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(C) BROCCOLI/ GungHo Online Entertainment,Inc./ HEADLOCK Inc.

少女の家にあったぬいぐるみに苦労させられた話
出演:ロキさん

ロケ地:アクロポリスの屋敷

あらすじ
休日、月光花はとある屋敷へ訪問治療へ行くよう、聖堂からの依頼をうける。
モンスターが出るといういわくつきの屋敷ときいて、ジンとカナトが付き添いで一緒に向かうが、そこに住んでいたのは、15歳のドミニオンの少女だった。



 



「アップタウンの屋敷? お前がいくのか、ゲッカ」
「うん。聖堂のね。訪問治療なんだけど、お屋敷の執事さんが怪我しちゃったみたいで……」

休日。
三人で過ごす日は久しぶりだった。
キッチンには、なにやら忙しなく動くアークタイタニア・ジョーカーのカナトがいて、机には、銃の洗浄をするエミル・ガンナーのジンがいる。
月光花は、そんなジンの向かいに座り、筒の炭をとるジンの作業を見つめていた。

「執事なら、自分で来させればいいじゃねーか」
「それがさぁ、忙しくて家を空けれられないみたいでね、手空いてるなら行ってやってくれって……」
「なんでゲッカなんだよ。貴族なら、もっと優秀な奴にたのむだろ? 普通」
「聞き捨てならないけど、いいわ……。それが、一回や二回じゃない上、毎回呼び出す理由が、お湯で火傷したとか、包丁でちょっと指きったとか。そういう小さな怪我ばっかりみたいでさぁ……流石に聖堂側も、人材不足で、面倒みきれなくなっちゃったみたい」
「……めんどくせぇ」
「ヴィネ先輩も今日はいないし……」
「……って事は、お前、一人なのか?」
「うん、だから二人に着いてきて欲しくて」

「屋敷にですか?」

ジンとの会話にカナトが割り込んできた。
彼がトレイに載せて持ってきたのは、白いゼリー状のムースだ。
ジンがそれをみて、銃の部品をすべて退ける。

カナトの顔をみると、飛び散ったムースが頬に少し着いていた。

「うん。流石に一人は怖いからさ。それになんかモンスターも見たってみんな言うし……」
「家にモンスターってなんだよ……」
「しらないわよ。でも、見たって……」

「ゲッカさん。もしやそれは、黒の聖堂の付近のあの……」
「そうそう、流石カナト君」

「知ってんの?」

カナトのつくったムースは、甘くて美味しい。
未だ頬を汚すカナトは、自身もムースを口にしながら話す。

「時々あの屋敷から、大量のぬいぐるみや、マリオネットが溢れ出てくるとよく言われている。今や日常的に突然起こるため、付近の住人は気にしないようだが……」
「そ、それってどうなんだ……?」

「そうそう、マリオネット自身は無害だし、すぐ消えちゃうからね。そんな屋敷だからさー」

目配せをする月光花だが、ジンはムースに夢中で気づいていない。
カナトはそんなジンをジト目で睨むと、ため息をついて変わりに述べた。

「そんな屋敷に、ゲッカさんをお一人とは、流石に気が引けます。同行しましょう」
「ありがとう! カナト君」

「お前もくんの?」
「きいていたのか」
「なにが?」

口の周りを汚すジンに、行かないと言う選択肢はなかったらしい。
安心した月光花の表情に、カナトは安堵した。

その日の夕方。
三人は揃って黒の聖堂付近にある屋敷へ向かう。
赤い屋根の屋敷は、周りの民家より高さが一つ飛び抜けており、小貴族の自宅を思わせる。
慣れない訪問に、門を前にした月光花は、入口の呼び鈴の前で固まってまった。

「早く鳴らせよ」
「う、うるさいわね! 急かさないでよ!」

「緊張されず、初めは使いの者が出てきます。あまりは張り詰めなくとも、平気ですよ」
「カナト君。流石、ありがとう……」

「ベル鳴らすだけじゃねぇか……」
「だってはじめーー」

月光花が叫んだ時。
突然、屋敷の窓がすべて光った。
思わず言葉を失い、三人が固まっていると、屋敷の扉が開き、大量のタイニーが、「おめでタイニー!」とか、「まタイニー!!」とか「おなかいタイニー」としゃべり向かってくる。
門に阻まれるとは思ったが、まるで自動ドアのように門は開いて、脇に逃げ遅れたジンが、大量のタイニーにひかれた。
さんざん踏みつけられ、新調したばかりのファージャケットが泥だらけになる。

