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(C) BROCCOLI/ GungHo Online Entertainment,Inc./ HEADLOCK Inc.

マナーについての話をしながら決闘をする話
出演:カホさん、カロンさん

ロケ地:ギルド元宮

あらすじ
週に一度の武器のメンテナンスに訪れたジンは、とある人物との接触を避ける為、いつもとは違う時間に元宮へと訪れる。
しかし、たまたま歩いてきた女性とぶつかり……。



 


こっそりと足を忍ばせ、エミル・ガンナーのジンはギルド元宮へと現れた。
いつもならエレベーターを使って登るが、今日は非常階段をつかい、忍足で武器修理のカウンターへ向かう。
ジンが隠れているのは、ここ最近、元宮に訪れると必ず会う人間がいるからだ。
毎週、同じ曜日の同じ時間。覚えたのか次の週は待ちぶせをしていた。
これはいけないと思い、今日は一日ずらして、さらに二時間ほど経ってからやってきたのだが……。
慎重に、物陰からエレベーター付近を覗く。
昨日いた場所には誰もいなくて、ジンはほっと一息。
居ないうちに走り抜けようと、物陰顔を出すと、ジンは奥に気を取られ、反対側から歩いてくる人影に気づかなかった。
突然飛び出してきたジンに、相手は「きゃっ」と声を上げてぶつかると持っていた本をぶちまけてしまう。

「す、すいません!! 大丈夫っすか!?」

ピンクの髪にフォースマスターの職服を纏う彼女は、「いったぁ……」と苦しそうに口にすると、目の前のジンへと目を合わせる。

「立てます?」
「あぁ、ごめんなさい。ちょっとびっくりして……」

ちらばったノートや書類を何とか掻き集める。
同い年ぐらいだろうか。艶めく長髪はキラキラと光を反射し、横から覗く首もとが美しい。
これは何かの運命かもしれない。

「あの、部隊の人っすか?」
「へ、ぇえ、そうですけど……」
「俺、エミル・ガンナーのジンっていいます。あの……お詫びといっちゃあ、アレですけど、よかったら後で昼飯食いに行かないっすか? おごるっすよ!」
「ジン……? まさか、ランカーの? でも、ランカーのジンさんは、ホークアイだったような……」
「あ、俺っすよ! ホークアイだと、弓系の人に混合されちまうんで、あえてガンナーっていってるんす」
「なるほど、貴方が……噂は聞いて居ます」
「噂?」
「加害者を何度も捕らえては、過度に暴行を加え、挙句無抵抗な方に対しても容赦がないと……」
「は?」
「冒険者を守るべき立場である私達が、冒険者を傷つけてどうするんですか!! ランカーとして選抜されたのなら、それなりの意識は持っているべきです!」

突然声を張り上げた彼女に、ジンは目をまん丸にする。
なにを言われているのか。

「あ、申し遅れました。私は、エミル・フォースマスターのカホ。ウィザード部隊の最高責任者を務めさせて頂いております」
「さ、さいこ……まじっすか!?」
「私達最高責任者は、基本スキルからエキスパート、テクニカルを混合した、クロニクルジョブを極めし者。その中でも、教官である私は物事に対するTPOまでも教育すべきであると考えています」

ジンが目を点にしている。
わかるのは、面倒な知り合いよりも、もっと面倒な人に絡まれてしまったと言う事だ。

「貴方は、ランカーとして本部の義務から外れる存在です。ですが、ランカーと言う制度は、部隊の立場上で手の届かない問題を、自由の権限を用いて解決する為に設けられたもの。それを貴方は、自己の休暇か何かと勘違いされているのではないですか?」
「あ、あの俺……この後用事が……」
「逃げるんですか? 人の話は最後まで、また我々最高責任者へは敬意を示すべきであると教わらなかったのですか?」
「お、おれ、アーチャー系なんすけど……?」
「それでも、敬意を払えない時点で、貴方のいい加減さは目に見えて居ます、情けない。……決めました。私が貴方を一から叩き直しましょう」
「は?」
「ランカーとして、あるべき態度を、部隊員としての心構えを、私が教え直してあげると言っているのです!!」
「べ、別にそこまで……」
「このままでは、貴方に関わる冒険者の方々が、あまりにもかわいそう。もし冤罪で巻き込んでしまったらどうする気ですか?」
「お、おれ、何かされない限りは――」
「そんな浅はかな考えで許されると思ったら大間違いです。……いいですか。詳しい話は午後。昼食を食べた後、ウィザード部隊のフロアに来なさい。そこで私が、部隊員の心構えの講義を行いますので、必ず出席すること」
「昼にはかえんねぇと――」
「ランカーだから来ないんですか? それとも、個人的な感情がおありですか?」
「……いきます」
「いいでしょう。お待ちしております。筆記用具は忘れず、毎週同じ時間に12限あります」
「さ、三ヶ月も!?」
「授業なので当然です。今日は私服でも構いませんが、次回からは職服できなさい。最終の12限目には、筆記テストがありますのでそのつもりで」
「……」
「ではまた、後ほど」

