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(C) BROCCOLI/ GungHo Online Entertainment,Inc./ HEADLOCK Inc.

ノーザン地方で贅沢できたと思ったらやっぱり死にかけた話
出演:リゼロッテさん、スィーさん

ロケ地:ノーザンダンジョン

あらすじ
ノーザン魔法学校からの依頼を受注したカナト、ジン、リゼロッテの三人は極寒のノーザン地方へと乗り込む。
あまりの寒さに苦戦しつつも、何とかプロムナードへたどり着いたが、そこで出会った研究生の少年は、最近発生するノーザンダンジョンの神隠し現象について語り始めた。

参考:晩御飯の献立について話ながら死闘を繰り広げる話


 
「んー。何受ける? カナト」
「採取でも構わないが、これは少し手間がかかる。割に合わない」
「交通費もでねぇっぽいしなぁ」

珍しく酒場で昼食を取りにきた二人。サンドイッチを頬ばっているのは、エミル・ガンナーのジンと、タイタニア・ジョーカーのカナトだ。
二人はいつも自炊しているが、今日は来週のスケジュールを埋める為、珍しく酒場へと来ている。

「酒場側からのスカウトもきているが、どれも配当が見合わないものばかりだ」
「どうせ適当にとばしてんだろ? 下手な鉄砲も数うちゃ当たるってね。それよか、経費出るの探そうぜ。実包とかもぜんぶ」
「そんなもの、以前フィル嬢の護衛をした時ぐらいの物だともうが?」
「あれはあれでよかったじゃん。いろいろあったけどさ」

ジト目で睨むカナトの目線が痛い。
性格がこうも真逆なのに、なぜ組むことになったのだろうと時々思う。

「あ、これよくね? ノーザンの依頼。経費もでるって」
「……ノーザンダンジョンでの護衛。北か」
「楽そうじゃね? あそこ敵も弱いし」
「馬鹿が、貴様、ノーザンに行ったことはないのか?」
「あるよ! 任務でなんども、ちょっと寒いぐらいだろ? 平気だって」

「あら、ジン君にカナト君じゃなーい」

新しく響いた声に二人が顔をあげると、三枚のドミニオンの翼を持つ女性が、緑の大型の銃を抱えて立っていた。
赤い髪を巻き上げ、凛とした瞳を持つのは、ギルドランク7th、イクスドミニオン・ホークアイのリゼロッテだ。

「り、リゼロッテ殿!?」
「なーに、怖がってんの、カナト君。おねーさんが怖い?」

「リゼさん、久しぶりっす。任務のかえりっすか?」
「そそ、ちょっと演習にね、例のアレ、ジン君ならわかるでょ」

ウィンクされてジンは全てを察する。
バイト感覚でジンもやっていた事だが、カナトに邪魔されて以来、行っていなかった。

「そっちこそ、ここで見かけるなんて珍しいわね。仲良くお食事?」
「来週のスケジュール立ててたんす。討伐とか」
「ふーん。あんたらも物好きねぇ」

「一応冒険者ですから」

しれっと言うカナトにリゼロッテが意味深な視線をおくる。
女性であるためか、カナトは落ち着かないらしい。

「あら、ノーザンの依頼をうけるの?」
「そうそう、今考えてたとこで」

「雪山を舐めるなといっているだろう。それにこの任務は三人での受注が……」

ここまでいってカナトが言葉を止めた。
動揺するあまり、墓穴を掘ってしまったことに気づいたのだ。





「さっみぃいいい!!」
「ジン君、うるさいわよ! キリキリ歩く! カナト君も、ちゃんと歩かないと凍傷になっちゃうわよ!」
「……」

厚手のマフラーに防寒用のコートをはおり、さらに黒い耳当てをつけて、ジンはノーザンに寒冷地帯を進む。
カナトは羽を畳んだ上にインペリアルコートを着て、ニット帽をかぶって進んでいた。

酒場にて墓穴を掘ってしまったカナトは、リゼロッテに雪山が苦手である事をしられてしまい、案の定、苦手を克服の特訓をしてやると言われ、ノーザンの依頼を受注させられた。

