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(C) BROCCOLI/ GungHo Online Entertainment,Inc./ HEADLOCK Inc.

ジンが病気になる話
出演:リアスさん、カロンさん、リフウさん

ロケ地:カナトさんの家

あらすじ
ノーザンから戻り一週間後。ジンは突然体調不良に見舞われ寝込んでしまう。
突然の高熱にカナトはどうすることもできずにいたが、ジンのナビゲーションデバイスに着信が入った。

前回:ノーザン地方で贅沢できるかと思ったらやっぱり死にかけた話



 「ジン」
「ん……」

カナトの声が聞こえる。
だが、応答する余裕なく身体中に痛みがはしり、意識が朦朧としていた。
酷い寒気があるのに布団をかぶれば熱く、脱げば寒い。
空中に浮いている様な眩暈もして身体を起こすことすら出来なかった。

「カナ……」

声もいつもと違う。
これで、ようやく理解した。風邪をひいてしまったのだと、

「顔赤いぞ……」

答えるのが億劫で、起きているのが辛い。
襲う眠気に負けて目をつむると、ひんやりとした物が首元へきた。
優しく首から頬へ触れてきたのは、カナトの右手。

「熱い……。風邪か、貴様が寝込むとは珍しい」

同居しだして初めてだろう。
カナト自身、戸惑った様子もなく、頬と首筋、額に触れて熱を測った。
寄せられた冷たい手が心地よく、ジンは離されるのがとても名残惜しい。

「なにか、ほしい物はあるか?」

うまく言葉が飲み込めない。
だから、今表現できる最大の言葉を口にした。

「しん、どい……」
「……そうか」

寝返りすらうてない。
ただ眠りたいと思った。今すぐ眠って、この浮遊感から解放されたい。

「暑いか? 寒い?」

どちらだろう。寒気もあるが汗もでる。

「寒い、けど……暑い……」
「そうか、少し待て」

分かってくれたのだろうか。
カナトが視界から消えて、ジンは再び目を閉じる。
眠りたい。
そうして、穏やかな眠りに誘われ始めた時。
ひんやりとした物が、首元へ当てられた。
カナトの手と同じぐらい冷たくて、落ち着く。
その数分後には、布団に重みを感じて、思った。
理解して貰えたのだと……。

「カナ……」
「呼んだか?」
「しんどい……」
「そうか……」

冷たいものは、湿ったタオルだった。
しかし、すぐに熱を帯びて暖かくなってしまい、カナトが再び濡らして当ててくれる。

「起きたら、リビングに居ないので出かけたと思っていた……すまない」

何時だろうと思った。
壁掛け時計に視線を移すと、14時。
朝から大分眠ってしまったのか。

起きた時から体がだるく、訓練を諦め、すぐ横になったのだが、五時間以上眠ってしまったらしい。

「何も食べていないんじゃないか?」

眠っていて、何も食べてない。でも、食欲はでない。
今は横になって居たい。それだけだ。
再び、目を瞑る。
そうすると、目の前にあったカナトの気配が消えた。
部屋の外で通信を始めたのか、話し声が聞こえてくる。

身体中が痛い。動くのすら辛いが、なんとか腕を動かし、“ナビゲーションデバイス”を開いた。

メール受信が一件。

見るとカロンからだ。
今日の15時に本部で訓練の約束をしていて、午前中に報告書を提出するつもりでいた。
その為、昨日徹夜で文書を完成させた所だったが、これでは行くにいけない。
朦朧とする意識で、ジンは”ナビゲーションデバイス”へ短い文を打ち込むと、迷わずそれをカロンへ送信した。
すると数十秒で、音声通信の着信音を鳴りだし、ジンはさらに困惑する。
出れるほど余裕がない。

着信音が聞こえたのか、カナトが部屋へと戻ってきた。

「でても構わないか?」
「うん……」

カナトはジンからデバイスを受け取り、受話器を取るためカバーをはずす、
表示された名前に、一息つくと落ち着いた様子で通信にでた。

「もしもし……カロン殿か」
「”あれ、誰だ?”」
「カナトです」
「”カナト? ジンは?”」
「熱を出しているので、代わりに……何か御用ですか?」
「”まじか、珍しいな。今日ちょっと、約束しててよ、15時から。朝からこっちに来る用事があるって聞いてて、もう本部にいると思ってたんだが……”」
「本部? ……ギルド元宮ですか?」
「“あぁ、多分報告書だとおもうぜ?”」

