を確認し、身をひそめ目を凝らし光源を注視する。
光源はゆっくりと此方に近づいてくる。
しくった、とジンは悔やむ。肉のにおいに誘われたか、火の明かりのせいだろうか。と急いで荷物をまとめて飛び出す。
さすがに今はマザードラゴをひとりでやりあうわけにはいかない。
なぜなら「モンスターとやりあってるからって、攻撃してこないとおもった?絶好のチャンスじゃなーい」なんてひょっこりリゼが着かねない。
正直そっちのほうがよっぽど恐ろしい。まだ鼻がずきずき痛むし。
なるべく音をたてず、あえて、ブービートラップが蒔かれているほうへ逃げる。なぜなら、にげながら、勝手にドラゴがひっかかって逃げてくれれば幸いだからだ。

慎重にトラップをよけながら、奥へ、奥へと森の中を突き進む。
だが、異変にジンはすぐに気がつく。

ドラゴであれば、歩けば地響きがする。
そして、なによりも。
トラップの作動音がしないのだ。落とし穴にしても、槍衾にしても、多少なりとも音はする。
だが、一切しない。

不気味がって、後ろを振り向けば。

紅い光はない。

ぞくり、と運動したからだに這う汗が夜風にあたり冷える。

嫌な予感がする…。

急ぎ、この場を離れなくては、と向きなおせば。
視界が黒に染まる。

一瞬パニックに陥りそうになる、夜の森ともなればモンスターもそれなりに活発に活動するものも、いる。が。
目の前にいるのは、黒尽くめの、人型。

「なっ?!」
あわてて、後ろに跳び下がるも、手遅れ。
腕をつかまれ、すぐさま、腹部に膝蹴りがめりこむ。

「がっ…は、ぁっ…」

衝撃と、体内を圧迫され、逃げ場となる口から息が漏れる。
痛みに苛まれている余裕はなく、つかまれた腕を逃そうと、自らを捕らえる手をつかみ、ひねりあげようとするも。
ぱん、とかるくいなされ驚愕の色が自らの顔に浮かぶ。

「なっ…、まず…!」
いそぎ、はじかれた腕はホルスターにむかい、サラマンドラを抜き撃つ。

銃声が夜の森にひびき、黒い人型は弾丸をかわすために手を離す。

「っは、ぁ…。」
呼吸を宥め、銃をかまえながら、じり、と後ずさる。
予想していなかった、外敵に肝を冷やす。

黒尽くめは、ゆらぁり、と幽鬼のごとく、こちらへゆっくりと追いかけてくる。
けっして、急激に追い詰めるような俊敏なうごきではなく、じわじわと毒が蝕むように、此方への距離をつめてくる。

「くっ、…インパクトッ!!」

きゅん、と宙返りしながら、フルバーストした弾丸の反動を殺す。

「―――――空蝉」
そう、空気がふるえ、小さく黒尽くめがつぶやく。

ジンの後ろから、その声は聞こえた。
声を感知すれば、冷静に前転し、体勢を立て直す。不気味だからといって、慌てていい理由にはならない。そう、腹をすえて声の聞こえたほうへ、銃口を向ける。
今まで、目の前をゆっくりとちかづいてきていた黒い人型は、確かに自分の後ろに立っていた。
牽制するように、弾丸を乱射する。こんどは逃げ場のないよう、面での攻撃だ。
「テンペストッ!!」
連続した銃声は、ひとつの長い爆音となって、森を震わせる。

だが、その弾丸がひとつも黒尽くめにあたることは、なかった。
弾丸一発一発はたしかに、黒尽くめを貫いている、ハズなのだが、それらがすべて、黒い衣の向こうに音もなく、貫通するだけであった。
すべてを見透かされているような、不気味さに、ジンは舌を巻くほかなかった。
「…、ぷっ…」
黒い影からは、どこかで聞いたような笑い声が漏れる。
「えっ…?」
驚きをかくせず、素っ頓狂な声をもらしてしまうジン。この声は…カロン?と思考をめぐらせる。
「まったく、リゼのいうとおり、ゆるんでんなぁジン。そんなんだからケツひっぱたかれてんのか。」
くはは、と哄笑しながら、覆面をとり、素顔を見せる。一本傷が顔面に走る、青髪のドミニオンがあきれたように両手をあげてジンをからかう。