降り積もった雪が凍りつき、足元は完全に凍結していて、その上にさらに、柔らかい雪が30センチ程雪が積っている。足元に気をつけなければ転んでしまいそうだ。

一方のカナトは、羽が畳まれ、飛ぶことが出来ず、もう三回ほど雪の中へ突っ込んでいる。
雪は柔らかく怪我はしないが、鼻は真っ赤になってしまっていた。

いつもならノーザンに行く前に、暖房用のホカホカ石を買ったり、ノーザンプロムナード行の定期便を利用するのだが、リゼロッテが「甘えるな」と喝をいれ二人は、徒歩で寒冷地帯を抜けることになったのだ。

「ホカホカ石が品切れとかまじねぇよ、さみぃ」

ジンが独り言をぼやくと後ろから、ぼすっと鈍い音が響く。
カナトが転んだのだ。
リゼロッテが言うには、雪山でホカホカ石がない場合。付着した雪で、翼が凍り着いてしまう事があるらしい。

だいぶ歩けるようにはなっているが、ここから先は、床が完全に氷となるため、ジンは仕方なく、カナトをおぶってノーザンプロムナードへ連れて行く事にした。

ノーザンシティの玄関口とされているプロムナードは、観光客用に“ヒーティング”の魔法結界が貼られていて暖かい。
カナトはたどり着いた直後に服の隙間から翼を出すと、ジンの背中から空へと舞い上がった。
やっぱり鳥は、飛んで居た方がいいか。

「よく頑張ったわね」
「こんな寒かったすか? 前きた時はそんなに……」
「そりゃ、任務でこっちにくるときは防寒用のホカホカ石が支給されるし、デカイ任務なら”ヒーティング"持ちのウィザード系の同行が必須だし?」
「そ、そうでしたっけ?」
「でもま、わざわざおぶるなんて、頑張るわね」
「そうっすか? あいつ軽いし……と言うか、氷の上で転ばれたら怪我してそっちのが面倒っすよ」
「あはは、確かにね。とりあえずやすみなさいな、待ち合わせ明日でしょう?」
「了解っす! 宿とってきます!」

リゼロッテが上を見上げると、羽を伸ばすカナトがいる。
本当は、一緒に歩かせて鍛えてやろうと思っていたが、助け合う二人をみていると口に出せなくなってしまった。
リゼロッテも防寒用のコートをぬぎ、宿へと走るジンを追う。

一日早くノーザンへと訪れたのは、リゼロッテがそうさせたのもあるが、寒い地方を歩く上での準備も必要だと言われたからだった。
十分な暖を取るための服とか、多少の食料とか、持ってくるものは必要最低限に用意し、入り用のものは現地で購入する手はずだったが、
ホカホカ石だけは、今回の依頼主が、ウィザード系と言う事もあり不要だった。

次の日、ノーザンプロムナードのオブジェ付近で、三人が依頼主を待っていると、待ち合わせ時間から10分ほどして、リボン帯を括るアークタイタニアがふわりと姿を表す。
大きい瞳を見せる彼はこちらを見つけると、嬉しそうに笑顔をみせた。

「始めまして! 酒場のひとですか?」
「はい。初めまして、アークタイタニア・ジョーカーのカナトです。失礼ですが、スィー殿で間違いないでしょうか?」
「はい。アークタイタニア・フォースマスターのスィーです。今回は来てもらってありがとうございました。あの、後ろのお二人もですか?」
「えぇ……」

「エミル・ガンナーのジンっす」
「イクスドミニオン・ホークアイのリゼロッテよ。よろしくね!」

「へぇー、まさかこんな強そうな人に来てもらえるなんて、よかった」
「……? 早速ですが、依頼の経緯を伺いたく」
「はい。美味しいお茶菓子のお店があるので、案内します」

整った黒髪のアークタイタニアは、三人を貴族御用達の高級喫茶へと案内してくれた。
雰囲気の違いに、ジンは思わず一歩後ろを歩き、挙動不審に辺りを見ている。
カナトとリゼロッテは、そんな事もなく、むしろリラックスしているようだ。