カナトは一瞬ジンへ視線をむけ、再びデバイスを持ち直した。

「ともかく、了解しました。カロン殿」
「”おぅ、なんなら様子みにいくが……」
「任せます。自由に……」
「”おぅ”」

そうして通信を切った。
暖かくなり、ズレてしまったタオルを額へ載せる。
じっとこちらを睨むのは、黙って居たことに機嫌を崩したのか。

「……ごめん」
「謝るぐらいなら、最初から隠すな」

熱で完全に参っているジンは、見ているだけでも苦しそうで、カナトは、責めることすら出来なくなってしまう。
反省しているなら問い詰める事でもないか。

「リフウ殿を呼んだ。薬ももって来てくれるらしい」
「……」
「眠れるか?」

目を閉じた。カナトの手がやはり冷たくていい。
しばらく当てていてほしいのに、ふとそれが離れ、気配も消えた。
いろんな意味で苦しい……。

カロンに報告書をもって行って貰いたいが、朦朧とする意識でメールを打とうとしても、やはり手が動かない。
途中で力尽きてデバイスを離してしまった。

「かなぁ……」

代わりに打ち込んで欲しい。
でも、そう呼んでも声が小さ過ぎて届かない。
諦めて目を瞑ると、再び感じた気配にほっとした。

湯気をだす何かを持ってきたカナトだ。

「昨日の鍋の雑炊……食べれるか?」
「……」

食欲が出ない。食べたくないとも思う。
だから眠ったふりをしたが、肩を抱かれ無理やり起こされてしまった。

左手で支えられカナトの胸へもたれる形となり、起こされた頭がグラグラする。
机の上に雑炊を置いて、すくった蓮華を口もとに持ってこられた。

「ジン……」
「……」

食べたくない……。

「何も食べないのは駄目だと……いつも言ってるのはお前だろう?」

そういえばそんな事も言っていた気がする。
示しがつかないとおもって、しぶしぶ口に含むとやっぱり美味しかった。

「……うまい」
「ならいい……もう少し食べれるか?」
「うん……」

そこから何回か食べさせてもらって、ジンは無理に口に含むのをやめた。
半分も減っていないが、何も食べないよりかはいい。
一緒に水も飲ませカナトは再び、ジンを寝かせて布団を掛けてやった。

「眠れるか……?」
「……試す」

タオルも濡らしてもらって、再び目を閉じる。
すると、来客を知らせるベルが響き、カナトは玄関へと急いだ。
扉の前に居たのは、エミルのオッドアイのイレイザー。ギルドランク8th、エミル・イレイザーのリアスだ。

「誰かと思えば、お前か、リアス」
「ジンさんが寝込んだと聞いて見にきました」
「誰から聞いた?」
「カロンさんです。通信していたのを聞きました」
「そうか、実は高熱を出していてまともに動ける様子がない」
「風邪ですか?」
「わからん」
「気になります」

リアスはそういうと、持ち前の足の早さでジンの部屋を見に行った。
部屋に入られた事にすら反応を寄越さないジンを、リアスはじっと見る。

「……とても面白くないですね」
「貴様は素直だな、リアス」
「ジンさん。聞こえますか?」

反応がない、眠ってしまったのかと思ったが、うっすら瞳をのぞかせる。
ジンはリアスの顔をみると数秒みつめ、後ろの紙袋を指差した。
リアスはその中身を見て納得をすると、部屋を出て行く。

「持って行くよう頼まれたので、いって来ます」
「察しがいいな」
「よく言われます」

カナトがそう言った直後。扉から再び来客のベルがなる。
二人が入口が向かう前に扉があき、ドミニオンが部屋へと侵入してきた。

「よぉ、ジンの奴、大丈夫か?」
「……カロン殿」

現れたのは、先程通信をしたギルドランク2nd、イクスドミニオン・イレイザーのカロンだ。
彼は大量のミネラルウォーターを両手に持ち、それを床へおく。

「ついでだし、買ってきてやったぜ」
「気を使わせたようで、申し訳ない」
「きにすんな。ジンは?」
「自室で横になっています」
「見て来て大丈夫か?」
「構えなくて良ければ……」