「ジン、大丈夫?」

怪我のダメージはないが、精神的ダメージのがひどかった。
開いた門は、タイニーを大方吐き出したあと、また自動的に閉じようとするので、三人はその中へと滑りこむ。
すると今度は、ひらいたままの屋敷の扉から、数匹のダンプティが現れ、三人に魔法、ぽけぽけを唱え始めた。

「ちょ!? やめーー」

「侵入者はいたずらするぞ!」
「いたずらしてやるぞ」

月光花がキュアを使って治癒してくれるが、沈黙状態にされるわ足元は凍らされるわで、三人は何もできない。

「おやおや、セキュリティが働いてしまったようですね……」

新しい声に、三人がはっとした。
ボソボソとなにか呟いた青髪のタイタニアは、三人に絡んでいたダンプティーを呼び戻すと、キャンディーを与えて帰らせる。
月光花はそれをみて、ゆっくりと立ち上がるとスカートの埃を払う。

「あの、この屋敷の人でしょうか……」
「えぇ、ようこそ。お待ちしておりました。お約束の方々ですね」
「はい、あの、月光花です」

ゆっくりと地におりたち、礼をしたタイタニアは、片眼鏡を付けて微笑む。
腰にレイピアのケースを携えているのは、フェンサーか。

「始めまして、この屋敷のハウススチュワート、兼、バトラーのタイタニア・フェンサーのヨルムンガンドです。ヨルとお呼び下さい」

現れた執事の微笑みに、三人は何も言えなくなってしまった。



「あのダンプティ達には、この屋敷の敷地内へ侵入した人間を足止めするよう、お願いしております」
「あー……、だから向かってきたんすね」

「ではヨル殿。あのタイニー達は一体……」
「あれはお嬢様が練習に呼び出されるものです。マリオネットであるため、すぐに消えてしまいますが……」

落ち着いた物腰のヨルムンガンドは、三人を屋敷へ招き入れてくれて、一連の出来事を説明してくれる。
なんでも召喚魔法の研究へ没頭する一人娘が、両親が留守である今を狙って、様々な魔法を試しているらしい。
タイニーやダンプティは、その過程で呼び出されたという。

「あの、怪我を治して欲しい執事さんって、貴方ですか?」
「えぇ、私です。この度は、ご足労をお掛けしました」
「いえ、あの、怪我は?」
「治癒の前に、お嬢様へお通しするよう、仰せつかっております。それまでは……」
「は、はぁ……そう、なんですか」

月光花は意味が分からず困惑する。
相変わらず、貴族の考えることはよくわからない。
長い廊下を抜け、突き当たりの部屋に付いた三人は、ヨルムンガンドの後ろで扉が開くのを待った。
彼は、扉のノッカーで数回音を鳴らすと「失礼します」と、一言述べて、扉を開く。

広い部屋だった。
カナトの家のリビングぐらい有るだろう。
中央奥には天井付きのベッドがあり、床には巨大な召喚の魔方陣。
部屋の四隅には、タイニーやダンプティの色違いのぬいぐるみで敷き詰められていた。

そんな奥のベッドに座る一人の少女は、髪を両側にアップにして後ろ髪をながしている。
膝の上に大きなボロボロの本を持つ彼女は、左目に眼帯をつけてており、ジンはそんな彼女をみて、息を止めた。
そして思わず、扉の影に隠れる。