「ジンさん、苦手だったかな?」
「えっ!? へ、平気っすよ。なんつーかその」

「あまり気を使うな、逆に不自然だぞ」
「へ、へい……」

「アークタイタニアさんが来ると聞いて、てっきり貴族さんかと、あ、経費は学校がだすので好きなものを! 美味しいですよ!」
「アークタイタニアではありますが、私には貴族としての権力はもうありません。お気遣いなく」
「ありがとうございます。そうさせて頂きます!」

なんの話だろうと思うが、ジンは手元のメニューを広げる。
すると、生クリームいっぱいのいちごショートとかチョコレートシロップのパフェなど、アクロポリスでは見たことない甘味が並んでいて、見ているだけでも楽しい。

「それで、今回はどのような?」
「はい、実は先週辺りから、人がノーザンダンジョンへ行ったきり帰って来ないのです」
「!? それは、どういう?」
「わかりません。変な魔法的な何かが発生しているのではといわれていますが、落ち着くまでは立ち入るなと……」
「ノーザン騎士団の方は?」
「数名の兵士を派遣してもかえって来ないので、みんな怖がってしまって……おれ、ノーザンダンジョンでモンスターの生体研究をしてるので、こんな事件があるとなにも出来なくて、今回護衛をお願いしたいのです」

ダンジョンで人が突然消える。そんな現象をジンとカナトは一度経験していた。
リゼロッテに目をやると、ウィンクを返してくれたが、ジンはメニューのホワイトチョコレートとココアクリームパフェをオーダーしていた。

「……危険には思えますが、こちらもその現象には興味があります。協力させていただきたい」
「ありがとうございます! よかったぁ、もう20組ぐらいお願いしても、みんな断られてしまって、とても嬉しいです」

経費も全て出る意味がようやく理解できた。
周辺のモンスターを把握する事は、国家にとっても国防に関するとても重要な事だ。それが怪奇的現象の発生で妨げられる事など、あってはならない。

それを円滑に進める為に、冒険者数名の経費ですむなら、自国の兵士を犠牲にするよりも、安くつくと言う事だ。

ふとジンを見ると目をキラキラさせながらパフェを食べていて、全く話を聞いていなかったのがみてとれる。嬉しいのは分かるが、田舎者丸出しだ。

スィーとの打ち合わせが終わり、三人は明日再び落ち合う事を約束すると、スィーが用意してくれた宿泊施設へとチェックインした。

その夕食の席で、リゼロッテは上品に料理を食べるカナトを横目でみる。

「カナト君。さっき言ってた興味ってなにかしら?」
「惚けられず、ディメンションダンジョンの話です」
「あら、やっぱりそう思う?」

「? 懐かしいな、ディメンションダンジョン、それがなんかあんの?」
「ダンジョンへ侵入したほぼ全ての人々がかえってこない現象。これは間違いなくノーザンダンジョンの入り口が、ノーザンダンジョンでは無いどこかへつながってしまったんだろう」

「本部の調査だと、空間と空間の間に発生するもう一つの空間。今のところ出る方法は……これだけ」

リゼロッテがそう言って机に出したのは、小さな巾着袋。
逆さまにしてまかれたのは、紫に透き通る石、数個だった。

「えっと、確か、高速次元安定簡易結界発生石だったかしら、略して次元安定石。不安定な空間を安定的な空間にする石よ。評議会が万が一の時にって、所持を推奨しているけど、普及率は、二割程度かしら」
「そもそも、発生する事すら稀な空間なのでは?」
「そうね。今回も念のために持ってきた物だし、まさか必要になるとはね」