それを聞いてカロンも、静かにジンの様子を見に行く。
額に置いたタオルはいつの間にか落ちて、ひどく汗をかいていた。

「こりゃ相当だな……」

反応も示さない。
呼びかけても応答がなく、眠ってしまったようだ。
カロンは落ちたタオルをジンの頭に乗せ直してやる。

「医者は?」
「一応、知り合いのカーディナルさんを呼びました」
「そうか、飯は食ったのか?」
「雑炊を少し、しかし余り食べれず……」
「このざまじゃなぁ……、とりあえず。氷水を袋にいれて乗っけてやれよ。冷やせるし」

「異論はないですが、おれは、お使いを頼まれたので、行ってきます」
「ジンの報告書だそうです。カロン殿」

「またなんかやったのか? コイツ……」
「……報告書にはノーザンダンジョンでのディメンションダンジョンの発生について、と書いてありますね」

ノーザンのあの時か。
言われて思いだしたが、報告書を請け負った話は聞いていなかった。

「氷水は私が作りましょう。もって来ます」
「おう。でも氷は使い切らないようにしろよ。持たせる必要があるからな」

カロンに言われ、カナトはリアスを見送ったあと、氷水を袋に詰めてジンの額に載せた。
額の冷たさに気づいたのか、虚ろな瞳を見せる。

「ジン、きこえっか?」
「カロ……さん?」
「おう、なんか食えるか?」

小さく首を振る。眠れないのか、息のみが荒い。
カナトが夕飯の仕度に入るためエプロンを着ていると、玄関からアークタイタニア・カーディナルのリフウがようやく現れた。
金の翼をもつ彼女は、片手に小さなケースを携えている。

「お待たせしました。ジンさんは……」
「リフウ嬢。お待ちしていました。上におります。すぐ見てもらえればと」

カナトに案内され、リフウがジンの部屋へと入る。
すると優しそうな表情が曇り、手で熱を測った。

「ジンさん。リフウです。体調はいかがですか?」
「……しんどい」
「どんなふうか、説明できますか?」
「ん……痛い」
「どのあたりがです?」
「頭とか……体中が……」
「……わかりました。つらい中、ごめんなさい。少し検査させてくださいね」

彼女は、冷静にジンの容体を確認するとケースから、簡単な検査キットをとりだして検査を始めた。

数分待たされはしたが、結果をみたリフウは苦い表情をみせる。
脇にいる二人に何も告げず、ジンの部屋をでると、“ナビゲーションデバイス”を取り出し、外部と連絡をとった。
追いかけたカナトがリフウに現状を聞きに行くと、彼女は思わぬ言葉を口にする。

「この時期にかかるウィルス系の感染症ですね」
「感染症……風邪ではないのですか?」
「風邪ではありません。……詳しくは、検査をしなければわかりませんが、症状からみて間違いないかと……」
「どうすれば……?」
「一応、特効薬はあります。48時間以内にそれを飲めば、おそらく落ち着くとは思いますが……」
「薬を? ならばすぐに」
「それが、今年は感染者がおおくて、もう聖堂には数がほとんどありません。イースト地方に発注はしているのですが……」
「……間に合わなかった場合、どうなるのですか?」
「幸い。生命に影響はありません。しかし、高熱が続くと危険です」
「……!」
「ともかく熱が上がりすぎないようにしましょう。冷却シートなら聖堂にありますから、もってきます」
「ありがとうございます。何か私に出来る事は……?」
「そうですね。濡れタオルを数枚部屋において、部屋の湿度をあげてください。乾かさないように、それと換気も忘れず、お食事もできるだけ栄養のあるものを」
「……無理にでも食べさせた方がいいですか?」
「そうですね。あまり無理させても、戻してしまうかもしれません。食べれるだけに」
「わかりました」

「おいおい、話きいてっと薬ねーのか?」

部屋から出てきたカロンが、廊下にいる二人の間へと入ってきた。
彼は右手にタオルを持ってカナトに新しいものを持ってくるよう促す。

「はい……聖堂でも流行っている病気でして……、在庫があったかどうか……ファーイーストに発注はしているのですが」
「……なら俺がバイクでいって買ってきてやろうか?」
「本当ですか?」
「おう。サイドカーあるし、結構積めるしな。聖堂で予算切ってくれるならそっちの分も買ってくるぜ?」