髪をふわりと梳かし、エミル・フォースマスターのカホは、ようやく帰って行った。

ジンは呆然とその場に立ち、一分ほど固まっていた。





「ぶぁははははっ、厄介なのに声掛けたなぁ! ジン!」
「笑い事じゃないっすよ。もうどうしようってか……」

武器修理カウンターへ武器を預け、ジンはギルド元宮のラウンジにて昼食をとる。
そこで昼寝をしていたカロンと座りカツ丼をかき込んでいた。

「カホちゃんっていやぁ、去年あたりから最高責任者になって、指導も任されてる鬼教官として結構有名だぜ? みてわかんなかったか?」
「知らないっすよ。俺去年からこっちいなかったし」
「あー、そういやぁそうだったなぁ。でもまいい機会だろ。美人教官にしごかれるの。悪くないんじゃね?」
「そんな趣味ないっすよ」
「いかなきゃもっと怖いらしいぜ?」
「う……」
「ま、がんばれ。ジン」


カロンにそう言われ、ジンは、簡単な筆記用具を買って講義に参加。
一人だけ私服で現れたジンを、新人隊員達は白い目でみたが、ジン自身、懐かしさを感じるだけで、気にもとめなかった.。
しかし、カホには睨まれ、ことあるごと当てられて散々だったが、終わった後にも、更に教本も渡され、説教も始まり、ようやく解放された頃には、既に日もとっぷり暮れて、元宮前にはカナトが迎えに来ていた。

「遅い」
「すんません」

二人で帰宅したが、夕食が珍しく味が悪くて相当機嫌が悪い事がわかる。
口も聞いてくれず、カナトはすぐに寝てしまった。

次の日には、元にもどっていたカナトの機嫌だか、翌週。
ジンは久しぶりに、ホークアイの職服を身にまとう。
もう着ないとおもっていた分、何処か新鮮な気持ちになり、不思議と気分が引き締まるのを感じた。

新人隊員達にまぎれ、今日も講義を受けたジンは、その日も夜まで付き合わされるかとおもったが、ちゃんときていると感心されて、夕方には帰してもらえた。
だが、職服で帰宅してきたジンを見たカナトは、まじまじとそれをみると眉間にシワを寄せる。

「わ、悪かったって、教官によびだされてんだよ……」
「何故行く必要がある?」
「……なんか、行かないとダメなきがすんだ……」
「何故だ? 話せ」
「俺、手加減できねーからさ。意識たりてねーとか、気遣いがないとか、色々言われちまって、この授業受けたら、なんか変わんのかなぁって」
「……貴様が、やり過ぎるのは、他ならぬ貴様自身が、そうしなければならないとおもったからではないのか?」
「へ?」
「加減していれば、いつかそれに甘んじる敵も現れる。弱みとして握られ、引き金を渋るのであれば、最初から牽制すべきだとは思うが……」

顔を上げた。
確かに手加減をすると分かっていれば、敵はそれを逆手に取るだろう。
人質を取る敵へ手加減をすると言うことは、他ならぬ敵自身も人質の範囲へ加え、守ろうとしているに他ならない。

カナトは首を傾げ、ジンが何故悩んでいるのか理解出来ていないようにも見える。
頭のいい相方は、自分の行動に勝手な理由付けを行ない、自己完結させていたのか。
今まで気にしたこともなく、ただ衝動のままに動いていたのが恥ずかしい。