夕食を頬張っていたジンの手がとまった。
カナトに出会ってから、そろそろ二年になる。大変だったがあの時助けた相手はまだ目の前にいて……。

「ま、なんとかなるんじゃないっすか? 俺らも生きて帰れたしな」
「あら、ジン君。自信あるのね」
「へへ、経験者っすから!」

カナトのジト目もいつもの事だ。三人は次の日、討伐の為の十分な弾倉と防寒を行い、スィーと落ち合う。
道中でスィーは三人へ“ヒーティング”をかけてくれて、カナトは翼を畳む必要もなく、すんなりとノーザンダンジョンの入り口へと辿り着く。

ノーザンダンジョンの入り口には、休憩のためのロッジが儲けられているが、もう何日も人が居た気配がなく、住人も巻き込まれてしまったかに思える。

「助けるしかないわね」
「しかし、今回はあくまで生体の……」
「平気よ。私だって興味あるの。少し散策しましょう」

リゼロッテの押しには、流石のカナトも叶わない。
堂々と、ノーザンダンジョンへ入る彼女を、三人は急いで追った。
すると、まるで床がひっくり返る様な感覚に襲われ、四人の目の前が真っ暗に、そして突然足元が抜け、落下。
ジンは尻から落下し、リゼロッテは綺麗に着地をきめ、バランスを失ったカナトとスィーが、ジンの上に落ちてきた。
尻餅をついたジンは、痛みで暫く動けなかったが、たどり着いた場所にカナトが絶句する。
ロッジだ。
外をみるとノーザンダンジョンが広がり、休憩所に落ちたと分かる。

「きたわね」

リゼロッテの言葉に、苦い記憶を過ぎらせた。
一方のスィーは、あれ? と混乱した声を上げてロッジから飛び出す。

「ここには、ミニー・ドゥがいるはずなのに……いなくなってる。あれ? 過去に合わせても全く違うものばかりだ」
「……リゼロッテ殿。早く次元安定石を……」

「楽しそうにしてる坊やがいるんだから、もう少し散策しましょ」

カナトが再びスィーをみると、スィーは、目をキラキラさせてモンスターを観察している。
“インビシブル”で姿を隠し、パーティ通信からモンスターの全長や特徴がほと細かにぼやかれているのを聞くと、確かに邪魔もできない。
夢中になり、ふわふわと前に進んでいくスィーを追おうとした時、落下したロッジから、ジンが腰を抑えててきた。

「だらしないぞ貴様」
「うっせえ!! お前ら見たいに羽生えてねえんだよ!!」

「ほらほら、モタモタしてるとおいてくわよ」

そうロッジからでた直後。
人間の気配に気づいたのか、モンスターの視線が一気にこちらへ向く。
カナトは素手の“ジョーカー”を唱え、ジンも光砲・エンジェルハイロウへ次弾装填。リゼロッテもベルト弾倉の準備が出来た所で、カナトが飛んだ。
“ヒーティング”の効果で、寒さなどものともしない。“スタイルチェンジ”から、“神の加護”を唱えたカナトは、敵の大群へ“ジョーカー”を入れる為に接近。
重力を利用し、叩きこもうとした。その時だった。

「ま、まだ、たおしたらだめぇえ!!」

スィーの悲鳴に、カナトは羽を滑らせ、床で前転。攻撃を外した。

「は?!」
「ま、まだデータが取れてません!! もう少し待ってください!」
「しかし、スィー殿! それではーー」

言い返している暇なく。足元に闇の魔方陣と矢が飛んでくる。
カナトは空に退避できるが、地上に居るジンとリゼロッテは、ライフルに安全装置をかけて逃げ出した。

「なんで逃げるんすか!? 俺ら!」
「データ撮りたいって子が言ってるんだから仕方ないでしょー」

「あ! モンスター集めてくれてるんですか! ありがとうございます! すごいこんなに沢山いるんだぁ!」

後ろを振り向くとこちらに気づいたモンスターの全てが、群れをなして追いかけてくる。
応戦しようと思えば出来るのに、これは恥ずかしいし、悔しい。

200m程走り、息が酷くきれてきた所で、目の前の崖にジンは冷や汗をかいた。
しかし、横のリゼロッテは得意の跳躍で崖を飛び越え、綺麗に奥の床に着地する。

「ほーら、ジンくーん! 飛ばないと死ぬわよ!」

このままでは、飛ばなくても死ぬ。
選択肢のない選択に、ジンはその場の勢いに任せ飛び出した。
しかし、踏み切った場所が氷の上で勢いが殺され、ジンはまともに跳躍することもできず落下。
せめて、彼女ぐらい欲しかったと未来を諦めたが、落下が突然とまり、はっと我に帰った。