「ヨル……。また、失敗したわ」
「それは残念ですね……ロキ様」
「貴方が怪我したからよ……」

しゅんとする少女に、月光花とカナトが息を飲む。
少女にも関わらず、彼女から感じる威圧は表現し難いものがあった。

「聖堂の方がお見えになられました」
「聖堂から?」
「こ、こんにちは、エミル・バードの月光花です……!」

名乗った月光花にロキと呼ばれた少女がベッドを飛び降りる。
まじましと月光花をみるロキはぷいっと背中をむけた。

「かわいい。あの、私イクスドミニオン・ソウルテイカーのロキ……よろしく」
「 え、あの、よろしくお願いします」
「そっちのカラスは?」

カナトが自分の事だと把握し、礼をする、慣れたものだ。

「タイタニア・ジョーカーのカナトです。付き添いで参りました」
「怒らないんだ? アークタイタニアなのに、タイタニアだなんて、変なの」
「……」

「そっちの暑苦しいのは?見えてるわよ」

ジンがゆっくりと出てくる。
ロキはそんな彼をみて、眉間にシワを寄せ睨みつけた。

「お知り合いですか? ロキ様」
「時々演習で見かけてた顔ね。ザコよ」
「な"……だ、誰がザーー」

カナトが黙らせた。
確かに、勝った記憶はないが、あんまりだ。
何か言いたそうなジンをにらみ。ロキは、ヨルムンガンドを近くに呼び寄せる。

「月光花……さん。こっちきて……」
「あ、はい」

ロキはヨルムンガンドの右手を取り、そっと執事服の裾を捲る。
すると、分厚い包帯の下から、なにか鋭利なもので引っかかれた傷が手首から関節へ伸びていた。

「大変……!」
「前にメイオウを見に行ったの。そしたら庇ってくれて……」

「ロキ様の為でしたらこの身など、惜しくはありません」
「いやよ。ヨル、貴方は私の物。傷つくのは許さない」
「勿体無いお言葉です。主様……」

「とにかく、治しますね」

月光花がヒーリングを唱え、ヨルムンガンドの怪我を治して行く。
治癒をしている間も、ロキはヨルムンガンドの手を握り、それを放す事はなかった。

「……終わりました」
「ありがとうございます。痛みが消えました」
「でも、治したばかりの部分はまだ弱いので、お大事にしてください」
「ありがとう、月光花さん」

「ううん。治ってよかった。あ、名前は長いからゲッカでいいですよ」
「ゲッカちゃん……」
「うん、ロキちゃん。よろしく」
「あの、よかったら、晩御飯たべてかえって……ヨルの料理は最高だから」
「いいの? ありがとう……!」
「カラスとザコにもたべさせてあげるから、感謝しなさい」

「ザコじゃねぇよ! ジンだ、ジン!」
「聞いてないわ」

不毛な会話を繰り広げる二人にカナトはため息をつく。
夕食を作ってくるといって、部屋から去るヨルムンガンドを、カナトは手伝うと言って追った。

「助かります」
「いえ、お気になさらず、それよりヨル殿」
「なんでしょうか……?」
「この屋敷には、今、私とジン、月光花さんと貴方方二名を含めた5人、なのでしょうか?」
「えぇ、私を数に加えられるのでしたら、そうなりますが……何か不審なことでも?」
「……5人のはずが、人として感じる気配が四つしかなくーー」
「なるほど、貴方は人の気配に敏感なのですね」
「? どういう……」

カナトが警戒する。
会った時から、自分の勘が知らせていた。
これは 人 ではないと、

「そう警戒されずとも、私は争う気はございません。今は唯の執事です」
「何者ですか?」
「ヨルムンガンドとは、主より賜りし名前。真の名、守護魔・ロウゲツと申します」
「守護魔?」
「季節の移ろい、ささやかな願い、儚い期待、不安、幼い欲望……。それらの形のない希望や想いに“想いの力”が寄り添って形を与えたもの……それが、守護魔と呼ばれるものです」
「想い? ロキ殿の力ですか?」
「えぇ、本質は、守護魔・ロウゲツではありますが、私自身は、片割れに過ぎません。かつて破壊魔として世界を破壊し尽くした存在であり、お嬢様の召喚魔法に呼び出されました」
「……」
「世界を壊す事でしか、自己の存在理由を確立できなかった私は、お嬢様に救われ、こうしてお側におります」

人間ではないと言う事は理解した。
モンスターの類いかと疑いはしたが、敵意は感じられず、カナトは執事が背中を見せたのをきっかけに、警戒をとく。
存在が曖昧ではあるが目の前にいることには変わりない。
カナトは、ヨルムンガンドを言葉通りに理解することにした。

そうして、キッチンへ連れてこられカナトは、青いチェックエプロンを渡され、思わず戸惑う。

「所で、本日の夕食は何がよろしいですか?」

ヨルムンガンドの微笑にカナトの表情がおどけた。



ロキの部屋で、ジンは一人タイニーに埋れていた。
埋れたと言う表現が正しいのかは、わからないが、ロキの部屋にあった大量のぬいぐるみ、パイレーツタイニー達が突然ジンへ襲いかかって来て、捕まった。
最初、ポケポケで混乱させられたまでは覚えているが、気がつけば部屋の隅にいて、後ろでがっちり縛られている。