「なんだ、カロンさんでしたか…。まったく、なんでここに…それにからかうなんて、人がわるいですよ…。」
なんて非難しながら、銃口を下ろし。安堵のため息を漏らす。
「いやいや、すまんな。リゼからよばれて、カナトをこっちにつれてきてたついでに、からかいにきたんだ。」
なんて、意地悪く、にぃと口はしをあげながら。説明をきいたジンはカナトの件について得心がいったように、胸をなでおろす。
「まぁ、つまりさ。おれがここにきたってこと、理解してくれたか?」
「ええ、すみません、わざわざカナのことを。」

「いやいや、きにするな。俺も楽しんでるしな。」
「はぁ…ですが、わざわざ夜分おそくに…」

そう、いいながらカロンが近寄る。
不思議におもったときには、自らの鼻先に手刀が突き出されていた。

「そして、今も楽しんでいる。今からも、な。」

えっ、と声をもらす暇もなく、紅い薄光をまとった突きが幾度かはなたれれば。
防弾ジャケットは豆腐を切るが如く、布切れと化す。

「ばっ、冗談にしてはタチがわるすぎます!」
あわてて、カロンの突きをそらそうと、肘のあたりを弾き、軌道をずらす。

「ああ、わすれてた。ほら、つかえ。」

ばっと、とびのいて、今のは挨拶がわり、と言わんばかりに微笑んで。ジンのバレットセイバーを投げて渡す。これであれば、イレイザーの攻撃とはいえ、防ぐことは、できる。

どうやら、冗談ではない、らしい。覚悟をきめてバレットセイバーを構え、即座に防御できるような姿勢で待機する。自分から攻め入れるほど、カロンは近接においてたやすい男ではない。

「だけど、なんでっ?!」
カロンの鋭い突きをバレットセイバーでいなしながらも、何発かは頬をかすめ、服をさき、腹部からは血がにじむ。

「なんでって、リゼからきいてねぇのか?」
「なにを、ですかっ!」
痛みを訴える余裕などなく、必死に体術をいなしながら、叫ぶ。

「敵は一人じゃないんだぜ?」

「きいてねえっ?!」
槍よりもなお、鋭い突きをダイヤよりも更に強固な銃がなんとか弾く。

「まぁ、そういうことだ。殺す気でやっていいらしいからな。覚悟はいいな?」
そう、鼓膜の振動が脳に届ききるまえに、ジンの両肩はカロンにつかまれていた。

すばやく、カロンが跳ね、肩をつかまれて逃げ場をうしなった陣の胴体に両膝が襲い掛かる。
急ぎ、体をひねって何とか膝を避けるも、カロンは地に伏せるほどに身を低くして、陣の視界から消える。
そのまま、半月状に足をはらって、陣の体勢を崩す。

視界が45度傾き、ゆっくりと風景が落ちてゆく。

紅い残光をたなびかせながら、体勢の崩れ、宙に浮いた陣の胴体に裏拳の要領で、拳がめり込む。

「うぐ、っ!!」

なんとか、その拳を、バレットセイバーを身にちかづけて、受けるも、衝撃は殺しきれず、背中まで痛みが突き抜ける。

「やるようになったな。」
そう、褒めながらも衝撃で吹っ飛ぶ陣に意地悪く微笑む。余裕の表れだろうか。それとも、後身の成長が嬉しいのか。

「そこまで、やられて…ほめられても、嬉しくねぇ…っすよ…」
どさ、と地面に伏せながら、起き上がらないジン。痛みで体が言うことをききたがらない。手足は痺れ、頭はくらくらしてきてるせいもあるだろう。

「なんだ、もうギブアップか?存外、褒めたのは失敗だったな。」
ゆっくりと、ジンに近寄る。


その瞬間。

にやり、とジンがほくそ笑み。
ブービートラップが発動する。

自分の後頭部にあった、紐を、ぐい、と後ずさって押しやったのだ。

ぶつん、と音をはっして、糸でくくりつけられた丸太が寝そべったジンの上をぐぉん、と振り子の要領で、カロンに襲いかかる!