「あ、あんま考えてなかった……」
「馬鹿が……」

しかし、ジンの場合。無害な敵にすらも、銃口を向けてしまう事がよくある。

「言えばやめるだろう?」

はっとした。

やめれる。
それはカナトが、一番知っている。
やり過ぎる一歩手前、殺人をしようとした自分を、カナトは止めてくれた。

「……やめれる」
「なら、なんの問題があるんだ?」

少し、考えた。
確かに通う必要などない。
再び思い直してみると、彼女の顔が頭によぎり、

「教官が、かわいいから?」

お玉を投げつけられ、ジンの額に直撃。パコんといい音が響いた。
結局その次もその翌週も、銃の点検のついでに通い、ジンはウトウトしながらも黒板を見て板書を続ける。

しかし、握っていたペンが、ぱたりと倒れたとき、カホの鋭い声が耳に滑りこんできた。

「もし、加害者と思われる冒険者さんに遭遇した場合、私達はまず名前と職業を聞き、本人確認をします。そして本人であった場合は任意同行を求める。次に……」

後ろのジンがひらひらと手をあげる。カホは指し棒でジンを指すと高い声で応答してくれた。

「ジンくん、何でしょうか?」
「任意っすけど、拒否されたらどうするんすか?」
「その場合は、素直に引き下がって下さい」
「へぇー」
「捕縛が必要になった場合は、指示が降ります。くれぐれも軽率な行動はとらないよう……」

訓練兵時代は質問すら面倒で、聞き流していた事だが、今初めて納得。
カナトに、教えてやろうと思った。
小さくメモをとり、同時に終業のタイマーが鳴る。
カホは残念そうな表情を見せると、教本をしまい出す生徒へ述べた。

「来週の六限目は効果測定の筆記試験を行ないます。ここで一定の点数を取れなかった場合。再試験となりますので、復習は忘れず……ジンさん。貴方もですよ」
「俺も!?」
「当然です。そうですね。貴方の結果はスイレン最高責任者へも報告しますのであしからず、では、お疲れ様です」

知らないうちに、かなりの大事になっている気がする。
自宅にもどり、教本とにらめっこを始めたジンは、らしくもなくおとなしい。
カナトからみれば本を読むことすら珍しいのに、真面目に読んでいるのが不思議だ。

「来週テストなんだよ」
「ほう、偉く楽しそうだな」
「楽しくねぇけど、聞いてるとなんか納得するっつーか?」
「……熱心な教官なんだな」
「熱心?」
「普通は、そこまで本気で教えたいと思わないだろう……貴様自身、ちゃんと向き合っているのを見ると、ほっとけないのではないか?」
「……」

流石に鋭かった。
カホは可愛くて美人で、確かに見ていて飽きないが、ジンの当たり前の質問に答え、難しい言葉を分かりやすく何度も伝えてくれる、そんな彼女がどうしてもほっておけず、最後まで付き合いたいと言う気持ちで通っていた。
カナトは呆れてしまい。ふわふわと自室にもどってしまう。
あまりふらふらしていてもいけないか。

朝の退屈な時間や、夜の空いた時間に筆記用具を広げ、この一週間を、ジンは真面目に勉強をして過ごした。
訓練兵時代は、前日に丸暗記で通った記憶があるが、今は時間がある。
自分のペースで復習をして、万全の状態でテストに臨んだ。

そしてテストから三日後。ジンはスイレンから連絡を受け、元宮へと呼び出される。
何事だろうと思い、午前中に元宮へと向かうと、スイレン最高責任者と共に、長髪の彼女の姿があった。

「ご機嫌よう。ジンさん」
「げ、か、カホさ……」
「なんですか? 私がいてはいけません?」

「うふふ、話は聴いてるわよ。ジン君。講義受けてたのね」
「スイレンさん……えっとまぁ、そうっすね」

ぷいっとそっぽを向いてしまうカホに、ジンは嫌な予感を感じる。
再試験だろうかと背筋がぞわぞわするのを感じた。

「でも、カホちゃんも、ジン君の事を知らなかったし、お互い様ね」
「はい? なんの話っすか?」
「カホちゃんは去年、最高責任者に配属されたばかりで、貴方の成績を知らなかったの。唯、生徒のみんなから噂だけを聞いていたみたい」
「え、それは……つまり」

「貴方を見くびっていました。……ごめんなさい」
「ホライゾンさんや、総隊長と知り合いである貴方が、まさか自分の力でランカーになったなんて信じられなかったみたいなの。許してあげてね」