カナトが服の襟を掴み、なんとかジンを反対側の陸地へ引き上げる。

「し、死ぬかと思った……」
「いや、あんたもう死んでるから、」
「重かった……」

真っ暗な床が、トラウマになりそうだ。
カナトも床に座り込み、羽を休ませている。
相当重かったらしい。

二人して休憩していると、10分ほどたって、ようやくスィーが追いついてきた。
悪びれた様子もなく、楽しそうな表情を浮かべる彼は、追いつくなり、「ありがとうございます!」と目を輝かせる。

「お陰さまで、沢山データがとれました! 」
「そ、それはよかったすね……」
「えへへー」

悪気のない、曇りのない笑顔が、怖い。
ふと横をみると、カナトが翼をしならせ倒れており、ジンは何事かと駆けよる。

「カナト、大丈夫か!?」
「疲れた……」

「翼を酷使しすぎたのよ。ダウンしちゃってるだけね」

「僕らの翼は人を運ぶためには作られて無いので……」
「しょうがない。ここならモンスターの気配も少ないし、少し休みましょう」

「大丈夫っすかね……」
「ちゃんと暖を取れば平気。誰でもテントがあるわ、貼りましょう」

リゼロッテはテントを張る前に、スィーへ“ヒーティング”効果のある術式を床に用意させると、その上に、テントを貼った。
元々付与されていた“ヒーティング”と、テントの”ヒーティング”で中はとても暖かく、カナトは心地良さそうに眠りについている。
ジンはそんなカナトを背にしながら、胡座をかいてリゼロッテの作ってくれたスープを口にしていた。
スィーは一人、ダンジョンの敵を見てくると言ってでて行き、テントには、三人のみが残される。

「護衛いらなくないすか……」
「まぁそうね」

保険だろうか。一時雇用の自分達にそんな思惑など知れるわけがない。
しかし、いつも一人で調査していたのなら、分かる話か。

それから数時間して、スィーも戻り、カナトもようやく目を覚ます。
だいぶ眠り疲れも取れたのか、目が覚めるにつれて、翼がシャキッとしてきた。
翼はタイタニアの生命維持装置だと聞いているが、大体翼で体調が分かるのだと、ジンはなんとなく理解する。
体調がいいと眠る時、綺麗に閉じるが、疲れていると無造作にしなる。
回復すると、寝返りを打つ時に綺麗に閉じる。
わかりやすい。

「どうした?」
「お前、わかりやすいな」
「貴様に言われたくない」

蔑む目でいわれ、イラッとした。

「あのあの、皆さん。さっき飛び回っていたら、北東に魔法的な何かの気配を感じたのですが」
「魔法的な何か……なんすか、それ」
「えっと、表現が難しいのですけど、主に結界や封印に使われる永続的な魔力の気配です」

「ふぅん。気になるわね」
「……まじすか」
「スィー君はどうしたいのん?」

するとスィーは、「えへへー」と笑い。行動は決まった。雇い主が言うなら仕方ない。

テントを片付け、四人が再びノーザンダンジョンの散策を始める。
まだ倒してはだめなのかと思ったが、大方のデータ集めは終わったらしく、倒していい許可が下りた。

「よっしゃあ!!暴れるぜ!!」

ジンが銃の安全装置を外し、カナトもスキルを唱える。
“ジョーカー”を纏ったカナトは、大剣を振りかざし、空からモンスターの群れに叩き込んだ。
また、カナトに接近する敵へ、ジンが的確に射撃して援護。
飛び立った瞬間を見切り、リゼロッテがいっぱいまでトリガーを引きこんだ。
スガガガガ、と言う連射音が響き渡り、ジンがリゼロッテが狙い損ねた敵を抑えていく。