リフウは少し考え込み、“ナビゲーションデバイス”を見た。
通信を聖堂へとつなぎ、何かを話すとデバイスを両手で握りしめてカロンへ述べる。

「わかりました。お願いします。カロンさん」
「お、おれの名前しってんの? うれしいねぇ」
「ランカーさんは、すべて頭に入っています。では、聖堂の方で手続きをさせてください」
「おう、じゃあカナト。俺いってくるわ」

「わかりました。ありがとうございます。カロン殿」
「アイツ見てやれよ。初めてじゃね? 熱出すの」
「えぇ、珍しい……」
「ま、たまにはこういう事もあるさ。協力はしてやるから面倒みてやれ」

カロンに肩をたたかれ、カナトは、リフウと二人で出ていく彼をみおくった。
それが何を意味しているのか、カナトにはよくわからなかったが、辛そうな相方の表情が胸にささり、部屋に入ることも戸惑ってしまう。

「もどりました」

後ろから響いた声に、体を震わせた。
突然現れた黒い影は、数センチ前に顔をよせてじっとこちらを見ている。

「り、リアス、早かったな……」
「ショートカットして帰ってきました。カナトさんが気になったので」

気を使ってくれたのか、それともただの興味なのか。
リアスの性格上、後者であることは間違いない。しかしそれでもどこかありがたかった。

「そうか。ありがとう。リアス」
「? ……あ、セオさんから、これを預かってきました。残業中につかっている冷却ジェルシートだそうです。額と首筋に貼れと言われてきました」

先ほどリフウが言っていたものか、確かにこれは額にタオルを置くよりも便利かもしれない。
その後リフウの言った通り、カナトはリアスと共に部屋の湿度を高め、ジンに冷却ジェルシートを貼ってやった。
冷たそうな表情も見せたジンだったが、すぐに慣れてぐったりしてしまう。

「下がりそうにないですね。あまり高熱が続くと少し危険かもしれません……」
「……」

心配だ。やれることはやったができることがなくなってしまう。
あとは夕食を作ることぐらいか……。
そう思って、カナトが部屋を出た直後。またも突然入口の扉が開き青い髪の女性が部屋へと飛び込んできた。

「たっだいまー! げっかちゃん早番からの帰宅だよ!」

高い声が響いてカナトは思わずそちらを凝視する。
月光花だ。彼女は目の前にカナトしかいないことに首をかしげ、期待通りの言葉を放つ。

「ジンは?」
「月光花さん……実は――」

カナトに説明され、ジンの部屋に連れてこられた月光花は数秒唖然とすると、頭を抱える。
驚くかに思えたのに、彼女は呆れたため息をついたからだ。
何もいわずジンのベッドに歩み寄り、じっとにらみつける。

「あんたさ~。自分が病気に弱いってわかってるわよね?」
「……うん」
「私今年の初めに、予防接種うけろって、散々いったわよね」
「……うん」
「今年は絶対流行るって、いったわよね」
「……うん。でも注射……いてぇし」

パシィッン。と、月光花の平手打ちがジンの頬を凪いだ。
彼は枕に顔をうずめ、頭痛が更に増したようにも見える。
だまったジンをみて、月光花は立ち上がると、突然キッチンに立とうとするので、カナトはそれを止めた。

「なにをされるんです?」
「カナト君。ミキサーある?」
「ありますが……」
「りんごと、バナナでしょ、あとオレンジに、にんじんかな? 牛乳もいれて、ミックスジュースつくれる?」
「はい。しかし、バナナはいらないとおもうのですが?」
「バナナはね、果物の中でも栄養があるの。あとハチミツも隠し味」

言われた通り、カナトは果物と野菜を刻みミキサーに入れる。
掻き混ぜて液状にしたそれを、コップにいれてストローを指してやった。

「これ甘いでしょ?」
「はい。でもすこし、甘すぎなくないですか?」
「ジン。大好きなんだよね。お母さんがよくつくってくれた。にんじんとか、いろいろはいって栄養もあるから、病気したときによく飲んでたの」
「……!」
「病気すると食欲なくなっちゃうしね」