つまり八百長でランカーになっていたと思われていたのか。それならば、初めて会った時に噛みつかれたのも分かる。
誤解が解けたのはいいが、結果の話が出ない所をみると、そんなにも成績が悲惨だったのか。

「で、でも、なんか久しぶりだったし、楽しかったっすよ。勉強になったし」
「フォローなどいりません」
「へ?」
「何故、何も言ってくれなかったのですか!? 面倒ならすぐにでもスイレン先輩にかけあえばよかったはずです。それなのに……」

じんわりと涙が滲むカホに、ジンは、なにもできず混乱した。
ただ単純に、彼女に会いたいから通っていただけなのに、哀しませてしまっては元も子もない。

「えっと、なんか、その……すいません。俺、そもそも勉強だめで、せっかくあんな一生懸命教えてくれたっつーのに……」
「はい?」
「再試験だから呼び出したんじゃないんすか?」

スイレンが思わず噴き出す。
泣きそうになっていたカホの目が点になり、ジンは訳がわからない。
どんな空気だ。
女性二人に囲まれるなど、普段ならとても嬉しい筈なのに、

「あはははは、そうね。私もいて、カホちゃんもいるなら、確かに再試験かもって思うわよね」
「へ? 違うんすか!? じゃあなんで、カホさん泣いて……」

そう言った直後。
ジンは顔面に一枚のプリントを叩きつけられた、あまりに突然すぎてジンは後ろへとひっくり返る。

「いってぇぇえ!!」
「その答案をみなさい! それが全てです」

恐る恐るそれを見ると、あかい丸がたくさん並び、一本の棒と丸が二つ。
いや、数字の1と0が二つ。満点だった。

「へ、マジで! やった!」
「やればできる癖に、貴方は……」
「へへ、俺すっげぇ!」

「本当。真面目な時は真面目なのに、何かと誤解生みやすいのよね」
「へっへ、やればできる俺!」

まるで子供のように、目をキラキラさせて、本当に馬鹿ではないかと思う。
あんなにひどい事を言ったのに、あんなにも責めてしまったのに、疑っていた相手は、とても純粋で真面目な、優しい青年だった。

「でも、じゃあなんで泣いてるんすか? 誰かになんかされたんなら、俺がとっちめてやるっすよ!」

自覚すらないのか。
これだから更に自分が情けなくなる。
これなら、いっそ最後まで面倒をみるべきであると、カホは心に決めた。

「納得がいきません」
「へ?」
「最高責任者へのその態度、言葉使い。筆記では満点でも、実技で教える必要もあると判断しました」
「えっとぉ……」
「この後午後から、闘技場へきなさい! この、エミル・フォースマスターのカホが、実技をふまえて、上官への言葉使いを叩きこんで差し上げます!」

スイレンの小さな拍手が、その場に響き渡った。



何をしているんだろうと、ジンは放心状態になっていた。
ちゃんと授業にもでて、テストでも満点だったのに、どうしてこうなったのか。
ダウンタウンの闘技場で、一人うな垂れるジンは、横でクレープを頬張るカナトとカホの到着をまつ。

「馬鹿が……」
「なぁ、俺、どうしたらよかったの?」
「素直に断わり、責任者へ報告すればよかったんだ。それを貴様は……」

聞きたくなくなり耳を塞いだ。
一度帰宅して昼食を作ろうと思ったが、カナトが既に起きていた為、面倒になり一緒に連れてきた。
昼食としてクレープをわたすと気に入ったのか夢中で食べている。
頬の生クリームがらしくなく、ジンは仕方なくそれをとってやった。

「腹減った……」
「やらん」
「いらねぇよ。対人とか、下手したら吐くし」

もう一度ため息。
カナトは食べ終えて満足したのか、近くの売店で飲み物を買ってくる。
そうしている間に、闘技場の入口から、一人の女性が姿を見せた。
カホだ。

「ど、どうも」
「こんにちは、よろしくお願いします」

戻ってきたカナトが首を傾げる。カホと目があって一礼した。

「お初にお目にかかります。アークタイタニア・ジョーカーのカナトです」
「貴方が……? 私は、治安維持部隊、ウィザード系の最高責任者、兼、ウィザード系の教官。エミル・フォースマスターのカホです」
「最高責任者?」