「なんだこれ!?」
「ほりょだぞ!」
「にがさないぞ!」

「私の部屋には女の子しかはいっちゃいけないって決めてるの。ザコはそこで十分」
「ザコじゃねぇってっつってんだろ!」

「うるさいぞ!」
「水入りの刑だぞ!」

パイレーツタイニーが、冷蔵庫から何かを持ってくる。
するともう一匹のタイニーが、ジンの頭へ飛び乗って首を下げさせると、うなじの服の隙間へ、氷水を流し込んだ。

「つめてぇぇええ!!」
「うるさいぞ」
「だまるんだぞ」

床に倒されて悶絶する。
何をしに来たのかわからない。月光花も笑ってないで助けろと思う。

部屋の隅で、パイレーツタイニー達のくすぐりの刑とか、洗濯バサミぱっちんの刑とか、油性マジックらくがきの刑とか、散々遊ばれているジンを尻目に、月光花はロキのベッド付近に置かれている、大量の本へと視線を向ける。

「勉強、好きなんだね」
「召喚術が、好きなの。でも、まだ不完全で……」
「不完全?」
「フェンリルが、呼べなくて……」

浮かない表情を見せるロキに、月光花はそっと彼女へよりそう。
寂しそうな面持ちは一体なんだろう。

「契約はできているの。でも、フェンリルは私に応えてくれない。なんでだろうって……」
「応える?」
「呼ぶ時は、心を通じてフェンリルに呼び掛けるの、助けて、力を貸して、とか」
「……!」
「だけど、フェンリルはそれに応えてくれない……来てくれないの」

「なんだよ! 使えなかったのかよ、どーりで……ってつめてぇええぇえ!!」
「だまるんだぞ」
「もう一度、洗濯バサミの刑だぞ」

ロキはそんなジンをみて、楽しそうだ。
しかし、それでも彼女自身フェンリルを呼べないことがコンプレックスらしい。

「他の死神達はみんな呼べるの……何故かフェンリルだけで、私演習で、みんなの役に立ちたいのに……」
「ロキちゃん……、あの、フェンリルって喚びたすときに、必要な事とかあるの?」
「確固たる意思と、強い心……。フェンリルは、喚びたした召喚師に対して自身を必要だと感じた時に、出て来てくれるの。でも……」
「まだ一回も、出て来てくれてないんだ……?」
「うん」

少し考えたが、月光花に検討もつかない。
しかし、先輩から少し聞いたことはあった。ウァテス系の魔法とウォロク系の魔法は、効果として真逆ではあるが、本質は似ていると。

「ロキちゃん。よかったら、見せてもらえないかな? どんな魔法なのか、見たい」

月光花のリクエストに、ロキは少し戸惑いはしたが、しぶしぶ本を広げる。
魔法陣を遮ってしまったぬいぐるみをどかし、ボロボロの本を開いた。
掠れた文字列が並ぶその本を、ロキがゆっくりと読み上げていく。部屋の中心へ描かれた魔法陣が淡い光を放ち、生温かい魔力が三人の肌へ触れた。

「我、終わらせるものの名前をもちしもの、ロキの名においてその姿を現せ……。我が息子の月を喰らいし狼――」

「フェンリル!!」

高い声と共に、魔法陣が一層強い光を放つ。
黒い煙が吹き出し、一瞬で終息したかと思うと、煙は一点に集って、小さな黒い狼へ姿を変えた。
黒狼だ。

「……また、失敗した」

先ほど聞いた第一声を月光花は再び聞いた。
現れた黒狼をロキは、おいでおいでと促すと胸に抱き上げる。

「魔力は足りているはずなのそれなのに……」

黒狼を優しく撫でるロキは、くぅんと寂しそうな声を上げる黒狼を抱きしめ床に座り込んでしまう。
月光花はそんな彼女の横に座ると、突然ロキの方からぐぅという空腹を訴える音が響き、彼女は黒狼へ顔をうずめてしまった。

「お腹すいたなら失敗しても仕方ないよ。晩御飯食べてから練習してみよう! 少しなら手助けできるからさ!」
「ゲッカちゃん……ありがとう」

えへへ、と笑う月光花をみて、ロキも安心したようだった。
ふと後ろを見ると、完全にダウンしているジンがいて、さすがにこれ以上はと思い、解放してやった。
顔に散々落書きされたジンは、完全に戦意を喪失している。