「おっ…、やるもんだな。」
急にとびかかってきた丸太を跳躍し、上へ逃げる。

「どんな、もんっすかっ!!」
上空ににげたカロンを追うように、サラマンドラを片手撃ちし。ごろり、ところがりながらバレットセイバーできりかかる。
「っと、ぉ、っぶねっ」
上空で器用に身をひねり、袖からオルトロスの刃を顕現させ、ジンのセイバーを絡めとる。

「さすがの俺も、すこし、肝をひやしたぜ?」
などと、肉薄しながら、カロンがにか、と笑う。






著:結城隆臣さん



「へへっ」
ジンも嬉しいのか、にっと笑みをこぼす。
何度かその場で組手をこなし、二人は一度距離を取った。
「想像してたより、レベルが上がってんな……」
「そりゃ俺だってやられてばっかじゃないっすよ、カロンさん」
「ふむ……今はリゼも離れてるし、つまり、これは『カロン』じゃなくても良いってことだな」
「え?」
突然ジンは身体中に震えが駆け抜けたのを感じた。
小瓶を数本煽るカロンの姿が見え、ゆっくりとその視線がこちらを見据える。
その瞳は先ほどの優しげなカロンのものとは一変していた。
鋭く獲物を捕らえて放さない猛禽類の物そのものである。
「……エフィカス、アサルト」
ジンは息を飲んだ。
足が逃げろと自分に言い聞かせているが、鋭い眼差しに釘付けにされて動かない。
「いくぞ」
次の瞬間カロンから真っ黒な殺気が放たれた。



気がつくとジンは全力で逃げていた。
どうしてこんなに必死にならなければならないのか、相手はいつも笑い合っている仲間なのに。
脳内が混乱していた。
ただ本能が発する信号だけを頼りに走り続ける。
自分が仕掛けたトラップを片っ端から使い何とかしてカロンから離れようと足掻く。
『カロン』の実力は自分より上だと言う事はジンは理解していた。
だが、今の相手は『カロン』というリミッターが外された『ガーヴィン』である。
ジンにとって想定外のことが起こっていた。
『カロン』である時点で『ガーヴィン』が僅かながらも手を抜いた状態だったとは知らなかったのだ。
普段のカロンとの訓練はさらにその『カロン』が手加減してくれていたともので、今思うと恐ろしさで血の気が落ちていく気がする。
とにかくガーヴィンの間合いには絶対に入らないようジンは心がけた。

ふと殺気が遠ざかって行き、ジンは足を止めた。
激しく肩で息をしながら、あたりに視線を配る。
気配はないが、相手はそれを殺す達人。
油断してはならないと自分のに言い聞かせる。
不意に離れた場所で小石が転がる音がし、そちらに目を向けた次の瞬間だった。

ビュッ!

頬を撫でる風と共に、脇腹に激痛が走る。
羽織っていた上着がボロ切れのように破け散り、鮮血が飛んだ。
ジンは片手で切られた箇所を押さえ込むと、もう一方の手で風が駆け抜けた方へ向かって銃を放った。
だが、草木が少し揺れただけで物音一つしない。
嫌な汗が全身から溢れ出た。
膝が震え、気が遠くなりそうな感じさえする。
ジンは再び駆け出した。

何度か自分の予想もつかない場所からジンは攻撃を受けた。
どれもひどい傷ではないが、徐々にジンの体力は奪われていく。
ジンは気づいた。
カロンがいつでも自分の命を奪うことができると証明しているのだということに。

ジンは悔しくて唇を噛んだ。
決定的なレベル差を見せつけられて涙がこぼれる。
今の自分では他人所か自分ですら守ることは出来ないのだと気付いて、酷く胸が苦しい。

「カロンさん! 近くにいるんでしょ!? 実力差はもう十分わかってる……俺じゃ太刀打ちできないってわかってる、けど、こんな、こんな……こんなやり方はないっすよ!」

「……わかった」

ゆらり。
ジンの前方、刹那が届くか届かないかという位置にカロンが姿を現した。

ふーふーと荒い息を吹かせながら、ジンは銃を構えた。

「ミラージュ……」
「刹那」

ジンの見えていた世界がぐにゃりと歪む。
腹部が熱く、ひどい痛みが体中を突き抜けた。
そして、何も感じられなくなった。



「ちょっと、ちょっとカロン!?」
望遠鏡を片手にリゼロッテが奥の茂みから現れたのに気づいて、カロンは苦笑して返した。
「まさか、殺してないでしょうね?」
ギッっと睨まれ、カロンは気圧されながら手を見せた。
「爪外してたの」
「ああ。でないとマジでやっちまうしな。途中から外してた」
「それにしても、見てて『死んだわ』って思った場面が何度かあって本気で肝を冷やしたじゃない」
ぐったりと意識を失いカロンにもたれかかるようにしているジンの耳を引っ張りながら、リゼロッテがいたずらっぽく笑う。
「まぁ、坊やもよくやったわ。今日は遅いし、続きは明日にしてあげましょうかね」
「そうだな。あと、傷の手当てもしてやろう」
「随分と甘いのね」
「へっ言ってろ」
カロンはジンを地面に寝かすと傷の応急処置をした。
ジンが目を覚ますまでの見張りをかってでると、リゼロッテが弾を補充すると言って森の中へと消えていっく。