「フレア!!」
「Fire!!」

爆裂。
集まっていた敵がまるで流れるように殲滅され、スィーは目をきらきらと輝かせた。

「さぁ、道があるうちに進むわよ!」
「了解っす!」

「すごいですね! 一瞬ですね! プロですか?」
「遊んでたらうまくなったかんじよ。坊や」
「へぇすごい! 是非フレンド登録させてください!」
「うふふ、お仕事が終わった後にね。特別よ!」
「やったぁ! あ、カナトさんもいいですか!?」

「私で宜しければ」
「やったー!」

後ろでジンが、自分を指差して寂しそうにしている。
確かに地味な事しかしてないが、あんまりな扱いだと思った。
突っ込む気力もなく、四人はさらにダンジョンを進む。
敵はそんなに強力でもなく、安全に奥へとたどり着いたが、スィーが示した場所は本来の入り口があるべき場所で、行き止まりになっていた。
しかし代わりに、大人一人分ほどの球体が青い光を放って出現しており、ジンが興味本位に近づく。

「なんだこれ……」
「あ、触ったらだめぇえ!!」

「へ?」と返事をする暇もなく、光の球体に触れたジンは、腕に引力を感じて球体へ吸い込まれる。カナトが即座に脚を掴んだが、その引力があまりに強く、一緒になって吸い込まれた。

ジンは真っ暗な空間を背中から落下し、目の前に灰の装飾が見えた直後。
背中を強打。痛みに呻いて居ると、カナトも落ちてきて、腹に直撃。言葉に鳴らない痛みで気を失いかけた。

「ジン! 大丈夫か!?」
「痛い、痛い、からどいて……」

今日は厄日だ。
そう思って仰向けになった直後。真上に靴裏が見えて、ジンは即座に後退。
リゼロッテがスィーをおぶって着地した。

「あら残念」
「絶対狙ったっすね!? なんでそんな容赦ないんすか!!」

全力で顔に着地しようとした彼女は、大声で笑う。
これはキレていいと思ったが、後ろからうめき声が聞こえ、四人がはっとした。

20名近く居るだろうか。防寒着を纏うタイタニアやドミニオン、エミル達が皆ぐったりして倒れ、中には騎士団員らしいエミルも数名見受けられる。
カナトが彼らに駆け寄って応答を求めるが、完全に気を失っているのか、触れた直後に倒れてしまった。

「行方不明になった人たちでしょうか?」
「ここなら、間違いないでしょう……。でもどうしてこんな場所に……」

すると、人々を起こそうとしていたカナトが、突然何かに気付き身構えた。
何かがいるらしい。リゼロッテも眉間にシワを寄せ、安全装置を解除。ジンも身構えた。

「魔力を感じます……。怖い」
「スィー殿。下がって」

カナトがスィーを下がらせ、再び剣を構え直す。すると、スィーは、おどおどとしながらも、“ディバインバリア”と“ディスペルシールド”を唱えてくれた。

その直後。
部屋の一番奥にある祭壇から、青い液状の物が少しづつ漏れ出し、祭壇の蓋がわずかに浮く。
漏れ出した液体から、人の上半身のようなものが浮き上がってきた。

「げ、グロ……」

人型の液体は大量に現れ、さらに祭壇の蓋が吹っ飛ばされるよう開く。
そこから現れたのは、青白く光る亡霊のようた龍。“マツロワヌモノ”を引きつれ、龍、ラバブは氷の息吹。“アイシクルテンペスト”を唱えた。
後退した四人は、敵が詠唱を終えたタイミングで接近、カナトが“ジョーカー”を叩き込む。
この一撃で大半の取り巻きは殲滅できたが、残った一匹が、床から伸ばした黒い手でカナトを捉えた。
カナトは逃れる為に、必死に敵を剣で殴るが絡みついてなかなか離してくれない。