ミックスジュースを入れたコップを持ち、月光花は一人バタバタとジンの部屋へ上がっていく。
リアスの姿が消えたのは、“クローキング”で隠れたからか。

「ほら! ジン! 起きなさい」
「ごめんなさい、ごめんなさい……」
「誰に謝ってんの!!」

誰も突っ込まない。

「ほら、起きる! これ飲んでねるの!」

無理矢理起こされたジンに、生気はなく頭を起こす事すら辛そうにみえる。
しかし、月光花からそれを渡され、渋々ストローを咥えた。

そうすると、ゆっくりと中身が減っていき、誰も何もいわないまま、数分でジンはそれを飲み干してしまう。

「はい、おわり! ねる」

頭を枕に叩きつけられ、ジンは懲りたようにも見えた。
さっきほとんど何も食べなかったのに、

「好きな物なら食べれるでしょ?」

幼馴染の強みにありがたさを感じた。
好きな物や嫌いな物は、ありふれたもので、誰にでもある物だ。
確かに好きな物ならば、辛くても関係ないのかもしれない。

「ゲッカ……」
「何よ、ジン?」
「……もっと」
「はぁ? しょうがないわね! 沢山作ったから、汲んであげるわよ」

結局もう一杯飲み干して、ジンは満足気に横になった。
お腹も満たされたのか、幸せそうにも見える。

「大丈夫か?」
「……カナが、作ったの?」
「あぁ、ゲッカさんに、レシピを聞いた」
「うまかった……」
「そうか……また作ろう」
「うん……」

「カナトくーん! 晩ご飯作っていいー?」
「お待ちを、今向かいます」

カナトがジンの部屋を離れた後、“クローキング”で隠れていたリアスがそっと姿をみせ、汗を拭いたりシートを貼り直したりもしてくれた。
そうして夕食の支度をし、日も暮れてきた頃、カロンとリフウが戻ってくる。
リフウは追加の冷却シートと薬ももってきてくれて、ジンは発症から12時間で薬を服用し、以後は様子見となった。

「湿度の維持も忘れず、薬は一日二回の服用を、カナトさんも貰わないように気をつけて下さい」
「はい。この度はありがとうございました」
「いえ、私ではなくカロンさんに、道中大変だったみたいで……」

「ぁあ、なんか、ファーイーストからの橋が安全点検しててな。運送業者も立ち往生してたらしい。庭で行ったら何とかなったさ」
「とても助かりました」
「ま、間に合って良かった」

けらけらと笑うカロンも、どこか安心したようだ。
リフウは、また明日くると言って帰宅し、カロンも同じくして帰路につく。
月光花も帰り、リアスも帰るかに思えたが、

「気になるので、泊まります」

と言うので、泊まらせる事にした。
早起きが苦手なカナトにかわり、リアスはジンの看病もしてくれて、熱もだいぶ下がってくる。

「病気について調べましたが、熱は下がっても、発症から一週間は隔離する必要があるそうです」
「そうか……」

ミックスジュースを作り、もっていくと虚ろな目をするジンがいる。
二日目で、ようやく熱も下がりかけているが、まだ起き上がれないか。

「体調は?」
「しんどい……」
「……そうか。飲むか?」
「いる……」

相当好きらしい。
起こしてやって飲ませると、やっぱり嬉しそうだ。

「うまい……」
「そうか」

薬も飲み、満足そうに布団へくるまったのを確認すると、カナトは一人部屋を出る。

「カナトさん」
「なんだ?リアス」
「気になったのですが、“しんどい”ってどういう意味ですか?」
「……実は私も、よくわからない」
「それで会話してたのですか? 流石ですね」

調べると、疲れたとか、辛いという意味らしい。
イースト方面の方言か。

「田舎ですしね、ジンさんは本国生まれではない分、影響が弱かったのでしょう」

辛い事を最初から訴えていたのか、雰囲気で判断していたが、
もっとすぐに意味がわかれば何か出来たのかと思う。
その日もリフウに見てもらい、病気が改善にむかっていると聞いた後、ジンは一日ぶりに固形物のお粥を口にした。
沢山は無理だったが、ある程度たべて、カナトほっと安堵する。
しかし、普段騒がしい割、こうも大人しいと逆にこちらが落ち着かなくなってしまう。

「病気なら仕方ないですよ。多分熱さえ下がれば、またやかましくなるのでは?」
「それもそうだな……」
「一週間は隔離が必要ですが、ジンさんの場合、我慢できるとは思えないので」