そして太陽が昇りジンは目を覚ました。

起き上がり、腹部に手を当てる。
あの時自分は死んだと思ったが、どうやらまだ生きているらしい。
手加減されたのかと思い出してまた唇を噛む。
「よう。起きたか」
不意にカロンの声が聞こえてジンは銃を手に取ると急いでカロンとの間合いを開けた。
銃を構え、大きく息を吸い込む。
カロンが困ったように頭を掻きながら苦笑したのが見えた。
「今は戦わねぇよ、今はな。休戦だ。休戦」
その言葉に全身の力が抜け、ジンはその場にへなへなと腰掛けた。
向かい合うようにカロンがゆっくりと腰を下ろす。
飲食物を渡されて、それを頬張りながらジンは口を開いた。
「カロンさん、俺……今のままじゃ自分も守れないっすね。もっと訓練して力を付けないと……。カロンさんを倒すどころか傷1つ付けることも出来なかった……」
おそるおそるカロンの方を見る、すると、キョトンとしたような顔でこちらを見ていた。
「あのな、相手を倒すことで自分を守るって言うのも重用だけどな、圧倒的力を前に自己を守るには逃げるのも有りなんだぜ?」
「でも……」
「俺だってそうだ。倒せねぇもんは倒せねぇから逃げたりするんだぜ?」
「……」
「まして、他にもう1人この場にいてみろ。自分すら守れないのに、どうやってそいつを守る?」
「……守れない……っす」
「だろ?」
「けど、カロンさんから逃げることも、できなかった……」
「そりゃぁお前、逃げ方がまずかったよ」
「逃げ方?」
「ああ、逃げるときは相手を良くみねぇと。闇雲に逃げたってだめなんだ」
「……」
「例えばだ。こっち見てろよ?」
カロンが立ち上がるとジン目掛けて右腕を振り下ろした。
ジンがあわてて体をひねりそれを避ける。
「わ、ちょ、びっくりした」
「逃げられただろ? こういうこった」
「な、成程」
「相手を良く見て逃げていれば、その間に反撃するチャンスも出てくる。そうしたら攻撃すればいい。ここで重要なのは無理はしない。攻撃したらまたすぐに逃げる。ヒット&アウェイってやつだな」
「出来るかな……」
「慣れりゃぁできるさ。ガンナーなら距離が取れる分、ヒット&アウェイは俺よりしやすいと思うぜ?」
「……やってみる」
その時だジンの裏の茂みからマイマイ島なら良く見かけるバルルが姿を現した。
そしてさらにその後ろからバルルよりもはるかに大きな影が……。
「かあちゃんだ!」
ジンとカロンが身を翻して距離をとる。
カロンがにやりと笑って手を打った。
「ちょうど良い、ジン、かあちゃんを一人で倒せ」
「え!? む、むちゃっすよ!」
「さっき言ったろ、相手を良く見れば大丈夫だって」
どかっ。
背中をけられてジンはかあちゃんの前に出た。
気付いたかあちゃんがジンに飛び掛る。
「うっわ」
それを寸前でかわし、銃を構えた。
「よく見て、逃げる……」
つぶやきながら狙いを定めるが、かあちゃんがジャンプしようと体を丸め始め、気づいたジンが後ろに飛び退いた。
かあちゃんの両腕が中を切り、そこにジンが放ったテンペストが打ち込まれる。
かあちゃんを囲んでいたばるる達が倒され、残ったかあちゃん目掛けてインパクトショットが食らいつく。
ジンは駆け出した。
後ろからかあちゃんがおってくるが、それを見ながら逃げる。
タイミングを合わせて攻撃する。
それを繰り返していくうちに、かあちゃんをいつの間にか倒していた。


「やれば出来るじゃねぇか。そんな感じでリゼ戦行ってこいや」
母ちゃんを倒し肩で息をしているジンの側にやってきたカロンが言いながら指をさす。
そこにはリゼロッテが満面の笑みを浮かべてたっていた。
「はぁい、おはよう」
「リゼさん……!」
「次は私の番よ」
ジンの目の前でリゼロッテの銃が火花を散らした。