「カナト、さっさとどけよ。あぶねぇだろ!!」
「うるさい! 動けないんだ!!」

スキルが唱えられず、必死にもがいている。珍しくテンパっているようだ。

「カナトさん!! 今助けます!!」

後ろから響いた声は、スィーだ。
何をするかと思ったが、彼は本に挟んでいた大量のイリスカードを取り出し、50枚近くを同時に使用。小さな破砕音が連続した。

「イリス・ウィンドタイプ上昇、属性値、9、18……」

10づつカウントされて行き、それは最後の数値を叫ぶ。

「……99……108!! 属性値100を突破。"フォースマスター”。"プラスエレメント"を付与し、これを発動!!」

付与されたのは風属性だ。
スィーの足元に、白銀の魔法陣が展開。
次元につながり、属性によって練りこまれた魔法エネルギーが、スィーの元に集約され、解放される。

「“デストラクショングレアー!!"」

真っ白な雷撃がラバブへと直撃。爆発。
眩しい程の光が、敵を完全に包み、視界がなくなった。
また、周りの取り巻きに通電したのが段階爆発が起こり、さらに強い爆風が三人を吹っ飛ばす。

「うわぁぁぁ!! やり過ぎた! カナトさぁぁあん」

スィーの喚く声を尻目に、ジンがその場を凝視する。
すると、床に倒れるカナトの後ろに、まる焦げになった敵がいて、ジンは、光砲・エンジェルハイロゥを投げ捨て、カナトに駆け寄る。
しかしカナトは“ディスペルシールド”もあった為か無傷で、あまりの音に失神してしまったようだ。

「ちょっと、やりすぎよ! ちゃんと考えてうちなさいな。ジンくんならまだしも!」
「ちょ、ま!? 俺ならいいの!?」

「わぁぁあん、ごめんなさい!!」

無茶をすると思った。
敵も討伐できて、ほっと一息かと思った時、突然床が揺れだし、空間に亀裂がはいる。

「空間が、壊れます!!」
「リゼさん早く!!」

「分かってるわよ!!」

リゼロッテがポケットから石を取り出し、空中へ投げる。
そして、“ヒットコミュニオン”と、“マークスマンオーラ”、“精密射撃”を唱え、石を射撃。破壊した。
途端七色の光が発され、結界を構築。
ディメンションダンジョン消滅し、結界に守られた人々は元の空間に戻された。

「か、かえってきた?」
「あれ? あれ……?」

景色が真っ白になったかと思うと、後ろにはノーザンダンジョンの入り口があり、気絶していた人々がいる。
モンスター達の間には、ちゃんとミニードゥがおり、スィーは何度も首を傾げた。
突然戻ってきた事にジンは、放心状態だったが、傍らカナトが「ん」と、声を挙げてはっとする。
目が見えないのかしぱしぱさせており、魔法の光にやられてしまったらしい。
ジンは仕方なくおぶっていることにした。

「お疲れ様、本部に連絡しといたわよ。お手柄ね」
「なんもしてないっすよ……」
「少なくとも、彼にとっては大冒険でしょう」

ダンジョンをふわふわと飛び回るスィーは、未だ首を傾げているようだ。
そういえば彼にはディメンションダンジョンについて、説明をしていなかったきがする。

「寒い……」

背中カナトがぼやいて、ぶるっとした。
空間が崩壊して“ヒーティング”がきれたらしい。しかし、既にスィーはおらず、三人は入り口のロッジで、彼が戻るのをまった。

その後、リゼロッテが呼んだ部隊員に顔を見せ、三人はスィーと共に徒歩でノーザンプロムナードまで戻る。
宿にもどり、カナトを寝かせたジンは、再びスィーと落ち合った。

「ありがとうございました!! お陰さまで、とても助かりました!」
「そ、そうっすか。そりゃあよかったっす」
「報酬と経費は酒場経由で手配したので、明日以降に受け取ってください」
「へい! ありがとうございました!」
「はい。おれ、今はこっちに下宿中ですけど、アクロポリスに家があるので、もし見かけたらまたよろしくお願いします!」
「了解っす」