「ベースジョブ部隊の総隊長……。お偉いさん」
「ほう……そんな方が何故?またジンがなにかしたのですか?」

「上官や最高責任者に対する言葉使いや、実践での対処について、指導し直す必要があると判断しました。これは私が個人的に申し込んだ事でもあるため、本部の施設は使えず……」
「なるほど、奴が失礼を働いたなら妥当でしょう」

「は? カナト!?」
「貴様は、人への態度が甘すぎる。叩き直してもらうといい」
「なんだよ! あんだけ、俺が行くの嫌がってたくせに……」

「嫌がっていた?」
「夕食を夕方の18時前後と決めているので、ジンが帰らなければ片付けもできないのです」
「は、はぁ……」
「初めは下心のみで付き合っていると思っていましたが、話を聞くたび、貴方自身に魅力があるのではと……」

「カナト!!」
「何か間違ってるか?」
「余計な事いうんじゃねぇよ!! 俺がどうしようか勝手だろうが!」

声を張り上げるジンとカナトの会話は、あまりにも普通で気が抜けてしまう。
ジョーカーと聞いて警戒はしていたが、驚くほど常識をわきまえていて、カホは逆に返答に困ってしまった。

「カナトさん……? 貴方は何者ですか? 何故ジョーカーに?」
「一般の冒険者です。しかし、父に堕天ルシフェル、今は勘当されています」

ルシフェルと聞いて、カホは心から納得した。しかもそれが、かの大貴族、ルシフェルとくれば、英才教育を受け、この礼儀正しさも筋が通る。

「か、カホさん。誤解っすよ! 俺真面目に……」
「えぇ、ちゃんと教えますので、安心しなさい」

カホの黒い笑顔に、ジンは背筋が冷えるのを感じた。

闘技場の中心に立ち、複雑な心境で向かい会ったジンは、まっすぐに立つ彼女の全身をみる。
いつも後ろの席へ座って、全身は見ていなかったが、細い。
腰がしゅっと引き締まり、ミニスカートと、ニーソックスの間から除く肌色が魅力的で、ふくらはぎのラインも美しい。

「背筋を伸ばしなさい! 首は真っ直ぐに、視線は背筋から90度、相手の目をみる!」
「へ、へい!」
「返事は、はい。でしょう!」
「は、はい!」
「しっかりいいなさい!」
「はい!」

やっとまともに言えたと、カナトがため息をつく。

「よろしくお願いします」と言うジンの挨拶から、全てが始まった。
突然カホが、"フォトンランチャー"を唱え、ジンへ放ったのだ。
魔法の雷撃音や爆発音がこだまし、爆風がカナトの髪をゆらす。ジンは叫びながら、必死で交わすばかりだ。

そんな中、カナトがふと脇をみると、銀髪の女性が隣に立っていて数名のホークアイの女性を後ろに、じっとカホを眺めている。

「貴方がカナト君?」
「はい。そうですが……」
「こんにちは、私はスイレン。よろしくね」
「スイレン殿? ……ジンの、知り合いですか?」
「えぇ、カホちゃんと同じよ」
「最高責任者の方が……何故ここへ?」
「今日は休日でね。彼女、私の後輩で、ジン君と知り合いになったって聞いてさ、ちょっと様子をみにきたの? でも、貴方に会えて嬉しいわ」
「こちらこそ光栄です。しかし、私は……」
「ジョーカーでしょ? きにしないきにしない」

楽しそうなスイレンの言葉に、カナトは肩の力を抜く。
本来なら連れていかれてもおかしくはないが、彼女にそんな気配はなく、たのしそうにジンとカホの戦いをみている。

「始める前の挨拶は!?」」
「よ、よろしくお願いします?!」
「違う!! よろしくお願い致します。ちなみに、礼は45度!」

カホの周囲に魔法陣が出現する。

「ちょ! ランチャー詠唱しながらとか、やめ……」
「ちゃんと敬語を使いなさい!!」

幾多の球体エネルギーが飛んでくる。
追尾性能を持つそれを、ジンはギリギリで回避して床へ霧散させていく。
しかしそれでも、数発は命中し、スパークのような痺れがきた。
足を止めれば、"エナジーフリーク"。逃げれば"フォトンランチャー"の嵐がきて、響いてくるカホの言葉のみが鋭く響く。

「お礼の言葉は!?」
「ありがとうございます!?」
「謝罪は!?」
「ごめんなさい!?」
「間違いではありませんが、この場合は"申し訳ございません"が、的確です!!」