著:詠羅


お互いが銃へ手を掛けたのは、同時だった。
ジンは、反射的にバレットセイバーの筒へ弾丸を装填。
またリゼロッテも、ベルト式の弾倉を持つアサルトライフルを片手に、トリガーを引く。

一発目の催涙グレネードから、距離を取り、浜辺の岩陰へ逃げこんで弾幕を交わした。
連射音が止んだのを境に、ジンは岩陰から飛び出して応射。
隠れていた場所へ投げ込まれた手榴弾が爆発し、浜辺の土ぼこりに紛れて、ジャングルへと逃げ込んだ。
マイマイ島名物、 バオバブの木の影に隠れ、息を殺す。
聞こえてくる微かな物音から、風かモンスターか、人間かを考え、ある一定のリズムを探した。
リゼロッテの歩くリズムだ。
ここ数日で嫌という程きいて、怖くて考えないようにもしたが、逆に身を守るシグナルだと認識。
いっそ利用してやることにした。
微に響く草をふむ音。距離は分からない。
だが、居ることは把握した。

ジンは、意を決っして木陰から飛び出し、バレットセイバーから催涙グレネードを発射。
真っ白な煙がその場を覆い、リゼロッテの視界を奪った。
一瞬みえた銃口の向きから、射線を把握し、逆の方向へ孤を描いて接近。
左からリゼロッテへと突っ込みバレットセイバーを振り上げた。
しかし案の定、ふわりと一歩後退され、銃口が此方をむく、ジンはすかさず左手でサラマンドラを抜いたが、それに気づいたリゼロッテが、腹に蹴りをいれて、ジンを押し戻した。
トリガーが弾けず、ジンは床へ倒され、アサルトライフルの銃口が下ろされる。
それを転がって交わし、起き上がると、再びバレットセイバーを構え、切り込む。
当たらない。

「どんないい武器でも、当たらなければ意味ないわよねぇ」

挑発だ。
今更なんとも思わないが、やはり腹が立つ。

そうおもった瞬間。
手首を掴まれ、勢いのまま一気に投げ飛ばされしまった。
床へ叩きつけられ、衝撃がくる。
銃声もきて、起き上がって岩陰へと逃げ込んだ。

「動きが悪くなってるわよ」

数日の疲労か、ストレスか、ひどく体が熱い。
体もうまく動かず、限界が近いのかだろうか。
投げ込まれた手榴弾に、ジンは再び岩陰から飛び出し、応戦。

敵は目の前にいる。
倒さなければ、自分が殺される。
そう言い聞かせ、ジンは無我夢中にバレットセイバーを振り抜いた。
一瞬。腰からナイフを取り出したリゼロッテが、ジンの振り抜いたバレットセイバーを止める。
ガギンと、耳に響く音を鳴らしたそれは、ナイフの半分以上に食い込み、刃を止めていた。
これにようやく我に帰り、ジンがバレットセイバーを放して後退。催涙で目くらましを行い、後退するかに見えたか、あろう事か、ジンは銃を手放し、リゼロッテへ殴りかかる。

銃口を正面に構えても、射線から外れ様としないジンへ、リゼロッテは踵がえすと、ライフルを捨ててジンを捕まえ、一気に床へ倒した。

「なめるんじゃないわよ!!」

怒鳴ったが、反応がない。
ゆっくりと白い煙が晴れて、踏み付けた相手をみると、汗をかき、顔が真っ赤になっていた。
心なしか、酷くぐったりしていて明らかに様子がおかしい。

「どした!?」

突然動きを止めた二人に、木の上で傍観していたカロンが、心配して降りてくる。

リゼロッテがジンの額へ手を当てると、もっと苦い顔をして銃を担ぎスタスタと森を出て行ってしまった。
カロンが見てみると酷い熱だ。
これはいけないと思い、ロッジへ連れ帰ると、直ぐに寝かせて、医者をよんだ。
ジンの容体をみたカナトは、意識すらないジンをみて何も言えず、ただ傍に寄り添い、医者が到着するのを待った。

二時間ほどたった所で、ようやくアークタイタニア・カーディナルのリフウが到着し、直ぐにジンの様子をみてくれる。

「腕に刺された跡があります。虫を媒介にする病気かもしれません」
「虫ですか……」
「草むらを歩く場合によく感染されるので長袖、長ズボンを履くことを推奨しているのですが……」