安易に想像できて、カナトは思わず夕食の手を止めた。
確かに大人しいのは今だけかもしれない。

次の日になってようやく熱も下がってきたジンは、午前中に目を覚ました。
思いのほか意識がはっきりして、体の痛みも引いている。
まだ少しふらつくが、起き上がれそうだ。

「おはようございます。ジンさん」
「うわぁぁぁあ!!」

突然視界に入ったリアスに、悲鳴を上げた。いることは分かっているが、突然現れないでほしい。

「と、突然視界にはいんなよ……てか、ここ俺の部屋……」
「容体が悪化しないかどうか見てました」
「は? ずっと?」
「カナトさんが寝ている間は」

心配してくれていたのか。イレイザーで夜は慣れているとはいっても大変な事だろう。

「そっか、サンキュー、リアス」
「一週間は隔離されて貰わなければ、迷惑なんで」
「なんだよそれ、風邪じゃねえの?」
「風邪ではありません。この時期に流行る感染症。現在では治療法は確立されていますが、適切な処置があってこそのもの、カナトさんと月光花さん、リフウさん、カロンさんにも感謝した方がいいかと」
「……そっか、迷惑かけちまったな」
「病気に弱いんですか? 気になります」
「なんつーか、めったにかからないんだけど、いざかかると酷いってか。よく迷惑かけちまうんだ……周りに」
「部隊に入ってからは、大丈夫だったのです?」
「入って、一年ぐらいの時に一回だな。疲れてたのと、ちょっと無茶して……それから気をつけるようにしてたんだけど」
「でも予防接種は受けなかったんですね? 部隊員は無料でしょう?」
「うっせぇよ。来年から受けるよ。もう懲りた」

リアスと会話をすると、やはり疲れる。
しかし、三日ぶりの会話は少し新鮮だった。

「そういや、感染症ってカナトやばくないか? あいつ予防接種もうけれねぇだろ?」
「タイタニアさんの翼の環境維持能力を知ってますか?」
「おぅ」
「あれはタイタニアさんが生きていける生命維持装置としての役割と、ある程度の浄化機能、消毒も兼ねています。その為、体力の消耗によって機能が衰えない限り、感染症に対しての免疫はエミル族以上かと」
「えっと?」
「酷く消耗しない限り、タイタニアさんは感染症に無縁ということです」
「へー」
「ただ独自の環境を得ている分、免疫力の低下は生命に関わる。ジンさんは、もう少し気をつかって差し上げてもいいのでは?」
「どういう意味だよ……」

リアスはそれ以上、答えなかった。
今だめまいが起こるので再び横になると、リアスがトレイにのせた朝食を部屋までもってきてくれる。
起きたら食べさせろと言われたらしい。

「さんきゅ」
「とりあえず熱が下がるまでは、トイレ意外、部屋から出すな言われているので」

扱いがいいのか悪いのかわからない。朝ごはんだけすまし、ジンは薬だけを飲んで横になった。
リフウに会いたかったが、起きたらすでに夕飯で、次の日には頭痛も収まり歩ける程度には回復した。
体が軽くなり、暇を持て余すようになると、外に出ようとしてもリアスが出してくれず、カナトも睨んでくるので、数日はおとなしくしていた。
完治には時間がかかったか、きっちり一週間が経ってリフウにみてもらうと、経過もよく体力ももどっていることから、完治したということと、外出許可ももらえた。

「へっへ、やっぱ外はいいねぇ……人間閉じこもってたらダメになるぜ」
「寝込んでいた奴が良く言う」
「鬼の霍乱って奴だよ」
「バカは風邪を引かないと言うが、感染症にはかかるんだな」
「うっせぇ!! 誰がバカだ!!」

そっぽを向いて、カナトが帰路につく。
今日の晩ご飯はカレーだ。久しぶりな気もする。

「なぁカナト」
「なんだ?」
「あのジュースまた作って」
「材料をもってきたらな」
「まじで、やったね! ちょっと買ってくる」
「今なのか? 直ぐに戻れ」
「へいへい!」

荷物を庭に置いたジンは、鼻歌を歌い、今日も出かけるのだった。


END
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本編 | 【2013-05-16(Thu) 12:30:00】 | Trackback(-) | Comments:(0)
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