ランチャーが、暴発する。
その光に紛れ、ジンが銃を抜くと、一瞬で筒に弾丸を装填。引き金を引いた。
銃声が響いたが、キンッと言う高い音が響き弾丸が弾かれる。"ソリッドオーラ"だ。

「声をかける場合は“こんにちは”等の挨拶より、すみません。と謝罪の意味の言葉を使う方が、より相手の方に受け入れてもらいやすくなります」
「そ、そうっす……ですか?」
「……スイレン先輩に伺いましたが、貴方は以前まで、ちゃんと敬語を使えていたと聞きました。なのに……」
「えっと、まぁ、心境の変化てかんじ、ですかね。それが、くせになっ、てしまってまして?」
「なるほど、何かのきっかけで真面目な貴方が、変わってしまったのですね」
「あの、悪い意味じゃないっす」
「? 何がですか?」
「俺、敬語とか堅苦しくてあんま好きじゃねーし、何より俺らしくないなぁ……とか?」
「俺、らしさ?」
「本部に居た頃は、ランカーになるのに必死で、それでなりふり構わなかったけど……」
「……」
「今はなんかもう、ランカーだし、気楽に行こうかなって」

自ら望んで今を得た。
そう、カホはジンの言いたい事を理解した。
ジョーカーと関わり真面目な性格が歪んでしまったのかと思ったが、他ならぬ彼自身が、それを望んで居たのか。

カホは、魔法を止めてゆっくりと本をしまう。
彼自身が今を望み、それが叶っているのなら、自分の出番など無いじゃないか。
何処までおせっかいなのだろう。

「カホさん……?」
「もういいです。教える事はありません」
「へ?」
「私が教えたいと思って居た事は、すでに全てもっているのですね」
「えっと?」
「こちらの話です」

少し残念そうな表情の彼女に、ジンはまたも首を傾げる。
闘技場モードを解除してカホに手を差し伸べていると、ジン、カホ、スイレンの"ナビゲーションデバイス"が、緊急の着信音をならした。
アクロポリスの部隊員に緊急でしらせる、メールだ。
確認すると、南アクロニア平原にブリキングMkⅡが進撃しており、動ける部隊員は討伐に迎えという事だった。

「早いわね。本部からだと最低30分はかかるわ」
「すでに出ている私達が、討伐に向かうべきかとは思いますが……」

「おれらに任せて下さい! ちゃっちゃと、倒してくるっすよ!」
「珍しく意見が一致したな」
「は? カナトもくんの?」
「ブーストが欲しい」

冒険者らしい意見だと、カホは安堵。スイレンも楽しそうに笑った。

「なら、カホちゃんはジン君とブリキングの討伐に、私は本部にもどって残骸の回収班を連れてくるわ」

つまり自分が戻る前に倒しておけと言うことか。
なかなかの無茶振りだが、ジンはカホが一緒にくると聞いて嬉しそうにしている。

「よっしゃ! 暴れるぜ!」

急いで自宅に戻り、2人は私服のまま武器を片手に南アクロニア平原へとむかう。

街道をふさぐようにアクロポリスへと接近するブリキングMkⅡは、3人のターゲットを見つけると、ミサイルの砲塔を解放。
此方へと放った。
カナトはそのタイミングで、大きく羽ばたき、空気の切れ目に、沿って急上昇。
ミサイルのターゲットを引き受け、空中で爆散させた。
そしてそこから、宙返りをして滑空。"ジョーカー"を叩きこむ。

「調子いいな、カナ!! 下がれよ!!」

カナトが敵を押し込み、倒す。
がしゃんと金属がへし居れる音が響き、再び空中へと戻った。
そのタイミングを狙い。ジンが引き金を引く。

「“ミラージュ!!”」

放たれた一発が、分散。
床に倒された敵は、起き上がる為の駆動に入るが、弾丸の嵐を受け、
地面へ押し付けられた。

「“フレア!!”」

破砕。
弾丸が破裂し、内部の金属とプラスチックで出来た基盤部が破壊された。
これにより、浮遊能力を失った敵は下部の円盤を過剰に回転させ、発電。
残っていたミサイルの報道を解放し、ジンとカナトに向けて放った。
ジンは、即座に回避しようとしたが追尾性能があり、交わしきれない。
反射的に受身をとるが、無詠唱で展開された、"ソリッドオーラ"に守られ、ミサイルのみが破裂する。