「あー……、忘れてたかもしんね」
「それにしても、ジンさんこんなに傷だらけで……一体なにをされていたんですか?」
「え、まぁ……その……」

「リフウ殿。怪我だけでも治癒する事はできませんか?」
「治癒魔法とは、人間の細胞へ働きかけ、活性化させることで傷を治癒するものです。しかし、病気の患者さんに魔法を使った場合。病原菌そのものも活性化させてしまう事があるので、危険なのです」
「そんな事が……?」
「ともかく、薬は持ってきましたので、一日休み、明日、聖堂の庭でアクロポリスまで運びましょう」
「ありがとうございます。トンカへ迎えばいいですか?」
「いえ、ここで大丈夫ですわ」

にっこりと微笑んだリフウにカナトは、複雑な心境になったが、次の日に本当に聖堂の庭が迎えに来てくれて、ジンはすぐに聖堂に入院することになった。

帰ってきた月光花に話を聞くと、かなり危険な病気で、致死率も非常に高く。
稀に障害も残る可能性があるらしい。

「でもまぁ、ジンだし、すぐにケロっとして帰ってくるよ」

そうは言われたが、そんな彼女の表情はどこか浮かない。
入れ違いで様子をみに来てくれたカロンは、少し申し訳なさそうな顔をみせている。

「ちゃんと対策できていなかった、奴にも問題はあります」
「そうだけどよ……なんだかな?」

気をつかってくれているのか、カナト自身、その心遣いがありがたかった。

そして発症から三日ほどたち、ジンがようやく意識を取り戻したと連絡がはいる。
薬が聞いた為かなんとか峠は超えたらしい。
心配ないとも言われた為、カナトが久しぶりにジンへ会いに行った。
うつ伏せで枕に顔を埋めるジンは、点滴をつけて未だぐったりしている。

「体調は?」
「しんどい……」
「そうか」
「なんでいんの……?」
「ゲッカさんが、会いに来いと」
「聖堂には、ジョーカーさんは来るだけならいいの」

病気が苦しいのか。
恥ずかしいのか情けないのか。
ジンは終始めを合わさず結局面会は、殆ど何も話さず終わった。
それから、また一日たち体調も改善してきたのか五日目にはもう帰りたいと言い出したらしい。
駄々もこねたのか、一週間は様子をみるという条件で7日目の夜にようやく帰ってきた。

一週間ぶりのジンは、おもったより元気そうで、布団に顔をうずめながら、

「死ぬかとおもった」

といいだし、カナトは、訓練でしにかけたのか、病気でしに掛けたのか。
よくわからなかった。

久しぶりの自宅で、ジンは安心したのか、ゆっくりと熟睡し、次の日はナビゲーションデバイスの呼び出し音で目を覚ます。
誰かとおもっえばリゼロッテだ。
恐る恐る受話器をとると、

「家の前にいるわ。でなさい」

切ってしまった。
怖い。倒れてしまった自分の情けなさをどう謝るか考える。
ぐるぐると単純な思考回路が迷走していると扉の方から開いて、思わず固まった。
仁王立ちするリゼロッテの右手には小さな花束が握られていて、

「退院おめでとう。ジン君」
「ど、どうも、リゼさーー」

早速腹に一発入れられ、床で悶える。

「何ていうと思った? 逃げられるとおもったら、大間違いよ」
「に、逃げるなら、まだ聖堂、に、篭ってますって……」

ぽいっと投げられた花束の、花びらが散る。
そして今度は、痛みに耐え起き上がるジンを除きこみ、問いた。

「聖堂からなんていわれてんの?」
「一週間は様子みろって……また熱がでるかもしんねーって……」
「ふぅん、まぁいいわ。一週間ね」
「へ?」
「特訓。続きやるわよ」
「え……マジっすか?」
「文句ある?」
「ない、ないっす! 絶対勝つ! 俺!」
「あら、おもったより威勢がよくて嬉しいわ」
「当然ですよ。俺だってあのままじゃあ……」

「ジン、起きたのか?」

後ろから響いた新しい声に、ジンが振り向く。
カナトが起きてきたのだ。

「それじゃ、一週間後ね。今度倒れたら容赦しないわよ」
「わかってるっすよ!」

そういってハイタッチをした2人は、再び約束を交え、マイマイ島に向かうのだった。


END





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イラスト:利他さん
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本編 | 【2013-06-27(Thu) 12:30:00】 | Trackback(-) | Comments:(2)
コメント

ジン君いじめ、たのすぃです(酷
2013-07-04 木 13:20:13 | URL | 結城隆臣 #- [ 編集]
ご褒美ですありがとうございます///
2013-07-05 金 20:30:59 | URL | 詠羅P #- [ 編集]
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