「もう、馬鹿ね本当」
「ごめんなさいごめんなさい」

布で顔をふいてやるが、油性ペンなのでとれない。
これはカナトにとってもらった方がよさそうか。

「そういえば、ヨルはどこ?」
「晩御飯をつくりにいくっていってたけど」

ロキはすこし表情をいがめると、黒狼を抱いたまま部屋をでていった。
ジンと月光花もすぐさま立ち上がり、彼女の後を追う。
連れてこられたのはキッチンだった。

ロキの部屋の半分ぐらいにもなるそのキッチンは、厨房かと思えるほど広く。
中央のシンクの上でカナトがぼろぼろと涙を流している。

「カナト君! どうしたの!?」
「ゲッカさ……ぶっ」

「こっちみんなばやろぉおお!!」

思わず目をそらしたカナトは、人の顔の落書きに思わず吹き出す。
泣いていたのは、手元の玉ねぎを切っていたのか。

「す、ずみません……。ヨル殿に、野菜を切っておくよう頼まれて……」

未だ染みるのか目が赤い。
服の裾でなみだを拭うしぐさは、本当に泣いているようにも見える。

「ヨルがいない」
「ヨル殿は――」

カナトの言葉を聞く前に、ロキはキッチンを出て行き、大声でヨルムンガルドを探した。
屋敷の部屋という部屋を探し回り、月光花がそれを必死で追いかける。

「ヨル! どこ、どこなの!」
「ロキちゃん! まって!」
「ヨルムンガンドぉー!」

長い廊下を小さな体が走り続ける。
しかし、長いじゅうたんのしわに躓き、彼女は大きく前へバランスを崩す。
転んでしまうかに思えたが、追ってきたジンが滑り込み、なんとか怪我はまぬがれた。

「あんま走るなよ。挫くぜ?」

ロキがむっと顔をしかめる。
そんな馬鹿みたいに落書きされた顔でいわれても、説得力なんてなかった。
ロキは少しあばれ、ジンからすぐに立ち上がると、自分の部屋へと飛び込む。
すると彼女は、ベッドに座り声をあげて泣き出してしまった。

「一人にしないって約束したじゃない。ヨルぅぁあぁぁあ」
「ロキちゃん……」

無残にも響く声に、月光花は一人立ち尽くしていた。
一人になる辛さを、月光花は何より知っていて、取り残される気持ちが何よりも理解できてしまう。
月光花は、座り込んでしまったロキに再び寄り添い。
意を決して述べた。

「フェンリルに、頼んでみようよ」
「え……」
「フェンリルなら、きっとヨルさん、見つけられるんじゃないかな?」
「無理よ。私にはフェンリルは……」
「強い心をもつ人に、フェンリルはきてくれるんでしょう? ロキちゃんが強い心を持ってるなら、絶対に来てくれる、だから……」

ロキはぐっと歯を食いしばり、顔を押さえる。
押しが足りないのか、声を押し殺して再び泣き出してしまった。
すると、入口の方から、追いついてきたジンがはいってくる。
ジンはむっとこちらをにらみ、入り口前で扉に持たれて名乗った。

「なんだよ。演習の魔女。ロキもその程度かよ」
「ジン!!」
「俺だって、こう見えても治安維持部隊5thランカーなんだ。そんな俺をザコっていうぐらいなら、そのぐらいやってみせろよ」

この言葉に、月光花はなぐってやろうとおもったが、ロキが突然立ち上がり、言葉を止めた。
古い本を握りしめ、ぐっと歯を食いしばる彼女は右手でごしごしと涙をぬぐうと、目の前のジンをにらみつける。

「ダサすぎるあんたにいわれたくないわ!!!」

押し出した声で叫んだ言葉、古い本を開き、ロキは床へそれをたたきつけた。

「我、終わらせるものの名前をもちしもの」

淡い闇の光が部屋を覆い尽くす。
先ほどとは打って変わり、邪悪な魔力を彷彿とさせる光は、彼女の全身を照らし出し、闇の力にそれを染める。

「ロキの名においてその姿を現せ……。我が息子の月を喰らいし狼――」

「フェンリル!!」

ゴォっと部屋の家具の何もかもが吹っ飛んだ。
ぬいぐるみは巻き上がり、写真立てや本、参考書、服などが巻き上がる。
まっくろな煙が形をなし、さらに紫の光が爆発したかと思うと、淡い色の毛をもった巨大な、獣が咆哮をあげた。