「さがりなさい!」

ジンが、カホの後ろへと後退。
前にでた彼女は、敵の周辺に大量の"エナジースピア"を形成。
一斉に発射し、全てが突き刺した。
その直後。突き立った"エナジースピア"が光を放ち、円状の魔力線を形成。
魔法陣が形成されたかと思うと、カホがささやく。

「“ラストインクエスト”……」

エナジースピアで形成された魔法陣の中央に、真っ直ぐな光線が空から突き立った。
圧力として放たれ基盤部が押しつぶされて、貴金属の破砕音が響きわたる。
また、光線のあまりの眩しさに、ジンとカナトは目を覆い、カホは更に本を開いた。

一枚のイリスカードをとりだし、それを本に挟む事で粉砕。
スペシャルアビリティ"フォースマスター"を唱えた。

「イリス・マジックブレイズン!!」

本のページが流れるようにめくられ、カホが詠唱を始める。
カナトは嫌な予感を察し、突っ立っているジンへラリアットを入れて倒した。

「“ルミナリィ・ノヴァ!!”」

真っ白な光が、ブリキングに着弾した直後。
モーターが爆発し、震えるような爆音と金属片が飛び散った。
ジンはカナトに倒され無傷。
カナトも隣で伏せたが、翼に爆風を受けて少し飛ばされた。
カホは一人"ソリッドオーラ"を纏い、ジンとカナトの盾になるように平然と突っ立っている。

「か、カホ殿?」
「いっそ、爆発させてしまった方が、安全でしょう?」

なんて事をする人だと、カナトとジンは言葉を失った。

それから数分して敵をみると、胴体部分に巨大な圧力の痕跡があり、カホの魔力の強大さを、思い知る。
できれば、敵に回したくないと思った。

その後、ちょうどスイレンが現れ、合流。
彼女は部隊を引き連れブリキングMkⅡの回収作業を始めるが、カナトがふわふわと上空を散策し、ブリキングの内部にいたブーストを発見。
作業員に紛れてそれを回収した。

カホかスイレンに取り上げられるかと思ったが、討伐したご褒美として持ってかえって構わないと言われ、カナトがうれしそうにそれを持ち帰る。
また、爆発に関しては、被害が出なかっため黙認してくれることになった。

「ジン君」
「カホさん、ありがとうございました! 楽しかったです!」
「……敬語はいいわ。こちらこそ、ありがとう」
「そうっすか? と言うか俺なんかしたっけ?」

うふふ、と笑うカホはやはりかわいい。
思わず目をそらしてしまう。

「また、いつでも来なさい」
「本当っすか! やった、じゃあ今度一緒に飯でもーー」
「あら、ならそれまでに教本の56ページからの後半をーー」
「あ、す、すんません。俺……晩飯はカナトとだったっす……」

後ろでスイレンが楽しそうに笑う。
結局デートの話は保留になり、ジンはがっかりしながらも帰路へついた。
そしてその帰り、ジンはエレベーターで、まさかの白衣の彼と鉢合わせする。


「ジンさん!! お久しぶりです!」
「か、カイトさん!?」
「最近お会いできなくて、どうしておられるのか気になっていました! あの、今度もしよかったら……」

「ぁぁぁああ、その、今日ちょっと急いでるんで今度でいいっすか!?」
「え、あの……」
「すんません。人と待ち合わせしてて……」
「わかりました。また……」
「すいません、また時間つくるんで! それじゃ、お疲れ様っす!」

そう言って、カインロストは今日も一人ロビーに残される。


END




*GEST
jk_chara_kaho_130509.jpg


エミル・フォースマスターのカホ

年齢:20歳 
身長:159cm 
誕生日:4月26日 

性格・生い立ち 
しっかりしてるようにも見えるがよく勘違いをする性格きつい少女。
冒険者として旅立った頃とある青年に出会い一人前になるまで世話になる過去を持つ。
その後治安維持部隊のほうに移り多忙な生活を送りスペルユーザー系を纏めるまでに至る。
しかし本人はまだ満足してないため日々鍛錬を行っているが同時に独り身な行き方も悩んでいる。

Cara:ユーニアさん
モデルとなられた人物は実際ここまできびしくありません(笑
                                 
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本編 | 【2013-05-30(Thu) 12:30:00】 | Trackback(-) | Comments:(0)
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