「あ、ジンくん。なんか助けた人たち、みんな最近の感染症にかかってたみたいだから、帰ったらちゃんと手洗いうがいするのよ」
「子どもじゃないっすから、ちゃんと、やるっすよ。リゼさん」
「あはは、今日の夕方には引き上げるみたいだし、部隊の庭にのってかえりましょ、カナト君は、ばれないよう。憑依させてね」
「了解っす」

「あ、カナトさん……ごめんなさい……」

しゅんとするスィーは、申し訳ないのか視線が下を向いている。
ジンはそれににっとわらい、

「大丈夫っすよ!! あいつ、あー見えて悪運つよいんで、またなんか、“貴様に心配されるとは落ちたものだ”とか言って嫌味いいにくるに決まってるし……」
「……そうなんですか。仲良しなんですね!」
「仲良くないっすよ……。ただ利害関係が一致してるっつーか」
「利害関係?……運命的ですね。なかなかないとおもいます」
「そ、そう? 気にしたことねぇや」

目を逸らすとスィーの笑い声が聞こえ安堵。
安心したのか彼もにこやかに、研究施設へかえっていった。

その後、ディメンジョンダンジョンが出現した理由を評議会が調査したところ、邪神アルハザードを目覚めようとさせた使者たちが故意に発生させたものであり、迷い込んだ人間は、生贄にするためにあの空間へ集められていたらしい。
発生させた方法までは分からなかったが、空間を維持していたモンスターを、リゼロッテとジンとカナトが倒したことにより崩壊した。ということだった。

その数日後、スィーはその週の休日を使い、一人アクロポリスへと戻る。新しい空間、ディメンションダンジョンから帰還出来たことで、研究すべき事が倍以上に膨れ上がり、なかなか帰える事ができなかったのだ。

久しぶりのアクロポリスの空気に羽を伸ばしていると、目の前を横切る。眼帯のエミルにはっとする。
短い短髪、華奢な体。ミステリアスな雰囲気をもつ彼を、スィーは肩を掴んでとめた。







*GEST
jk_sui_130421

アークタイタニア・フォースマスターのスィー


年齢:不詳
身長:168cm

性格
自分に素直でゆるい雰囲気のノーザン学校研究生。
好きなことは食べること、考えること、散歩に道草、ゆっくり昼寝。
気になることはとりあえず聞く、気になるものはとりあえず触る。

Chara:ウラトさん
知識はあってもあんま賢くないです よろしくお願いします_ノ乙(、ソ、)
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本編 | 【2013-05-09(Thu) 12:30:00】 | Trackback(-) | Comments:(4)
コメント

タイトルでわかるジンさん不遇率
ミ (ノ*・ω・)ノ わあいJK界にお邪魔できて嬉しいす!

節々で翼がきちんと機能してるところを見てると元々のタイタニア好きが加熱しそうです転生ツライ!!
姉御肌のリゼロッテさんのファンになりそう(*´ヮ`)ポヤー

扱いづらい奴だとは思いますが また遊んでやってもらえたら幸いす!(ジンさんカナトさん宛)
えーらさんありあとうありあとうヽ(´ヮ`*)ノ
2013-05-09 木 17:00:40 | URL | うらと #SFo5/nok [ 編集]
このたびは参加していただいてありがとうございましたw
私も描いててとても楽しかったです! リゼちゃんも喜んでおりました(代理
とても優秀な方なので、これからお世話になるかもしれませんが、どうぞよろしくお願いしたします!
2013-05-09 木 18:57:41 | URL | 詠羅 #- [ 編集]

言われて除きにきたら凄かったw
お話描くの楽しいですよねっ!
ECOは、アバター多くて誰一人すべてが同じになることがないから余計にやりがいがありそう(
2013-05-14 火 08:16:35 | URL | ろき #- [ 編集]
ようこそ! ロキさん!
お楽しみいただけたようでとてもうれしいです! ぜひ一緒に遊びましょう!
2013-05-15 水 03:22:05 | URL | 詠羅 #- [ 編集]
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