フェンリルだ。

「来てくれた……」

キラキラと輝く紫の体毛は、まるで虹のように美しい。
呆然と見上げるロキへ、フェンリルはひざまずくと、こちらの指示をまつようにじっと見てきた。

「すごい!! ロキちゃん!」

月光花の声に、はっとした。
驚きすぎて固まってしまっていたのだ。

「ヨルさん。探しにいこ!」
「……うん! ゲッカちゃん。一緒にいこう!」

ロキに促され、月光花はフェンリルの背中へと載せてもらった。
フェンリルは主人が乗ったことを確認すると、大きく遠吠えをあげて、脇の窓を突き破り、屋敷の外へとでていく。
まるで空を飛んでいるような、風圧に、二人は何度も飛ばされそうになったが、徐々にそれにも慣れてきて周りの景色が見えるようになる。

二人ともフェンリルがどこに向かっているかは分からなかったが、連れてこられたのは、町の繁華街だった。
食材がたくさん売っている場所、月光花もよく来る場所だ。
そんな人通りの多い街並みを、フェンリルは風のように滑空し、とある野菜売り店の前にそっと足をおろす。

するとその入り口には、買い物を終えたばかりなのか。
ヨルムンガンドが買い物袋を手に出てきたところだった。

「ヨル!!」

フェンリルから飛び降り、ロキは夢中でヨルムンガンドへと抱き着いた。
彼は、泣いているロキを慰めると、後ろにいる月光花にも微笑を見せた。

「お迎えありがとうございます。ロキ様」
「ヨル、フェンリルがね。来てくれたの! 成功した!」
「はい。この目でしかと、素晴らしい……おめでとうございます」
「ゲッカちゃんのおかげよ。助けてくれたの」

「あの、私は何も……」
「我が主の成長の手助けを、誠にありがとうござます。貴方にはいくら感謝してもしきれないでしょう」

思わず言葉が返せず真っ赤になってしまった。
何かをした気もしないが、それが彼にとっては大きなことだったのか。

「何処に行ってたの……? びっくりしたじゃない」
「申し訳ございません。夕食の材料がたりなかったもので、買い物に出ておりました。丁度帰宅しようとした所でございます」

ただの買い物だったのか。
そういえば、カナトが何か言いかけていた気がする。
何も言えず固まっていると、ロキは月光花の手をひいて再びフェンリルへ飛び乗った。
今度はヨルムンガルドも翼を使い、三人で屋敷へと戻る。

夕食はブリ大根だった。

その後、ジンはヨルムンガンドに化粧水を借りて、パイレーツタイニーの落書きを落としてもらった。
ロキは月光花ともう少し一緒に居たかったらしいが、また遊びに来るといって別れ帰路へつく。

「ぁー、ひどい目にあった……」
「ずっと遊んでただけじゃない」
「うっせーよ。不可抗力だよ。というかブリ大根とかタイミングわりー……家でさんざんくってんのに」

カナトに脛を蹴られた。
痛い。
まずくはなかった。むしろおいしかったのだが。

「食わせてもらえるだけ、ありがたいと想え」
「す、すんません」

「えへへ。二人とも、今日はきてくれてありがとね」

ニコニコと後ろからついてくる月光花に、ふたりはきょとんとする。
そういえば、三人で動いたのは久しぶりだった。

「おう、また言っていいぜ。俺様が全力で護衛してやるしな」
「貴様がいっても説得力がない」
「は? お前にいわれたくねーよ!」

「あははは」

笑うな!というジンの声と共に、三人は今日も帰宅する。



END



*GEST
jk_loki_130521.jpg

イクスドミニオン・ソウルテイカーのロキ

年齢:15歳
身長:158cm
体重:42kg

性格:生い立ち
猫かぶり+毒舌家。女の子とショタが好きでそれにだけ猫かぶりでかわいらしい口調に、男の人をみると毒舌になる。ちなみに研究家で魔法の研究に熱心。
『この世に使えない魔法はない!』などといって他人の評価を無視して必死に研究している。
その研究力は、リング“アクロニア防衛軍”評価されて演習に出始める。
リングの人々に勝手に憑依して遊びながらお金を稼いでいる。
ちなみに演習を始める前はボス狩りにて金銭をためていたとかなんとか、
家事などはまったく出来ずその生活ぶりからヨルムンガンド(守護魔・ロウゲツ)に頼り快適な毎日を送っている。



Chara:みゃうみゃうさん
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本編 | 【2013-06-13(Thu) 12:30:00】 | Trackback(-) | Comments:(0)
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